ダン狂~くるみ(偽)とリリのダンジョン探検~ 作:ヴィヴィオ
誤字脱字報告ありがとうございます。大変助かっております。
ヘスティア・ファミリアについて追加しました。最後の方です。
リリはベル様と一緒にダンジョン探索を終えてギルドに戻ってきました。今日も無事に帰還です。ええ、残念ながら襲撃される事はありませんでした。
「ベル君、ベル君。ちょっといいかな?」
「エイナさん。はい、僕は大丈夫ですけど……」
綺麗なハーフエルフの人が声をかけてきて、ベル様はこちらの顔を見てきたのでリリは溜息を吐いてから二人の顔を見上げます。
「リリは換金してくるのでお二人でどうぞお話をしておいてください」
「ごめんね」
「いえ、別に構いませんよ。それでは失礼いたします」
換金所に走り、ドロップアイテムを支払っていきます。手に入れたお金は少しピンハネしてベル様に渡しましょうか?
「ひっ!?」
「盗むのは駄目ですわよ」
いきなり足を掴まれて悲鳴を上げかけましたが、なんとか飲み込みます。視線を足元にやればクルミ様の手がリリの足を掴んでいて、頭がありました。それ以外は全て影の中です。
「怖いですって、クルミ様……」
「そうですか、ではこうしますね」
「ちょっ!?」
足を掴まれたまま影の中に引き込まれます。無茶苦茶怖くて悲鳴を上げそうになりましたが、何時の間にか後ろに移動してリリの口を手で塞いできたので叫び声もあげられませんでした。
真っ暗闇な世界でどこまでも沈んでいく恐怖に暴れるのですが、無数の手に掴まれてそれもできません。そのまま沈んでいくと、近くからインファントドラゴンの叫び声まで聞こえてきました。
恐怖に震えていると何時の間にか椅子に座っていました。リリは何を言っているのかわかりませんが、事実なのです。しかも隣にはスタンドが置かれていて、灯りも確保されています。テーブルもあり、そこには紅茶も用意されていました。もちろん、ソーマもあります。目の前にはクルミ様が優雅にお茶を飲んでいます。
「えっと、クルミ様?」
そこには沢山の、はい、とても沢山のくるみ様が居ました。彼女達は忙しそうに動き回っております。というか、結構な頻度で
「リリさん、飲まないのですか?」
「この状況で飲まないですよ。むしろ、クルミ様はなんで飲めるんですか?」
「もう日常ですし」
「そうですか。それでこの大量のクルミ様はなんですか?」
「ああ、彼女達は分身ですわ。わたくしの魔法は分身を作り出せますからね。ですから、わたくし達はたくさんいますよ。常にリリさんの影にも三人待機させておりますわ。ですから、リリさんの身は安全です」
「ちょっ!? 待ってください! それってリリは常に監視されているって事じゃないですかッ!?」
「ナンノコトカワカリマセンノ」
「……」
ジト目で見ますと、クルミ様は視線をリリに合わせませんでした。つまり、リリは絶対にクルミ様から逃げられないって事ですね。
「今はいいですけれど、普段は止めてくださいね」
「わかりました。流石にプライバシーの侵害ですしね。でも、わたくし達の一人でも仕込んでおけば便利ですわよ。何時でも連絡ができますし」
「いえ、それでも嫌です」
「まあ、普通はそうですわね。わたくしだって嫌ですもの」
「でしょうね」
まあ、基本的にリリはクルミ様と一緒に寝たりもしていたので普段から一緒にいるわけで、意味はないんですけどね。アレ、そう考えるとあまり問題はないのかもしれません。
「それでわざわざこんな所に連れ込んだんですから、何か用件があるんですよね?」
「ええ、ございますわ。貴女と組んでいるベルさんでしたか……」
「はい、ベル様であってます」
「その彼が持つヘファイストス製のナイフ、アレを盗んできてくださいませんか?」
「いや、さっきリリに盗みは駄目だって言いましたよね?」
「ええ、駄目ですわよ。ですから、ちゃんと返すんです。売ったり、無くしたりしないようにです」
「は?」
クルミ様が両手を組んでこちらを見詰めてきます。ちょっと威圧感がありますね。いえ、やっぱりツインテールがピコピコ動いて可愛らしいだけです。
「ですから、盗んで一人でダンジョン内を逃げてください。そこをカヌゥさん達が襲ってきます。わたくしと出会う前のリリさんの行動から彼等はそう読んで待ち構えております」
「ああ、なるほど……彼等の影にもクルミ様がいらっしゃるのですね」
「そういう事ですわ」
「悪夢じゃないですか! 気づかない間に監視されて全部情報を引っこ抜かれ、更には暗殺だって可能ですよね!」
「ちなみに言うと数十人で襲い掛かれますわね」
「リリ、クルミ様の敵には絶対になりません」
「ええ、わたくしもリリさんが裏切ると何をしでかすかわかりませんもの」
「肝に銘じておきます」
「えっと、冗談ですのよ? 流石に分別はつきます」
「敵対者には?」
「容赦しませんが?」
つまり、味方で友達としてならセーフという事ですね。わ~い、リリ嬉しいです。これからの生活が凄く楽になります。やった~! ってなりますか!
