ダン狂~くるみ(偽)とリリのダンジョン探検~ 作:ヴィヴィオ
「質問っ、ですわっ、リリっ!」
洞窟の中を全力で、ええそれはもう全力で走っている。何故って? それは決まっている。
「なんっ、ですかっ!」
「ダンジョンってっ、牛さんがおられるんですわね!」
「こんな低階層に普通は居ませんよ! ミノタウロスですよ! 普通は15階層からです! 沢山居るからもっと下のはずですっ!」
「じゃあ、後ろからわたくし達を追ってきているのは幻ですわね!」
「現実逃避しないでください! したくなる気持ちはわかりますけれど!」
そう、ある日。洞窟の中で、何時もの通りに
「時喰みの城!」
後方二十メートルに通路を覆うように展開した時喰みの城。今まではこれで捕らえて寿命を吸い取る事で確殺してきた。今回も最初はそうだと思った。
「「「BUMOOOOOOOOOO!!」」」
突撃するしか能のない牛さんは時喰みの城へと落ちていきます。深さも二十メートルぐらいありますから、そう簡単には抜け出せない。そう思っていたのだけど、連中は同胞を足場にして脱出してきました。閉じたとしても、後方の連中は普通に飛び越えてきたり、仲間を足場にしたり、飛んででてきたりするので追いかけっこは継続している。
「なんで他の人には目もくれずにこっちに来るんですの!」
「それはもちろん、リリ達の身体に
「納得、ですわねっ!
走りながら後方に突出してきた牛さんに対象の時間の流れが遅くなる
「リリ、リリ、ダメージが通りませんわ!」
「レベル2が複数人で相手をするような奴ですからね!」
「……仕方がありませんね。ここが命の賭け時でしょう」
「くるみ様?」
「リリ、
「あ、ありますが……」
「貸してください」
「わ、わかりました……荷物の中にあるので取ってください」
リリの荷物の中から目的の物を手に入れ、通路が曲がる時、リリが進んだ方向の反対側に移動して自分の上に放り投げて撃ちぬく。これでわたくしの全身にお香がかった。
「何をしているんですか!」
「リリ、このまま逃げてください。運が良ければまた会いましょう」
「いや、普通はリリを囮にすべきところでしょう!」
「私、リリよりも長く生きているんですのよ。だから、こういうのは年上の役目ですわ!」
リリとは反対側の通路を走り、後続に弾丸をお見舞いして注意を引いておく。リリが何かを叫んでいるけれど、気にしない。それよりも自分に
通路の奥へと進みながら、近付いてくるミノタウロスの背後からの突進を未来を見て左に飛びながら回避し、加速した身体を利用して短銃を横を通り過ぎるミノタウロスの瞳に放つ。放たれた弾丸はミノタウロスの片目を粉砕して悲鳴を上げさせるけれど、出鱈目に暴れ出す姿が見えたのでしゃがんで一撃を回避して前に飛ぶ。
ミノタウロスの一撃が空中に居る私に直撃するので、短銃を小銃に変えて両手で持って受け止める。腕が折れて身体が馬鹿みたいに通路の奥へと飛んでいく。
空中で自分から回転して勢いを殺しつつ、足から着地してクルクルと回って突き当りの壁に激突して止まる。けれど、物凄く痛い。
「いっ、痛い痛いっ、痛いですっ」
すぐに激痛に我慢しながらも短銃を呼び出して耳の上辺りに銃口を当てて
なので、地面に転がってうつ伏せの体勢で
