ダン狂~くるみ(偽)とリリのダンジョン探検~ 作:ヴィヴィオ
さて、分身体のオペレーターがオークションをやっている間に、分身体であるわたくしもわたくしで行動しますわ。同時進行という奴ですわね。
「それにしても……これはなんというか、入りたくないものですわね……」
まあ、それでも入るしかないので、入りますけれどね。そんな訳で、適当に買った棺と滑車を引いてあぐらをかいた巨大な像の股間を通っていきます。
中に入るとすぐに広いロビーになり、色々な人が働いています。まるで警察所みたいなところですわね。案内カウンターは流石にないですが、複数ある受付に色んな人が並んでいます。
オラリオの治安維持をしている関係で事件の報告やギルドを通さない直接依頼などがあるのかもしれません。どちらにしろ、ソーマ・ファミリアと比べ物にならないくらい大きなファミリアです。オラリオで一番多くの第一級冒険者を確保しているらしいだけはあります。
そんな場所で幼い女の子がキョロキョロしていますと、普通は迷子と思われるかもしれませんが……持っているのは棺なんですよね。そんな異質な存在が入ってきたら注目を集めて警戒されるのは当然ですの。まあ、わたくしは良い子なので、ちゃんと受付に並びますわ。
「ようこそおいでくださいました。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「ソーマ・ファミリアのくるみ・ときさきと申します。ガネーシャ・ファミリア所属、ハシャーナ・ドルリア氏の死体をお持ちしました。つきましては神ガネーシャか団長もしくは幹部の方に取り次ぎをお願いいたしますわ」
「は? し、死体ですか?」
「ええ、死体ですわ。リヴィラの件はこちらへ届いてませんの? どちらにせよ、受付で話す事でも確認する事でもありませんので、奥へ通していただけますか?」
「じょ、冗談は……」
「なんなら、ここで開けて確認なさってくださいまし。こちらは別にどちらでも構いません。死者の眠りを妨げるつもりがあれば、ですが……」
わたくしは妨げるというより、失われる技術などを継承する感じですので、冒涜するつもりはありませんわ。用件が終わったらちゃんと供養いたしましょう。まあ、ハシャーナさんより、リューさんとお話する方が先でしょう。そのための準備もしないといけません。専属のわたくしを用意して、例の武器ができたらカチコミしに行きましょう。
「え、えっと……」
「少しこちらで話を聞こ……っ!?」
肩を掴まれそうになったので、手を掴んで背負い投げで相手を飛ばします。相手は空中で体勢を整えてカウンターを蹴ってこちらに向かってきます。相手の飛び蹴りをしゃがんで回避しながらアームカバーに隠してある針を取り出して投擲します。狙いは男女共に弱点である股間ですが、相手はその場で身体を回転させて針を飛ばし、そのままかかと落としをしてきました。こちらも拳を足の横から叩き込んで体勢を崩させます。
地面に相手が着地すると同時に蹴りが放たれてくるので、こちらも震脚を使って生み出す力を全て
空中で自ら後ろに力を加える事で後転し、足から地面につき構えを取ります。相手の褐色肌の女性はニヤリと笑いながらあちらも構えを取りました。
「きひっ!」
「あはっ!」
明らかに手加減されているのはわかりますが、それでも持てる技術で挑みます。だって、楽しいんですもの。相手の方もきっと同じですわね。
互いに接近して拳を交えますが、わかるのは相手の身体能力が圧倒的である事。また、リーチの差が凄まじいので防戦一方になりますの。
「何をやっている!」
「あ、団長」
「貴女がガネーシャ・ファミリアの団長さんですの?」
「ああ、そうだ」
「先程、こちらの方に少し稽古をつけていただきました。ありがとうございます」
「稽古?」
「まあ、始まったのは突然肩を掴まれそうになったからです。少し前に襲われたばかりでしたので、過剰反応をしてしまいましたわ。申し訳ございません」
