ロボ娘とヒーローアカデミア 作:ロボ娘
すいません
私の異能は(ラジコンなど操作可能なものに限り)機械を遠隔で操作することができた。また、カメラなどの各種センサーの情報を受信することも可能だった。
回線を繋げる為には一度、触れなくてはいけないが、一度回線が繋がれば距離など関係なく操作可能だ。
この異能を使いカメラを取り付けたドローンで様々な場所を回った。カメラだけでなく熱センサー、光センサーなど各種センサーを積めば、まるで、私自身がその場にいるかのように感じられた。
はじめて感じる外の世界は、とても、美しかった。
◆
———システムスキャン開始
———オールグリーン
———バッテリー残量 98%
———起動
午前4時30分。
充電カプセルの扉が開いた。
私には睡眠は必要は無い(そもそも、睡眠という機能はない)が、充電は必要だ。0%からだとフル充電までおよそ8時間かかってしまう。そのため、毎晩の充電が欠せない。
いつものように、メイド服を着て朝食を用意する。
本日はマスターの後継者である緑谷様の初の特訓だ。
マスターの"個性"、
例えば受け継いだとして、
そのため、受け継ぐ前の特訓は大切だという。
「おはようございます、マスター」
「おはよう」
マスターに挨拶をするが、いつもよりも少し元気がない。というよりも眠そうだ。
それもそうだ。いつもなら寝ている時間だ。例えNo. 1ヒーローでも体内時計には逆らえない。
「マスター。緑谷様のトレーニングメニューをまとめておきました。」
昨日、1日かけて制作した緑谷様のトレーニングメニューだ。彼の受験勉強の兼ね合いも含めてかなり精密に作った。
しかし、やはり手書きだと見づらいし、タイムスケジュールも曜日ごとに異なり、日のスケジュールの他に週・月毎での目標も定めてある。
そのため、少しでも見やすいようにまとめ直し、
「ありがとう。………なんだか、朝早いと食欲が湧かないよ。」
「しかし、食べないといざというとき力が出ませんよ?」
「それもそうだけど……。」
「それに、これから毎日この時間ですよ。慣れて貰わないと困ります。」
マスターは師匠となったのだ。
朝に弱いなんて弟子に顔向けが出来ない。
そして、午前6時 海浜公園。
緑谷様はゴミ掃除をしていた。
(先日連絡を取った業者によると、自分たちで会社まで持って行けば、いつでもゴミを引き取ってくれるとのことだ)
これは身体を作るためのもの、つまりは筋トレだ。
また、ただの筋トレではなくて手足に合計で重さ10キロの重りをつけている。これから、少しずつ重くしていく予定だ。
正直、雄英の入試までにヒーローとしての肉体を作るのはほぼ不可能である。そのため、それを可能とするための特訓メニューは、めちゃくちゃキツい。下手したら過労で身体を壊す。それを防ぐためには、寝る時間も食べるものも含めて生活全てを決めている。
正しく休まなくては本当に命に関わる、そのレベルでこの訓練はキツい。
「緑谷様。腰を入れてください。その押し方では腰に負担がかかります。」
「あ、はい。」
歯を食いしばり、必死に冷蔵庫を引っ張る緑谷様はもはや今にも死にそうだ。彼はおそらく平凡だ。筋トレもそんなにしたことがないだろう。そんな肉体にいきなりハードな事をさせたら、悲鳴を上げるに決まっている。
しかし、彼には少しずつ身体をハードな訓練に慣らしていく時間なんてない。無茶でもやり切って貰わないと困る。
いわば、このトレーニングこそが
「緑谷様、次はあのタイヤを運んでください。」
ここの公園に捨ててあるゴミは全て把握している。そこからどれを運べば効率的に鍛えられるかを計算する。
しかし、思った以上に緑谷様は動けている。肉体は平凡で、既に限界を超えているはずだ。おそらく、コレがマスターが彼に見出したものなのだろうか?
