ダン狂~くるみ(偽)とリリのダンジョン探検~ 作:ヴィヴィオ
朝。リリの平穏は脅かされました。クルミ様も忙しく、椿様も深層でいません。つまり、修業する必要がないというものでした。でも……
「それでは普段の修業を教えてくれ」
「おー」
「キアラは元気ですね……まあ、いいです」
早朝、日が出る前に此花亭で泊まられたリュー様とキアラに起こされたので、仕方なく修業します。まあ、毎日やっていることではあるので構いません。
「では、こちらに来てください」
リュー様とキアラを案内するのはアスレチックエリアです。他にも起きて働いている仲居さんの人達もいます。彼女達は六時間、四交代で常に誰かが働いておられます。ソーマ・ファミリアからも仲居さんになられた方々もいらっしゃるので、皆が従業員で家族みたいな感じです。
「おはようございます!」
「おはようございます」
「おはよう」
「おはよ~」
挨拶してからお外に出ます。まだ真っ暗なので、仲居さんからランタンを受け取ってお見送りされます。
「この時間でも普通に働いておられるのですね」
「泊まられている方々が居ますから、当直の人は当然います。朝早くに到着されたり、夜遅くに到着されたりしますからね」
「大変な仕事ですね」
「ですね」
キアラと手を繋ぎながら歩きます。この子は良く星空を見上げていて転んだりするので目が離せません。さて、アスレチックエリアに到着しました。
「既に誰かいますね」
「まあ、皆さん何時でも好きな時間に使えますからね」
アスレチックエリアでは既に何人もの人達がランタンを持って、流れるプールの上に作られた足場を移動したり、同じような別の場所で戦っていたりします。
「視界の悪い中で戦うのはダンジョンを想定してですか」
「そうです。落ちたら流されて下にある砂浜まで流される仕掛けです。昼間は半分ほど、子供達の遊び場になっていますけれど」
もちろん、これら以外にも沢山の訓練器具があります。通常の奴です。拷問みたいな奴はもっと奥です。管理者はソーマ・ファミリアの人員がやっているので、何時でも助けが入ります。
「プールエリアは埋まっているようですか、森林公園に行きましょう」
「ふむ」
ライトアップされている桜並木の道を進み、深い森の場所に入っていきます。まあ、人工的に森というか、林が再現されています。確か、竹とかいう極東の植物らしいです。ここも中に入って戦うことができます。
「ここも誰かが居ますね」
「……タケミカヅチ・ファミリアの方々ですね。刀術の修業をなさっているようです」
「小さい子もいるようだけど……」
「タケミカヅチ様にはソーマ・ファミリアで保護している子供達にも刀術を教えていただくよう、お願いしております。しかし、これはほとんど取られているかもしれません」
「普段は何処でやっているのですか?」
「リリはヘファイストス・ファミリアですね」
「何故そこに……」
「師匠がヘファイストス・ファミリアに居るので」
「なるほど」
「ん~わかった。こっちが空いてるって」
「キアラ?」
「こっち」
キアラに引っ張られていくと、確かにそこは使っている人は誰もいませんでした。まあ、ここは仕方がありません。だって、拷問みたいな器具やトラップが置かれている場所ですから。
「ん? アーデにキアラか。クルミが居ないのに来るとは珍しいじゃねえか」
「チャンドラさん。ここで何やってるんですか?」
「酒を飲んでる」
居るのは月見酒をしている人達です。本当はここを管理している者ですけど。そんな彼等をリュー様はにらみつけていますが、気にもしていません。
「使えますか?」
「整備はしてある」
「わかりました」
奥へ進むと、人工的に作られた崖が見えてきます。崖の上から見下ろすと、複数の足場とロープがあり、崖の下には剣山のような物が設置されています。当然、刺さりませんが、痛いぐらいには感じるように作られています。ちなみに強風も時たまきます。
「これはいいですね」
「……本気で言っています?」
「本気ですが……」
駄目です。この人もクルミ様や椿様と同じ人種です。
「では、まずは一戦してみましょう」
「……はい……」
互いに配置について直径一メートルや二メートル、最大で三メートルある足場の上に飛び乗って、互いに十メートルほど距離を取ります。
「まずは武器なしでしましょう。体術がどれほどできるか確かめたいですから」
「わかりました」
スタートの合図を受けて突撃します。まずは勢い良くジャンプして空中で回転して全体重と全身の筋力を合わせて蹴ります。リュー様は即座に飛びのき、リリの一撃は轟音と共に足場に激突します。足場は吹き飛びました。ガラガラと破片が舞うので、それをリュー様の方へ纏めて蹴り飛ばします。
「なるほど、力は随分と強いようですね」
リュー様は普通に回避したり、手でたたき落としたりしました。相変わらずこのエルフは強いです。レベル3になってもまだ届かないようです。
足場が崩れたので、落ちていきますが、途中で腕のガントレットからワイヤーを打ち出して別の足場に巻き付かせて、そちらに引き寄せて壁に着地すると同時に外して、足場を蹴って上に戻ります。
「では、今度はこちらからいきます」
そう言ってリリがギリギリ見える速度で接近して蹴りを放ってきました。それを両手をクロスさせてガードします。リュー様は空中で身体をひねって即座にかかと落としをしてきますが、リリは両手を上げてそれもガードします。
「力と耐久力もかなり高いですね。それに素早さも力を使っているようですが……」
一旦離れたリュー様に今度はリリが攻撃を仕掛けます。リーチの関係もあって、やはり足技が主体となります。斜め下に刃のように振り下ろし、回転する反動を利用して腕を鞭のようにして連続で仕掛けます。足、手、足と、仕掛けますがリュー様の速さはリリでも対処できません。