「そうか。確かにいきなり女性の肩を掴むのはどうかと思うぞ。エルフのように肌に触れられるのを極端に嫌がる者も居るのだからな」
「申し訳ない」
「いえ、こちらこそ申し訳ございません。改めましてわたくしはソーマ・ファミリアのくるみ・ときさきと申します。今回、こちらの棺の中身をガネーシャ・ファミリアの主神様と眷属の方々にお届けにまいりました。引き取られないと言われるのでしたら、こちらで勝手ながら埋葬などをさせていただきますわ」
「……棺か。わかった。こちらで話を聞く。ついて来てくれ」
「かしこまりました」
連れていかれた部屋で複数の高レベルであろう完全武装のガネーシャ・ファミリアに囲まれました。一応、用意された席に座って棺が開けられるのを横で見ております。
「間違いない。ハシャーナだ」
「なんで死んじまったんだ……」
「身体は綺麗なのに……」
「確認した。すぐにガネーシャ様を呼んで来てくれ」
「はっ!」
あちらが指示をしている間、ハシャーナさんの記憶からガネーシャ・ファミリアの団員の名前と顔を一致させていきます。
「待たせた。それでは話を聞こう」
「俺がガネーシャだ! ハシャーナが死体になって戻ったと聞いたぞ! うぉぉぉぉぉぉぉっ!」
神ガネーシャが入ってきて、ハシャーナさんを見るなり泣き出しました。団長の方を見ると、コホンと咳払いをしてから改めて話を求めてきたので、リヴィラであった殺人事件の事を詳しく話していきます。
「……ガネーシャ様、嘘は……」
「ない。全て事実だ」
「すぐにリヴィラに団員を派遣しろ。それとロキ・ファミリアにも事情を聴きにいけ!」
「「はっ!」」
団長さんが指示を出しているので、わたくしはガネーシャ様を見て……少し落胆しました。いえ、像の時点でわかっていたのですが、やっぱりFGOの
「さて、名を聞こうか、小さき少女よ」
「くるみ・ときさきですわ」
「くるみ・ときさきか。ガネーシャ覚えたぞ!」
「ありがとうございます。光栄でございます」
「うむ。礼をしたい。何か望む事があるか?」
「二点ほどございます」
「聞こう」
「あくまでもまずは聞くだけだ。それを叶えるかはこちらで判断させてもらう」
「もちろんですわ。まず一点目。神会が開かれて行われる二つ名決定の儀式があるとか……」
「あるな」
「そこでわたくしの二つ名をこちらが指定する物にしていただきたいのです」
「そう来たか! ガネーシャ驚きである!」
「それと神会で飲み物を提供したいと思っております。給仕として参加させていただけませんか?」
「ふむ。それぐらいならば良かろう。二つ名に関しては努力するが、確実とはいえん。故に二つ目の願いを一つ目としよう」
「ありがとうございます。では、ガネーシャ様に時が来ればわたくしにお力添えをお願いいたします。もちろん、犯罪ではありません。実は所属するソーマ・ファミリアの団長に襲われまして……」
シャワールームでの事を事細かに教えます。もちろん、わたくしにとって不利な事は言いません。
「ガネーシャ様?」
「嘘ではない。実際に襲われ、その裏に居たのがソーマ・ファミリアの団長である事は間違いないだろう」
「では、即刻捕らえましょう」
「いえ、それには及びませんの」
「どういう事だ?」
「これはソーマ・ファミリアでの揉め事です。いくらオラリオの治安維持を務めるガネーシャ・ファミリアの皆様であろうと、他のファミリアから干渉を受けるのは後々、わたくし達ソーマ・ファミリアにとってマイナスとなります。ですので、住民に被害が出るまでは手出し無用にお願いしたいのです」
もうソーマ・ファミリアを乗っ取る事は決めました。つまり、私かリリさん、チャンドラさんが団長になるでしょう。他の人はまともな人が居ませんしね。さて、この中でまともに団長になれるのはわたくししか居ません。何故ならわたくしは分身を業務にあてれば基本的には自由だからです。つまり、他の皆さんも団長という面倒な業務をしなくてよいのです。フィンさんがとても大変そうだというのはロキ・ファミリアに居るわたくし、セイバーさんが報告してくださっていますので、人海戦術が取れるわたくし達が対応するのがベストでしょう。