「ああ、もちろんですが……ベルさんでしたか。彼は殺されないように護衛をつけておきます。同じツインテールロリのヘスティアさんに申し訳ありませんしね」
「そんな理由ですか……というか、盗む必要はないですよね?」
「いえ、ありますよ。彼の人となりを確かめるのと、ヘスティア様より依頼がありました。ソロでダンジョンに籠っている彼が心配だから、護衛とは言わないまでもわたくしの一人から三人を派遣して欲しいと」
「なるほど、確かに分身体なら冒険のお手伝いができますし……サポーターでもするんですか?」
「そういう商売も考えておりますわ。というか、ソーマ・ファミリアを手に入れたらもっと大々的にやりますわ。目標はわたくしなくしてオラリオが動くに動けない状況を作り上げてやります」
「できるんですか?」
「できますわよ。リリさんはリヴィラを知っていますか?」
「ええ、知っています。十八階層にある街ですよね?」
「はい。あそこが発展している理由はダンジョンにおける補給ポイントがあるからです。では、各階層といかないまでも数階層ごとにお店と護衛を受けられるサービスがあればどうしますか?」
「そんなの受けるに決まってるじゃないです……か……まさか……」
「人海戦術でダンジョンの一角を完全制圧します。そこでボウケンシャ-の皆様に品物を売り込み続ければわたくし達の意向をそう簡単に無視できなくなります。弱小ファミリアでも他のファミリアの生存に関わるのならば無茶は言えません」
「確かに可能ですが、なんですか、酒と補給でオラリオを支配する気ですか?」
「いえ、面倒なのでそれはしませんよ。でも、攻略は楽になりますでしょう?」
「確かにそうですが……クルミ様の取り合いが確実に発生しますが……」
「分身体を派遣すればよろしい。それで拒否するなら、そこは利用禁止か他のファミリアを扇動して潰しますわ」
うわぁ、誘導だけでなく脅す事も普通にするんでしょうね。情報を集める事はクルミ様の得意分野とも言えますし。
「話を戻しますが、盗む理由はもしかして、ベル様の意識改革ですか?」
「そういう事です。騙されやすい彼が本物の悪人に利用される前に痛い目を見て覚えてもらおうという事ですね」
「うわ~それをリリとクルミ様がやるんですか? リリ達、充分に悪人ですよ?」
「リリさん、わたくし達は悪人ではありません。もちろん、善人でもありませんわ」
「じゃあなんなんですか?」
「ただの可愛い女の子ですよ?」
「……」
「知ってますか、可愛いは正義です。つまり、わたくし達は正義なのです」
「言いたかっただけですよね。確かに可愛いですが」
「バレましたわね。まあ、教訓を与えるだけです。ヘスティア様を通してナイフを返却するので問題はありませんわ。というか、知ってますか? あのナイフ……ヘファイストス様が神友価格で自ら作られて二億ヴァリスですって」
「にっ、二億!?」
そんな凄く高いナイフをあんな無造作に対策もせずに持っていたんですか、ベル様! 何を考えているんですか!
「おわかりいただけましたか? 彼がどれだけ危険か」
「ええ、わかりました。リリにお任せください。ベル様にはしっかりと教えてさしあげます! ちなみにヘスティア様には?」
「許可を取っています。ヘファイストス様と一緒にしっかりとお話しましたから」
「わかりました。それでカヌゥさんはどうするんですか?」
「わたくしがガネーシャ・ファミリアの方と駆け付けるので現行犯逮捕で構いません。ああ、殺さなければ何をしてもいいです。ですが、傷口はしっかりと焼いて生かしておいてくださいね?」
「殺すのは駄目なのですね」
「はい。彼の証言から団長、ザニスさんを追い詰めます。まあ、殺してしまったら、それはそれで別の方法を取るので構いません」
「別の方法?」
「団長の座を先に貰います。既にギルドに団長交代の書類をソーマ様の印を頂いて出しております。ギルドが承認次第、わたくしが団長ですわ。ですから、ザニスさんがオラリオから消えても問題はありません」
「どう転んでも潰れるんですね?」
「はい。影響力の大きいガネーシャ・ファミリアも、ロキ・ファミリアも、ヘファイストス・ファミリアも、味方につけました。こちら以外にも懇意にしていただくヘスティア・ファミリアなど他のファミリアはありますが、今は置いておきます。少なくともギルドは団長交代に関しては何も言ってこないでしょう。何か言ってくるのなら、わたくしも誠心誠意、OHANASHIさせていただきますわ」
ヘスティア・ファミリアはベル様だけですし、リリと一緒に居た事で狙われた第三者という事にするつもりみたいですね。こうする事でヘスティア・ファミリアに同情を集め、有利に事を運ぶつもりなのでしょう。
もちろん、裏では繋がっているので協力はするという事のはずです。今回の件に巻き込んだ責任も取らないといけませんし。だから今回の依頼なんでしょう。これはリリもレポートを書いて渡しておいた方がいいかもしれません。本当にベル様は危なっかしいですし。
「では、そちらは任せるのでリリはリリで役目を果たします」
「お願いします。それと頑張ってくれているリリさんに申し訳ないのですが、武器はまだ完成していませんの。ヘファイストス様と一緒にヘルメス・ファミリアより受け取った機構の組み込みに予想外の時間がかかっていますので……」
「いえ、問題ありません。カヌゥ様と戦うまでに用意してくれたら嬉しいですが、今は椿様の戦斧がありますので十分です」
「そうですか。まあ、用意するのはリリさんでも使いこなせるかわからないんですけどね」
「どんな化け物を作っているんですか……」
まあ、リリに才能がないのは事実なので多分使いこなせないでしょうけど。
「オラリオの歴史が変わるらしいですわよ?」
「リリにそんな高価な物はいらないんですが……ところで値段はどうなりますか?」
「時価になるらしいですが……とりあえずベルさんの持っているナイフより格段に高いですわ」
「……わぁい、リリはとっても嬉しいです……」
「喜んでいただけて何よりですわ」
ニコニコと笑っているクルミ様を死んだような目で見ながら、これからリリが使う事になるとっても高価な武器に今から胃が痛いです。というか、リリに使えるのかもわかりません。とりあえず、今はベル様を嵌める計画でも作りましょう。
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