殺滅のソテイラ   作:すかろく

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何とかvsスペースゴジラの部分までこぎ着けたかったのですが、あまりの遅筆にどうにもならず ( ´Д⊂
一先ずキリのいいところまで投稿しようと思います。


舞台はアニゴジ3章のラストシーンから


第7話 ”■■”の回想

 ――俺は、誤りに満ちた存在だ。

 

 

 未熟と失敗、妄言と思い込みの繰り返しの果てに、今ここにいる。

 無念はあるし、後悔は山ほど。俺のせいで何人も死んだ。俺のせいでどれだけの運命が狂った。思い返すだけでこの胸を引き裂き、頭蓋を潰してやりたくなる。

 

 しかし……ああすればよかったとか、もっと違うやり方が無かったのかとか考えてしまうと、不思議とこれしか道はなかったのだと受け入れてしまう自分がいる。確かに最善の道では無かったのだろうが、それでも唯一の道ではあったのだと言い切れてしまう。

 ここに至ってなお、そんなことを嘯く恥知らずに辟易してしまうが、それが事実なのだから仕方がない。

 

 最初から生まれてくるべきではなかった業人――と誰かが俺を誹ったのならば、確かにそこは頷こう。否定しようがない事実だ。

 しかしそんな自分の存在を、自分自身の言葉で拒絶してしまうのは、俺だけでなく俺という存在に連なる全ての人々の魂と尊厳の否定だ。俺という命に希望を託して祈り()の名を授けた両親への冒涜だ。

 それはできない。それだけはできない。

 

 俺は自分が”■■”などとは程遠い、どうしようもない罪人だということはとっくに自覚している。それでも……いやだからこそか。俺には責任があって、やらかした全てから逃げることなどできない。安息など以ての外で、つまり俺が俺を拒絶する(逃げ出す)ことはありえないんだよ。

 

 分かるか■■■■■■、お前はそこを読み違えた。

 

 だからこそ俺はあの最期にも納得していた。糞を煮詰めた糞な理に支配されたこの世界に、どうにか一矢報いてやったのだと――ある種の心地よささえ覚えていた。

 

 

 

 だけど、なぁ――これはいくらなんでも、ありえないだろう。

 

 

 

 

 

◆0◆

 

 

「――分かるかゴジラ! 貴様を憎み、貴様に挑む最後の一人がこの俺だッ!」

 

 

 耳にやかましい警告音。視界を覆うように赤一色のエラーメッセージがヴァルチャーのモニターに次々表示されていく。しかしそんなものは意識の片隅にもに入れやしない。

 心臓が早鐘を打つのが解る。全身の体温が上がったり下がったりの乱気流だ。生身で堪えるなど想定されていないGの圧力に意識が遠のくのを感じるが、全て等しく無視だ無視。

 

 モニター越しに見えるのは、この24年間の生涯の全てを賭けて憎み切ろうとした存在――ゴジラ。

 

「貴様が奪った命に、壊した夢。その全てを背負い――果てに今、俺はここにいる!」

 

 カラカラに乾いた喉に血が滲むほど叫んだ。

 

 解放された気分だった。

 ここ最近抑えつけていた不満や葛藤が、ゴジラへの憎しみへと転化されて吐き出されていく。

 震えているのは興奮ゆえか恐怖ゆえか。口端が吊り上がっているのに、視界は涙に滲んでいく。感情と理性がバラバラになっていて使い物にならないのが分かった。――なるほど、くたばってやるには最高のコンディションなのは間違いないようだ。

 

「もしも貴様が本当に破壊の化身だというのなら、今度こそ残さず焼き尽くしてみせ――」

 

 数秒後に確実に訪れるだろう死の結末を迷いなく受け止めていたトランス状態の精神に水を差したのは、痛みだった。

 身を支えていたものが急になくなり、身を乗り出す形でその勢いのまま正面モニターに顔面が激突する。

 

 見れば、体重をかけて握りしめていたレバーが液体状に融解していた。うぞうぞと動く菌糸状のナノメタルが、俺の指先を包み込んでいる。

 ゴジラに捨て身で突っ込むという正気ではない操縦に、ナノメタルは搭乗者の錯乱状態を認定したらしい。独断でコンソール操作に干渉していた。シートのハーネスを解除していたのが祟ったようだ。