つまり、ソーマ・ファミリアを運営する事になるので、他のファミリアに干渉されておんぶに抱っこ状態だと見られ、舐められると非常に困るのです。値段交渉や売り上げ、他のファミリアの態度など様々な要因にかかわってくるのは確実。そもそも不名誉ですし、自分達で解決できるのですから自分達でやるのが筋ですわ。
「だが、それではどうするつもりだ?」
「わたくしが力をつけて自力で団長の座を簒奪いたします。その時に起こる様々な処理にご協力願いたいのです。もちろん、費用はお支払いいたします」
「しかし、それは……」
「良かろう」
「ガネーシャ様?」
「構わん。民に被害が出ればその限りではないが、自ら勝利を掴み取ろうという姿勢はガネーシャ気に入ったから待つとしよう! 本来は帰る事がなかった我が子を連れて戻って来てくれたのだ。この程度は容易い。しかし、犯罪行為には手を貸さんし、取り締まる。また監視もつける。それは心得ておけ」
「はい。肝に銘じておきます。私は犯罪者達に目にモノを見せるだけです」
「うむ。他に何かあるか? 簡単な願いであれば聞いてやってもよいぞ」
「ガネーシャ様は……」
「でしたら、お金を支払うので教導をお願いいたします。わたくしを鍛えてくださいまし。ガネーシャ・ファミリアのお仕事も協力させていただきます。こちらの方が身を隠すためにもいいですから」
「嘘はない。どうだシャクティ」
「……先程の戦いを見る限り、鍛錬はしっかりとしているようですが、まだまだ拙いのは事実……新人達と共に訓練を施すのであれば問題ないかと」
「うむ。ではそれでいこう」
これでガネーシャ・ファミリアにわたくしを送り込む事が出来ました。彼等の行動パターンなどを調べておけば色々と便利です。助けを呼ぶ時もその逆もです。それにコッソリとわたくし達を影に潜ませておけば情報収集がはかどります。また、こちらが手に入れた情報を差し上げ、代わりに襲撃と救出をしてもらう事だってできますもの。ガネーシャ・ファミリアとのコネクションは値千金ですわ。たった数十日の時間でこのリターンなのですから最高ですわ! それにハシャーナさんの技術も手に入れたので充分に儲けは出ました。後はわたくし用に最適化するだけですわ。目標は最短で最速にわたくしの理想である時崎狂三に到達する事ですわ!
◇◇◇ ダンジョン一二階層
「くそっ! 運がねぇっ!」
「良いから走れ! 死ぬぞ!」
「くそぉぉぉっ!」
「もう、駄目……」
後ろから走ってくる四メートルはあろう巨大な竜。小竜と言われているが、俺達からしたら暴虐の化身だ。レベルアップしていない俺達ではどう足掻いても追ってきているインファントドラゴンには勝てない。希少種であるインファントドラゴンと出会うとは本当に運がない。
「いいから走れ!」
「もうどっちに行っていいのかもわからないんだぞ!」
「くそっ! この霧めっ!」
「ああ、どうしたら……」
倒れかけている女達を男達で抱えて必死に逃げる。女は魔法を使ってインファントドラゴンの足止めをしてくれるが、意味はあまりない。もう、俺達に助かる道はない。インファントドラゴン以外にも出てくる
「あの、すみません。つかぬ事をお聞きしますが……」
「あ?」
声に隣を向くと何時の間にか、場違いのような赤色のドレスを身に纏った八歳ぐらいの幼い女の子が俺達と並走していた。
「あのインファントドラゴンから逃げているとお見受けいたしました。倒さないのでしたら頂いてもかまいませんか? 一応、タゲ取りはそちらですので、お聞きします」
「倒せるなら倒して!」
「おい!」
「このまま死ぬのは嫌なの!」
この子が戦っている間に逃げれば確かに俺達が助かる可能性はある。彼女が勝とうが負けようが俺達には関係ない。だが男として幼い女の子を残して逃げるのか?