「遅い! もっと速く!」
「は、はい!」
緑谷様を後ろから追い、ゲキを飛ばす。よろよろな足は必死に前に進もうとしているが、それでも全然前に進めていない。
そして、ついに何も無いところで躓いて、タイヤに潰されるように倒れてしまった。
「緑谷少年!大丈夫か?!」
「お、オールマイト……。」
緑谷様は潰れたカエルような声でマスターを呼んだ。しかし、見たところ大丈夫そうだ。試しに腕や足、腰などを触診してみるが、問題は無い。いや、疲労が溜り、健康上問題大有りだが想定の範囲内だ。
「ちょ、アンさん?」
「敬称は不要です。脈拍は早いようですが、問題ありません。運べるはずです。では、立ち上がってください。これくらいの特訓を乗り越えられないようでしたらヒーローにはなれませんよ?」
「は、はい。」
緑谷様はゆっくりと立ち上がった。もうフラフラだが、タイヤを担ぎ上げる。その様子にマスターは心配そうに見ていた。
「本当に大丈夫なんだよね?」
「はい、命に別状はありません。」
「大丈夫なんだよね!?」
当初、マスターが考えたプランは身体づくりに重きを置いたものだった。けれど、"個性"の使い方や、身体の使い方の訓練ももっと必要だと判断し、手直しを加えた。
しかし、
当初のものよりも緑谷様は強くなるだろう。しかし、辛さはマスターの草案の比ではない。
「はい、残り10ヶ月で器をつくり、"個性"を最低限扱えるようにするには、ギリギリまで詰め込んでも時間が足りません。」
扱えるようになるまで、どれくらいかかるのか、また、扱えるようにするにはどうしたら良いのか、未知数な事ばかりだ。
今は出来るだけ"個性"訓練の時間を取れるようにするしかない。
「"個性"の扱いか……。私ははじめから何となくで使えたからなぁ。」
「そうですね……。マスターは天才タイプですから……。それに、私の推測ですが、
当然、マスターの代と緑谷様の代では制御は緑谷様の方が難しい。
「緑谷様! 駆け足です!もっと! 走って!」
「緑谷少年! 頑張れ!」
そして、
———時刻 7時30分
「時間です。本日とゴミ掃除は終了です。手を止めてください。」
そう言うと、バタリ、と、緑谷様は仰向けに倒れた。
ゼェゼェと音を立てて呼吸をし、全身から汗が吹き出している。無理もない。
10キロの重さを背負った上で常に駆け足で移動していたのだ。
「お疲れ様です。早朝のトレーニングは終了です。」
「緑谷少年。大丈夫かい?」
「は、はい。な、なんとか……。」
こうして、緑谷様のトレーニングは始まった。
主なトレーニングはゴミ掃除だ。運ぶもの、運び方もそれぞれ指定してより効率的に身体に負荷を与えた。
私たちのいないところでも鍛えるように、学校の休み時間や、家にいる間のトレーニングも決めた。緑谷様はそれらも真面目にこなしているようで、着実に肉体は仕上がっていった。
その甲斐もあり、手足につけた重りは日を追うごとに重くして、夏休みに入る頃には50キロを超えていた。
悲しい事に、身体を鍛える毎に重りは重くしているため、彼自身は身体が鍛えられているという実感は薄いようだが、それはそれ、仕方がない事だ。
マスターは緑谷様を次の象徴にしようとしている。象徴とは、最高のヒーロー、人々に絶対の安心を与える存在だ。人の心のことはよく分からない私だが、戦闘における強さだけで成り立つものではないことは知っている。
だが、それでも強さは必須だ。
マスターを補佐するのが私の務め。
彼が
それが、後継を育てたいと考えているマスターのために出来る唯一のことだ。
「緑谷様、まだパンチを意識しすぎです。攻撃は全身で行うのです。」
そして、8月某日、私と緑谷様は海浜公園で組み手をしていた。(マスターはテレビの仕事に行っている。)
お互いに武器を持たず素手での戦いだ。私の出せる力は平時の時のものだが、それても、まだ、負ける気はしない。
彼の戦いかたはマスターを彷彿させる。決めはパンチにしがちで、蹴りは殆どしてこない。
夏休みに入ってから、蹴りやパンチ、攻撃の避け方防ぎ方などを基礎から教えてきたが、それらをマスターへの憧れが強すぎる故に生かし切れていない。
「ハッ」
掛け声と共に、言ったそばからパンチを仕掛けてくる。それを寸前でかわして、出久の足に私の足を引っ掛けて転ばせる。
緑谷様は前に倒れ込んでしまったが両手をついて受け身をとった。
「夏休み中に、
憧れが足を引っ張る。
私には誰かに憧れる、という想いは分からない。
しかし、原動力にもなれば足枷にもなる。とても不思議だ。
「緑谷様、少し休憩にしましょう。」
「あ、はい。」
夏、ということもあり日差しが強いため、ゴミ掃除で開いたスペースにパラソルを建てている。
