ダン狂~くるみ(偽)とリリのダンジョン探検~   作:ヴィヴィオ

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詠唱が思いつかないです。


魔導書 リリルカ

 目の前に迫ってくる死を連想させるリリの身体がすっぽり収まりそうな大剣。視界一杯の戦斧が物凄い速度でリリへと迫ってくるのをリリは身体を回転させて横からタイミングを見計らって戦斧の腹へと叩きつけます。

 金属と金属が衝突してもの凄い音が響きますが、次の瞬間にはもう片方の手に持たれた戦斧が振り下ろされます。これを喰らったら、リリの小さな身体ではひとたまりもなく殺されてしまうでしょう。相手もそのつもりで攻撃してきています。

 だから、リリも命を懸けて必死に抗います。地面を震脚で踏みしめ、全身の力を使って無理矢理軌道を変えて相手のもう一本の戦斧をこちらの戦斧を内側から押し開くようにして弾き、その反動を利用して更に一歩踏み込みます。

 

「ほぅ」

 

 相手は戦斧を両方とも手放し即座に腰に差していた刀を抜刀してリリの戦斧を正面から受け止めてきました。

 

「うにゃぁっ!? かふっ!?」

 

 驚いていると膝打ちをくらって吹き飛ばされます。戦斧で地面を削りながら停止すると、目の前には刀が迫っています。もう戦斧では間に合わないので、リリも戦斧を破棄して両手に潜ませた暗器である杭打ち機を放ちます。

 

「ふっ」

 

 発射した杭二本は中心を捉えて切断され、迫る刃に対してリリはやはり前に出てガントレットで滑らせて相手に一撃を入れるために右手で正拳突きを放ちます。相手はあっさりと刀を手放して素手でガントレットと殴り合ってきます。

 拳と拳が命中し、身体が泳ぐのでその場で回転するように蹴りを放つと、相手は片足を上げてリリの足が肘と膝の間に入るタイミングで合わされました。

 

「みぎゃぁぁぁぁっ!?」

 

 リリの足は見事にグリーブごと叩き潰され、地面にのたうち回ります。

 

「うむ。少しヒヤッとしたが……まあ良いだろう。本日の模擬戦はここまでとしよう」

「あ、ありがとうございました……いたゃい……」

 

 涙目になりながら痛みを我慢してポーションで完全に折れている足を治療します。相手をしてくれた師匠はリリ達が放り投げた武器を回収して整備してくれます。

 

「よし、次は素振りだ。模擬戦で感じた事を修正するぞ」

「わかりました……」

 

 腕で涙を拭いながら立ち上がり、師匠である椿様の言う通りに修正し、リリに合うように何度も確認していきます。椿様は厳しく、一切の妥協をしてくれません。少しでも武器に力を伝えるための姿勢が崩れたら叩かれます。

 

「午後からはダンジョンで試すのなら試すといい。威力が変わるはずだ」

「サポーターとしての活動なので戦いはしませんが……」

「では、もう一度模擬戦をするか」

「か、勘弁してください! リリが死んでしまいます!」

「良いのか?」

「え?」

「このままではクルミに置いていかれるぞ」

「クルミ様に、ですか?」

「うむ。クルミは止まらんぞ。ああいう手合いは手前と同じか、それ以上に止まらねばならん場所を軽く超えて行くぞ」

「リリには計算高く行動していると思えるのですが……」

「いいや、彼奴は止まらん。それは本人から聞いた話でわかっている」

「どういう話ですか?」

「彼奴は自らの分身体を自爆させたのであろう? 同じ意識も記憶もあるというのにだ。つまり自らが死ぬのをなんとも思っていないという事だ」

「あ……」

 

 確かによくよく考えたら実験だとしてもアレはないですよね。リリだったら絶対にできません。そもそも彼女達にはオリジナルであるクルミ様と同じ意識と記憶があるのです。なのになぜ自爆を受け入れたんでしょうか? そうです。これはつまり、必要ならクルミ様は自爆をするという事じゃないですか。

 

「それにだ。リリよ。よくよく考えると手前と全く同じ姿の手前がいっぱいいるというのはどうなのだ? 手前は便利だと思う反面、受け入れられない部分がある」

「リリは……どうなんでしょう? よくわかりません」

「まあ、リリは変身願望もあるようだからな。どちらにせよ、そのような魔法が発動しているという事は分身願望があるという事だ。自らを分割するなど、名前の通り狂っているといえる」

「確かにそう、ですね。でも、リリとしては凄く便利だと思いますけど……」

「毒されているだけかもしれんが、まあよい。手前が言いたいのはクルミは止まらない。冒険に冒険を重ねて続けていくだろう。それも最短で最速でだ。そんな彼女はすぐにレベルアップするだろう。そうなるとリリは置いていかれる。そうなると……」