 

 既にこの勢いにあっては、ナノメタルの力をもってしても姿勢制御は不可能だろう。仮にそれが叶っても、この距離ではゴジラの熱線は避けられないだろうが。……その哀れで無意味な抵抗に、今から自分が潰そうとしている文明の萌芽の悲鳴――そして飽くなき繁栄を求める霊長の宿痾を垣間見た。

 

 指先が銀色に覆われていく姿は、まるで何時ぞやかの再現だ。網膜の裏にまで焼き付いた、あの地獄的な光景。

 

 片腕に掻き抱いた少女の存在を、その重みを今更に感じた。

 

 確かな胸の鼓動と息遣いを感じる。こんな風になり果ててしまっても生きているのだ。こんな惨たらしい姿にしてしまったのは俺で、守ると誓った筈の存在なのに。生まれてから今まで、優しいものなど見たことが無かっただろう少女……。

 

「知るかよ」

 

 胸に抱いた一瞬の無念を、割れよ砕けよと歯を食いしばって振り払う。

 死の間際に至ってなお、この無様な男は悟りの境地から遠いらしい。

 俺は全ての過ちにケジメをつけるためにここに来た。こんな痛みも矛盾も、とうの昔に覚悟していた筈。

 

 

『――しかしこれは、果たして心底から望まれた結末なのか?』

 

 

 今度は奴の声が聴こえてきた。

 馬鹿馬鹿しい。あいつは死んだ。俺が殺した。死人はもういない。これは全て、俺の愚かしさが生み出した妄想だ。

 なるほど、もしかしたらとっくに俺は気が狂っているのかもしれない。間違いない、こんな無様を晒す男が正気であっていい筈がない。

 

 

『エクシフだの地球人だの、勝手な意味づけに起因するポジショントークは今はやめておこう。この際、私も献身の使命を忘れた。だから一個の霊長として……心の底から君を愛している個人として、伝えたい』

 

 

 こんな時まで俺の足を引っ張るのか。やめてくれよもうすぐなんだ。

 身を乗り出した先の視界には、臨戦態勢のゴジラが映ってる。見ろよ、正面からでも背鰭が稲妻の光を瞬かせてるのが解る。後コンマ数秒で俺は死ぬ。

 

 

『これは妥当で穏当で納得のいく結末ではあるのだろうが、不愉快だ。そうだ、君には、もっと――』

 

 

 ならばいいか――今際になってお前の声を聴くのも悪くない。

 

 思い返すほどに、糞を煮詰めたような生涯だったと実感する。

 

 心底から幸福だったと断言できるのは、フツアの集落で過ごした数カ月くらいのものだろう。

 あの日々のために、生きてきたと思えば。あそこで俺の命を繋ぐことができたというのなら、俺の命にも真っ当な価値があったといえるのだろうか。

 ああ■■■、俺の運命。

 この広い銀河の中で唯1人、俺の命に繋ぐ重みを見出してくれた、俺の光。

 誰よりも君の事を近くに感じている。

 君のおかげで、俺は俺の命を肯定できたのだから。

 

 けれでも君には、何もしてやれなかった。

 君に、繋ぐこと(勝利)の、その尊さを教えてもらって、俺もその勝利に殉じるつもりで君と番った。

 その癖結局、果てに選んだのはこの有り様だ。

 

 嗤ってくれ――信じがたい背信、許しがたい不義、なんという不誠実。

 

 

 ああどうして、

 俺はなんで、

 この世界はどうしてこんなに、

 

 

 

「――ああどうして世界はこんな風にできてしまっているんだ!」

 

 

 

 閃光。

 熱い風が通り抜け、心地よく身を包んだ。

 もう何も見えない。何も感じない。わからない。

 

 

 俺は、――――

 

◆1◆

 

 

「――……あの死の間際で無念を覚えてしまった。その末路がこれだ、定かならぬ命を抱えて、今ここにいる」

 

「千載一遇の機会を逸した。死ぬべき時に疑問を覚えた。その無様の証が、”これ”なのだと俺は認識している」

 

