ロボ娘とヒーローアカデミア 作:ロボ娘
辺りはオールマイトが現れたことでざわついていた。
先ほどまであった強盗という悪意に対する恐怖は既になく、オールマイトが現れた事による希望と、喜びに満ちている。と、思う。
私には人の感情を正しく読み取る機能はない。顔センサーで表情を読み取ることはできるが、それでも十分とは言えない。
そのため、おそらく、希望に満ちているのだろう、程度しか読み取ることはできない。
塚内様はマスターのことを平和の象徴。そこにいるだけで皆に希望を与える。と、おっしゃってはいたが、私には正確にソレを認識することができない。
各種センサーにより、完全とは言えないまでも感情を数値として表すことは出来る。蓄積されたデータにより
しかし、ソレらを持ってしても、マスターが生み出す希望を正確に測ることは出来ないし、理解することなんてできっこないのだ。
———位置情報取得
マスターのスマホの現在地を追う。
———-自宅
どうやら、マスターはスマホを家に忘れてきたらしい。
私がいれば電話もメールも、その他ソシャゲですらプレイ可能だ。もはや、スマホなんて使う機会は基本ない。スマホの必要性が極端に下がってしまっている。そのため、忘れてしまっても仕方がない。
一重に(各種データに基づき)私が優秀すぎるからだ。しかし、今回ばかりはそれが裏目に出た。
各種SNSで検索をかけオールマイトの目撃情報を探す。
見つけた。しかし、結構な距離がある。
飛行ユニットを使えばすぐに着くが、ヒーローの許可が無いと私の殆どの機能は使用不可だ。
目撃情報は点々としている。きっと、"個性"で走り回っているのだろう。私では追いつける訳がない。
仮にもサポートアイテムなのだから、ヒーロー活動で役に立ちたいがこうなってしまっては諦めるしかない。
無駄に動いて充電が切れたらマスターに迷惑がかかるし大人しく待つことにする。
そのうち車のところまで戻ってくるだろう。
そう考えて、しばらく待っていると……。
———着信 公衆電話
今時、公衆電話から?
怪しいが、同期したマスターの番号ではなく、私の番号へとかけてきている。私の電話番号を知っている人は限られているため、かなり怪しい。
着信拒否しても良かったが念のため回線を繋げた。
『はい、マイツプロ 第二秘書室のアンです。』
私はマイツプロ(マスターが作ったヒーロー事務所)の第二秘書室に属している。第二秘書室とはオールマイトのプライベートを補佐する役割を担っており、室長は何を隠そう『八木俊典』、つまりはマスター本人である。
『アン! 私だ!』
音声データを受信した。
———声紋確認。マスターだ。
しかし、詐欺という可能性も捨てかねない。
私はマスターに置いてかれた。
置いてかれたのだ。
私が置いてかれたという、情報を何処からか入手した
奇しくも平和の象徴は多種多様な
警察によると、秘密の合言葉なるものを決めておくといいらしい。
ネットでは「息子ならばプリユラ全員言える」と、詐欺を看破した事例もあるため、お互いにしか知り得ない情報とは偽物を探すのに有用だ。
『私、とは誰のことでしょうか? 申し訳ありませんが……。』
『置いていったのは申し訳ない。だが、ふざけてる場合では無いんだ。今すぐ、私が言うところまで来てくれ、
『了解。』
目的地を聞いて回線を切る。
———飛行ユニット 起動。
服を破りながら背中で、観音開きであるハッチが開く。開いたハッチの裏側にはそれぞれジェットエンジンのようなものがついている。また、構造上仕方がないとはいえ、ミサイルやレイザー兵器の一部が丸見えとなる。
また、衣服は首の後ろや、腰より下の部分は破けていないのでずり落ちないで済んでいる。ただ、ブラジャーは外れてしまったのでポケットにしまっておく。
飛行ユニットに電力を送る。
残り充電は72%。十分に戦闘可能だ。
視界とは別に地図を開き、目的地を設定する。
———飛行開始
地面を蹴る。
空気を切り裂くように加速し、目的地まで一直線に向う。
目的地の方角からは煙りが出ている。ズームしてなにが起きているのか見てみると、ヘドロのような人に少年が捕まっていた。少年はヘドロから逃れようと必死にもがいていてる。そのタフネスは評価に値するが少年の"個性"が原因で当たりが燃えてしまっている。
この状況でもマスターが動いていない。おそらく、活動時間を完全に使い切ってしまったのだろう。
目的地まで、あと、約1キロ。
この距離なら数秒もしないうちに辿り着ける。だが、スピードを落とさずに攻撃も可能だ。
右腕を向ける。
——攻撃ユニット起動
——ビームライフル
——-チャージ開始
すると、肘が本来とは逆方向へと180度曲がり、元の前腕の半分ほどの長さの銃身現れる。
それと同時に視界に照準が表示された。
———相対速度計算
———推定被害領域計算
狙うのはヘドロ男だ。
見ためから、直接攻撃はあまり効かない可能性は高いと推察。
だが、多少は効果はあるはずだ。少しでも少年を捕まえている力が緩めば良い。
——-チャージ完了
———全計算終了
——-ターゲットロック
その時、別の少年が飛び出してきた。
このタイミングで飛び出した理由は不明だ。しかし、この超常社会、なにをしでかすか分からない。
———攻撃中止
右腕を戻し、遠距離攻撃から近距離へと切り替える。
攻撃撃対象は目と鼻の先。到着まで、およそ3秒。
少年を助けるシミュレーションをCPU内で繰り返す。
問題ない。