「じゃあ、もらいますわね」
「まっ」
声をかけようとした瞬間、彼女は振り向きざまにインファントドラゴンへと何かを投擲するが、それはすぐに弾かれた。高レベルでもなさそうだし、やはり勝ち目はないだろう。
「今のうちに逃げましょう!」
「あ、あぁ……」
「だが……」
インファントドラゴンは長い首を彼女に向けて振るってくるが、走って避けてはいる。彼女は逃げながら何度も攻撃を放ってこちらからターゲットを切り替えさせていく。その間に霧がだんだんと深くなって周りがろくに見えなくなってくる。
「霧に紛れて逃げるぞ」
「あ、ああ」
「早く!」
きっと無事だろうと思う事にして、必死に逃げていく。すると何かの悲鳴のような物が後ろから聞こえてきた。それを聞こえないふりをして走る。
「嘘、でしょ……」
「なんでだよ! なんでここにも居るんだ!」
逃げた先には絶望が居た。そう、インファントドラゴンが俺達の目の前に居たのだ。絶望に力が入らなくなり、地面に足をつくと他の二人が弾き飛ばされる。俺はそれをゆっくりと眺め、次は俺の番かと思った。
「二匹目ですわ、わたくし!」
「これは運がいいですわよ、わたくし!」
幼い声が聞こえ、すぐに俺の横を赤い何かが通りすぎた。それは先程見た幼い女の子だった。彼女はインファントドラゴンの前に出てこちらに振り向いて両手を組んで腰を落とした。
「行きますわよ!」
「来てくださいまし!」
もう一人の同じ姿をした幼い女の子が走り、彼女が組んだ両手に飛び乗る。すると飛び乗られた方は思いっきり上に飛ばす。飛ばされた彼女もタイミングを見計らって跳んだりのか、一〇メートルくらいは跳んでいる。たが、空中ではどうしようもない。インファントドラゴンは口を大きくあけて幼い女の子が落ちてくるのを待つ構えだ。
「きひっ!」
そんな状況だというのに地上にいる幼い女の子は笑いながら上に何かを投擲した。それが爆発して光を発すると、空を飛んでいた幼い女の子の手に二メートルから三メートルであろう巨大な武器を何時の間にか持っていた。幼い女の子は空中で体勢を変えて振り下ろしてくる。インファントドラゴンは咄嗟に避けようとし、首をずらす。それに対して彼女は身体を器用に回転させて巨大な武器を命中させ、インファントドラゴンの首を両断して地面に激突する。爆発のような音が響き、すぐ後には地面が抉られた跡と巨大な武器が突き刺さる地面があった。
「捕らえてじっくり残さず頂くのではありませんでしたの? 殺してしまっては魔石からしか搾り取れませんわよ?」
「人命優先でしてよ、わたくし」
幼い双子であろうそっくりな幼い女の子は巨大な武器を地面へと沈めていくと、魔石も同じように地面に沈めてしまった。
「あっ、魔石をそのまま入れたらまずいですわよ!」
「対処してきますわ!」
一人が霧の中へと消えて残った一人がこっちにやってきた。
「おにいさん! おにいさん! お仲間さんが死にそうですが、辻ヒールならぬポーションなどは要りませんか?」
「あっ、ああ……」
慌てて仲間を確認するとかなりやばい状況だった。だが、ポーションは全部使いきった。
「すまない。ポーションを分けてくれるか? その辻ヒールというのがわからないが、ポーションをくれるのだろう?」
「お金はもらいますわ」
「もちろんだ。ドロップ品から持っていってくれ」
「冗談ですわ。おにいさん達のお陰でインファントドラゴンを二匹も狩れましたもの。ですから、無料で治療して差し上げますわ」
「ありがとう……」
ポーションを貰って治療を開始していく。その後、傷が治った俺達は彼女に案内してもらってこの階層を無事に脱出する事ができた。彼女はまたインファントドラゴンを探しに行くとの事で、別れた。
俺達はダンジョンから出てドロップアイテムを換金し、酒場で彼女について話しながら生き残った事を感謝し、乾杯をした。
「旦那。その赤いドレスの子供について教えてくれやせんか?」
「ん?」
「彼女には世話になったんで、お礼がしたいんです。ここは奢らせてもらうんで、お願いしますよ」
「ああ、そういう事なら……」
俺は眼に包帯をつけている男の言葉を信じて、彼女に助けられた事を教えていった。
くるみロケットを打ち上げてから、光を発する魔導具を上に投げて影を発生させ、そこから時喰みの城経由で剣斧を出してインファントドラゴンを切断するという簡単なお仕事です。探す方が大変だったりします。
なお、一匹目は時喰みの城に閉じ込めたもよう。強化種になる前にしっかりと沢山のくるみに食べられました。
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