ダン狂~くるみ(偽)とリリのダンジョン探検~   作:ヴィヴィオ

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赤から転落……でも、お気に入り登録が二千件を超えてた。やったね!
感想と評価が欲しいです。

あと、正直フィンさんを描くのは難しい。やっぱり、クルミとリリがメインですね。ソードもアニメしか持ってないので知らないですし。漫画は買ってみよう。
そういうわけで、基本的にベル君たちの方がメインになります。アニメがプライムで見れますから。ソードは基本的にちょちょい書いて挟む感じになるかもしれません。


勇者フィンの時をかける冒険下

 クルミが移動を開始してからしばし待つ。その間に近寄ってくる新種を狩って新しい武器、ビルガとオルラスハラの二つを使って合わせていく。どちらも魔石を使う事で魔剣よりも弱いがそれなりの効果ではあるが、発揮できている。

 

「フィンさん、お待たせいたしました。敵の巣穴は見つけました。ですが、あちらにも気づかれました」

「それは想定内だ」

 

 彼女が行ったことを考えると、あちらに気づかれるのは当然だ。何せ結界と結界を干渉させて焙り出す方式だからね。

 

「問題はあちらの僕達がこちらの戦いに気付いて来ないかという事だね」

「それでしたら、わたくし達が上手いこと誤魔化しておきますわ」

 

 おそらく、彼女が後方で戦っているとでも言うんだろう。まあ、彼等が来なければ問題ない。

 

「それで何処かな?」

「あちら……いえ、ここですわね」

「そうだね」

 

 クルミの言葉と同時に前方に飛び出すと同時に後ろに振り返って槍を振るう。すると、そこに現れた弾丸を弾くことができた。

 

「やはり気付かれましたか」

「親指が疼いていたからね」

 

 視線を声の方にやれば木の枝に座る白い髪の毛に白いドレスを着た彼女の姿が見えた。彼女の手にはクルミが持つのとよく似た短銃が握られている。

 

「しかし、どうしてわたくしが潜んでいると気付かれたのでしょうか。細心の注意を払っていたのですよ? 空間を別にしてフィンさんの感知能力の外におき、念の為にもう一体ご用意しましたのに……」

「それは秘密だ!」

 

 怒りに我を忘れそうになるが、無理矢理押さえ込んで一気に距離を詰める。彼女は瞬時にその場から消えて背後に現れる。ビルガの方を背後に振るうと、やはり擦り抜けてこちらへと迫ってくる。オルラスハラをその場で回転させることによって別の場所からきているであろう軍刀を弾く。

 

「命中させる時には必ず刃が届く場所に転移させてくる。それならその時に弾けばいい!」

 

 今度は右に転移してきたので、そちらを無視して左右両方を纏めて薙ぎ払う。すると彼女は軍刀で弾かれていく。その状態でもこちらに弾丸を飛ばしてくる。

 

「<狂々帝(ルキフグス)>、獅子の弾(アリエ)

「<刻々帝(ザフキエル)>、二の弾(ベート)

 

 空間を削り取る弾丸と時間を遅くする弾丸がぶつかり合い、対消滅を起こしたようだ。クルミは僕へ加速させる一の弾(アレフ)と数秒先の未来を見せる五の弾(ヘー)を撃ち込みんでくれた。これでもっと速く動ける。

 

「ちっ、厄介ですわね、わたくし!」

「そちらこそですわ、わたくし!」

 

 空間を断ち切った場所へと獅子の弾(アリエ)を放ち次々と飛ばしてくる弾丸をクルミは人数を動員して未来予測を利用して撃ち落としていく。

 

「どっちもだろう!」

 

 白の王女(プリンセス)が軍刀を振るってくるので、回避を優先して槍の優位な距離で連続で突いていく。そうすれば彼女は防戦一方となり、距離を取るしかない。

 

「わたくし達!」

 

 距離を取ろうにもクルミが数を頼りに銃撃してくる。こちらに命中しようがお構いなしだ。僕の方で回避して彼女をサポートする形を強制されているといった感じだ。だが、それでいい。お陰様で対処はできている。

