ダン狂~くるみ(偽)とリリのダンジョン探検~ 作:ヴィヴィオ
五一階層への入口。そこでわたくしを含めた突入組と待機組に分かれております。これからまだ見ぬロキ・ファミリアの未到達領域へと足を踏み入れる方々の見送りというわけですわ。
「わたくしも行きたいです。クルミ達だけずるいですわ」
「グレイは駄目です。死んでしまえば戻れませんもの」
「そうよ。だからグレイは私とお留守番」
アキさんがグレイを後ろから抱きしめて、彼女の頭の上に顎を乗せました。
「そうそう。こっちは私達に任せておいてよ」
「団長と一緒にしっかりと守ってあげるから」
「うん。グレイはここに居て」
「仕方がありません。レベルを上げてさっさと追い付きましょう。どうかご無事で帰ってくる事をここからお祈りいたしますわ」
グレイはわたくしであってわたくしでないので、残念ながらくるみねっとわーくに参加できても、魔法とスキルは別物です。ですので自ら冒険してレベルを上げなくてはいけません。それにロキ・ファミリアの所属なので、派閥などを考えるとわたくしが援助するわけにもいきませんの。
「リヴェリア、頼む」
「ああ、任せてくれ。ヴェール・ブレス!」
わたくし達の下に緑色の魔法陣が展開され、緑色の光が下から徐々に上へと上がっていき、円を描いていきます。身体の周りを何週か周回した後、魔法陣と一緒に消えました。
「物理属性と魔力属性に対する抵抗力を上昇させる防護魔法をかけた。効力はしばらく持つが、過信しすぎるな」
「五十一階層は一気に突破する。雑魚には構うな。例の新種には警戒しろ。それとクルミは僕とリヴェリア。ガレス……いや、すぐに治療できるように全員の影に潜んでくれ。一人はこの野営地に残るように」
「かしこまりました」
契約以上の数を呼び出し、皆の影に入り込ませます。三人なんてちゃちな事は言いません。一人三人ほど入れておきますの。
「それとオプションの加速支援を頼めるかな?」
「お勧めできませんわよ」
「どうしてかな? 身体能力が上がるのなら、使えるが……」
「出し惜しみじゃねえだろうな?」
「いえ、わたくしの加速魔法は時間の流れを操作してその方の肉体を速くする魔法です。ですので、リヴェリアさんの魔法まで効果時間が短くなってしまいますわ」
「加速した分だけ時間が進むのであれば、確かに切れてからの方がいいだろう。その場合、張りなおす暇などないだろうしな」
「リヴェリアの言う通りだ。リヴェリアの魔法が消えた者は一度下がり、クルミから支援を受けて前線に復帰してくれ。これは怪我を負った時も同じだ。いいか。今回は腕の一本や二本、どうとでもなる。お金はかかるが、気にするな。今回、僕達にとって大事なのは未到達領域を探索する事ともう一つ。レベルアップしたフレイヤ・ファミリアの連中に差を広げられない事だ。かと言って、死ねと言っているわけではない。即死しなければどうとでもなるとはいえ、頭や心臓をやられれば死ぬ。そうなればクルミの治療も間に合わないからね。命を大事に怪我を気にせず冒険しよう。言っててなんだが、矛盾しているね」
「確かにな。普通なら止めるのだが、今回は別だ」
「うむ。このままではフレイヤ・ファミリアの連中に好き勝手される事になるからな」
「でも、いいの~? 報酬なくなるんじゃない?」
「一人一割だったかしら?」
「ご本人からの依頼だ。問題ないよ。僕達と同じで彼女も尻に火が付いたようだからね」
「ええ、そうですの。ふふ、このままではいられません。ええ、ええ、いられませんとも!」
「くっくく、それほどリリに抜かれたのが堪えておるのか。レベルアップは手前達と作った神造兵器の神姫で偉業は達成しておるだろうに」
「リリさんはステイタスをしっかりと上げ切ってからレベルアップしましたからね。わたくしも上げきってからにしますわ」
これ、前と同じ状況になるかもしれません。特に白の
「というわけで、お金は気にしなくていい。制限は解除された。好きなだけ暴れろ。行け、ベート、ティオナ!」
「おう!」
「うん!」
二人を先頭にして、次にアイズさんとティオネさん。その次にわたくしと椿さん。その後ろにラウルさんとガレスさん。最後にリヴェリアさんとフィンさんで五十一階層へと突入します。
洞窟の中を進み、カドモスの泉と呼ばれる泉が湧いている、林に届かない密度の木の場所を通りすぎました。一応、そこで
そんな場所を越えてしばらくすると、ブラックライノスと呼ばれるサイ型で二足歩行する
「ちょっとは獲物をこっちに寄越してくださいませんか?」
「断る! 非戦闘員は大人しくしてろ!」