「甘いです」
足を掴まれていなされて後方に投げ飛ばされます。ですので、壁を蹴って再度背後から仕掛けますが、同じくいなされました。
「体術もそれなりにできるようですね」
「そこはしっかりと教えこまれていますから……」
「まだまだ付け焼き刃ではありますので、反復練習が必要です」
「うぅ……その通りなんです。リリも始めたばかりですし……」
「でしょうね」
リリはクルミ様がこちらに来てからなので、まだ二ヶ月前後しか、ちゃんと体術を習っていません。
「では、次は武器を使ってやりましょう」
「わかりました!」
イフリートを持ち出して戦いだすと、リュー様といい勝負ができます。何せリリに触れられませんからね! そう思っていた時がありましたが、緑風を纏った無数の大光玉を生みだしてこちらの炎を吹き飛ばしにきました。リリも負けずに打ち返してやったのですが、数が多くて何度も崖の下に落とされました。
「キアラもやる! 天明らかにして星来たれ」
「「え?」」
「フォーマルハウトの星は召臨を厭わず。月天は心を帰せたり来々、くとぅぐぁ!」
急激に空が明るくなり、上を向くと星空から文字通り星が落ちてきていました。即座にこちらにやってきたそれはどうやら、視界一杯の大きな炎の鳥のようでしたが、段々と小さくなっていきました。小鳥サイズになったその子はキアラの肩に止まり、徐に口を開きます。
「くぁ!」
口から巨大な炎が吐き出され、リリ達に襲い掛かってきます。
「回避!」
「カードリッジロード・
イフリートで炎と炎をぶつけます。その瞬間、盛大に爆発して炎の柱が生み出されました。リリは焼かれるのではなく、イフリートに炎を吸わせていきます。そして即座に使っていきます。というか、使わないと死ぬ気がします。
リュー様もお手伝いしてくださり、どうにかなりました。周りは結晶化した大地が広がっております。明らかに熱量がヤバすぎです。
「くーちゃん凄い!」
「くぁ!」
「あの、その子は……」
「どうやら精霊のようです。やはり、ウィーシェの……」
炎の鳥をキアラが撫でていると、彼女の身体が炎に包まれました。
「っ!?」
「大丈夫です。問題はありません」
リュー様に止められ、しばらく様子を見ると炎はキアラの中に入り、小鳥は満足したように空へと飛び上がり、そのまま大きくなって空で輝く星へと帰っていきました。その星もまた離れていきます。
「契約できた。炎の星術、使えるようになったよ」
「今のが契約なんですか!」
「そうです。エルフの中でも特別な血筋の者が精霊に愛されていた場合、呼び出して契約が可能なうちの一柱である炎の精霊です。成功して良かった」
「失敗したらどうなっていました?」
「何も起こらないか、辺り一帯が焼失します」
「それって……」
「エルフにとっては禁忌、禁術です。そもそも使い手はもう存在しないはずでした……」
「なるほど、先祖返りですね!」
「いえ、そのはずは……」
「せ・ん・ぞ・が・え・りです! 彼女はハーフエルフなんですから! ハイエルフであるはずがありません!」
断じて認めてなるものですか! 認めた瞬間、終わりです!
「いや、そんなはずは……確かに耳はハイエルフにしては短いですが……本当に?」
「そうです。そうなんです。残念ながら」
「キアラ、貴女の両親は……」
「えっと、私の両親はクルミとリリだよ」
「本当の両親は」
「教えたら駄目って……」
「ええ、駄目です。リュー様、これはソーマ・ファミリアの機密です。ですので、お教えできません。ただし、神様の前でも宣言できます。彼女の父親はエルフではありません」
「なるほど……わかりました。会いにきて見守ることは許して欲しい。彼女は危険だ。ハイエルフでないのなら、禁忌を使った彼女の身が危ない」
「では、普通の炎魔法としましょう。それで解決です」
「ええ、それでいきましょう」
「キアラ、いいですね。炎の魔法を使える。他は言ってはいけませんよ」
口を押えるキアラを見ながら、炎を出していくキアラ。それは鳥のような姿をして、周りを飛び回ります。
「……リュー様。これ、セーフですか?」
「まあ、炎の形を変えるだけなら自由です。アレを呼び出さない限りは問題ありません」
「わかりました。では、それでいきましょう」
「ですが、先程の炎についてはどう説明しますか?」
「問題ありません。リリがやったことにします。キアラ。この弾丸に魔法を込めてください」
「ん!」
炎の鳥が沢山入りました。それをイフリートにロードすると大きな炎の鳥が飛んでいき、通った場所を焼き尽くしていきました。
「予定通りです。これでリリの火力アップです! あのにっくきレベル5を今度こそ焼き殺してやれます!」
「おー!」
「……そのレベル5は誰ですか?」
「フレイヤ・ファミリアです。今度襲ってきた時に潰してやります」
「フレイヤ・ファミリアはレベル6になられた方が多かったようですが……」
「……レベル5から6になったんですか。リリの倍……」
「目標は遠いですね」
「ですね。キアラ、修業しますよ」
「わかった」
「では、互いに撃ち合うといいでしょう。炎になれるところから始めるといいかと」
「「はい!」」
キアラは星の下であれば魔力がどんどん回復するので、いっぱい撃ってもらいます。それを取り込んだり、切ったりして戦います。身体中が焼かれる感じがしますが、サラマンダーウールの特別製装備で乗り切ります。
詠唱の元ネタは守護月天です。キアラを守護する精霊、星神達。もちろん、分霊であり、欠片です。本体がきたら終わるしね!
星術……星の精霊と契約し、その力の一部を行使できるようになる。なお、契約相手の気分次第で力は増減する。基本的にゾディアックの1から10レベルを想定。
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