ダン狂~くるみ(偽)とリリのダンジョン探検~ 作:ヴィヴィオ
今回は視点がコロコロ移動しますが、流石に団長側とかもやらないといけないので勘弁してください。
ソーマ・ファミリアにある団長の部屋に入り、片目を押さえながら報告する。団長はソファーに座り、隣に女を侍らせている。
「すいません、失敗しやした……」
「どういう事だ? アイツの行動は完全に把握していたはずだ。まさか、武器もない状態で負けたのか?」
「そっちに行った奴等は誰一人として帰ってきてやせん。そもそもこちらの情報が漏れていたのか、あの野郎部屋に潜んでやがった!」
「何? 今回の事は子飼いの連中にしか話していないはずだぞ」
「そうとしか考えられやせん」
今思いだしただけでもムカつきやがる。こちらが荷物を漁っている最中に声をかけられ、振り向いた瞬間に光る何かが飛んできて激痛が走った。痛みの余り、しゃがみ込んで耐えている俺にアイツは近付いて嬉々として俺の瞳を針ごと抉り取りやがった! お蔭でエリクサーもききやしねえ!
「絶対にぶっ殺してやるっ!」
「殺すのは駄目だと言っているだろう。アイツの魔法は酒作りに使えるらしいからな」
「詳しいアイツのステイタスはわからないんですかい?」
「これだ。読めるか?」
「はい? なんですかい、これは……」
渡された紙には全く見た事もない分からない言語で書かれていた。これでは何が書かれているのかもわからない。
「やはり読めないか」
「ええ、まさかこれがそうなんですか?」
「ソーマ様が言う通りなら、そうだ。だが、実際に酒は熟成が増している。それに関するものだろう。まあいい。それよりもくるみはどうしている?」
「俺は知りませんぜ。傷の治療にかかりきりでしたからね」
「っ!? 今すぐ所在を確認しろっ! あの生意気で高飛車な小娘が泣き寝入りするはずがないっ!」
「了解しやした」
他の連中を呼んでファミリア内を探すが、クルミはもちろん、アーデも、ソーマ様も居なくなっていた。酒蔵も酒を造る道具も全て空になっていた。
「あ、ありえない……なんだそれは……いったいどうやって運び出したんだ! 誰か見ていないのか!」
団長が酒場にたむろしていた奴に怒鳴りつけるが、ほとんどの奴は知らないようだ。
「チャンドラ! お前はどうだ! アイツ等と仲が良かっただろ!」
「あ? ああ、クルミならアーデとソーマ様を連れて出て行ったぞ」
「なんで止めなかった!」
「止めるなって言われたからな。それにどうせソーマ様が一緒なら酒に関する事だろう」
そう言ってチャンドラは高そうな酒瓶から芳醇な香りを漂わせる酒を味わって飲んでいく。
「チャンドラ、その酒はどうした?」
「コイツは試供品って貰った奴だな。やらんぞ」
「賄賂かよ!」
良く見たら、チャンドラ以外にも何人か酒を貰っているようだ。
「待て。その酒は酒蔵に在った物だ。勝手に持ち出された物だから回収する」
「ふざけんな!」
「そうだそうだ!」
「はっ、それは無理だぜ団長。コイツはソーマ様がくれたもんだからな。もう俺達のもんだ。コイツを取ろうってんなら……覚悟できてんだろうな、あぁ?」
「くっ……貴様等! それ相応の覚悟はできているんだろうな!」
「あ? 何言ってやがんだ?」
「出て行け! 俺に従わないのであれば即刻荷物を纏めて出ていくんだな!」
「いいだろう。おい、聞いたか? 酒がねえ上に出て行けだってよ! 酒が飲めねえならこんなところに用はねぇ。俺は行くが、お前等はどうする?」
「チャンドラっ!」
「あてはあるのかよ?」
「ああ、あるぜ。来るんなら口きいてやるよ」
「何処に行くというんだ?」
「ロキ・ファミリアだ。ガレスに誘われてんだ。俺と来る奴は今ならロキの所に世話になれるぞ」
「俺は行くぜ!」
「俺もだ! 酒が飲めんのなら用はねえ!」
「待て!」
「団長さんよ。俺達を止めたければ酒を用意してくるんだな」
「くそがっ!」
チャンドラ達は本当に荷物を纏めて出ていきやがった。何人かをつけさせたが、確かにロキ・ファミリアの所に入っていったようだ。
「探せ! なんとしてもあのくそ餓鬼を見つけてソーマ様を奪還しろ! 俺は俺で手を打ってくる! 任せたぞ」
「へい」
あの餓鬼は俺が殺す。なんとしてもだ。覚悟しておけよ……
◇◇◇ チャンドラ
「ガレス、悪いが世話になる」
「構わんぞ。一時だけだろう」
「ああ、一時だけだ」