後続のミノタウロスが暴れているミノタウロスと激突してくれたので、時間を稼げた。そうでなければ時間を巻き戻す暇もなく殺されていた。
時喰みの城も展開しなおして移動妨害をかけておく。中に居たミノタウロスは混雑しているところに解放して、更に混戦状態を誘発してやる。通路に詰め込まれたミノタウロス達はほとんど身動きが出来なくなった。後はこれで時喰みの城でゆっくりと寿命を吸い取りながら攻撃していけば大丈夫、だと思う。少なくとも時間は稼げる。
「今のうちですわね」
小銃から短銃に変更し、
「状況は理解していますね、わたくし」
「ええ、理解しておりますとも、わたくし」
「よろしい。では死んでください」
「心得ましたわ」
「
「無駄撃ち~~~!」
くっ、スーパー狂三ちゃんタイムはできなかったか。あわよくば本体である時崎狂三と同じ姿になれれば強いと思ったんだが。まあ、オリジナルである私に試さないといけないようだ。でも、正直言って怖いからできない。だって、成長しすぎたらヤバイし、そもそも未来が存在するのかどうかもわからない。故に自分には使えない。
「仕方ないですわね。というわけで、もっと力を寄越しなさいバル……時崎狂三ッ!」
叫びながら
「さあ、逃げますので後は任せましたわ、わたくし達」
「「「ええ、任されました」」」
さて、逃げるのだけど、まず一人を囮にして別方向に走らせる。こちらにどんどん寄ってきている
残り二人で短銃を持って逃げる。二人の反応がなくなれば時喰みの城は解除すればいい。オリジナルのわたくしはもう一人の影に隠れておく。これぞ鉄板。
◇◇◇
逃げる事、九分。わたくし達が突破されました。ちなみに死んではいません。時喰みの城を解除して分身体が再展開。そこから影に潜んでこちらへと移動。わたくしの横にまた現れてゴブリンやコボルトをサブミッションなどで動きを封じて時喰みの城へと取り込んで時間を補充。
「「「BUMOOOOOOOOOO!!」」」
鬼ごっこはまだ続く。ただ、まあ……こんな感じで適度に逃げ狩りをしていけばいいと思う。私の時間が尽きるか、相手の時間が尽きるかの勝負というわけだ。
「さあ、もう一度です。わたくし達。
「私達使いが荒いですわね」
「生き残るためですから仕方がありません。至難の戦場、わずかな報酬、ミノタウロスと鬼ごっこの日々、耐えざる危険、生還の暁には名誉と賞賛を得る。まさにこれですわね」
「命を賭けて目的を達するに値する目的ではありますわ」
「オリジナルが死んだら終わりですもの」
「ええ、ですから冒険をしましょう。ボウケンシャーらしく」
「了解です。ただ、まあ……狩ってしまっても構わないですわよね?」
「もちろんですわ。貴君等の奮闘に期待します」
分身達に任せて逃げます。こちらは時間の補給も兼ねて色々とやります。まあ、簡単に言えばミノタウロスの足止めに使う雑魚の回収だ。
「撃って撃って撃ちまくれですわっ!」
「キヒヒヒヒヒッ!」
◇◇◇
さて、そんな逃走劇も終わりが見えてきた。ミノタウロス達を倒せた? 否! 増援が来た? 否!
「迷って追い詰められました!」
「まあ、そうでしょうね。移動先は全部リリにお任せしておりましたし?」
「当然の帰結ですわ」
「わっふーっ!」
袋小路に追い詰められたので、もう逃げ道はない。ただ、頑張った。頑張ったのです。ええ、少しチビりながら頑張った!
