ダン狂~くるみ(偽)とリリのダンジョン探検~   作:ヴィヴィオ

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勇者フィンの時をかける冒険上

 

 

 

 

 

「メテオ・スウォーム!」

 

 

 

 

 助けに入りたいという思いを押さえ込み、隠れて様子を確認していたが親指が疼いて即座に逃げた。こちらにも当然のように降ってくる隕石から必死に走って逃れる。

 隕石が地面に激突する衝撃で何度も身体が吹き飛ばされ、僕と同じように吹き飛ばされ木々が激突してくる。それらを蹴り返したりしてどうにか防ぎ、精霊の強化種が放ったメテオ・スウォームから逃れる。しかし、精霊の強化種は休ませてもくれない。

 

「ファイアーストーム!」

 

 紫色の炎が嵐となってこちらにも襲い掛かってくる。それらを先程、メテオ・スウォームによってできたクレーターに入り、やり過ごす。炎が通り過ぎたら、すぐに別のクレーターに移動して襲ってくる炎をやり過ごしていく。

 あくまでも地表に居るロキ・ファミリアを狙っている攻撃なので逃れられているが、少しでもミスしたら死ぬのは確実だ。

 しばらくすると、後ろから大量の新種が現れる。ソイツらを素手で殴り飛ばし、逃げ回る。本来なら殺すのは容易いが、武器もない状態でこいつらの酸を受けるのは遠慮したい。

 

「何を恐れている。僕達がやることは一つだ。あの魔物達を討つ。君達に勇気を問おう。その瞳には何が見えている? 恐怖か、絶望か、破滅か! 僕には倒すべき敵、勝機しか見えない! もとより退路など不要だ! 全身全霊でこの槍を以て道を切り開く! 小人族の女神、フィオナの名に誓って君達に勝利を約束しよう! 付いてこい! それとも、ベル・クラネルやフレイヤ・ファミリアの真似事は君達には荷が重いか?」

「ちっ、雑魚やアイツに負けてられるかぁっ!」

「上等じゃない。私達も冒険しないとね」

「ベル・クラネル……」

「手前も弟子に冒険させておいて、師匠である手前が冒険せぬなど、許せぬな」

 

 死んだ皆の声を聞きながら、クルミがこちらに気付くまでどうにか対処をする。一瞬、あちらの僕がこちらに向くが、その前にどうにか新種の下に隠れることができた。当然、新種は口を僕に向けてくる。

 

「落ち着いてくれ。僕は食べても美味くはない!」

 

 あちらの僕がベート達を率いて一体目の精霊の強化種へと攻撃を仕掛けに行くタイミングを確認してから、新種を蹴り飛ばして下から這い出る。

 あちらの方を見ると、丁度いいタイミングでクルミが無数の分身達を呼び出して周りの殲滅と精霊の強化種への時間稼ぎに動きだしている。そこで、空に居るクルミの方へ寄ってくる新種を掴んで思いっきり投げてやる。

 

「っ!?」

 

 だけど、驚いただけで無視して精霊の強化種へ集中していく。だから、次々と投げていくと、クルミも流石に鬱陶しくなったのか、こちらを見た。そのタイミングで直撃するコースで送り込むと、彼女は避けてから数人でこちらに銃撃を放ってきた。その弾丸を新種を打ち上げることで迎撃すると、流石に気付いたようでこちらに飛んできた。

 

「あらあら、先程から鬱陶しいことをしてくださっていたのは何処の何方かと思っていたら、フィンさんではありませんか」

「ええ、そうですわね、わたくし。ですが、おかしいですのよ。だって、フィンさんはあちらに居ますもの」

「では、偽物でしょうか、わたくし」

 

 彼女達は当然、僕に向かって冒険者には非常に珍しい……ほぼ皆無といっていい銃を向けてくる。銃は一般の者が使うなら確かに弓より強い。だが、それはあくまでも単発の場合だ。弾丸を一回一回込める手間と威力、連射速度を考えるとどうしても冒険者が使う場合は弓の方が強くなる。彼女の場合は魔法によって作り出されているためか、普通にほぼタイムラグ無しでいくらでも連射してくるので脅威だ。

 