「わたくしだってアビリティを稼がないといけないんですが!」
「駄目だよ! ダメージ通ってないじゃん!」
「うん。目に命中させてもダメージなしだと……無理だよ?」
「むぅ」
ティオナさんとアイズさんの言う通り、わたくしの攻撃は残念ながらブラックライノス達には効きませんでした。火力が全然足りません。バリスタの矢もおそらく効かないでしょう。レベル4が普通に居ますからね。
「諦めて大人しく支援していろ。それでも十分に経験値は稼げておるだろうよ」
「リリさんの火力ならダメージは与えられそうなのに……」
「クルミの数にその火力が合わさったら、それこそやばかろう」
「でも、リリさんも分身しますよ。それもイフリート込みで」
「……十分に我が弟子もおかしかったか」
「よかったな、フィン。フレイヤ・ファミリアも含めたら順調に増えているぞ」
「まったくだ。僕達、
「問題とはなんだ?」
リヴェリアさんとフィンさんの会話に椿さんが気になったようで聞きました。
「いや、クルミが問題なんだよ。彼女……残念ながらアレなんだよ」
「うむ? ああ、もしかして男嫌いという奴か」
「マイルドに言ったらそれだね」
「男嫌いというより、女性が好きなのだろう。恋愛対象が女性だと堂々と宣言している」
「ほほう。間違いないのか?」
「ロキにも確認したが、事実のようだ」
「そういえばリリの事を自分のと言っておったな。なるほど、そういう事か」
「これで普通に男性が好きだったら、
「フィンはアタックしないのか?」
「したけど振られたよ。ああ、こっぴどくね」
「ティオネが認めるぐらい、全力の拒否だったな」
「その話、気になるぞ」
「クルミがフィンに言った言葉はこうだ。とりあえず、男に抱かれるか、抱いてから出直して来いとの事だ」
「それはまた……だが、不可能ではないのか?」
「無理だ。たとえ、想像したくもないが、やった後だとしても話を聞いて逃げられるのが目に見えている」
「嫌がらせもかねた断り文句だということだな。うむ。クルミを攻略するには性転換せねばならんということか」
「それをする意味がないんだよ。僕が欲しいのは強い
「安心してくださいまし。わたくしがどうにかしてみせます。ええ、してみせますとも」
「女同士で子供を作る方法か?」
「それも視野に入れておりますが、性転換薬を作るか、魔法で姿を変えるか、です」
「リリならできるであろうな」
「それだとわたくしが産まなくてはならないので嫌ですわ。私は孕むのではなく、孕ませたいので」
「馬鹿な話をしている間に着いたぞ」
どうやら五十二階層への入口に到着したみたいですわ。本当、ベートさんもティオナさんも凄い暴れっぷりです。相手になっておりません。
「ここからは補給はできないと思ってくれ。止まる事ができない」
「なぜだ?」
「止まると狙撃されるっす」
「狙撃、ですか?」
「この先は地獄っすから」
「地獄?」
「きひっ! いいじゃありませんの、地獄。と~っても楽しみになってきましたわ」
「行くぞ!」
フィンさんの言葉でわたくし達は五十二階層へと突入いたします。
五十二階層は石で作られた通路がひたすら続く洞窟で、敵らしい敵も見えません。
「フィン、狙撃とはどういうことだ? それらしい気配もないが……」
「いや、もう捕捉されている」
「なんですか、この音……」
「ベート! 転進しろ!」
「ちっ!」
聴きなれた音が聞こえてくると、ベートさんが移動先を変えます。すると、彼が先程まで居た場所が突如赤くなり、炎の柱が生まれました。炎の柱が消えると、そこには大きな穴があります。
「西のルートに迂回する!」
急いでベートさんを追っていきます。わたくし達が走った後を追ってくるように下から炎の柱が生まれていきます。
「なるほど、これが狙撃かぁ!」
「ラウル避けろっ!」
「え?」
「ラウルさんっ!」
レフィーヤさんがラウルさんを突き飛ばすと、何処からか飛んできた糸がレフィーヤさんの腕にとりつき、そのまま彼女を攫っていきます。その先を見ると天井に蜘蛛の
「きゃぁぁぁぁっ!?」
「「「レフィーヤっ!?」」」
わたくしは即座に彼女の影に潜んでいる者達を呼び出し、わたくし自身も転移します。
「大人しくしてくださいまし」
「クルミさんっ!」
レフィーヤさんを抱きしめ、別のわたくしに
「アレが、かいそう……ぬし?」
「焼け石に水でしょうが……やらぬよりはましでしょう」
「な、なんですかこれっ!?」
「いいから付けてくださいまし! セットアップ!」
