ダン狂~くるみ(偽)とリリのダンジョン探検~ 作:ヴィヴィオ
神様にアイズさんとの修行がみつかり、ボクとアイズさんの修行を神様が見学する事になった。月明かりで照らされている中、神様に見られているから、張り切って防壁の上でアイズさんに挑んだけれど全く手も足も出なかった。
「気持ちがいいくらいボッコボコにされていたね! ヴァレン何某君は君の事をなんとも思っていない! これはもう決まりだよ、決まり! そうだよねクルミ君!」
ボク達三人しかいないのに神様がそう言うと、階段がある塔の方から赤色と黒色のドレスを着た神様ぐらいの幼い可愛らしい少女が歩いてきた。
「こんばんはですわ、アイズさん、ベルさん」
「クルミ。もしかしてずっと見てた?」
「ええ、見ていましたわよ。わたくし、ヘスティアさんに雇われていますもの」
「そうなの?」
「えっと、ボクもしらないんですけど……」
確かに彼女はリリと一緒にボクの冒険についてきてくれている。といっても、基本的にリリが一人でついてきていて、何時の間にか隣にいたり、危なくなったら助けたりしてくれているらしい。助けてくれる事に関してはリリが言っていたことでよくわからない。時たまリリがインファントドラゴンと戦うか聞いてくるけど、居場所がわかるかと聞いたらクルミが教えてくれると言っていた。普通に勝てないから遠慮したら、何故かリリが不機嫌になったのは謎かな。
「まあ、これはベル君が知らないことだよ。ベル君がリリ君からナイフを奪われなかった報酬として君のパーティーメンバー兼護衛を頼んでいるんだ」
「ああ、そっか。くるみレンタルサービスだね。グレイがやるって言ってた。もうやってるんだ?」
くるみレンタルサービスって何!? え、レンタルできるの?
「身内や取引のある方だけですわ。人も時間もたりませんもの」
「身内……なら、わたしも一人欲しい」
「ロキ・ファミリアにはグレイとわたくしが居るじゃないですか」
「ティオナとティオネに取られる……」
「抱き枕にされるぐらいでしたら、別に増やしても構いませんが……」
「抱き枕っ!?」
「うん。クルミを抱いて寝ると良く寝れるの。なんでかな?」
「ほら、ベル君。彼女は君よりクルミ君に興味津々だよ! というわけで、クルミ君。ボクが借りている一人を彼女に貸してあげたまえ!」
「いいの?」
「ああ、いいとも! いいよね?」
「別に構いませんわよ。依頼主のご要望にはできる限り応えますもの」
「やった」
アイズさんが両手を広げると、クルミが抱き着いてくるりとこちらを向く。アイズさんはクルミを後ろから抱きしめてご満悦みたいだ。とくに頬っぺたをぷにぷにして遊んでいる。
「思ったけれど、クルミが居るなら、彼女に教えてもらった方がいいかも。短剣の使い方をティオネに習っているから」
「そうなのかい?」
「技術的な事でしたら、教えられますわね。超特急コースと普通に教えるコースの二つですわ。ただお値段は別料金となります」
「おいくらかな?」
「百万ヴァリスからですわね」
「むり~!」
「ヘスティアさんの給料から天引きでも構いませんわよ?」
「ごめん、許しておくれ!」
「給料から天引きですか? あれ、神様はクルミを雇って居るんですよね?」
「雇っているけれど、雇われてもいるんだ。彼女、バイト先の幹部みたいなものだしね!」
「あそこか。皆、温泉できたら行くって言ってたよ」
「だよね~職員だと無料で入りたい放題だし!」
えっと、つまり神様はクルミと互いに仲がいいって事でいいのかな?