「捨てられる……?」

「可能性は十分にあるだろう。何せ自らの分身体を平気で使い潰すのだから可能性はあるだろうと、手前は思っている。まあ、クルミはリリの事を気に入っているようだから、愛人とかであれば一緒に居てくれるかもしれんぞ」

「あ~確かにクルミ様は時々、リリにそういう獣のような視線を向けてきますね」

「うむ。手前も見られた事はあるな。まあ、胸の大きさで悩んでいるのかとも思っていたのだがな……それで、どうする? 手前としても、リリにはもっと頑張ってもらいたい。クルミに依頼されている武器は手前と主神様だけでは作る事は不可能だ」

「そうなのですか? お二人ならどんな武器でも作れそうですが……」

「魔導具であるからな。手前と主神様、ヘルメスの万能者(ペルセウス)、クルミが居なければ生まれない新たな武器だ。リリにはその武器を使ってもらう予定だが……無理ならばクルミが自ら使うであろう。そもそも爆発する危険があるのだから、最初はクルミに使ってもらう。で、どうする?」

「やります。やりますよっ!」

 

 武器を構えて椿様に挑んでいきます。だって、クルミ様に捨てられるとか地獄です。あの地獄がまたくる可能性が限りなく少ないとしても、想像するだけでも嫌です。レベルアップしたリリならどうにかできるかもしれませんが、その場合はクルミ様が敵になるのでどう考えても地獄です。それにリリだって感謝しているんです。クルミ様はなんだかんだありましたが、リリを救ってくれた王子様ですからね! 

 

「行きますよ!」

「うむ。来い……と、言いたいのだが、使う物を変えるぞ。リリがこれから使う武器には必須の物だからな」

「はい……あれ、これってサラマンダーウールですよね?」

「うむ。それとこれだ」

 

 サラマンダーウールと同時に渡された、鉄で出来た斧に布が巻かれています。その布は液体がたっぷりとしみついていました。

 

「あの、これは……」

「うむ。火をつける」

「えっと……正気ですか?」

「ああ、正気だとも! 言ったであろう。武器の特性上、仕方がないのだ。いいか、火に慣れろ。火は友達だ」

「えぇ……」

 

 驚いていると、本当に斧に火をつけました。燃え盛る炎でリリは熱すぎてすぐに手放してしまいます。

 

「いいか。今回使われるのは炎を纏う戦斧だ。炎に慣れねば自ら喰われるぞ」

「……ああ、わかりました。これ、クルミ様がかかわっているだけありますね! 無茶苦茶です!」

「ふはははは! まさに狂気の産物であるからな!」

 

 手放した戦斧をもう一度握ります。今度は手の皮膚が焼けるのも気にせず我慢します。熱いのも我慢です。どうせポーションで治るのです。この状態で戦斧を何度も何度も振るっていきます。今日はベル様とのダンジョン探索は休みなのでこのまま椿様の監視のもとでやらせてもらいます。リリが死なないためにも必要ですからね。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 修行が終わり、ポーションを使ってからすぐにベッドに飛び込んで仮眠を取ろうとしました。すると疲れていたのか、泥の様に眠ってしまいました。

 リリの上に重たい物が乗っている気がして目を開けると、クルミ様がニコニコしながらリリの上に乗っていました。これ、襲われるのかもしれません。

 

「あの、クルミ様……リリの上で何をしているんですか?」

「リリさんの寝顔を見ていただけですわ。部屋を訪ねたらもう眠っているんですもの」

「はぁ……わかりました。一緒に寝ているんですから、別に構わないんですが……用件はそれだけですか?」

「もちろん違いますわ。寝る前に読書でもと思いまして……」

「読書ですか?」

「はい。読書です。一緒に魔導書を読みましょう」

 

 そう言ってクルミ様は一冊億単位の値段がする魔導書を二冊も取り出しました。

 

「売りましょう。これを売れば借金が幾分かましになります!」

「いえ、読みます。お金は回収できるので問題ありません。それよりも今は魔法を得る事が重要です。わたくし達が強くなればそれだけ稼げます」

「ですが……」

「どうしても気になるのでしたら、魔導書を使った実験にご協力くださいませ」

「実験……そういう事なら、わかりました」

「では、今からお話しします」

 

 それからクルミ様は色々なお話を聞かせてくださいました。お話が終わった後、クルミ様は魔導書と共に不思議な結晶みたいなのを渡してくれました。

 

「では、読みましょう」

「はい」

 

 魔導書を開き、読んで行きます。

 

