今回最後、挿絵があります。下手ですがすみません。
「ついてこい。」
「っ...はい。」
レムは私の後ろをスタスタとついてくる。
キャィンッッ
ジュゥッーーー
肉が溶かされ焦げる匂いと犬の悲鳴が響き渡りながら私達はこの暗い森の中を抜け、野原の上を歩く。
「ッ、居ました!」
「すぐに看病を。」
すぐにレムに子供達の容体を見せる。
すると彼女は首を縦に振り「まだ息があります」とだけ言って恐らく魔獣共につけられた呪術を和らげる魔法をかけて治療をしている。
しかし、だだっ広い森を抜けた平野の土地が盛り上がった場所の一部に子供たち数人が固まって置かれていた。
そしてそれは明らかに
(...不自然すぎる。
こんな場所に綺麗に並べられて放置されるなど、魔獣相手なら喰い殺されそうなモノだが。)
もしかすると、子供達が魔獣から逃げ切ってここで息尽きて倒れている、のかもしれないが。
だが私はそれよりもまず
『...魔を刺すなッッーーーー!!』
グヂュッ...ーー! ジュッーー!
ガゥゥゥゥッ...ゥゥッ...
後ろから追ってきていた下等生物に私の周囲に防壁をなすかの様に取り囲んでいる
黒色の液体の一部を身体中に浴びせてやり、葬り去る。
「...Amen.」
身体の前で指で十字架を作り、神への祈りを捧げる。
「エルパニアさんッ。」
「どうした、呪解に何か問題でも?」
レムが顔色を少し暗くしながら、私の方を振り向いた。
そして口を開けば
「その...既に呪術が...。」
「発動、されているか。」
私が先の言葉を告げれば、彼女は申し訳なさそうにコクリと首を縦に振った。
「ハァーーッ...。」
私が残念そうに深い溜息を吐くと、彼女は治療の手を無駄な足掻きだと理解し、一旦止め、
更に恐る恐ると言った感じで口を開き
「全部...全部レムが悪いんです。レムに呪解が出来れば、この子達は救われたんです...。
レムがもっと早くエルパニアさんを信じてついて来ていれば、
こうはならなかったんですッ...!!」
(...なるほど。)
私はこれを言われた瞬間、レムの心内の
ヘドロまみれな状態を理解した。
全ての原因を自らに置き、あらゆる事を、万事万物を解決せねばならないと決意している。
そういうものを、者を英雄と呼ぶのだろうな。
「レムが...レムがお姉様の足りない所を埋めなきゃ...だめ、なんですッ...。」
レム ラム。
彼女達の姉妹としてのバランスは崩れている。
ラムが果たすべき役割をレムが代行する。
それも良い事だろう。なんと姉妹愛の事だろうか
だが、
「...貴様ら姉妹に何か言う気はないが、訂正させてもらえるか。」
「...何、を...ですか......。」
彼女は涙ぐんだ声で震えてこちらを子供達の看病をしながら見上げる。
「我々を混乱と破壊に陥れたのは貴様ではない。
あの異教徒共だッッッッ!!」
私は自身の怒りと共に彼女の憎悪を煽るべく、息を荒げ、手を振りかざして言葉を紡ぐ。
「我々を無慈悲に食い荒らしたのは連中だ。
貴様は私の、ラム嬢の、エミリア嬢の右腕として十分にお仕えしてきた。
貴様は、レムはこの世で最も忠実な
“ 騎士 “ である。
私が保証しよう、このエルパニア卿、が。」
「エ......ルパニア...さん...っ......?」
初めて、なのだろうか。
彼女は、これまで誰1人として褒めてくれた人間はいなかったのだろう。
これまで忠実に尽くした、これまで完璧にこなした数々の偉大な功績を、
あの屋敷では誰一人として心から祝福をした人間などいなかったのだろう。
故に今、涙目で私を見上げ、私の前で喜びをあげている。
決して評価されることのなかった自身の闘いと戦いと労働と狼動を。
「貴様は今から私と、エミリア嬢とラム嬢、貴様を必要とする屋敷の人間の全てに忠実な騎士だ。
これを忘れるな。」
「...ぇ............。」
私は彼女にそう言ってから、胸から
ガチッッッ
と、下げていた純銀の十字架を引きちぎり、
カチャンッ、と彼女の首にかける。
「これ、は.........。」
「貴様が忠実である限り、裏切らないモノだ。
『忠誠こそ我が名誉。』
この言葉を忘れるな。」
そう言って唖然としている彼女に口を細め静かに
『Señor, dale a esta persona la autoridad para juzgar.』
(主よ、この者に裁きの権限を与え給え。)
とだけ言い残し、私は後ろを振り向き
「私はこの森に隠れ潜む寄生虫を握り潰してくるよ。発動された呪術を解くには、大方仕掛けた相手を殺害するって辺りだろう?」
私がいますべき最善を尽くす為に、森の中へと再び足を運ぼうとすると、
「ま、まって下さいッ!......頭おかしいですよ......エルパーニャさんはッ!!
だって、だって...この森の中にいる魔獣を片っ端から片付けるなんて、出来やしませんッ!
仮に出来たとしても、呪術をかけた個体がもう逃走してる可能性すらありますッ。
そんな事をすればエルパーニャさんが...また大切な人を...失ってしまいます......
レムはそんなの嫌です、絶対にッッッ!!」
彼女は私の左腕をギュッッッと握りしめ、行かせないと硬い意志を見せる。
バッッ
「ッ...そんな......!」
私はその手を夜間の権能の発動時の異常な力で跳ね除ける。
レムは自分の心配が跳ね除けられた 最後の頼みの綱が立ち切られたと思い込み、そのまま床に尻込みして泣いて絶望していた。
だが、
「...言ったことを遂行してもらおうか。
貴様は忠実な騎士だ。屋敷のメイドでは飽き足らず、貴様の技能は騎士に匹敵するッ!!