「ん?」
「どうしました?」
「クルミ」
「きひっ! お任せくださいまし」
アイズさんが街の方を見たら、クルミが急にアイズさんの影へと沈んでいった。何処に行ったのかわからないけれど、アイズさんは少し残念そうにしている。
「そろそろ帰ろう」
「そうだね~」
「わかりました」
神様とアイズさんの二人と一緒に暗い路地を歩いてメインストリートを目指していく。神様は僕の左腕に抱き着いて歩き、アイズさんが先頭を進んでいる。
「いやぁ、メインストリートと違って、こちらはかなり暗いねぇ~」
「あ、あの、神様……」
「ベル君♪ ボクが転ばないようにしっかりと手を繋いでおくれ♪」
そう言いながら、ボクの腕に抱き着いている神様の……その、胸が当たってとても柔らかくてなんともいえない感じに……
「っ!?」
屋根の上から誰かが飛び降りてきて、アイズさんに向かって槍を振るう。アイズさんは剣を一瞬で引き抜いてその槍を弾いた。ボクにはとても見えない速度だ。更に四人の
「神様っ!」
「うんっ!」
神様はすぐに手を放してくれた。だから、ナイフを抜いて構えを取り、空いている手で神様を後ろに庇う。その間にも槍を持った襲撃者とアイズさんが高速で武器を振るっていく。剣と槍が何度も交差する中、アイズさんが相手の横薙ぎを下から掻い潜るようにして避け、相手が引き戻す間に上段から一撃を入れる。相手もさるもので、自分から飛び退る事で致命傷を避けた。
「ちっ」
防具の斬れた部分を撫でた襲撃者は舌打ちしてから、すぐに下がって一気に屋根の上まで戻る。気が付けば四人の
「これは警告だ。今後一切の余計な真似はするな」
「どういう意味?」
「大人しくダンジョンに籠ってろってんだ人形女。もし、あの方の邪魔をするなら……殺す」
「よくわからないけれど……警告してくれたから、こっちも警告してあげるね。危ないよ……?」
「なに? 何をふざけたことを……」
「「「「避けろっ!」」」」
「っ!?」
槍の人が他の人の警告で振り向きながら、槍を振るうと槍が弾かれて吹き飛んだ。それから彼等目掛けて防壁の方から高速飛来する黒いナニカが槍の人を守るように立った
「今度はなんだい! この黒くて太い物は!」
「えっと……」
「これはバリスタの矢。それも鋼鉄製」
「「え”」」
驚くボク達を他所に上では必死の攻防が続けられている。彼等を狙って防壁の方からバリスタらしい物が立て続けに放たれているのだ。
「くそっ!」
「バリスタ以外にも小粒のがっ」
「四方からきやがる!」
「鬱陶しい!」
「剣姫っ、貴様の仕業か!」
「うん。誰かに見られていたのはわかったから、援軍を呼んだ?」
「街中でバリスタを使うとは無茶苦茶だろ!」
襲撃してきた人達が言う事じゃないと思う。あ、槍を持った人が頭を何かで打たれて血を流した。彼等は高速で動きながら攻撃を回避してそれぞれの死角を防いでいるみたい。でも、尽きる事のないように攻撃が続いていく。
「
アイズさんが魔法を準備しだした。それを見てボクは改めてとんできた大きな鋼鉄の矢を見ると……それがなくなっていた。良く良く見ると彼等が弾いたバリスタの矢や逸れた矢などは全て消えている。近くにまた落ちて来たのを見ると、赤いドレスを着たクルミが掴んで地面に沈んでいっている。
「あの、これってもしかして……クルミがやってるの?」
「ああ、そういう事か」
「うん。防壁の方からバリスタを撃って、色んな所から狙撃しているみたい。それにほら、彼等の周りを見てみて」
アイズさんに言われた通り、良く観察すると彼等の周りがなにかに覆われていた。その中に居るせいか、彼等の動きは前よりも遅くなっているみたい。
「そろそろいいかな。行く……リル・ラファーガ」
アイズさんが嵐のような風を纏って突撃し、それに気付いた四人の
「剣姫ィィぃィぃっ!」
「……これは私じゃない」
「腕ゲットですわ」
何時の間にか現れたクルミが腕を掴んでそのまま何処かへと消える。そちらに目を取られている隙にアイズさんも僕の隣に戻っていた。そして、また再開される容赦ない攻撃。
「ここは引くぞっ!」
「逃がすかよっ!」
上の方から飛んできた誰かの蹴りが
「くるみんに呼ばれて飛び出たよ! えいやー!」
「アイズを襲うなんて舐めた事をしてくれるじゃない!」
「全くです! アルクス・レイ!」
褐色肌の二人とエルフの人が放った光の矢が彼等を襲う。
「アマゾンにヨルムンガンド、ヴァナルガンドか……」
「残念ながらそれだけではありませんの」
「ガネーシャ・ファミリアだ! 動くな!」