 槍と軍刀を幾度もぶつけ合いながら、激しく切り結ぶ。彼女の戦闘力はクルミを遥かに超えてレベル6の領域に到達している。そこに空間を操る能力なのだから、実質はレベル7相当だろう。

 

天秤の弾(モズニーム)

 

 彼女がそう言って弾を放つと、こちらにメテオ・スウォームが降ってきた。どうやら、精霊の強化種が放った魔法を一部とはいえ空間を操作してこちら放ったようだ。

 メテオ・スウォームの迎撃まで加われば下がる事しかできない。そうなると厄介だ。ファイアーストームとかだと防ぎきれないだろう。

 

「フィンさん。死なないでくださいまし!」

「は?」

「ぱっきゅーん♪」

 

 白の王女(プリンセス)ではなく、クルミの方から嫌な感じがして即座にその場から離れる。可愛らしい声で発射の合図をしてきたが、飛来したのは音を置き去りにした爆発で、白の王女(プリンセス)を中心に百八十度から弾丸の雨が降ってくる。

 

巨蟹の剣(サルタン)!」

 

 空間を切断して防壁を張るが、それは一部。他の場所も含めて近距離から放たれたそれを回避することは不可能。彼女はなんとか転移したようだが、身体がボロボロだ。そこに僕が接近して首を狙う。だが、回避されたので二の刃を放ち、手足を切り落とす。

 

水瓶の弾(ドゥリ)!」

七の弾(ザイン)

 

 自らに自己修復の効果を持つ弾を撃ち込むが、クルミが一時停止をする弾を撃ち込んで回復を阻害する。僕は炎を起動させ、とどめを刺しにかかる! 

 

「きひっ!」

「フィンさん!」

「くそっ!」

 

 突き出した槍は彼女の前に空いた穴を通し、その先にあった物を串刺しにした。それは僕が守るべき者の命だ。

 

「あっ、ああぁあぁぁぁぁっ!」

十二の弾(ユッド・ベート)!」

 

 クルミの声が聞こえて視界が暗転する。気が付けばまた時間を巻き戻っていた。それでも、僕が槍で彼女の心臓を貫いた感触が手に残っている。だから、蹲って吐いた。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

「大丈夫ですの?」

「だい、じょうぶだと思えるかい?」

「止めますか?」

「いいや、まだ止めない。次こそは……」

 

 諦めない。諦めてたまるか! 

 

 だが、現実は非情だ。何度やっても必ず誰かが死ぬ。白の王女(プリンセス)を追い詰めにかかると、こちらを無視してアイズ達を殺しにかかるからだ。アイズ達だけでなく、精霊の強化種が行う魔法を別の階層にいるアキ達にすら届かせる時もある。それだけでアウトだ。

 こちらが過去を改変できる事を知っているからだ。つまり、僕達にははなっから勝ち目がない。絶望の未来しか用意されていない。

 

「これはもう、アキさん達を助ける方に行きませんか?」

「駄目だ。まだ試していないことがあるはずだ」

「ですが、もう六六回目ですの。その数だけ、わたくしも死んでいるんですが……」

 

 確かに彼女は何度も死んでいる。僕と違って意思と記憶を過去に送っているだけだ。何十回も頑張っても必ずアイズが殺される。それにレヴィスが増援としてくる時もあった。だから、どんなに撤退に追いつめても必ずアイズを仕留めて帰られる。

 

「女神フィオナよ、どうすれば……どうすればいいのか……」

「神頼みなんてだいぶ逝ってきましたわね。そろそろ殺してリセットしますか?」

「それもいいかもしれない。まるで世界が必ずアイズを殺したがっているかのように一度も救えていない」

「世界? ああ、確かにそうですわね。それなら、世界をだまくらかすしかないでしょうけれど」

「世界を騙す? いや、そうか。できるかもしれない。クルミ、お願いがある」

 

 僕は思い付いた方法をクルミに説明する。内容からして、当然のように彼女は激怒した。当たり前だろう。

 