「では撃ちましょう」

「ええ、そうですわね」

「待ってくれ! 事情があるんだ!」

「事情、ですか?」

「聞く必要はありませんわよ、わたくし。だって怪しすぎますもの」

「……確かにその通りだ。だが、信じて欲しい。僕は未来から来たんだ」

「「未来、ですか……?」」

「そうだ。信じられない話だろうが、事実だ。頼む、時間がないんだ」

 

 数人がそろって小首を傾げるクルミ達。だが、彼女の銃口はこちらを向いたままで、地面に降りてこない。そもそもどうやって飛んでいるのかもわからない。

 

「未来、未来ですって、わたくし」

「ああ、ああ、もしかして、もしかするかもしれません」

「ですが、そうなるとわたくしがこちらに送ったという事ですわよ? ありえなくありませんか?」

「そうですわね。このわたくしが、フィンさんを送る? 送るのならばアイズさんか、ティオナさんではありませんの?」

「彼女達は死んだ。生き残っているのはおそらく僕だけだ」

「なるほど、なるほど。確かにそれが事実ならばフィンさんを過去に送るかもしれません。そうなると、未来を変えるために来られたんですの?」

「そうだ。皆が生きて地上に帰るために協力してくれ!」

「しかし、それだと未来のわたくしは過去のわたくしに連絡を取る手段を使っていないのがおかしいんですの」

「その時間がなかったんじゃないのかな? あの状況では仕方がない」

「あの状況というのが、何なのかわかりませんが……それが事実だと証明できます? 流石に簡単に信じられませんわ」

「できない。だが、信じてくれとしか言えない」

「でしたら、証明する手段があります。それをさせていただけますか?」

「わかった。やってくれ」

 

 彼女達からしたら、僕は怪しすぎる。敵が化けている可能性もあるのだし、この対応は納得だ。僕が僕であるという事が証明できるのならば構わない。

 

「今から貴方に打ち込む弾丸は対象の記憶を読みます。つまり、フィンさんがこれまで辿ってきた道を全てわたくしが見て、聞いて、体験することができます。これにより、フィンさんの言っていることが事実であるならば証明ができます」

「それは……駄目だ。ロキ・ファミリアの機密情報が全てクルミに流れることになる」

「でしたら、諦めてお帰りなさいませ。たとえ、わたくし達が全滅するというのが事実ならば、フィンさんは団長として五十階層に帰還し、残っているロキ・ファミリアの方々を率いて地上に戻るのがベストでしょう」

「それはそうだ。だが、助けられる手段があるのならば助けたい! 頼む!」

「では、記憶を読ませて証明してくださいまし」

「だからそれは無理だ」

「でしたら、こちらも無理ですわ。そちらの言葉を一応、信じて警戒ぐらいはしてさしあげますが……」

 

 何を警戒しているのかがわからないが、僕が記憶を見せない限りは頑なにこちらの言葉に納得しない。いくら会話を積み重ねても平行線だ。

 

「わかった。もういい。時間がないんだ」

「ですわね」

「せめて武器だけは渡してくれ。僕が命を賭けて皆を救う。その行動を見てクルミが判断してくれ」

「……仕方ありませんわね。わかりました。では、武器を渡します」

 

 クルミはそう言って予備として渡しておいた槍を二本、こちらに投げてきた。僕はそれを受け取り、何度か振るってから確かめる。

 

不壊属性(デュランダル)ではないが、どうにかできるだろう」

「参考までに敵は何方でしたか?」

「君だ。君の反転した彼女だったよ」

「……白の王女(プリンセス)ですか」

「白の王女(プリンセス)か。可愛らしい彼女にはお似合いの名前だね」

「わたくしですもの、当然ですわ」

「彼女について知っている情報があれば教えてくれ」

「教えてさしあげるとよろしいのではなくて?」

「……敵の情報ですから、構いませんか。いいでしょう。彼女の能力は空間を操ります。彼女にとって距離は関係ありません」

「もしかして、あのすり抜ける攻撃もそうか?」

「すり抜ける、ですか?」

「ああ、そうだ。武器で防御しようにも武器をすり抜けて軍刀でティオナ達が一撃だった」

「……そもそもその場所を斬っていたのか、武器が通る空間を書き換えて別の場所に出現させていたのか、どちらかはわかりません」

「ありがとう。それだけでもかなりの情報になった」

「……一つ、合図を決めます。わたくし達が勇者と呼んだら、放った弾は確実にくらってくださいまし」

「それは?」

「過去へ飛ぶための弾ですわ」

「やはり、何度もやり直せるのかな?」

「わたくしの時間が続く限りです。おそらく、未来のわたくしは自らの死を選び、貴方を過去に送りました。ですが、今のわたくし達はそのようなことはしません。ですが、保険はかけさせていただきます」