「残っているミノタウロスは八体。万全なのは二体。それ以外はほぼ達磨ですわ」
「良くやりました。こちらも既に魔力はマインドダウンにならない程度です。ええ、時間で代用しております」
「つまり、ここからが本番ですわね」
洞窟内にある大きな部屋の入口にミノタウロス達が入場してくる。二体を除いて片目だったり、両目が無かったり、足の指が無かったりする。
やる事は単純明快。ミノタウロスを使ってミノタウロスを狩らせる。それだけだ。時喰みの城もこの部屋を包めるように展開して影へと自由に入れるようにもしておく。
「「「「さあ、私達の
分身一人が短銃で乱射して弾幕を展開し、二人が左右に散る。そして私は影に入って移動し、狙撃ポイントに着く。といっても、柱の影に隠れてタイミングを見るだけだ。正直火力不足がやばい。こんな事なら分身達に持たせる武器を用意しておくべきだった。
「「「BUMOOOOOOOOOO!!」」」
雄叫びを上げてこちらに何かしてくる。リリから聞いた話では
「てりゃっ!」
健常のミノタウロスが両手をクロスして弾幕を正面から突破してくる。その間に瞳を怪我しているミノタウロスを左右から攻め、常に死角に入るように動きつつ、突撃してくるタイミングを合わせて囮の二人が影に潜る。すると視界が制限され、止まれないミノタウロスは両者互いに激突して吹き飛び合う。
同時に健常なミノタウロスが弾幕を突破したので、分身も影に入って移動。短銃を持った方とわたくしが倒れたミノタウロスの上に立ち、互いに撃ち抜いた方の瞳に銃を突き入れて容赦なく連射する。目の奥は脳に繋がっている。だからこそ、ここが弱点になるはず。
「時間です!」
「「っ!」」
声に即座に反応して影に逃れる。直後に他のミノタウロスが突撃して、倒れていたミノタウロスを吹き飛ばす。互いに死角を補いながら声もかけて即座に逃げる。
もちろん、わたくし達全員に
適度に狙撃して効果を切らせないようにしながら、ダメージを積み重ねる。後は
それにしても、健常体が鬱陶しい。こいつらのせいで中々止めをさせない。
「オリジナル。良い考えがあります」
「なんですか?」
「このままではジリ貧なので、わたくし自身を武器としませんか?」
「……健常体を倒すにはそれしかありませんか。許可します。やりなさい」
「了解ですわ!」
三人の分身体で囮を務めさせ、狙撃の準備をする。突撃が終わって止まったところに三人で襲い掛かる。ミノタウロスは両手で反撃してくるんで、それを一人ずつで相手をさせて残った一人が短銃をもって口に突撃する。ミノタウロスは笑いながら大きく口を開ける。そこに自ら入り込んで噛み砕かれる。
バキボキと骨が砕ける音と私の悲鳴が響く中、一発の銃弾を放つ。それは食べられている私に命中して複製を開始する。
「BUMOOOOOOOOOOッ!?」
複製された場所は体内だ。ミノタウロスの口の中から胃にかけて私が実体化して、口の中にあった短銃を乱射する。ミノタウロスの内部が光り、頭部が弾け飛んで中から血塗れで所々が変な方向に曲がっている私が笑いながら出てくる。
「キヒヒヒヒヒッ! まずは一匹でしてよ」
クルリと顔を回転させて残りのミノタウロスを見る私に恐怖したのか、後退るミノタウロス。その間に新たに生まれたばかりの私に
「残り七体!」
相手は怖気づいたようなので回避から攻撃を優先する。といっても、ミノタウロスもこちらが相手にダメージを与えられるのは二丁の銃だけだとわかったようで、囮を気にしなくなった。まあ、これも問題ない。
「わたくし!」
「ええ、どうぞ!」
手元から小銃を消すと、気にもされなくなって接近を許した分身体の私の手元に小銃が現れる。あちらの私はそれを下からミノタウロスの鼻に突き刺して発砲する。鼻血を噴き出し、鼻を押さえながら蹲るミノタウロスの瞳を小銃で突き刺して何発も撃つ。
両目と鼻を壊して頭蓋骨に何発か叩き込んだミノタウロスは方向感覚を完全に失っているようなので、時喰みの城に取り込んで時間を回収する。
「「「BUMOOOOOOOOOO!!」」」
最初とは違い、悲痛の叫びを上げだすミノタウロス。しかし、今度は囮にもちゃんと反応してきた。見えない中で気配だけで察知したのか、分身体の髪の毛を掴まれて何度も地面に叩き付けられて頭皮が千切れる前に分身体が死んだ。
ミノタウロス達もこちらが狩られるだけの獲物ではなく、自らを殺す力を持った相手だと理解したのか死力を尽くして襲ってくる。
こっちの銃撃では止まらないし、なんとか回避しながら隙を探す。三体になったので、こちらも積極的に攻撃していく。