サラマンダーウールで作ったリリさんの服を強制的にレフィーヤさんとわたくしに瞬間装着させます。この魔道具は予備であり、実証実験のための物でもあります。流石に変身シーンもなければ声もありません。そもそもレフィーヤさんの声で作っていないので仕方がありません。ちなみにわたくしのは真っ赤なドレスです。ほぼ何時もの変わりません。
「このまま飛んで戻りますか、わたくし?」
「いえ、それには及ばないようです。それに逃げる前に殺されますわ」
「ですわね」
「えっと……」
「んにゃろぉぉぉぉぉぉっ!!」
ティオナさんが落ちてきて、わたくし達の先に出て迫りくる死をもたらす赤い炎の柱を
「あっちぃぃぃっ! ふぅ~さすがはリヴェリアの魔法!」
「何やってんだノロマっ!」
「レフィーヤ、クルミ、無事? このまま五十八階層まで落ちて片を付けるわ。レフィーヤ詠唱!」
「はっ、はい!」
ベートさんとティオネさんも降りてきたようなので、これで大丈夫でしょう。レフィーヤさんも詠唱を開始しましたし。なら、わたくし達も動きましょう
「誇り高き戦士よ、森の射手隊よ。押し寄せる……」
レフィーヤさんが詠唱していると、また炎の柱が襲ってきたのでわたくし達が前に出ます。
「ちょっとクルミ!? 私がなんとかするわよ!」
「いえ、ここはわたくし達にお任せくださいまし」
「お返しいたしますわ!」
再設定した入口はわたくし達の下。つまり、炎の柱をUターンさせました。出口になったわたくしの一人が死にましたが、必要経費です。
「面白い事をするわね!」
「ふん。まあ、やるじゃねえか」
「当然ですわ。レフィーヤさん、詠唱の続きを」
「はい! 押し寄せる略奪者を前に弓を取れ」
落ちている最中に
「待てやごらぁっ!」
ベートさん達を剣斧の重量で追い越し、未来予測で自分という弾丸の弾道を計算して赤いドラゴンの上になるように調整します。あと、動かれても嫌なので
「きひひひひっ!」
顔を上げていた赤いドラゴンさんは炎を吐いてきましたが、気にせず突撃します。一応、
「GURAAAAAAAAAっ!」
炎を突破して口内に突入。そのまま魔石を貫いて着地します。クッションのドラゴン君は亡くなられたましたが、すぐにわたくしも後を追いそうなので自らの蟀谷に短銃をあてて
その間に剣斧君は別のわたくしに渡して再突撃です。ベートさんは足で、ティオナさんは大剣で切り裂き、それぞれ赤いドラゴンを処理します。
「戻って来てやったぞ、くそったれ共」
「
「ヒュゼレイド・ファラーリカ!!」
上からティオネさんにお姫様抱っこされたレフィーヤさんが詠唱していた魔法を放ちます。放たれたのは数百数千にも及ぶ炎の矢を雨のように降らせる魔法です。炎属性の広域攻撃魔法。ワイバーンっぽい魔物や新種のイモムシの魔物、ドラゴンの魔物も纏めて焼き払ってしまいました。
「死ぬかと思いました」
「これだけの魔法を放っておいて何言ってるのよ」
「新種も
「本当、レフィーヤさんは見かけによらず負けず嫌いというか、なんというか……やられたら数倍にして返す方ですのね」
「ち、違いますよ! 私はそんな事はしません!」
「でも、確かに炎でやられたからって炎でやりかえしてるわね」
「だよね~」
「うぅ……」
「おい! 来るぞ!」
ベートさんの言葉と同時に地面が割れて、馬鹿みたいに大きな十メートルはありそうな巨大な
「でかい」
「階層主ってわけじゃないでしょうけど……」
「やべぇっ!?」
「わたくし達!」
レフィーヤさんを囲むようにして展開して殺してまわり、レフィーヤさんは魔法を使って囮と同時に殲滅もしてもらいます。他の方々は
「きひっ! 入れ食いのカーニバルですわねっ!」
「これをカーニバルとか、頭が狂ってんじゃねえかっ!」
「そんな事はありませんわ。だって、とっても楽しいではありませんか!」
「いやいや、大変だからね!」
「ならもっと呼びましょう!」
追加を呼んで全員に
「しつこい奴らだぜ」
「ウィン・フィンブルヴェトル!」
ですが、ボーナスタイムは終わりのようです。リヴェリアさんの魔法が飛んできて、周りを氷漬けにしていきました。どうやら、皆さんが合流したようです。戦いは終わりになったので、ドロップアイテムを回収して地上に送りましょうか。
レフィーヤ、レベル3でこの火力なんだよね……どう考えてもレベル詐欺。レベル4や5であろう
クルミちゃんは非力だからダメージを与えられません! バリスタもレベル4や5にはたいして効果は得られません。頑張れ! 頑張れ!
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このまま|刻々帝《ザフキエル》のみ