「それで十分だ」

 

 全ては彼女達の気分次第という事だ。だが、それに文句をつけられるはずもない。何せ文字通り、彼女達が全てを犠牲にして放つ弾丸だ。自らの完全消滅をしてでも現実を変えたいという思いがなければできない。だから、彼女達を置いて襲撃を仕掛けられる場所に移動する。

 

「貴方の言葉が事実であれば、貴方は見つかってはなりません。わたくし自身、何が起こるかはわかりませんが、ろくでもないことが起こるのは確実です。遠距離からの全力投擲。ただの一度に全てを賭けるとよろしいでしょう」

「忠告痛み入る。ところで、一つ聞きたいのだが……」

「なんですの?」

 

 気になって振り返り、彼女達に問う。

 

「もし、僕ではなく、アイズやティオナだったら君は素直に協力するのかな?」

「「当たり前ですわ!」」

「……そうか……そうか……すごく複雑な気分だ」

「わたくしが二人と何度一緒に寝たと思っておりますの? 彼女達に違和感があれば気付きますし、ティオナさんであれば普通に記憶を読むのだって受け入れてくださいますわ。アイズさんに至ってはわたくし達は近しい物があります。ですから、彼女の事はわかります」

「うん。それを聞いて少し安心したよ。僕はこの状況でもこれからの事を考えてしまう。君達の信用と信頼を得るためには全てをさらけ出す必要があるんだろう。だが、それはロキ・ファミリアの団長としてできない。たとえ、君達が悪用しないと誓ったとしてもだ」

 

 僕の記憶を読ませるという事は僕だけじゃない。ロキ・ファミリアに所属する全ての者達が持つスキルや魔法。様々な個人情報にどのような緊急時の対応マニュアルを作っているかなど、防衛に関することもある。

 

「団長として家族は裏切れませんか」

「ああ、そうだ。僕にとってロキ・ファミリアは野望を叶える手段であり、大切な守るべき家族だ。そのためなら命ぐらいいくらでも賭けよう。ロキと女神フィオナに誓ってね」

「少し見直しましたわ」

「おや、軽蔑されていたのかな?」

大人のわたくし(時崎狂三)達が選んだ五河士道(あの人)は自分の記憶なんてわたくし達の信用と信頼を得るためならば平気で、一切の躊躇なく渡してきますもの。だからこそ、わたくし達はあの時、協力したのでしょう」

「そんな人が居るんだね。なるほど、そういう意味では僕は不合格だったわけだ。だったらなぜ忠告やヒントをくれたのかな?」

「今まで世話になっておりますもの。恩を仇で返すつもりはありません。ですから、貴方をわたくし達の勇者と認めたわけではありませんので、あしからず」

「そうか。わかったよ。小人族(パルゥム)の勇者として相応しいかどうか、判断してくれ。認められるよう、全力を尽くす。いや、違うな。全力を、限界を超えて皆を救おう。その為なら、精霊の一人や二人、倒してみせる」

「期待しておりますわ」

 

 そう言って、彼女達は他の子達とは別に違う場所に飛んでいった。どうやら、戦いに参加するつもりはないようだ。それでいい。これは僕達ロキ・ファミリアの問題だ。彼女の反転体とはいえ、そうなる原因を作ったのも僕達であるのだから。

 

 

 

 

 

 この辺りがいいだろう。見晴らしもよく、彼女達がよく見える。投げるタイミングはあの炎が現れた時でいい。しかし、逆境時に魔法およびスキルの効力が高増幅されるスキル、小人真諦(パルゥム・スピリット)と槍を装備している時に発展アビリティ【槍士*1】が一時的に発現するスキル、騎心一槍(ディア・フィアナ)、高揚魔法であるヘルフィネガスは発動できるのはいい。

