ダン狂~くるみ(偽)とリリのダンジョン探検~ 作:ヴィヴィオ
リュー様との修業の次の日。リリはキアラを連れてバベルの前にやってきています。ここでベル様と合流するわけです。相変わらずクルミ様は忙しいようで、動き回っておられます。こちらにほとんど意識を割いておられません。だから、今なら好き勝手にできます。
「おおきいね」
「そ~ですね~」
キアラが色々と見ています。彼女は猫耳フードを被らせて耳をしっかりと隠しているので、沢山の小鳥を連れた
「リリ~!」
「あ、来ましたね」
ベル様の後ろに別の方が歩いてきます。赤い髪の毛に大剣を背負っておられます。
「ほう、こいつがベルの連れか」
「ベル様、この方はどなたでしょうか?」
「うん。昨日、出会ったんだ。リリが心当たりがあればよろしくって言ってたしね」
「そういうわけだ。俺もパーティーを探していてな。って、嬢ちゃんは何処かで見たことが……」
「奇遇ですね。リリも見た事がありますよ」
「アレ、二人は知り合いなの?」
何処かに行こうとするキアラの手を掴んで引き寄せながら、彼を見ます。彼はヘファイストス・ファミリアで見ました。
「知り合いではないです。たしか、ヘファイストス・ファミリアの鍛冶師さんでしたよね?」
「そういうそっちは団長に新技術を教える代わりという事で弟子入りした別のファミリアの奴だな。こっちも知り合いとは言えないな。まあ、これからよろしく頼むわ」
「椿様が団長をされている提携ファミリアの方では無下にはできませんね」
「あたらしい仲間?」
「そうです。まあ、もう少し話をしてから判断します。改めて、ソーマ・ファミリア所属、副団長のリリルカ・アーデです」
「俺はヴェルフ・クロッゾだ」
「クロッゾ? クロッゾ!? あの没落した魔剣鍛冶師の!?」
「そのクロッゾだ」
やばいです。なんでこうもエルフにとっての地雷案件ばかりが寄ってくるんですか! キアラをクロッゾと同じパーティーにするとか、エルフの方々が知ったら激怒間違いなしですよ!
思わずベル様の方を見ますが、ベル様は小首をかしげるだけです。キアラもそれを真似して小首を傾げています。可愛いです。
「えっと、それでそっちの子は……」
「キアラ」
「キアラ。ソーマ・ファミリアのレベル1」
「よろしくお願いね」
「そっちも女か。よろしくな、リリスケ、キースケ」
「ちょっ!? リリはリリルカ・アーデという名前がですね!」
「キースケ、うん、それもいい。お姉ちゃんと一緒」
「ぐっ……まあ、いいでしょう」
椿様の手前、あまり無下にできませんし、納得してあげましょう。
「キアラちゃん、よろしくね」
「よろしく」
さて、今回、リリはクルミ様が居ないのでサポーターとして活動します。ですので、久しぶりにバックパックを担いでいます。それ以外の装備は何時ものままです。アダマンタイトのガントレットとグリーブ、プレートメイルを装備しています。その上にリリ愛用のフード付きローブを着ています。内側には念の為にサラマンダーウールで外側は白いローブです。内側はサラマンダーウールを仕込んだ赤色です。
これだけでリリのスキルである
今のリリはレベル3であり、発展アビリティは耐久・敏捷・器用が上昇する剛体か力と敏捷が上昇する軽身のどちらかでしたので、剛体を習得しました、軽身は確かにそれぞれの効果は大きくなるのでしょうが、正直リリにとっては重い装備をするので防御力も欲しいです。イフリートを使うことを考えるとリリ自身が燃えてしまいますし、現状では火力は問題ありません。むしろ、力に技が付いてきていない現状ですから。
魔法は発現せず、効果が少し上がったくらいです。例えば……
「リリは今回、サポーターをしますので、魔石の回収などはお任せください」
「そっか。今日はクルミが居ないもんね」
「はい。それとキアラは魔法使いです」
「魔法、使う」
そう言いながら渡した杖をクルクルと回している彼女。ただし、その杖の上には炎の鳥が既に止まっています。ローブの中にもいっぱいいます。
「その可愛らしい鳥さんなにかな?」
「俺も気になっていたんだ」
「ああ、それがこの子の魔法です。その鳥、燃えますから気をつけてくださいね」
「え」
ベル様が触れようとしていた指を引っ込めました。
「なんで今から使ってるんだよ」
「事情があるんです。とりあえず、その鳥の数が攻撃回数だと思ってください」
「何羽いるの?」
「二六羽~」
ローブ以外にもリリのバックパックに沢山、乗っていたりもします。
「多いね」
「ああ、そうだな。だが、威力次第だな」
「そうですね。まずは潜ってから試しましょう。今日の目的はどこですか?」
「とりあえず、十一階層かな」
「でしたら、そこで試しましょう」
「わかった。ヴェルフもいいよね?」