「皆が望んだハルオ・サカキからすれば絶対にあり得ない無様――()()()()()()()()()()()結末だからな」

 

「今の俺は――前世、といっていいのかわからんが、その俺のやらかしから生まれた搾りかすの様なモノなのだろうな」

 

「つまらない話だったろう?」

 

 

 そこまで喋って、ハルオはゆっくりと顔を上げた。あれから幾何の時間が流れたのか、時刻はもう夕暮れに近づいていた。その間ハルオは迷いも淀みもなく話し続けて、対する小美人(コスモス)もまた口を挟むことなく傾聴していた。

 

『ありがとうございます、ハルオ・サカキ殿。しかし自虐はお止めになってください。滅びの先にある安息に逃避せんとする忌まわしきに抗い続けた魂。その命の輝きの、なんと猛々しく、誇らしいことか――』

「不相応な評価痛み入る。しかしこれは自虐ではない。確かに俺は、滅びの先の安寧の道を拒絶した。俺自身を拒絶することは、即ち俺に連なる者達の……全うに生きた命の尊厳の否定に他ならないと感じたからだ。

 しかし()()()が生まれた所以が()()()()の過ちにあるならば……その理屈に基づけば、どれだけ責め立てても足りないということはないだろう」

 

 それにしても――異世界転生。こことは違う世界での戦い。前世の記憶。 

 

 曰く、特攻の果てに待っていたのは天国でも地獄でも完全な虚無の世界でもなく、何故か存命の両親の手の中であり――しかも自分は赤子の姿になっていて。

 混乱は大きく、声に出そうにも泣き声にしかならない。最初は時間逆行か、或いは並行世界に飛ばされたのかと思ったが――そうではないことは直ぐにわかったという。

 

 いずれにせよ、その全てがにわかには信じがたい荒唐無稽な話である。いや寧ろ彼自身が疑いなく信じているのが不思議な位だ。悪い夢、妄想の類だと思い込むのが普通だろう。

 だが、その自嘲するような笑みに、哀しいほどに昏い瞳。それらは理屈ではなく直感でハルオの語りが真実なのだと訴えかけてくる。

 

 そんな姿を前に思うことがあるのだろう。小美人(コスモス)は痛まし気に眉を顰めた。

 

『しかし貴方はもう、十分以上に苦しんだのではありませんか? こうして再度の生を奇跡的に得たのなら、今度こそ人としての当たり前の幸福を掴――』

「それは違う」

 

 切って捨てる様な否定の言葉。

 

「転生を果たして新しい命を……二度目の機会(チャンス)を得ることができたなどと……。そんな脳に砂糖をまぶした様な愚考を思考の片隅に入れること自体が、俺が死なせた人々への侮辱だろう」

 

 そう吐き捨てる様に言い立てると、ハルオは乱暴に会議室のパイプ椅子に座った。筋肉質な彼の体重を受けて安い作りの椅子がぎしりと音を鳴らすが、歯牙にもかけず小美人に顔を向ける。

 彼が椅子に座ったことで同じ高さになった両者の視線は、正面からまっすぐ向き合う形になった。

 

「俺のことは大概話した。まだ話していないことも多くあるのは認めるが、それはお前たちの話を聞いてからだ小美人(コスモス)。俺がどこから来たのか――何故お前たちが知っているのかは、この際聞かない。代わりにお前たちの目的を話せよ。俺に何を求めている。この怪獣との終わりなき戦いを続ける世界の果てに、何を見据えているというのだ」

 

 正直に話せよ誤魔化しは許さん――求められない限りは沈黙を貫くのがハルオだ。それは彼のポリシーであり、それを基準にすればいつになく饒舌なその姿。挑むように女神(モスラ)に仕える妖精を睨みつけている。

 

「この世界も大概どうかしているが、前の……あの世界に比べれば兆倍マシだ。何よりこの世界にはランドウがいる。嘗ての俺が置かれた状況に近く、しかし俺とは違う視座を持ち、俺とは違う答えを掴もうとしている若い萌芽だ。誰にも摘ません――”■■”だと? あんな趣味の悪い生贄にあいつを捧げるなどありえない」