 問題はLv.および潜在値を含む全アビリティ数値を魔法能力に加算させ投槍による攻撃を放つ投槍魔法ティル・ナ・ノーグを既に使っていることが痛い。この魔法は一度発動すると、再度使用するのに24時間のインターバルが必要だからね。

 

「まあ、それでもやるしかない」

 

 詠唱を開始する。碧眼が紅眼に変化し、指先に紅い魔力が集まって槍の穂先の形となる。それを自身の額を撃ち、戦闘意欲が引き出す。全能力が超高強化され、僕は一時的にレベル7と同レベルのステイタスを得ることができる。

 

「さあ、行こう」

 

 槍を掴み、全力を以てアイズの少し後ろに向けて投擲する。一本目と二本目は時間差を置いてほぼ同じ場所に向かって投擲だ。

 

「っ!? アイズ避けろ!」

「え?」

 

 超高速で飛来した槍はアイズの背後の空間を貫き、彼女を吹き飛ばす。それだけだった。先程までアイズが居た場所には小さな白い手が見え……そこにはアイズの心臓が握られていた。

 

くそぉおぉぉぉぉぉっ!!!! 

 

 その後は前回の焼きまわしだ。僕はあちらに進もうとする身体を必死に押さえつける。するといつの間にか隣にクルミが立っていた。

 

「失敗しましたわね。流石にあちらも警戒して初手は遠距離から空間を繋げての一撃でしたか。まあ、わたくしの事を知っているのですから、当然の対策ですわね」

「……失敗すると、わかっていたのか……?」

「いえ、二割は成功するかもしれないと思っていました」

「八割は失敗するという事か……」

「あちらもこちらの手を知っていますもの。白の王女(プリンセス)はわたくしでもあるのですよ?」

「ああ、確かにそうだ。時間を遡って未来を変えに来ることぐらいは予想してしかるべきか」

 

 初手は防がれることのないように確実に殺しにきている。それからはわざと姿を見せてアイズの心臓を喰らう姿を見せて冷静な判断をさせないように立ち回っているようにも感じる。

 

「クルミ……頼む」

 

 頭を下げて駄目もとで彼女に頼んでみる。僕の頭ぐらいでいいのならばいくらでも構わない。

 

「お断りしますわ」

「……そうか……」

「どうしますの?」

「決まっている。このまま戦いに参加する」

 

 戦場に進もうとすると、僕を包囲するようにクルミが現れ、銃を向けてくる。どうやら、僕を行かすつもりはないようだ。

 

「わたくし、言いましたわよね? 自分に見つかってはならないと」

「それがどうした。もはやアイズを救えないというのなら、出来る限り被害を少なくする。僕自身がどうなろうともだ」

「被害がフィンさん自身で止まるとは思えませんよ」

「それでも、だ」

「というか、無駄死にですわよ?」

「言っただろう。それでも、だ」

「やれやれですわね。でしたら、まず報酬のお話をしましょう」

「……そう言えばしていなかったね。確かに断るわけだ。僕も頭にかなり血が上っているらしい。言い値で支払う。ただし、僕の裁量に超えるものはできない」

「わかりました。こちらの要求は三つ。まず、わたくしのお願いにどんなことでも絶対に二つだけ叶えることです。もちろん、ロキ・ファミリアに損害はでませんし、フィンさんが叶えられることですので安心してください」

「それが二つだよね?」

「はい。最後の一つは単純です。ロキ・ファミリアの副団長、リヴェリア・リヨス・アールヴの説得です。こちらも彼女がロキ・ファミリアを離れるという事ではなく、わたくしのファミリアに居る団員について、隠匿と発覚した場合の沈静化にご協力いただく確約を頂きたいのです」

 

 リヴェリアを指定してくるという事は、エルフについてだろう。彼女のファミリア、ソーマ・ファミリアはエルフに知られてはまずい誰かを匿っているのだろう。それがエルフにとって敵か味方によって判断が分かれることになる。

 