「ああ、いいぜ」
「おー」
さてダンジョンに入ります。一応、念の為にキアラとは手を繋いでいきます。前衛はベル様とヴェルフ様にお任せします。ゴブリンやコボルト如きにこの子の魔法は使えないので、さっさとおります。
「おい。なんかやばくね?」
「うん。物凄く数が多いね」
「ですね」
「う?」
うじゃうじゃと、それはもう大群で存在する無数のキラーアント。普段は余り見かけないですし、見かけても何処かを目指しているので軽く殺せます。ですが、そのキラーアント達が今は近くに居る冒険者を目指して殺到してくるのです。壁や天井、全てをキラーアントが埋め尽くし、襲ってくる姿は気持ち悪いです。
「どうすんだ? 逃げるか?」
「僕とリリならやれるだろうけど……ヴェルフとキアラが居るから……」
「面倒です。キアラ、焼き払いなさい」
「ん。いけ、くーちゃん」
「くぁ!」
キアラの杖から飛び立った赤色の小鳥はすぐに大きくなり、その身を炎に包んで突撃して通路そのものを覆いつくしました。数秒すると炎の鳥は消え、炎も何事もなかったかのように消滅します。キラーアント達はまだ残っていたので、次の鳥が飛び立って同じように全て処理しました。
「強いな、おい」
「凄い火力だね」
「やばいですね☆」
「くーちゃん凄い」
「くぁ!」
流石は星の精霊を操る星術です。火力がやばいです。まあ、今は魔石を回収しましょう。久しぶりですが、なんとかなります。
「気を付けていこう」
「おー」
「おうよ」
進んでいくと大量に遭遇するキラーアント達。ダンジョンが大量生産してくれているようで、とっても面倒です。思わず壁を殴りつけて現れたのを潰します。あ、足元にも出てきたので踏み潰します。椿様が作ってくださった装備なので痛くも痒くもないです。とりあえず、後ろに出てきたのはリリが潰しておきます。
「なぁ、キラーアントってこんなに出るもんなのか?」
「ううん、何時もはこんなに出ないけど……」
「不思議な不思議なこと~?」
「かもね」
「そうですね。リリは嫌な感じがしますけど」
そのまま十一階層に到達しました。キラーアントを焼き払うので結構鳥も消費しましたが、初のダンジョン探索は充分な成果です。
「やってきたぜ十一階層!」
「じゅういちー!」
ヴェルフ様とキアラが飛び出して両手を上げて喜んでいます。まあ、キアラはヴェルフ様につられただけですね。
「悪いなベル。昨日の今日でこんな無茶を聞いてもらって……」
「ああ、いえ、ヴェルフさんが鍛冶のアビリティを手に入れるのなら、専属契約した僕も無関係じゃないですし」
「そりゃ、ヴェルフ様は万々歳でしょうけれど……」
「なんか言いたそうだな」
「ご自分のファミリアの人と探索しないのですか?」
「できたら苦労しねえよ。だいたい他所のファミリアと冒険しているのはそっちも同じだろ」
椿様に報告すれば解決する気がするんですけど、流石にプライドが許さないのでしょう。
「まあ、そうなんですよね。今、ソーマ・ファミリアって探索に出る人ってかなり少ないですから」
「そうなの?」
「はい。クルミ様の改革でダンジョンに潜らなくても稼いでお酒が普通に飲めるんです。ですから、無理してダンジョンを探索する必要がないんです」
「あ~確かに地上で安定して稼げるなら、冒険者になる必要はないわな」
「今、ソーマ・ファミリアは完全に酒造ファミリアですからね。探索は団長であるクルミ様の趣味と言ってしまえるかもしれません」
「リリスケとキースケはどうなんだ?」
「リリ達はクルミ様のお世話係。そば付きですからね。クルミ様が潜るのであれば潜ります」
まあ、個人的な理由もできたのでそれだけではありませんけど。
「それにリリ達は僕の神様に雇われているんです」
「護衛ってことか」
「そういう事ですね。護衛を受けた本人は今、忙しいようですが……」
「クルミ様、大変」
「っと、沢山出てきたな」
「うん」
「こんな話をしている場合じゃない」
「いっぱい、燃やす?」
「まだいいですよ。お二人が頑張ってくださいますし」
「なんだ、リリスケは戦ってくれないのか?」
「リリは見学してます。サポーターですから」
「あはは、リリが出たらすぐ終わって僕達の経験にならないよ」
「あ~レベル3ならそりゃ、ここは楽勝だろう。うし、やってやるかベル、キースケ!」
三人が、正確には二人が戦い始めます。ある程度、集まればキアラが纏めて焼き払う方法で処理していきます。ベル様もレベルアップで魔法の威力や殲滅力が上がっているようなので、安心してみていられます。
「やっぱいいよな、パーティーっていうのは!」
「はい! 前より随分と動きやすくなった気がします」
「二人共、凄い」
「パーティーの利点だな。余裕を持てれば