「イルタ・ファーナだと!?」
「レベル6が一人」
「レベル5が四人」
「こちらは負傷……」
「無理だ。撤退を進言する」
「ちっ。逃がしてくれたらいいのだがな!」
「逃がす訳ねぇだろうが!」
「ええ、全くですの。わたくしの護衛対象を狙うなんて……ただでは帰せませんわ」
クルミがやってきた人達の傍に立ち、それぞれの人を銃で撃つ。ベートさんだけは拒否したみたい。撃たれた人は更に高速で動いて襲撃してきた人達と戦っていく。
「ああ、ああ、とても楽しいですわ。そうですよね、ベルさん、ヘスティアさん!」
「うわっ!?」
何時の間にか神様へ後ろから抱き着いて首に手を回しているクルミ。彼女はとても楽しそうに必死に戦っている五人を見ている。
「これ、クルミ君が呼んだのかい?」
「ええ、ええ、そうですわよ。近くに居たわたくし達にお願いしまして、事情を説明して即座に駆け付けてもらいました。わたくし達とアイズさんだけでは厳しそうでしたし、そうでなくてもアイズさんが襲われたとなればロキ・ファミリアの方々は黙っておられないでしょう?」
「ロキの事だからどうだか」
「ロキさんはアイズさんをとても大事になさっておりますわ。必ず増援を送りますの」
「随分と詳しいね!」
「お得意様ですもの」
「知ってるよ!」
ニコニコと本当に楽しそうに笑うクルミと、忌々しげに見詰める神様。アイズさん達の戦いは更に苛烈になっていく。
「くそがぁっ!」
少しして彼等は一ヶ所に追い詰められる。包囲してそれぞれと戦う最中にクルミが何かをしたみたいで、彼等の動きが一瞬だけ、一秒くらい停止した。その瞬間を逃さずに攻撃を叩き込まれて
「確保ですわね」
複数のクルミが
「クルミ、此奴等の正体がわかっただろう。教えろ」
ガネーシャ・ファミリアの人に聞かれたクルミがしゃべりだしていく。
「この人達は闇派閥じゃないんですか? 襲撃してきましたし」
「「「「「ふざけるなっ!」」」」」
「あら、違うのですか。まあ、わたくしはどちらでもいいのですが……」
「ならば、返してもらおう」
その言葉にそちらを向くと視界を焼くかのような強烈な閃光が放たれて、ボクは神様を抱きしめて背中で庇う。次の瞬間には悲鳴が聞こえてきた。
「大丈夫ですか、神様……」
「うん、ボクはベル君のお陰で大丈夫だよ……でも……」
視界が元に戻ると、襲撃者の人達は全員が消えていた。
「逃げられたか」
「臭いはまだある。追撃するぞ」
「オッケー!」
「当然ね」
「ならばこちらも行かせてもらおう」
「私も行く。ベルとヘスティア様は……」
「ボク達はクルミ君に送ってもらうから大丈夫だよ。それよりも早く追わないと逃げられる。行った行った」
「わかりました。またね」
「はい!」
「むぅ……」
アイズさん達がベートさんを先頭に移動していく。ボクはクルミの方へ向くと……彼女は恍惚な表情をしていた。
「レベル5って少しだというのにとっても美味しんですのね。病み付きになりそうですわ」
「君、そういう趣味なのかい?」
「いえ、いえ、わたくしが好きなのはリリさんのような可愛い子達ですわ」
「嘘、じゃないだとっ!? まあ、知ってたけど。だからベル君の護衛にしているんだし」
「どうしたんですか?」
「なんでもないよ。それより帰って食事にしよう」
「でしたら、安全も兼ねてわたくし達のファミリアでお泊りになりますか? モニターも兼ねれば無料ですわ」
「そうだね。そうしよう。喜べベル君! 温泉だよ!」
「温泉、ですか?」
「うん。ベル君とこん……いや、なんでもない。早く戻ろう」
「はい、神様!」
それから連れていってもらったのはとても大きな旅館で、そこで泊りながら温泉を堪能するというとても贅沢なひと時でした。代金を聞くとボクじゃ、まだまだこれない値段だった。一日の稼ぎが全部飛ぶような値段だしね。
◇◇◇
「ただいま戻りました」
部屋で読書をしていると、子供達の回収に向かわせた者がやんちゃな子達を連れて戻ってきたみたい。どうやら、お風呂に入ってから報告にきたみたいね。まあ、下水道を通って戻ってきたのだから当然でしょう。
「お帰りなさい。随分と手酷くやられたようね」
「「「「「……申し訳ございません……」」」」」
「まあいいわ。先にその腕をどうにかしないといけないわね」
「エリクサーを使っても治りませんので、義手を用意するしかないかと」
「ありがとうございます……」
「腕は後で注文するとして……あの子はいいのだけれど、あの混ざり物には困ったものね。まさか貴方達の魂を曇らせるなんて……」