「は? ふざけてますの? ぶち殺しますわよ。やばいですね☆じゃなくて、ガチでヤバいです。それをわたくしが許容するとでも?」

「可能なはずだ。安全にできるんじゃないか?」

「危険には変わりありませんよ。それにそんな事をしたら、絶対に白色のわたくしは彼女を狙うでしょう」

「それでも頼む」

「本当に貸しが大きいですからね。それと拒否されたら諦めてくださいまし」

「わかった。その場合は別の方法を探そう」

「……本当にリヴェリアさんとエルフの件、お願いしますわよ」

「命を賭けてでも説得する」

「いいでしょう。では、特別ゲストをお呼びしましょう」

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

「「きひっ! きひひひひっ!」」

 

 何回、何十回目になる白の王女(プリンセス)との殺し合い。すでに彼女の癖や戦術は頭に叩き込み、身体に教え込んだ。クルミも同じで、未来予知に頼らずもその行動は読める。

 

「ああ、楽しいのですが、何故こうも対応されるのでしょうか? もしかして既知が止まりませんか?」

「ええ、ええ、貴女のおかげで既知が止まりませんの。ですから、いい加減にくたばってくださいません?」

「お断りですわ!」

 

 彼女が転移してくる場所に前もって槍を置いておく。すると白の王女(プリンセス)が現れて勝手に貫かれる。当然自己修復により、無事だ。それにしても、的確に大事な部分は守っているのが凄い。

 

「痛いですわ。女の子には優しくしませんといけませんわよ? ですから、今までお相手がいらっしゃらないんじゃありません?」

「痛いところをつくね。だけど死んでくれ」

 

 全力で槍を振るうと、その場から消える。僕は顔をずらすとそこに弾が通り過ぎていく。お礼として槍の炎をプレゼントとする。すぐにまた消えるので空間に水を撒いて彼女が現れる場所を確定させてやる。

 

「これは敵いそうにないので、お暇しておきますわ」

「逃がすかっ!」

「待ちなさい!」

 

 僕とクルミが叫ぶも、彼女はすでに居ない。視線を精霊の強化種と戦っている場所に送ると、そこではアイズが倒れていくところだった。

 

「クルミ」

「心得ておりますわ」

 

 即座にクルミ達が襲撃をかけていく。アイズごと銃弾の雨によって粉砕することで白の王女(プリンセス)は負傷を負いながらも撤退していった。残ったのは肉片となったアイズの死体だけだ。

 

「さて、完全に退却したようですし、ミッションコンプリートですわね」

「ああ、そうだ。これでようやくこの無限のような旅から止まれる」

「いい経験ができましたわね」

「もうごめんだけどね」

 

 視界が点滅していき、身体に力が入らなくなって地面に倒れる。すると、クルミが受け止めて膝に乗せてくれた。

 

「お疲れ様でした。それではまたのご利用お待ちしておりますわ」

「もう勘弁してくれ。今から請求書が怖い」

「逃がしませんから」

「あははは」

 

 眼を瞑るとどこかに引っ張られるような感じがする。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

「フィン! フィン! 起きろ! どうした!?」

 

 声が聞こえ、さらに頬に痛みを感じて目を開く。するとリヴェリアとティオネの顔があった。

 

「団長! しっかりしてください!」

「ここは……」

「アイズの事があったとはいえ、惚けている場合ではない!」

 

 リヴェリアの言葉に周りを確認する。そこは最初に僕が過去に送られた場所だった。近くにはアイズの肉片だろう物と包囲されているクルミ。彼女を襲おうとして止められているベート達。

 

「てめぇ、なんでアイズごとやりやがった!」

「必要だったから、と言っているではありませんの」

「クルミ」

「あら、お帰りなさいませ。この人達、退かしてくださいません? さっきから近くて、唾がかかって汚いですの」

「ああ、悪かった。ベート下がれ」

「何を言ってやがる! コイツは……」

「大丈夫だ。クルミ、計画通りだな?」

「ええ、完璧に」

「そうか。それでは戻るとしよう。僕達を待っている子がいるからね」

「フィン。どういうことじゃ?」

「説明はまた今度する。今は移動が先だ。クルミ、ドロップアイテムの回収は?」

「できております」

 