「君は色々なファミリアに繋がっている。それでもリヴェリアの力が必要なのかな?」

「ええ、絶対に必要ですわ」

「そうか。確信しているのなら僕が言うことはない。つまり、君達はエルフの王族であるハイ・エルフに関わる何かを握っているわけだ」

 

 クルミの表情が変わった。これで確実だ。エルフの森を焼き払った魔剣に関する者達を匿っている方かとも思ったが、そちらではないようだ。

 

「ハイ・エルフの遺児か何か、もしくは犯罪か」

「わたくし、フィンさんの事は嫌いですわ」

「僕は好きだけどね」

「止めていただけます? 寒気がしますわ」

「傷つくね」

 

 身体を抱きしめて離れる彼女達に本当にダメージを受ける。彼女達が男性に興味がなく、女性の方に興味があるとわかっていてもだ。

 

「わかった。説得は手伝うが、決めるのはリヴェリアだ。団長として要請はする。これで勘弁して欲しい」

「ええ、構いませんわ。では、契約成立ですわね」

「ああ、契約成立だ。ロキと女神フィオナに誓って先の内容をたとえ、君達が忘れても達成しよう」

「いえ、その必要はありませんわ。だって、わたくしは忘れませんもの」

「そうなのかい?」

「はい。緊急時以外であれば方法はありますの」

「わたくし。来ましたわ」

「では、行きますわよ」

「ああ、やってくれ」

「<刻々帝(ザフキエル)>、六の弾(ヴァヴ)

 

 まず、彼女は自分自身を撃った。その撃った彼女は倒れてしまった。すぐ隣の彼女が引き継いだのか、僕に銃を向ける。

 

「今のは?」

「対象の意識のみを過去の肉体に送る弾ですわ。効果は数日ですが、問題ないでしょう。フィンさんはわたくしがお送りいたします。移動したらその場に留まっておいてください」

「了解した。頼む、やってくれ」

十二の弾(ユッド・ベート)。それでは良き未来を得られるまでの絶望と苦難に満ち溢れた旅路がハッピーエンドの先へと到達する事を願っておりますわ」

「ああ、任せてくれ。僕は諦めない」

「期待しておりますわ」

 

 銃声が響き、僕の額が撃ち抜かれた。すぐに目の前が真っ暗になり、目の前に時計版が現れる。前も現れていたのかもしれないが、あの時は気付かなかったのだろう。その時計版が高速で巻き戻っていく。

 

 

 

 

 

 

「ばぁっ!」

 

 目を開けると、そこにはクルミが居た。周りからは激しい戦闘音が聞こえてくる。どうやら、僕は地面に寝かされていて、彼女に覗き込まれているようだ。

 

「こういう時、膝枕をしてくれるんじゃないのかな? アイズはベル・クラネルにしていたそうだが?」

「何をとち狂ったことをおっしゃっておりますの? ぶち殺しますわよ」

「遠慮しておこう。それよりも、だ」

 

 起き上がってすぐさま周りを確認する。そこには大量の新種が居たが、複数のクルミ達が銃撃で殺している。それも数々の武器を持ち、それで新種を殺しているようだ。ただ、その武器は新種の体液を受けても壊れているようには見えない。

 

「もしかして、その数十の武器は全て不壊属性(デュランダル)かい?」

その通りでございますわ(Exactly)。ちょっと数日前に意識が未来から勝手にダウンロードされてきましたので、インストールしました。そこで必要になる物をオラリオ中を駆け回り、鍛冶師達を不眠不休で働かせ、持ってるファミリアにカチコミをして借りうけてご用意いたしましたの」

 

 周りを見ただけで、いったいいくらしたのか、頭が痛くなる。少なくともフレイヤ・ファミリアや鍛冶師達には借りができた。

 

「そして、フィンさんの神、ロキさんよりプレゼントですわ。何が起こってるかはようわからんが、可愛いアイズたんの危機や。金とうちができることは惜しまん。だから思いっきりやってこい! との事ですわ」

「ロキに伝えたのか」

「概要だけです。ただ、このままではフィンさんを除いたアイズさん達が確実に死にますので協力してくださいとお願いしただけですわ。フレイヤ・ファミリアの説得もご協力いただきました。今までの貸しをチャラにする代わりだそうです」