緑谷様は疲れた身体を引きずるようにパラソルの下まで移動し、折畳式の椅子に座った。そして、クーラーボックスからペットボトルを取り出して一気に飲んだ。
その後、息を整えてから口を開いた。
「アンさんはロボット、なんですよね?」
「……敬称・敬語は不要です。質問の答えですが、はい、私は人工知能搭載人形汎用サポートアイテム、つまるところ、ロボット、アンドロイド、もしくはヒューマノイドと呼ばれる存在です。それが、どうしたのですか?」
しかし、4ヶ月もの間毎日のように顔を合わせていたのだから、今更、そのようなことを確認する必要はないと思う。
「いえ、ロボットに見えない、と思いまして……。アンさ……。あ、アンは、人間にしか見えない、から。」
「確かに、そうですね。人型、しかも少女型にした理由は不明ですが、救助活動には有益ですよ。コテコテのロボットよりも人型の方が助けられる人は安心するらしいです。私としてはもっと戦闘に特化した形態の方が好ましいのですが……。」
私の設計者は誰だか分かっていない。
マスターによれば私はとある研究室に保管されていたらしい。私の記録は破損が多く、マスターが起動する以前のことはほとんど覚えていなかった。そのため、私の出自も含めて不明な箇所が多く、このデザインになったことも、作られた目的も分からない。
私がマスターのサポートアイテムとして試験されていた理由はここにあるのだろう。
「戦闘に特化?」
「はい、もっと大きくて強ければマスターにもお役に立てたと思うんです。そうですね、大きさはビルくらいが良いです。普段はマイトタワーの地下に格納されてて有事の際は、サイレンと共に道路が割れて出撃、とかが良いです。形は、4本脚の巨大な蜘蛛みたいなフォルムで、膨大な質量にモノを言わせた破壊力、全方位に対応可能な迎撃システムや、遠距離砲撃、さらに近づいてきた敵を薙ぎ払える広範囲の火炎放射器、各種毒ガス、雨のように周囲に降らす爆弾。広範囲殲滅機こそが、戦闘用ロボットの花形だと思うんです。移動する災害、そんな異名が欲しいです。」
「な、なるほど……?」
「よかった。マスターとは違い、緑谷様は理解してくれたようです。マスターに同じ話をして改良を打診した際、かなり強めに止められてしまいまして……。」
今度、緑谷様にマスターの説得をお願いしてみよう。もしかしたら許してもらえるかもしれない。
「はは、そ、それは、まあ……。そうだと思うよ。」
なんだろう。よく分からない反応だ。
言葉の裏はそれなりに読めるが、この反応はよく分からなかった。
それはともかくとして、そんな話をしていると設定した休憩の時間は終わった。
「では、組み手を再開させましょう。」
「はい。」
一定の距離を取る。
私の合図で緑谷様は、攻撃を仕掛けてくるだろう。だんだんと成長してきているため、直線的なものだけでなく、変則的な攻撃も含まれているはずだ。
「では、戦闘準備に入ります。」
姿勢を低くする。
日本の夏は暑いため、身体の中に熱が篭る。そのため、頸や、横腹についた排熱機から熱風を放出する。それに伴いメイド服(季節関係なく同じ服)のスカートが靡く。
「あ、あの。戦闘訓練って今は分かるんですが、その、オールマイトと同じ力が手に入るなら、力だけでどうにかなると思うんだ。いや、その、意味が無いとかじゃなくて、その、力を引き出すための、身体作りの方を重点にやった方が……。」
なるほど、その話には一理ある。
マスターも基本はともかくとして、格闘技術は無いに等しい。というか、使う場面が無いだろう。
しかし、それはマスターにとって一番な弱点である。
「確かに、そうですね。
私の質問に対して、緑谷様は一瞬驚きの表情を浮かべた。
それもそのはずだ、オールマイトは史上最強のヒーローだ。勝てるヒーローがいると言われてもピンとこないだろう。
しかし、緑谷様はぶつぶつと何かを呟いたあと、すぐに思い浮かんだようだ。
彼は頭が良いのだろう。
「そうか、抹消ヒーロー、イレイザーヘッド。
「はい、ただの筋肉です。
マスターの戦闘は"個性"だよりなところが大きい。お互いに肉体ひとつの戦闘となった場合、勝ち目は薄いでしょう。
また、
そこまで言うと、緑谷様も構えた。
「………分かりました。よろしくお願いします!」
こうして、緑谷様との特訓は続いた。
組み手、ゴミ掃除、走り込み。
途中、オーバーワークなど、事件は起きたが、着実に緑谷様は成長していった。
そして、海浜公園のゴミを半分ほど片付けた12月、ついに緑谷様へ"個性"が継承されることになった。
相澤先生の"個性"はある意味最強だと思います、
冷却用のファン
アンは身体の中に熱が篭る。そのため、頸や、横腹についた排熱機から熱風を放出する。それに伴いメイド服のスカートが靡く。
まるで、気的なものが出てる感じになる。
奇しくも