 皆は文句を言うが、ここにまだ彼女達が居たら困るからね。すぐに五十階層まで戻る。クルミに巻き戻す弾ももらって補給もしてもらったので帰りはどうにかなった。雰囲気は最悪だが、警戒を密にするようには言っておいた。

 

 そして、五〇階層に到着すると、フードを被った少女とアキ達が迎え入れてくれる。

 

「ただいま戻った。アキ、そちらは大丈夫だったか?」

「はい。アイズさんが先に帰ってきた事には驚きましたが、それ以外はとくにありません」

「「「は?」」」

「え、アイズさんって死んだんじゃ……」

「嘘いってんじゃねえ! 俺達の前でアイズは……」

「ひどい。勝手に殺された。生きていたら駄目なの……?」

 

 フードの少女から発せられたアイズの声にレフィーヤが震えて抱き着いていく。他の者達も同じだ。

 

「フィン。説明しろ」

「そうじゃ」

「何、アイズが狙われていたから、ゲストとアイズを精霊の強化種を一体目に倒したところで入れ替わってもらった。アイズに変身してもらった彼女とね」

「なら、その子は……」

「地上で文句いいながら殺された恐怖から逃げるために劣化ソーマでヤケ酒中ですわ」

「もう地上に戻ったのか。いや、クルミが移動させたのか」

「そういう事ですわ。内緒ですわよ」

「わかった」

 

 僕が頼んだのは分身を生み出せ、変身できる彼女にアイズとなって身代わりとして死んでもらう事だ。アイズだけはどうしても助けられないのなら、殺させて騙すというわけだ。

 だからこそ、心臓を抜かれて魔法が消えるまでにクルミが銃撃して粉々に判別できないようにするしかなかった。まあ、その銃弾の中に肉片も混ぜていたようだけど。しかし、駄目元で言ってみたのだが、実際に深層である五十九階層まで一瞬で来れるとは思わなかった。クルミ曰く、デメリットがあるらしいが、それが本当かどうかも怪しい。どちらにせよ、彼女達の価値は上がったのは事実だ。

 

「まずは休息を取る。全員、解散!」

 

 僕が指示を出してから、団長用の天幕に入る。クルミも何も言わずに僕の後ろを付いてくる。まるでそれが当然のように。僕も何も言わないし、リヴェリア達も入ってくる。

 

「さて、詳しい事を教えたいが……構わないか?」

「却下に決まっていますわ。頭がお花畑になりましたの?」

「やれやれ、相変わらず手厳しいね。アレだけ濃密な長い時間を共に過ごしたのに?」

「事実無根とはいいがたいですが、わたくしの命が危ないのでやめてくださいます? ほら、後ろに鬼がいるじゃないですか!」

 

 クルミは後ろにいつの間にか居たティオネに首を掴まれて持ち上げられた。足をプラプラさせて彼女の手を叩いている。

 

「ねえ、クルミの身体から団長の匂いがするんだけど、どうして? ねえ、どうしてなの? まさか、裏切ったなんて言わないわよね?」

「わたくしはティオネさんの味方ですわ。それにわたくしの身の安全のために良いお話を持ってきましたのよ?」

「本当に? 信じていいのよね?」

「ええ、信じていただいて構いません。嘘でしたら、殺してくださって構いませんから」

「……よろしい」

 

 普通ならリヴェリア達が止めるはずだが、先程のアイズの件もあって、まだ警戒したままのようだ。流石に攻撃しだすと止めるだろうけど。

 

「ティオネ。悪いが席を外してくれ。それとアイズには必ず君とティオナ、アキがついていてくれ。まだ狙われる可能性がある」

「……わかりました」

 

 ティオネが出て行ったので、僕はクルミに目を向ける。彼女は首筋を撫でてからこちらを睨み付けてきた。

 