「始末なさいますか?」
「できるの? 彼女は無数に居るわよ」
「ご命令とあらば……っ!? フレイヤ様っ!」
オッタルが私の前に割り込んでバルコニーの方に武器を向け、警戒する。バルコニーには可愛らしい姿をした混じり物がこちらに向かって立っていた。彼女の手には木で出来た箱が二つ持たれているみたい。
「何の御用かしら?」
「あらあら、わからないのですか?」
「ええ、わからないわね」
「そうですのね。こちらの用件は簡単ですわ。先程の件についてお話にまいっただけです」
「何の事かしら?」
「そちらの方々がロキ・ファミリアやヘスティア・ファミリアを襲撃した件ですわ」
「わからないわね」
「こちらは証拠を握っているので言い逃れもできませんわ。まあ、知らないというのなら、ギルドに報告して、市民にはフレイヤ・ファミリアが見境なく襲撃する闇派閥だったと教えて回るだけですわね」
「貴様っ!」
「あらあら、わたくしは事実しか言っておりませんわ。ねえ、そうでしょう、フレイヤさん。先のモンスターフィリアに関する事や今まで貴女様が彼等に指示してきた事は人死にが出ていなくても器物損壊など十分な犯罪ですのよ? まさかお分かりでないと?」
クスクスと笑う彼女にアレンが槍を投擲しようとするけれど、私が手を上げてオッタルに止めさせる。
「離せ! フレイヤ様を侮辱する者は生かしておけん!」
「フレイヤ様の命令だ」
「そうよ。お話をしているの。少し待っていなさい。それに本体じゃないからいくら殺しても無駄よ」
「はい……」
「それで、証拠はあるのかしら?」
「ええ、先程も言った通り、証拠はありますわ。神様なのですからおわかりでしょう?」
「そうね。わかったわ。お話というのは何かしら?」
「謝罪と賠償を頂きにまいっただけですわ」
「私の可愛い子供達の魂を吸い取っておいてそれを言うの?」
「あら、アレは戦闘の結果ですわ。戦闘の手段としてそのようなスキルを使ったというだけです。そうでもしないとか弱いわたくしではとてもとても」
「良く言うわね。まあいいでしょう。それで謝罪と賠償かしら? それはごめんなさい。貴女には用はなかったらしいのだけれど、巻き込んでしまったわ」
「アイズさんに余計な事をするなという警告からして狙いはベルさんですか?」
「さあ? アレンが勝手にやった事だもの。私にはわからないわ」
「そうですか。まあ、そういう事にしておきましょう。賠償の件ですが、こちらをお収めください」
「あら、なにかしら?」
差し出された四角い箱をオッタルが受け取り、開けると中には大きな果実が入っていた。
「メロンです。こちらが請求書になりますわ」
「……」
オッタルではなく、自分で受け取って中身を見る。かなりの金額が書かれていた。破り捨てたい気分になるけれど、仕方がないわね。
「随分と高いのだけれど?」
「口止め料も入っておりますので、随分とお安い値段かと思いますわ」
「……フレイヤ様、おいくらで……」
無言でアレン達に渡してやると、彼等は驚く。書かれている値段は五千万ヴァリス。払えない事はないけれど、決して少ない金額じゃないわ。
「貴様っ! ボッタクリにも程があるだろう!」
「修繕や見舞金などの費用と慰謝料を兼ねれば適正価格ですわ。ああ、それとこちらの商品もございますが、買われますか?」
そう言って彼女が箱を開けて見せてきたのは……箱に収められたアレンの千切れた腕でした。
「今なら特別サービスで接続までキッチリとさせていただきますわ」
「でも、お高いのでしょう?」
「お値段は……」
提示された金額は馬鹿みたいな物だった。アレンは即座に拒否したけれど、私としてはそうはいかない。
「もう少し安くならないかしら?」
「フレイヤ様にとってアレンさんの片腕はこれだけの価値もないと言われるのでしたら、安くいたしましょう。ええ、値段を決めるのはフレイヤさんですもの」
「……本当に神を神とも思わない子ね。不敬よ?」
「生憎とわたくし、無神論者ですので」
「神々の恩恵を利用し、あまつさえ神の代行者が混ざっている者が無神論者? 笑えないわね」
「事実ですから仕方がありませんわ」
「そう。まあ、関係ないわね。その腕、買うから治療してちょうだい」
「代金は?」
私は無視して本棚に移動して一冊の本を選び、彼女に渡す。
「腕一本、魔導書一冊と交換よ。私にとってアレンの腕は魔導書より高いわ」
「……驚きましたわ。値切ると思いましたのに値段を倍以上に跳ね上げてきますか……」