『魔法は先天系と後天系の二つに大別することができる。先天系とは言わずもがな対象の素質、種族の根底に関わるものを指す。古よりの魔法種族はその潜在的長所から修行・儀式による魔法の早期修得が見込め、属性には偏りが見られる分、総じて強力かつ規模の高い効果が多い。

 後天系は神の恩恵を媒介にして芽吹く可能性、自己実現である。規則性は皆無、無限の岐路がそこにはある。【経験値】に依るところが大きい』

 

 何か引き込まれるものがあります。不思議な感じです。

 

『魔法とは興味である。後者のことに限って言えばこの要素は肝要だ。何事にも関心を抱き、認め、憎み、憧れ、嘆き、崇め、誓い、渇望するか。引き鉄は常に己の中に介在する。『神の恩恵』は常に己の心を白日のもとに抉り出す』

 

 リリの前に大きな鏡が現れました。

 

『欲するなら問え。欲するなら砕け。欲するなら刮目せよ。虚偽を許さない醜悪な鏡はここに用意した』

 

 鏡にはリリであって、リリではない分身のようなリリが居ました。

 

『じゃあ、始めましょう』

 

 聞こえてきたのは確かにリリの声でした。

 

『リリにとって魔法って何ですか?』

 

 リリにとっての魔法はやはり、変身魔法。それとクルミ様の分身魔法でしょうね。それとクルミ様にお話しいただいた七罪(ナツミ)と呼ばれる精霊が使う魔法、贋造魔女(ハニエル)。この精霊様の力はリリのシンダー・エラと似通った所があります。

 

『リリにとって魔法とは?』

 

 神様から与えていただく奇跡です。どのような不可能な事だって可能であり、どんな事だって出来る力です。そして、クルミ様についていく為に必要なものです。

 

『リリにとって魔法はどんなもの?』

 

 弱い小人族(パルゥム)から別のリリへと姿を変えて地獄から逃げるための魔法。今までは逃避の為に、人を騙す為に使ってきました。でも、リリはクルミ様と出会ってからはクルミ様に気に入ってもらえるようにモフモフされるための魔法になっています。

 

『魔法に何を求めるの?』

 

 色んな姿や物になり、別のリリを生み出す力。今のリリではクルミ様についていけません。ですから、求めるのはついていける力です。

 

『それだけ?』

 

 リリは……リリはクルミ様のようになりたいです! 確固たる自分があり、他人に左右されないあの力! リリもクルミ様のような特別に! 

 

『リリはシンデレラ。十二時の鐘により夢はさめます。リリは誰かになって特別を得る事なんてできません。所詮は猿真似でしかないのですから』

 

 それでも、努力すれば限界を超えられるってわかりました。ですから、諦めません。ええ、もう絶対に諦めたりなんてしません。力尽くでも打ち破ってみせます! 

 

「それが今のリリです!」

『それが今のリリですね。これから色んなモノになりましょう。諦めなければ可能性は無限大なのですから』

 

 目が覚めると、隣にクルミ様が居ました。まだ眠っているようなので、起き上がると魔導書がリリの上から落ちていきます。それを見て昨日、クルミ様から渡された結晶が見つかりません。

 

「無くした? いえ、まさか……」

「んん~どうしましたか、リリさん……」

 

 目を擦りながら起きてきたクルミ様に結晶が無くなった事を伝えます。怒られるか、不安ですが伝えない方がまずいです。

 

「そうですか。ああ、成功したのですね。とても嬉しいです。早速ですが、ソーマ様のところに向かいましょう」

「は、はい!」

 

 ソーマ様にステイタスを更新していただくと魔法が増えていました。名前は贋造魔法少女(ハニエル)。色々と調べてみると、この世に存在するあらゆる生物、様々な無機物に変身することができ、自身の分身を生成できる魔法のようです。

 分身の作成は一体のみ。本体か分身が変身している場合は変身ができない。でも、シンダー・エラを使えば可能となります。贋造魔法少女(ハニエル)の方は身長とか一切関係なく変身できました。ですが、分身を生み出している効果時間は短く、十分で消滅してしまいます。

 言ってしまえばシンダー・エラの上位互換です。まあ、難点としては贋造魔法少女(ハニエル)で変身できるのは詳しく知っているか、シンダー・エラで何度も変身する必要がありました。また、詳しく知っていれば相手のスキルや魔法も再現可能となり、リリが持っているスキルは使用不能となります。分身を生み出す詠唱がミラー・ミラーでした。

 

 

 

 

 




リリは劣化している贋造魔女(ハニエル)を魔法少女にしてみました。

ロキによる発現する天使

  • レーヴァテインから灼爛殲鬼(カマエル)
  • 変身術の逸話から贋造魔女(ハニエル)
  • 空飛ぶ靴から颶風騎士(ラファエル)
  • このまま|刻々帝《ザフキエル》のみ
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