 

 その言葉に二輪一対の妖精は穏やかに微笑んだ。揃えられたその所作には一切のずれも違和感もない。比翼――という言葉が自然に浮かぶ。

 

『それは私たちも同じです。ランドウ様に――確かにまだ未熟ではありますが、その眼差しに確かな光を見いだせる存在です。……しかし今の世界は、それで胸をなでおろすには、見過ごすことのできない絶対的な危険因子が存在する』

「ゴジラか」

 

 ハルオにとっての驚きは、この世界にもゴジラが存在すること。地球の王(アース)と比べれば幾分小柄だが、同じ様に二足二手一尾一頭の怪獣。背中に誂えられた背鰭も間違いない。口から破滅の火を放つのも同じだ。だから姿形はとても似通っていて……しかし決定的に違っているのは、こいつは人間を決して襲わないという点だろう。同胞である怪獣のみに力を振るい続ける一方で、人間社会には指一本触れようとしない。

 

 ならばよいではないかと? 冗談を言うな。勿論ハルオも()()()()()()恨むべき敵だ――などという妄言を今更吐くつもりはない。

 しかし、あの姿。

 

 例え地球の裏側だろうと、憎悪の叫びと共に直進し怪獣を欠片も残さず焼き殺す姿。

 地球の王(アース)よりは確かに小柄なのだが、だからこそ恐ろしい。その小さな身体には、ドロドロとした黒い怒りが消えぬ焔となって、恒星すら焼き尽くすほどの圧縮された熱塊として蠢いている。瞬きすらせず見開いたままの血走った眼球には、殺意以外のものなど感じられない。

 

 そう、言語化できる感覚ではないのだが、あのゴジラは()()()()()()()。それは有する怒りの桁なのか、背負う呪いの量なのか……いや、きっとそこではない。

 

 

「解せん。何故……いや、奴は()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 かつてハルオが相対した地球の王(アース)とは、あまりにも対照的だ。

 哲学者を思わせる静かな瞳の奥に何を宿していたのか、何を思い何を考え戦い続けていたのか。余人に伺い知れぬ、考えていくほどにぼやけていく超然とした無貌が地球の王(アース)だとするならば、今代の魔王はいっそ清々しいほどに単純だ。

 

 このゴジラは、あからさまに、とてつもなく解りやすく怒り狂っている。

 

 殺意と憎悪の感情をむき出しにして、それ以外のものを焼き捨てながら突撃するその姿。怒りの化身としか形容しようがなく、誰しもがそう同じ感想を抱くだろう。

 

 そう、そして怒っているということは――当たり前の話だが――そこには怒りの対象が存在するということだ。

 ならばしかし、奴は一体何に、何故そこまで怒っている?

 

 人類の存在に怒りを覚えている……などということはあるまい。

 「傲慢な知的生命への罰」だの「自らを生み出した人類文明への復讐」だのと、そんな使い古された表現は全く当たらない。何しろ奴は全くと言っていいほどにヒトを襲わないのだから。怒りの矛先が人類文明に向いていないのは明白だ。

 

 偏執的に怪獣(同類)を攻撃するその姿から判断するなら、その怒りの対象は怪獣(同類)にあるということになりそうだ。しかしそうすると、その”動機”がますます理解できなくなってしまう。奴が怪獣(同類)を憎悪する理由などどこにある?

 

 

 ……いずれにせよあまりに不吉が過ぎる存在で、そんなものに支えられているこの世界には危うさしか感じられないのだ。

 

 

『この世界は、未だその全容を明らかにしようとしていません。不安定で、揺れ動いている。”敵”はいずこに――誰もが滅ぼすべきそれが何なのかを追い求めて彷徨っています』

 

 この時、両の妖精の振舞いに変化が起こった。

 一糸乱れず揃えられていた所作が、入れ替わり立ち替わりのものに変わったのだ。1人が話している間、もう1人は深く重く、祈るように眼を閉じている。それに果たして何の意味があるのか――。

 