瞬間、マッスルフォームのマスターが現れた。
拳を握りしめている。
問題発生。
———緊急停止、シールド展開
ジェットエンジンを背中に収納しハッチを閉める。
左右の膝と肘を身体の前で揃え、ピタリとくっつける。そして、エネルギーシールドを展開する。
「
マスターが振るった拳とともに暴風が吹き荒れる。
私をそのまま、風に攫われ上空へと打ち上げられた。
高層ビルすら見下ろせる高さで、ようやく暴風から解放された。
周囲を見渡すと目の前には、さっきまで存在しなかった雨雲が存在していた。
マスターが拳で放つ一撃。
その威力は凄まじく天候すら変えてしまうのだ。
雨が降り始めた。
その雨脚はかなり強く、街並みを見下ろすと炎が弱くなり始めている。
たとえ、完全に鎮火出来なくともここまで弱くなれば、消防がどうにかするだろう。
自由落下に身を任せつつ、マスターを探す。
マスターは報道陣にかこまれている。捕まっていた少年はヒーローに手当てと称賛を、飛び出した少年は叱責を受けている。
ひとまず飛行ユニットを再び起動する。
高速で旋回して身体や衣服を乾かしてからマスターと合流することにした。
◆
「君はヒーローになれる!」
衣服を乾かし、マスターを探し出すと、例の飛び出してきた少年と会っていた。とりあえず、マスターの横に着地し、飛行ユニットを収納する。
「マスター、お話中、申し訳ありません。合流しました。」
マスターと話していた少年は地べたに座り込んでおり、私の方を見ている。
その少年はかなり小柄だ。
全体的に細くて小さい。また、癖っ毛とそばかすが特徴的だ。
涙を流していたのか、顔中がぐちゃぐちゃだ。
「アンか。申し訳ない。君が来るのを待っていたかったのだが……。」
「いえ、問題ありません。それより、こちらの少年は?」
「そうだった! アン! 後継者が見つかったんだ!」
後継者。
この場合はワン・フォー・オールの後継者を指しているのだろう。
この"個性"は"ストックした力を別の人間に継承させ、更にその人間が力をストックしてまた別の人間に譲渡する"というものだ。
これを繰り返すことで"個性"と継承した人間を強化していく。その性質上、"個性"は世代を重ねる毎に強力になっていくのだ。
しかし、後継者?
今このタイミングで、ということは、まさか。
「こちらの少年がそうなのですか?」
「その通りさ! HAHAHA! 彼になら渡しても良いと思ったのさ!」
私の預かり知らない所で会っていれば別だが、マスターとこの少年は初対面の筈だ。
しかし、
心というものを心理学や認知・行動学に基づいたデータでしか判断できない私では、理解できないことが多いのだろう。
「なるほど、おめでとうございます。しかし、その
「すまない、私とした……コフッ!」
吐血したマスターの血を拭き取ろうとしたが、手で止められた。
マスターは手で血を拭いながら"個性"や後継者を探していた事を説明した。
そして、それを聞いた上で少年、緑谷出久様は即答した。
「お願いします!」
◆
その日の夜、夕ご飯の支度をしているとスマホをいじっているマスターから話しかけられた。
「そうだ。君の雄英入学が正式に決まったよ。」
雄英高校。
ヒーロー科の最難関として知られている、超難関校だ。
高校に私が入学させようとオールマイトを筆頭に一部の公安職員が動いていた。マスターの元に来て2年。私の性能は勿論のこと安全性は十分に確認されている。ならば、次は協調性、対人におけるコミュニケーション能力だ。それを測るために、雄英高校に入学させられる。
いわば試験だ。落ちれば私は破棄されるか、データを一度消されてAIの、調整が行われる。
しかし、全て合格したらどうするのかは分からない。
量産体制に移るのだろうか?
「私としては通常の高校でも良かったのだが、君はサポートアイテムだということで、
「了解です。」
マスターの仕事を手助けするのが私の仕事だ。教鞭をとる彼の手伝いができるのならば、願ってもない。
そう言えば、今日出会った緑谷様も雄英志望らしい。もし受かれば同級生となる。後継者を育てるというマスターの責務も助けられる。
そんな話をしていると夕飯が完成した。
「どうぞ、マスター。今日の晩ご飯です。本日はご無理をされていたようなので消化に良いものにしました。」
「ありがとう。……………これは?」
「白粥です。減塩としてお水とお米だけで作りました。」
「…………本当に今日は申し訳なかった。」
サボって、置いてって、吹き飛ばして、と、マスターは頭を下げた。
「何を謝っているのですか? 私は怒ってなんて居ません。」
怒る機能なんてないもん。
主人公の武装
飛行ユニット
人間でいう肩甲骨の中央あたりから腰にかけてに存在するハッチを開くことで使用可能。
この性質上、使うたびに衣服が破けてしまうため、戦闘時は専用の服を着ている。また、内部が剥き出しになるため、防御力が落ちる。
ビームライフル
右腕に内蔵された銃。高威力のビームを出すことができる。
連写性能に難があるが、威力、射程、命中度はかなり高い。
また、チャージすることで威力を上げられる。ビーム以外にも実弾、ゴム弾、など、も射出可能。
使用時は右肘を逆向きに曲げることにより前腕を退けて取り出す。
エネルギーシールド
両腕と両足から生み出すことができる。
上記のビームライフルで発射するビームと同質のエネルギーで生み出すバリア。身を守る以外にも拳に纏わせてメリケンサックのように使用することもできる。