「クルミは彼女が来たらすぐにわかるよう、結界を張っておいてくれ」

「既にやっておりますわ」

「助かる。リヴェリアとガレスには説明できる範囲でする。だが、二人も交代でアイズの護衛について欲しい」

「了解した」

「構わんぞ」

「では、説明だが……クルミ。出来る範囲で頼む。僕からしたらどこまでが可能かわからない」

「まあ、わたくしも使いこなせている訳ではありませんので、詳しくは知りませんが……反転したわたくしが空間を跳躍してアイズさんを喰らいに襲ってきたので、頑張って撃退した。それだけ覚えていただければよろしいかと」

「あの攻撃か」

「空間を捻じ曲げて直接体内から心臓を狙ってきた。生半可な方法では防げなかった。それこそ時間を操る彼女でなければね」

「……私は記憶していないが、そういう事なのだろう」

「よくわからんが、アイズが助かったのならよしとするわい」

「そうだね」

 

 話している間にクルミがこちらにやってきた。彼女はいつの間にか大きな樽を影から取り出していた。

 

「メロン……と、いいたいのですが、残念ながらお店が閉まっておりましたのでソーマです。請求書です」

「ああ、ありがとう」

 

 受け取って巻かれた羊皮紙を開いてみると、絶句するような値段が書かれていた。思わず手を離した。その羊皮紙はリヴェリアとガレスの方へと飛んで行った。

 

「なんじゃい?」

「どれどれ……」

 

【請求書】

 ロキ・ファミリア様

 ソーマ一樽 6,800,000,000ヴァリス

 

「なんじゃいこの値段はッ!?」

「高過ぎるぞ!」

「仕方ありません。だって、わたくしのオリジナルが六十六回、死んでますもの。お金で換算できるだけ、良心的なお値段ですのよ?」

「まあ、そうだね」

「「フィン!?」」

 

 僕が納得すると、二人はそろって身体を揺さぶってくるけれど、仕方がないことだ。

 

「ところで、僕と契約した内容とは違うのだけど?」

「はい。これはあくまでも金額に換算した場合、というだけですわ。ロキ・ファミリアの、いえ、団長であるフィンさんへの絶対命令権。これを三つで千万ヴァリスまで減額いたしますわ。この一千万はアイズさんの代わりに死を体験した彼女の取り分です」

「いいだろう」

「フィン」

「僕が叶えられる事でアイズ達を助けられるなら、と受けたことだ。まあ、その一つにリヴェリアの説得があるんだけどね。残りにしてもロキ・ファミリアに被害が出ないようなものに限定されている」

「私の説得だと?」

「はい。わたくし達が保護している方について、わたくしとご本人の意向が叶うようにしていただきたいのです。残りの命令も今、この場で使わせていただきますのでご安心くださいませ」

「リヴェリア、あくまでも本人の意向があればという事なので、どうだろうか?」

「アイズを助けるための負債ならば負うのはかまわん。だが、誓って犯罪ではないのだな?」

「はい。むしろ、わたくし達が被害を受けずに助けて欲しいぐらいです。爆弾を背負わされておりますのよ?」

「……爆弾だと? つまり、前ソーマ・ファミリアの団長かその団員がやらかした事か?」

「ですの」

 

 クルミが両手を重ねてウルウルと瞳を潤ませながらリヴェリアを見詰める。僕からもリヴェリアにお願いする。

 

「頼む」

「……内容を話せ。話はそれからだ」

「でしたら、誓ってください。絶対にここ以外で外部に漏らすのはなしですの。それで事情をお話しましょう。もしも、ばらすのであれば……それ相応の覚悟をしてもらいます」

「舐めるな。私は約束は守る。アールヴに誓ってやる」

「わかりました。では、お話いたします。えっと、リヴェリアさんに憧れたのか、同じようにオラリオにやってきたとあるハイ・エルフの方が居ましてね?」

「……マテ……」

「その方、闇派閥(イヴィルス)に騙されまして……」

「……マッテクレ……」

「子供を何人も産まされて自殺なさいました」

「…………」

「その自殺をさせてしまった方が、最後の子供を連れてそこを脱走。ソーマ・ファミリアに入られました。そこから、その子供を歓楽街に売ろうと教育なさっておりましてね?」

 

 話を聞いているうちにリヴェリアの爪が自らの皮膚に食い込んで血を流していく。僕とガレスは恐る恐る彼女を見るしかない。

 