影から突撃が終わって停止している状態のミノタウロスの下から現れて、アソコにしこたま銃弾をプレゼントする。よくよく考えたら弱点はもう一つの穴にもありました。
ミノタウロスが飛び上がった瞬間。もう一人の私が背中から飛び乗って首を掴み、そのまま背後へと落ちる。空中に加えて痛みで体勢を上手くとれなかった相手をそのまま地面へと激突させて首を折った。その分身体もペシャンコになって潰れる前に空中で影の中に避難したので問題なし。
「格闘の訓練が活きていますわ」
「ルチャこそ最強の格闘技ですわ。異論は認めます」
「適当に言ってるだけですものね」
素早くその場を影で移動する。先程まで居た場所にミノタウロスが両手を握って打ち付けてきた。地面は陥没してしまったので、あそこに居たら死んでいました。
「これで残り三体。どうにか勝てそうですわ……ね?」
そう思っていたら、ミノタウロスの一匹が味方の残り二匹を素手で貫いて魔石を引き抜き、それを食べた。すると身体が一回りも二回りも大きくなり、明らかにやばい感じになっていく。周りを見ればいつの間にか殺したミノタウロスの魔石もなくなっている。
「ふう……」
冷静に、冷静に、クールになれ、わたくし。この程度はピンチでもなんでもありません。ええ、時崎狂三ならば笑顔で対処するでしょう。
「
冷静に放った弾丸を相手は避けた。当てれば勝てる。当てなければ負ける。ただそれだけ。そう思ったら、目の前にいきなり現れていたミノタウロス。奴の拳が回避不可能な速度でこちらに来る。その瞬間に分身体に弾き飛ばされてゴロゴロと転がる。
分身体の方を見れば身体の上半身が消し飛んでいた。もう一人の分身体が短銃から弾丸を放つも、それを軽く避けられるか、分身体の死体を盾にしてきた。受け止めると駄目な事を理解しているようで、学習されたみたい。そして、もう一人の分身体が掴まれて首をコキリと折られ、頭から食べられる。こちらの弾丸はキッチリと回避されてどうしようもない。
「第二、第三のわたくしが……」
小銃で牽制しながら、短銃で自分を撃って増やそうとしたら身体を掴まれて両手を纏めて折られ、絶叫をあげる。
「あっ、あぁぁぁ……」
口が大きく開けられ、涎が顔にかかってくる。恐怖で身体が震えてくる。
「いっ、いやっ、死にたくないっ、死にたくないっ! 助けてっ、助けてお願いッ! なんでもするから
叫んだ瞬間。私は口の中に入れられて……目の前が真っ暗になった。
◇◇◇
「団長!」
「これは……」
周りに散乱する肉片。そして、泥や血に汚れた服の切れ端。髪の毛などから死んでいるのは複数の幼い少女だとわかる。周りの壁や地面は破壊の跡だらけであり、そこで激しい戦いが行われたのだとわかった。
「ミノタウロスは?」
「強化種だった。この子、一階層で訓練してた子なんだ」
「知ってるのかい?」
「うん。アイズと一緒に潜った時に会ったの」
「そうか……リヴェリア、彼女は……」
「ミノタウロスに咥えられて食べられようとしていたところだったらしい」
「わかった。どのファミリアかわかるかな?」
「背中を見ればわかるだろうが、地上に連れていく方がいいだろう」
「そうだね」
「私がもっと早く来ていれば……」
「ティオナ……」
「これは僕達の責任だ。僕達がミノタウロスを逃がさなければ彼女達は……いや、今はよそう。それよりも先に残っているミノタウロスの排除だ」
「うん!」
本当にどうしてこうなったのか、頭が痛い。
チートがあるからって調子に乗るからバットエンドになるのです。
ただ一つ忘れていた事が……べるきゅんの前でくるみを殺すことができませんでした。残念。
「おお、半精霊くるみよ。死んでしまうとは情けない」
冒険の書を記憶しますか?
このまま続けますか?
やり直ししますか?
続く? 続かない?
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続く
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続かない
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そんなことより狂三が可愛いから書け
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リリを曇らせて虐めたい
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狂三だらけの狂三ハーレム