「見くびらないでちょうだい。私は子供達を愛しているの。だから、試練を与えるのよ」
「傍迷惑ですわね」
「あら、神とはそういう者よ。一つ賢くなったわね、お嬢さん」
「ええ、そうですわね、おば様」
「誰がおば様ですって? そんな事を言うのはこの口かしら?」
「いっ、いたいれひゅっ!」
口に指を入れて柔らかい頬っぺたを思いっきり引っ張ってやる。
「はなしぇ~!」
「ふん。次、言ったら、こんなものじゃ済まさないから」
「ひゃい……」
赤くなった頬っぺたを撫でる彼女の首元を掴んでアレンの下へと連れていく。
「さて、治療してちょうだい。しっかりと元通りにできるんでしょう?」
「もちろんですわ。今から少し撃ちますが治療のためですから気にしないでくださいね」
「ええ、嘘はないようだから構わないわ」
短銃を呼び出し、アレンの額にあててから
「どうかしら?」
「……動きます。問題ありません。無くなる前と寸分たがいません。信じられませんが……」
「そう。オッタル、どう思う?」
「私にはわかりかねます」
「そうなのね。これは時間を戻したのでしょう。ところで二発目について聞きたいのだけれど?」
「(わたくしに)必要だったからですわ」
「そう……まあ、いいでしょう。それじゃあ、もう用はないわね?」
「ええ、これでなくなりました。それではまたのご利用お待ちしておりますわ」
「そうね、またお願いするわ」
バルコニーから飛び降りて消えていく彼女を見送ってから、オッタルに向かい合う。
「オッタル」
「なんでしょうか」
「塩をまいておいて」
「かしこまりました。ですが、塩ですか?」
「様式美という奴よ」
「はぁ……」
それにしてもまたのご利用、ね。試練を与えるなら代金次第で見逃すか、手伝うという事でしょう。実際、後始末はしてくれるみたいだし。
「オッタル。試練用のはどうなっているかしら?」
「今は別の者を見張りにつけておりますので問題ありません。もうまもなく仕上がるかと」
「彼女達が邪魔をしてきたらどうなるかしら? その子はちゃんと試練の役目を果たせるかしら? 例えばバリスタを複数受けて対処できるとか……」
「……難しいかと。先程の娘がバリスタをダンジョン内部に持ち込めるなら、ですが……」
「可能よ。あの子は普通にダンジョン内部にも持ち込んでいるわ」
「……規格外ですね」
「ええ、規格外よ。だって、精霊の混じり物でエインヘリヤルですもの。規格外は当然よ。だから面白くないのだけれど……」
「フレイヤ様」
「どうしたの?」
「私にチャンスをください。わたしが試練として奴の前に立ちます」
「そう。アレンが……でも、殺せないから後でお金を請求されるでしょうね」
高いお金で買ったメロンを斬ってもらって、食べる。高いだけあって確かに美味しいわ。
「私が払います。どうか、許可を頂けないでしょうか?」
「「「「俺達も出します! ですから、アイツを殺る機会をください!」」」」
「レベル2にレベル6と5を複数ぶつけるのはちょっと問題よね?」
「でしょうな」
「でも、いいわ。おいたをした悪い子にはお仕置きをしないといけないものね。早い者勝ちで、ミノタウロスと彼が戦っている時に相手なさい。オッタルはロキ・ファミリアが介入してきたら妨害してちょうだい。ああ、彼等があの子の意思を無視して手を出そうとした時でいいわ。一対一の状況さえ作ればいいから」
「畏まりました。それにしても彼女は使えますね」
「ええ、使えるわね。今まで少し遠慮していたけれど、言ってしまえば代金さえ用意したら手足の一、二本ぐらい治してくれるんだもの。貴方達も冒険しなさい。特にアレン達五人は冒険してレベルを上げないと不味いわ」
「どういう事ですか?」
「「「「?」」」」
「貴方達、彼女に寿命を吸われているわよ。今のままだと数年は大丈夫でしょうけれど、確実に減っているの。だから、レベルアップして戻しなさい」
「「「「「はっ!」」」」」
資金稼ぎをしないといけないわね。デメテルやヘファイストスに手を回して私もあの子がやり出した商売に噛ませてもらいましょう。まずはアレン達との死闘を見せて頂戴。
フレイヤ様がやってる事は色々とヤバイと思うのでこういう形に。狂三がやられたらやり返さない事はないですし。もちろん、フレイヤ様もやり返します。むしろ利用します。
メロンです。領収書です ドクターXのアレです。
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このまま|刻々帝《ザフキエル》のみ