では『忠誠』は?では『貴様の名誉』はどこだ。
貴様は、たとえ死にゆくとわかっていても、その果たすべき忠を尽くさねばならない。
私とて、それは絶対的だ。」
私は騎士を、兵士を、戦士を説く。彼女と、私に与えられし義務を。
遂行すべき我々の崇高なる使命を。
「だから...私を、行かせろ...。」
私の説得を聞いて、俯いたままの彼女を見損なって私はそのまま前を向き、森の方へと進もうとする。
だが彼女は立ち上がり、
「......わかりました。ですが条件が一つ。」
と、心底真剣で真面目な素振りで伝えてくる。
「森の魔獣共を排除して...必ず、必ずレムの元に帰ってきてくださいね......これは貴方が騎士として果たすべき、義務、です......。
私を、一人にしないで......ッ!」
彼女はもはや涙ぐんだと言うより、泣きながら私に訴えかけるが、答えはもはや決まっていた。
「...貴婦人を泣かせたままでいる程、落ちぶれてはいない。
そのご指名、お承り致しました、レム嬢。
子供達を屋敷に、頼みますよ。」
と返礼し、深くお辞儀をする。
そうすると、泣きじゃくっていたレムは顔を上げて、無理やり私のために笑顔を作り出しながら
「!!...はいっ!
いつまでも、お待ちしております!」
微笑んだ柔らかく甘い顔で私にお別れを告げる。
そして、彼女も自らが果たすべき義務を全うするために子供達を肩に担ぎ、持ち上げて私と一瞬目を合わせてから、村の方角へと走っていく。
「...行ったか、そしてようこそ、来たか。」
私がそう言うと、彼女が私の作り出した黒色の液体の隙間から出て行った瞬間に、
私は私を平原上で囲っていたその液体を地面へと移し、地面を伝って私の元へと吸収させた。
すると、周りで怯え、怯んでいた犬共は嬉々とした顔で、私に近寄ってきたのだ。
ガルルルルッ...
バゥッ バゥンッッ!!
吠え上がり、威嚇し、優越を浸る無能で無知で馬鹿な奴らは周りに恐らく、30匹は超えているだろう。
「どうだ、見ろ。美味しい肉だろう?食べてみろ。」
私は袖をめくりあげて、白い細い女の腕を見せつける。
すると、それに反応した犬共は一斉に私の元へと急接近し
ガシュッ ガブッッ グヂュッ グチッッ
と、足や余り大きくない女の胸や乳房を噛みちぎって食い始めた。
「はッ、獣臭い輩だな。」
こいつらの食事を見下すのは中々に気持ち悪い不快な感覚だ。
だがそれももうすぐ快楽に変わる。
これはただの パフォーマンスさ。
ゴゥンッ
と、再び先程起きた地震のようなモノが大地を揺るがす。
すると、
ドクンッ...ドクンッ...
バンッッッ
ドパッッーーーー!!
と、私の【黒い】肉を食っていた犬共は一斉に腹を食い破られ、黒い液体を垂れ流す。
それは私の肉だったモノだ。獣共の胃の中から膨張し、瞬時に膨れ上がり、破裂したのだ。
周りに散らばる犬の本物の屍肉と黒い液体を再び地面を伝って吸い上げて、身体の再生に充てる。
『私は死人なのだから。』
既に身を海底に滅ぼしたスペイン人である事......先程気づいた。
この黒色の液体が私と融合した時だ。
融合し、私に追随し、私の身体の一部となっている。
つまり、それは私自身と言うことだ。
「死人に口無し、とは真っ向から嘘だな。
...では、約束を果たすために1匹残らず食われてもらうからな...?」
クゥンッ...
ガゥゥゥンッッ!
私はそう言い残し、このすっかり怯え切った糞犬共に黒色の液体を大地から湧き出させ、囲い込む。
ガゥンッ!
すると、その猛毒な溶かされる液体の囲いから運良く逃げようとする卑怯な犬もいるが
『誰が、罰を、受けないでいいと言ったッ!!』
私は黒色の液体を霧化させ、一本の糸のようにその犬の足目掛けて空気中に縄のように形成して逃亡を防ぐ。
足を掴まれたような形になったその犬は、私が作り出す黒い液体の囲いの内側へと入らされる。
そして、
「では、天に召されろ アーメン 」
パチンッ
指を鳴らした瞬間、その囲いの下の地面から大量のドロドロの濃い更に多くの液体が一気に空高く上空まで満杯に満たされた。
それは私とて例外ではなく、私もその液体に沈み、溺れる形となる。
が、しかし、この液体は私自身。
私の身体と交わり、修復し合い、服などの形を作り直すこの液体は私には親切だ。
が、
ジュッーーーー
グチュッ...グヂュッ...ジュワッ...
と、周囲では大量に居た犬共が全て解かされ、溶かされ、濾過されていく。
骨すらも栄養分としてこの液体に吸い取られるのさ。
「ふ...フハッ...異教徒に...死が宿ってるッッ!!!フハハハハハハハッ!!」
私は嬉々とした顔で、カトリックの敵を排除する事に喜びと悦びを感じ、快楽を神から与えられる
これが、私、エルパニア卿なのだ。
「ふふ...良い、良いぞ.........血肉を天へ返すが良い...。」
月明かりが私の残虐で無慈悲な裁判を美しく映し出し、更に快楽に浸らせる。
暗い森の中にある平原で
酔いしれた私の脳は、もはや制御不能だった。