「うむ。うちの若いのと競わせておけばよい。何時もと違う相手との戦いも経験になるしの。それにかかった費用はそっち持ちでいいんじゃな?」
「ああ、嬢ちゃんが全て出すそうだ。俺達はここで訓練して酒を飲んでたらいいってよ」
「良い身分だな、おい。わしもあやかりたいぞ」
「なら移るか?」
「それは御免じゃ。ここがわしの居場所よ」
「残念だ。っと、そろそろ時間だ。俺は先に行って準備しないとな」
「ああ、今日じゃったな。わしも行くぞ」
「好きにしろ」
ガレスと別れ、装備をしっかりと整えてギルドへと向かう。その途中で幼い黒髪の童がこちらにやってくる。髪の毛はストレートで腰辺りまである。瞳は怪我をしたのか布で覆われており、杖を持っている。服装は白いワンピースだ。近くに母親であろう女性と一緒だ。
「おじさん、肩車して~」
「すいません! この子ったら……」
「いいぞ。今は気分がいいからな!」
望み通り、彼女を肩車してやる。すると彼女は俺の頭に手を置いて声をかけてくる。母親の方は杖を持ってついてくるだけだ。
「首尾はどうですか?」
「上々だ」「では、もう少し泳がせましょうか」
「そっちは大丈夫なのか?」
「はい、問題ありません。ちゃんと盾は手に入れました。それにソーマ様がこちらの手にある以上、正式な手続きをしてしまえばどう言いつくろっても無駄ですもの」
「怖い嬢ちゃんだな」
嬢ちゃんが出ていってから少ししてあちらから接触してきた。大量の酒と金を置いて団長からまともな団員を集めて離反させろと言ってきた。俺達としても沈む船には乗りたくねえ。それに酒がないなら団長につく意味なんてねえんだ。だから、俺達はクルミについた。ただ、それだけだ。
「ギルドに着いたな」
「では、
「おう」
予約しておいた会場に到着すると、既に多数のドワーフたちが集まっている。中には神々すら居る。嬢ちゃんは俺から降りると、壇上にある司会席に移動し、何処からか木箱を取り出してその上に乗って高さを調整する。そして、拡声器の魔道具へと触れた。
「さて、本日はわたくし達が開催するオークションにお越しいただきありがとうございます。知っての通り、出品するのは市場に出回らない本物のソーマ。その限りなく完成品に近い品物ですわ。ですが、買うのも飲むのも自己責任。当方は一切関与しません。もちろん、毒ではありません。ただ、美味しすぎる。それだけです。それでも良いという方のみ、入札にご参加くださいまし」
そう、今日は前々から予定していたオークションだ。本来はドワーフだけだったのだが、何時の間にか神々にまで情報がバレていた。
「さてさて、神々まで来られる事は予想外でしたが、問題はありません。品物は二つございます。故にドワーフ限定オークションとフリーの誰でも入札できるオークションの二つを開催いたします。奮ってご参加くださいまし」
一つ目の酒が取り出され、それが本物である事を証明するために栓が取られ、一杯分だけ注がれる。それだけで酒の香りがオークション会場を包み込んだ。
「本物かわからないと思いますので、この一杯だけは試飲として値段に含みません。そして、その試飲に選ばれるのはこの箱からランダムに引いた数字の方。数字はそれぞれの席に書いてある物を使いますので、運が良ければ飲めます。では……」
試飲したのはドワーフだったが、ソイツはあまりの美味さで幸せそうに倒れた。ドワーフがだ。それを見て会場は大盛り上がりだ。
「では、ドワーフ限定を一〇〇万ヴァリスよりスタートですわ!」
値段がどんどん跳ね上がっていく。馬鹿みたいな金額だが、四九〇〇万ヴァリスで落札された。落としたのはロキ・ファミリアのガレスだ。
続いて神様も入るソレは値段が跳ね上がっていく。最終的に落札したのはフレイヤ・ファミリアで落札額は一億四千万ヴァリス。神フレイヤが落札されたようだ。神ロキはかなり悔しがっておられる。
この代金から俺達がロキ・ファミリアで滞在する代金も渡されるし、新しい酒を造る資金へと回される。団長のザニスは自らが私腹を肥やすばかりで、このような事はしていなかった。それに対してクルミのこれなら、俺達としても納得できる金の使い道だろう。
◇◇◇
カンカンと槌を振るう音がします。わたくしの目の前で
他の場所でも同じ事をしているのですが、意外に人気で皆さん、喜んでくださいます。可愛い女の子にお世話されるのは嬉しいのでしょう。