「そうか。ありがとう」

 

 彼女が影からうやうやしく取り出し、僕に渡してきた二本の槍は今までのどの品よりも、力強い力を感じる。一つは穂先が月光の様に青く輝き、三十もの魔石が設置された槍。もう一つは真っ赤に燃えるような力を感じる槍だ。

 

「この武器は……まるで生まれた時から持っているかのように手に馴染む」

 

 二つの槍を手に持つと、全ての部分に刻まれた神聖文字(ヒエログリフ)が浮き出してくる。片方から水のような清々しい気配がし、もう片方の槍からは熱い炎のような感じがする黄金の槍。

 

「材質はオリハルコンとアダマンタイトの合金です。そこにロキさん自身が神聖文字(ヒエログリフ)を刻み、魔導具を組み込むことで新たに生み出した魔装です」

「製作者はヘファイストス様かな?」

「その通りです。フィンさんの武器に使用した設計図などがあったので、そちらを基礎として生み出しました。青の方はとある神の血液を素材に使っております。銘はビルガ。黄金の槍はロキさんの血を使って生み出したオルラスハラと言います」

「フィオナ騎士団が使っていた魔槍だね。うん、完璧だ(Perfect)

「恐悦至極でございますわ」

 

 用意された槍を掴み、軽く振ってだけでも今までの槍とは格が違う。これなら彼女に対応できるかもしれない。

 

「これから行うのは失敗を前提とした試行錯誤です。フィンさんが死ねばその時点でフィンさんはリセットされます。そして、未来から戻ってきた別のフィンさんがまっさらな状態で頑張ってくれる……かはわかりません」

「つまり、僕は死ねないという事だね。クルミは?」

「わたくし達は意識を過去に送る事で、全員に共有させますのでどうとでもなりますわ。ですのでご説明はさせて頂きます。懸念事項はありますが、まずはトライ&エラーです」

「そうだね。できるだけの事はやろう。最初は彼女の居場所を割り出す事だ」

「探索はお任せくださいませ」

「方法があるのなら、任せる」

「では、フィンさんは周りの敵を狩ってわたくしに時間をささげてくださいまし」

「了解した」

 

 クルミは時喰みの城(ときばみのしろ)と呼ばれる結界を全力で展開して白の王女(プリンセス)を探してくれる。結界は結界で干渉できる。それは空間でも変わらない。だから、クルミは異常が検知された場所に白の王女(プリンセス)が潜んでいると判断したようだ。

 しかし、力の入れようが半端ない。これは最初から助けるのは確定事項として準備をしていたのかもしれない。そうでないと、いくら時間があってもここまではやらないだろう。おそらくだが、依頼という形で報酬を受け取るのが、彼女自身が全力で手伝うために必要なことなのかもしれない。それが過去を改変するルールなのかもしれないね。もしくは絞れる時に絞ろうという考えなのかもしれない。

 

 

 

 

*1
補正効果はLv.に依存する。




フィンさんの武器は元ネタであろうフィン・マックールより、彼の魔槍を選びました。ただの不壊属性(デュランダル)じゃ白ちゃんの相手はできないので、このように。それに数日前に意識が戻るのに準備しないはずがないですしね。
え? お金かけすぎ? 全部借金ですよ。どうせ過去改変で踏み倒せるし(もちろん踏み倒せません。作った理由は変わりますが、存在するという事はそれ相応の因果が発生して辻褄が合わされますから)

クルミは助けるつもりはありますが、しっかりと契約で報酬を頂きます。それが無理なら自腹を切って助けます。やる事は変わりませんが、報酬がある方がいいと思っているのと、フィンが白の王女(プリンセス)にルークを植え付けられて手駒にされている事も考え、記憶を読むことにこだわっておりました。白の王女(プリンセス)を攻撃したことと、それからフィンが過去に送られた事で問題ないと判断したわけです。裏切りが一番怖いですから仕方ないです。

ロキによる発現する天使

  • レーヴァテインから灼爛殲鬼(カマエル)
  • 変身術の逸話から贋造魔女(ハニエル)
  • 空飛ぶ靴から颶風騎士(ラファエル)
  • このまま|刻々帝《ザフキエル》のみ
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