『どうか、異なる世界の”■■”だったお方よ。稀人たる貴方の力を貸してほしい。彼を誰よりも近くで支え、正しく導いてあげられる先人が必要なのです』

「……俺に■■■■■■の真似事をしろと言いたいのか」

『そうではないことは、貴方もよく分かっているでしょう。()()()()()()貴方にしかできない、貴方なりのやり方で、彼を――この世界を真に善なる道へと導いてほしい』

 

 苦い表情を浮かべるハルオに、小美人(コスモス)もまた微苦笑で返した。

 

『それは少なくとも、今の貴方の在り方と比べれば遥かに穏当で、意味のある道でしょう。……貴方は死に場所を求めていらっしゃる。違いますか?』

「否定はしない」

 

 端的な回答には、想像を絶する痛烈な想いが込められていた。まるめた背中に、掠れた声。まるで季節を重ねて、何度も風雪に削られた老木のようだ。

 

「招かれざる客である俺は、存在するだけでこの世の理を乱すだろう。為すべきことは、既に前世で終えているんだ。ならば後は自分の存在にケリをつけるだけ――最悪の修羅場で誰にも気がつかれずに朽ち果てることが望ましい。……そう考えていた。今もなお、それが正しい在り方だと思っている」

 

 小美人(コスモス)の姿を正面から見据えながらも、しかしハルオの眩しく細められた眼はどこか遠くを見つめていた。寄り添う妖精の姿に、ここではない何処か、とても懐かしい人を重ねている様だった。

 

「だが……まぁ、いいだろう話は分かった。なら最後にこの質問に答えてみろ」

 

 挑むような口調。しかし疲れたように肩を落とすその姿からは挑発や警戒の要素は感じ取れない。

 

 ……次の言葉までにしばしの逡巡があった。時間にすれば10秒に満たない程度。しかしハルオにとって、その単語は発するにはあまりにも重く、決心を要するものだったから。

 

 そして――

 

 

 

「――問うが、”■■■”についてお前達はどこまで理解している」

『それは』

 

 

 

 黒く塗り潰されたその単語は、この世界の人間には発音は疎か、聞き取ることもできない外世界の深淵に由来するものか。いやこれは――きっと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()認識することすらできない、真言。

 

 表情を堅くする小美人(コスモス)に、それを突き通す程に鋭く見つめるハルオ。

 ややあって、どちらともなく口を開こうとしたその次瞬だった。

 

 

「がぁ――」

『そんな――っ!?』

 

 

 椅子から転げ落ちるハルオに、糸が切れたかのように中空からテーブルに叩き落とされる小美人(コスモス)

 

 前触れのない、あまりにも唐突な衝撃。地響き。

 

 地震――などでは断じてない。

 

 揺れているのは確かだが、それは地面だけではなかった。大気が、空間が、いやこの星の内界そのものが――物理的に沸騰するように揺らいでいた。この地球という星自体が恐怖に慄いていた。つまりハルオ達自身もまた震えていた。その総身が、その精神が引き裂かれるような衝撃に襲われていた。何かが泣き叫んでいるのを感じた。

 

「何が起こっている……!?」

 

 衝撃の余波が覚めぬ中、()()()()()()()()()身を起こすハルオ。軋みを上げる会議室にあってすぐさま冷静を取り戻した彼は、その猛禽を思わせる鋭い双眸を小美人(コスモス)に向けた。

 しかし肝心の小美人(コスモス)はと言えば――

 

『そんな……早すぎる』

 

 似合わない冷や汗に、苦渋に歪んだ表情。慄きながら天井を見上げていて――いや、違う。見ているのはもっと上。雲の彼方、月よりも遠く、宇宙の向こう。

 

 

 

『スペースゴジラ……どうしてっ』

 

 

 

 なんの予兆も伏線も前触れもない。あまりにも唐突で、誰も望んでいない超展開。

 

 

 小美人(コスモス)は、地球に飛来した、そんな絶対的な危機の正体の名前を告げるのだった。

 

 

 




ちなみにアニゴジ本編だと栄養不足による成長不良でしたが、こちらのハルオは180越えのソフトマッチョという設定。
また食うに困った記憶の反動か、かなりの大食漢でもあります。

ナノメタルもゲマトリア演算もないのに素面で対怪獣兵器ボカスカ量産してるVS世界にはドン引き気味。
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