「彼女の保護をかねて此花亭でお世話になっております。ただ、わたくしの愛人という事にして、他のファミリアの方々に手を出させないようにしておりますの。そこでご理解とご協力をお願いしようと思っております。具体的には彼女の教育をぜひにお願いいたします」

「……一つきく。その愚か者はどうなった?」

「しっかりと残りの時間を吸い取って養分にしました」

「生温いが、既に死んでいるのならばいい。それで愛人か。手をだしたのか?」

「彼女から望んできたので、耳をはむはむしただけです。ただ、舐めさせられたりはしていたようで、そういう事を進んでしてきました。ですので、一般的な、とはいいませんが普通のエルフ少女としての常識をリヴェリアさんにお願いいたしたく……」

「……ソーマ・ファミリアを滅ぼしていいか? いずれその子が成長すればバレて滅ぼされるぞ」

「却下です。色々と手は考えております。ですので、時が来るまでは誤魔化して頂きたいのです」

「フィン!」

「すまない。彼女の願い通りにしてやってくれ。もちろん、その彼女にロキの前で聞き取り調査をして、彼女がロキ・ファミリアかソーマ・ファミリアのどちらかを選んでもらう。僕に譲歩できるのはそれぐらいだ」

「今、ソーマ・ファミリアでは身寄りの無い子供達を集め、教育して夢を叶える力をあげています。今、ソーマ・ファミリアがなくなればその子達も路頭に迷いますの。どうか、見逃す事だけはお願いいたします」

「……いいだろう。その子と会って話をしてからだ。彼女が移籍したいというのであれば認めてもらうぞ」

「はい。もちろんです」

「しかし、この怒りを何処にぶつけてやろうか……」

「でしたら、闇派閥(イヴィルス)残党にぶつけませんか? まだ生き残りは潜んでおりますし」

「わかった。分かり次第私も呼べ。消し炭にしてやる」

「ええ、一緒に根絶やしにしてやりましょう!」

 

 クルミがリヴェリアに見えないようにガッツポーズを取っている。まあ、リヴェリアも気付いているだろうが、共に闇派閥(イヴィルス)は許せないと思っているし、問題はないのだろう。クルミ自身も闇派閥(イヴィルス)の被害者だろうからね。

 

「それで残り二つの命令権はどうするんじゃ?」

「ああ、それでしたら少しお待ちくださいまし」

 

 そう言って彼女は部屋に置いてあった鈴を鳴らす。すごく嫌な予感がする。

 

「お呼びになられましたか団長!」

「わたくしが呼びました」

「クルミが?」

「ええ、そうですわ。さて、ティオネさん。わたくしは貴女の味方です。ですから、ここにフィンさんに対する絶対命令権がございます。それを譲渡いたします☆」

「マジ! マジでいいの!?」

「ちょっと待て!」

「わたくし、命が惜しいのでフィンさんをティオネさんに売ります!」

「年貢の納めどきじゃな」

「それじゃあ……」

「まあ、待て。さすがにデートぐらいにしておけ」

「う……でも……」

「嫌われるぞ?」

「ぐっ……」

「ティオネ」

「団長……」

「週一の手を繋いだデート。キスやそれ以上は同意の上で。これでいいんじゃありません?」

「その辺りが妥当だろう」

「僕の意見は?」

「これぐらいなら、男の見せ所ではありませんの?」

「まあ、わかった。これ以上は危険そうだからね」

 

 襲われないだけマシだろう。彼女はアマゾネスだ。強い人の子供を産みたいと考えている。まあ、彼女の場合は僕の、だろうけど。僕以外に興味はないらしいし。

 

「して、最後の命令権はなんじゃ?」

「こちらもっと簡単ですの。金輪際、フィンさんから小人族(パルゥム)の女の子へアタックをかけるのは禁止とさせて頂きます」

「待ってくれ。それはつまり……」

「フィンさん。大手の団長様に女の子が迫られたらコロリと落ちてしまうでしょう。そこから嫁と姑の戦いが勃発しそうですし、小人族(パルゥム)で狙われそうな強い女の子ってわたくしの、わたくしのリリさんぐらいでしょう?」