2月25日。ヘファイストス様の作業を分身が見ている間に、数日で暇になったので本体のわたくしは別の実験を行いますの。セイバー達がどれだけ頑張ろうと、一年で剣術などを極めることなど不可能です。いくら大量のマンパワーを投入し、それぞれがリンクして最適化をしていったとしてもたったの一年では達人には追いつけません。
では、どうするか。諦めるなんて選択はできません。故にわたくしらしい裏技を使います。今回、用意したのは一八階層で見つけてきた朽ちかけたボロボロの武器ですの。きっと良い記憶が手に入るでしょう。
「では、やりましょうか。
どうやら、この剣達は壊滅したアストレア・ファミリアでの生き残りが墓標として置いていったみたいです。その方は毎年、ちゃんとお参りにきています。
その事を知ってダラダラと嫌な汗が流れてきますの。四月までに戻しておかないと、命を狙われるでしょう。でも、やっぱりちょっと試したい事ができました。
「ヘファイストス様、炎を纏った剣を素材にしたらどうなりますか?」
「は? それはその効果を移したりできるわよ。もちろん、依代とか魔石はいるけれど……」
「そうです、か……あ、剣が纏った炎を別の物に移したりはできますか?」
「まあ、難しいわね。出来るとしたらヘルメスの所に居る万能者でもないと無理でしょうね」
「ありがとうございます。そちらにも声をかけてきますわ」
「待った。でも、使うとしても使い捨ての魔石を使用することになるはずよ。武器と組み込むことは大変よ」
「あの、それならこういうのはどうですの?」
わたくしはヘファイストス様にあるシステムについて教えると、楽しそうに笑って嬉々としてやってくださいました。ただし、わたくしの作業量がヤバい事になりましたが、交代してやればいいとの事で、お付き合いさせていただきました。
ヘルメス・ファミリアの本拠地である旅人の宿へとやってきました。
「万能者に依頼したいのですが……」
「お急ぎですか?」
「急ぎでお願いします」
「では、特急料金はこちらになります」
「構いません」
欲しい魔道具の仕様書と耐久性なども書いてしっかりと渡しておきました。可能かどうか聞いてくる間、待っているようにと言われたので、他の団員さんに暇つぶしがてらに話を聞いていると……わたくしはなんて視野が狭かったのか思い知らされました。ええ、そうですの。何もオラリオに拘る必要はありません。分身を外へと放って勢力拡大に努めればいいのです。数が多くてバレるかもしれない? 村に一人なら問題ありません。それに村はともかく、大きな町になれば犯罪者は居るはずです。その人達を懲らしめて人助けをしながら時間を頂く。ええ、これなら問題ありませんわね。
「お待たせしました。私がアスフィ・アル・アンドロメダです」
「くるみ・ときさきです。よろしくお願いいたします」
「それでこの魔導具はどのような事に使うのですか?」
「ヘファイストス様に作って頂いている武器に組み込みたいのです。とある魔法を魔石を使う事で使用できるようにして……」
「面白い試みですね。使い捨てではない近距離用の魔剣といったところですか」
「お願いできませんか?」
「代金と素材さえ頂ければ構いません」
「では、お願いいたします。成功したら数を発注するかもしれません。それと使う物の大きさと形はこちらを」
「承りました」
さて、どうなるかわかりませんが、完成したら面白い事になる事は確実ですわね。劣化カマエルにすらならないでしょうが、そこはそれ、これから改造していけばいいのですから。手に入れた精霊の欠片、アレも取り出して武器の方に植え付けて成長を狙うのもいいかもしれません。アヴェンジャーの方で作られているらしいので、何体か頂いておきましょう。
さて、本日の残りは得られた技術をこの身体に染み込ませるとしましょう。
何を想い、散っていったのかも知れるのでリューさんの秘密も筒抜けに。本当にやばい力です。
ちなみに精霊と精霊は食べられる関係だそうな。つまり、相手にとってくるみちゃんは勝手に増える格好の餌であり、くるみちゃんにとっても精霊はセフィラの欠片を手に入れる格好の餌であります。尾を飲み込む蛇のような、不倶戴天の仇敵のような関係ですね。その心はどちらも
「「食べたい」」
ロキによる発現する天使
-
レーヴァテインから灼爛殲鬼(カマエル)
-
変身術の逸話から贋造魔女(ハニエル)
-
空飛ぶ靴から颶風騎士(ラファエル)
-
このまま|刻々帝《ザフキエル》のみ