三人が話している間にリリはせっせと魔石を回収していきます。すると悲鳴を上げて逃げてくる人達がいました。
「逃げろ!」
「インファントドラゴンだ!」
魔石を拾っていると、すぐ隣にインファントドラゴンから逃げてきた冒険者が通り過ぎていきます。顔を上げると、そこにはインファントドラゴンの大きな赤い顔がありました。
「リリ! 危ない!」
「リリスケ!」
「お姉ちゃん」
赤い竜の身体に鋭い牙と大きな口。歯は鉄を噛み砕くでしょう。魔石を取っているのに邪魔です。
「GRUUUU!」
「邪魔です」
「リリ?」
「消えてください。き・え・て」
「っ!?」
インファントドラゴンはクルリと反転して走っていきました。これで邪魔者は居なくなったので、魔石を回収していきます。
「こええぇ……」
「あははは……」
「お姉ちゃん、すごい」
「インファントドラゴンなんて……あ、失敗しました。キアラ、さっきのを狩ってきてください。経験値稼ぎに丁度いいです」
「「え?」」
「ん!」
キアラが走っていき、霧の中に消えていきます。
「ちょ!? リリ!」
「おいリリスケ! やばいぞ!」
「え? インファントドラゴンはレベル1で相手するのが普通ですよ」
「んなわけあるか!」
「危なくなったら助ければ……」
「その前に死んじゃうよ!」
「いや、まさかインファントドラゴンですよ? リリがレベル1のころから修練相手にしてた……」
「どんな地獄だよ!」
「椿様からやらされたんですが……」
「団長かよ! どっちにしろやばいわ!」
連続して上がる火柱に慌てて皆で追っていくと、そこにはインファントドラゴン……の群れが居ました。はい、群れです。八体も居ました。中の一匹はとても大きく、色が青色でした。キアラはそんな相手に震えながらリリに気づいてこちらに抱き着いてきます。
「キースケの魔法、あんまり効いてないみたいだぞ」
「さすがにこれは……」
「あーヴェルフ様、キアラをお願いします」
「わかった。やっちまえ」
「行くよ、リリ!」
「はい」
ベル様と駆け抜けて殴り殺します。一撃です。ベル様は光る手から魔法を撃ちました。そちらも一撃でしたね。なんだろう。本当にインファントドラゴンが弱く感じます。殴れば頭が吹き飛び、蹴れば胴体に穴が空きます。
「キアラ、一匹に全力で攻撃してください。押さえておきますから」
「ん!」
恐る恐る全ての鳥をインファントドラゴンに叩き込み、燃やしていきます。リリはちょっと炎に焙られながら考えます。どうやら、リリは……いつの間にかクルミ様と椿様に毒されていたようです。インファントドラゴンはレベル1で相手するものだと……やばいです。
「しかし、明らかに異常だろう」
「キラーアントにしても、インファントドラゴンにしてもちょっと多すぎだよ。リリが居なければ危なかったかも」
「お姉ちゃんすごい」
「エッヘンと胸を張りたいのですが……これ、報告した方がいいでしょう」
強化種を踏みつけて地面に押し込みながら、告げます。相手にはならないので、このまま終わりです。
「今日は魔石を回収してここまでにしようか。ギルドも行かないと」
「ですね。ヴェルフ様、それでいいですか?」
「ああ、構わないぞ」
「キアラは……」
「大丈夫。もう鳥さんいない」
「じゃあ、戻ろっか」
ギルドに戻りエイナさんに報告します。すると、彼女は深刻な表情をしました。
「他の冒険者からも連絡を受けてる。だいたいキラーアント達とインファントドラゴンが大量に生まれているみたいで……怪我人が結構出てるの」
「あのエイナさん……」
「どうしたの、アーデ氏」
「ダンジョンで大量の
「そりゃ、ダンジョンも生きているから、常に
エイナさん以外のギルド職員の視線まで集まってきます。
「……原因がわかりました。実はですね。今、クルミ様はダンジョンで狩りをなさっていません。深層でロキ・ファミリアと本気で戦っておられるので」
「それがどうしたんですか? 低レベルでロキ・ファミリアの遠征についていっているんですから、当たり前のことですよね?」
「クルミ様はキラーアントとインファントドラゴンを集中的に分身を放って大量に、常に殺し続けていました」
「「「あっ!?」」」
「はい。エイナさんが先程教えてくれたことが起こっているのかと。おそらく、前の水準よりちょっと上になっているのではないでしょうか?」
「今すぐ全ファミリアに注意喚起! キラーアントとインファントドラゴンの大量増殖中って!」
ギルド職員の方々が大急ぎで動き出しましたが、まあリリには関係ありません。だって、今回の事でソーマ・ファミリアが文句言われることはありません。だって、普通に
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