「予防線じゃな」

「二回言うぐらい本気のようだ」

「ナイスよクルミ!」

「わたくし、ティオネさんの味方ですから~」

 

 彼女の頭を撫でまくるティオネ。本当に嬉しそうだ。ただ、これは僕からアタックが禁止されているだけであって、相手からなら問題ない。そういうあたり、ちゃんと配慮はしてくれたようだ。

 

「安いか高いかは微妙だな」

「僕にとっては結構高いけどね。ただまあ……」

 

 クルミの能力からして、これから小人族(パルゥム)は活気づくだろう。何せロキ・ファミリアの団長である僕と、急成長しているソーマ・ファミリアの団長であるクルミ。レベル2から3まで最速をたたき出したリトル・ウィッチのリリルカ・アーデがいる。フレイヤ・ファミリアにはガリバー兄弟だっているんだ。そうなると、小人族(パルゥム)だって劣っていないのだと知らしめていける。

 

「うん。それでいいだろう。僕もティオネとの関係は前向きに検討しよう」

「本当ですか!」

「ああ。ただ小人族(パルゥム)の復興を目指すのは止めない。その事だけは心してくれ」

「もちろんです!」

「ああ、ティオネさん。フィンさんを手早く落としたいのであれば、小人族(パルゥム)の第二婦人ぐらいなら認めてあげてもいいんじゃありませんか? それならお二人の要求を叶えられますわ」

「は? 第二婦人? 団長を共有するってこと?」

「そうですわ。フィンさんは強い小人族(パルゥム)の子供が欲しいので……そういう事も考えるとよろしいかもしれません」

「エルフ的にはなしだな」

「わしは別にいいと思うぞ。もめなければな」

「どちらにしろ、ティオネさんの意思次第です」

「ちょっと考えてみるわ。本当にいい子ならいいけど、合わない人と一緒に生活とか無理だし」

 

 頭が痛くなってくるが、思っていたよりも安くついた。実際の費用はかかっていないし、その他の事だって許容範囲ではあるしね。

 

「よし、話は終わりだ。せっかくバカ高いソーマを買ったんだ。戻ったらこれで祝杯をあげよう」

「今じゃ駄目なのか……と、言いたいが、駄目じゃな。襲撃される可能性があるしの」

「地上でも変わらんがな」

「それでも感知できるよう、クルミに結界を常に展開してもらう」

「費用がかなりお高くなりますよ」

「僕達が魔石を荒稼ぎしてくるから、君はそれを使って空間を拡張すればいい」

「畏まりました。そういう事であればお引き受けいたします」

「ふむ。差し当たって今は休息か」

「ああ。僕はもう寝る。後は任せた」

「了解した」

 

 風呂に入って汗を流し、寝るとしよう。感覚的にはもう何日も寝ていないからね。本当に疲れた。それでもこれで、全員で帰れる。

 

「ところで、フィンが持っている槍についてだが……」

「クルミが用意したのであろう。代金はアレに含まれておる……といいのう」

「まったくだ」

 

ああ、聞こえない。聞こえない。地上に戻ったら、もう一度資金稼ぎにこないと……待てよ。それこそクルミに頼んでここに来るか。ソロでなら彼女もそこまで文句は言わないだろう。うん、報酬として四割……六割ぐらいあげれば聞いてくれそうだ。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

大樹に凭れながら、取ってきた魔石を喰らっていると、すぐ隣の空間が捻じれてから一人の子供が現れる。

 

「やれやれ、五月蠅いのが戻ったか。それで、首尾はどうした?」

「アリアを殺して……あれ?」

 

彼女が手に持っていたアリアの心臓であろうそれは光となって消えていく。

 

「あれ?」

「どうやら偽物を掴まされたようだな」

「なんでなんで、なんでですの!? 確かにアリアをこの手でやりました! 皮膚と骨を無視して心臓を掴んだのですよ!」

「貴様のオリジナルと似たような存在が居たのだろう」

「……ナニコレ、骨折り損のくたびれ儲けですの?」

「そういう事だ。ロキ・ファミリアの方が一枚上手でだったな」

「きぃっ! 絶対にオリジナルがかかわっていますわ! フィンさんが二人居ましたし、わたくしの行動を完全に読まれておりましたもの!」

「時の精霊か。本当なら厄介極まりない奴だ。こちらが勝利する目前でひっくり返されるのだから」

「本当にムカつきますわ、ムカつきますわ! もっと殺してやればよかったです! いえ、今からでもやはり殺しに……」

「止めておけ。今回の必要分は回収できている」

「まあ、沢山黒のわたくしを殺しましたしね」

「それに五月蠅い奴もいる」

「ワタシのコトカ?」

 

フードを被った魔導士が一人、こちらにやってくる。奴は地上に居るとある神の駒だ。

 

「そうだ。だが、今から襲撃してもロキ・ファミリアは警戒しているだろう。無駄だ」

「確かにそうですわね。黒のわたくしも居ますし、もうしばらく手駒を増やしてからにいたしましょう。彼女達が付けてくださった白の王女(プリンセス)の名に相応しいようにね。まずは乗り物からかしら?」

 

そう言って彼女が空間を軍刀で断ち切り、別の場所に繋げる。どうやら、無数のイル・ワイバーンが飛んでいる姿が見えたので、59階層に移動したようだ。

 

「彼女ハ大丈夫ナノカ?」

「問題ないだろう。好きにさせておけ。奴は私よりも強い」

「ダカラコソダ」

「今は味方だ。自らの半身を喰らうか、苛めることにご執心のようだからな」

「ダガ……」

「そもそも、あちらにいる精霊モドキを止められる戦力を用意できるのか?」

「オ前ナラ可能ダロウ?」

「撃退はできる。だが、殺せはせん。わらわらと居るからな。やるなら纏めて地上に居るのも殺さなくてはならん。最低でも本体をみつけることだ」

「……了解シタ。コチラデモ探ストシヨウ」

「好きにしろ。私も好きにする」

 

そうだ。私の狙いはアリアだ。精霊モドキには精霊モドキに始末してもらうのが一番だ。

 

「レヴィス! 捕まえたので殺さないでくだいね!」

「……ちゃんと餌をやれよ」

「もちろんですわ!」

 

イル・ワイバーンを三十匹ぐらい連れて戻ってきた奴はすぐさまここの空間を広げて飼育場を作る。

 

「では、これから皆さんには殺し合いをしていただきますわ♪」

 

支配下に置いたイル・ワイバーン同士で殺し合いをさせて生き残った個体に魔石をあげて育てていくようだ。それを何度も繰り返して砲竜(ヴァルガングドラゴン)も喰らわせていく。狙いは空飛ぶ砲竜(ヴァルガングドラゴン)らしい。

 

「わたくしの騎士団が完成したらオラリオにいる黒のわたくしのところに遊びに行ってきます。レヴィスさんもどうですか?」

「考えておこう」

 

五十九階層の魔物(モンスター)が地上に移送されて暴れるなど、楽しいパーティーになりそうだ。アリアたちがどのような反応をするか、楽しみだな。

 

 

 

 

 

 

 




次回はリリとクルミが鍛冶師のクロッゾと出会い、二人にキアラを紹介することですね。
そして、クルミちゃんは借金が膨れ上がったよ、やったね!


本編には出ないかも。


「クルミ様、クルミ様」
「なんでしょうか?」
「正座」
「はい」
「この請求書の山はなんですか?」
不壊属性(デュランダル)の購入とレンタル費用ですわね」
「つまり、借金ですか」
「はい。で、でも、大丈夫ですの。わたくしを返済完了まで無期限で利息なしで貸し出しておりますし、喜ばれておりますわ!」
「お仕置きのお尻ぺんぺんです」
「いやぁぁぁぁぁっ!」

ロキによる発現する天使

  • レーヴァテインから灼爛殲鬼(カマエル)
  • 変身術の逸話から贋造魔女(ハニエル)
  • 空飛ぶ靴から颶風騎士(ラファエル)
  • このまま|刻々帝《ザフキエル》のみ
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