ダン狂~くるみ(偽)とリリのダンジョン探検~   作:ヴィヴィオ

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十八階層での話し合い上

 

 

 

「さて、話を聞こうか」

「そうだな。彼女についても教えてもらうぞ。地上に居るのではなかったのか?」

「まあ、そうあせるではない。一つずつじゃ」

 

 十八階層にある迷宮の楽園、アンダー・リゾートでロキ・ファミリアのトップ三人に詰問を受けております。

 

「まず、彼女達が本日中層に挑み、そこで怪物進呈にあったようです。その後、ダンジョンの崩落に巻き込まれて負傷。そこから上を目指すのではなく、安全地帯であるここを目指したとの事です」

「ふむ。無茶をするね」

「だが、中層に入った初日でここまでくるのは将来有望じゃな」

「問題は例の子まで巻き込まれていることだ」

「エルフにとっては大問題か。その辺はどうなんだい?」

「足が折れた程度なので、問題ありませんわね。すでに完治させておりますし」

「クルミ!?」

「ボウケンシャーなのですから手足の一本や二本、どうという事はありませんわ」

「いや、それは君が居る前提なだけだからね」

「今回のような緊急事態でなければ問題ありませんわ」

「……確かに今回は君の力をほぼ全てこちらに向けてもらったからね。だから、多少の回復を手伝っている」

「助かっておりますわ」

 

 本来、わたくし達は既に十八階層から地上に出ているはずでした。ですが、深層からゆっくりと警戒しながら戻るついでに他の団員のレベルアップと資金稼ぎの為に階層をくまなく探索してきました。ですから、本来よりも遥かに時間をかけて戻ってきました。念のため、地上に居るわたくしにロキさんに連絡をしてもらい、ついでにリリさんやヘスティアさん達に知らせに行こうと思ったら、ダンジョンに行っているので驚きました。

 彼女達につけていた護衛もこちらに引き寄せていました。それにリリに護衛の件を伝えるのを忘れておりました。ですので、リリはリリでわたくしが居る前提でダンジョンに潜ってしまったようです。意識を向けていないのではなく、完全に居ないとは思わなかったみたいです。これはわたくしの落ち度です。言い訳をすると六十回以上の記憶を共有したことで知らせたのか、知らせてなかったのか、ごちゃ混ぜになっていたのも理由の一つです。

 

「それで彼等はどうする?」

「こちらで引取りますわ。幸い、ゴライアスのドロップで十分に回収できましたし、数もある程度は回復してきました」

 

 深層で失った分の分身は確保できるぐらいの時間は集めた魔石からわたくしが貰う報酬分で溜まっております。先に貰う許可は頂いているので問題はありません。ロキ・ファミリアの治療に使う分もありますしね。

 

「それに迎えもこちらに向かって来ておりますので」

「なるほど。もう少しここで休息したら地上に戻るとしよう。これで僕からはない。ガレスは?」

「わしもないぞ」

「リヴェリアは……」

「私はある。彼女を紹介してもらおう。それと護衛についても話がある」

「そちらは僕達はノータッチだ。好きにしてくれ」

「フィンさん!?」

「そこまでは契約に入っていない。黙っていることについてリヴェリアの説得は手伝ったからね。後は頑張るといい」

「行くぞ」

「あ~れ~」

 

 リヴェリアさんに引きずられていきました。移動先はリヴェリアさんの天幕です。そちらでキアラが眠っております。護衛としてリリがつき、他の人はいません。

 

「話の前にベルさんはどうします?」

「アイズに任せておけばいいだろう」

「……そうですわね。アイズさんにちょっとお願いしてきますわ」

「了解した」

 

 すぐ近くの天幕なので中に入ると、ベルさんとヘファイストス・ファミリアのヴェルフさんが眠っております。

 

「リヴェリアにクルミ。どうしたの?」

「アイズさん、アイズさん。少しお願いが……」

「ん? それぐらいならいいよ。やっておく」

「ありがとうございます」

 

 さて、これでベルさんへのお礼はいいでしょう。そんなわけでリリさんとキアラさんが眠っているリヴェリアさんの天幕に移動します。

 

「あ、お帰りなさい」

「戻った」

「ただいまです」

 

 リリさんに迎え入れられ、ベッドで寝ているキアラの様子を確認します。傷はしっかりと治療しておいたので、普通に眠っているだけなので問題はありません。

 

「では、キアラさんについて話し合いをします」

「うむ」

「あの、リヴェリア様。キアラはやはり間違いないのですか?」

「ああ、私が保証しよう。彼女は王族の血を引いている。それもレフィーヤの故郷、ウィーシェの森に関する血だ」

「そうなると、レフィーヤさんに見つかれば大変ですよね?」

「間違いなく本国、最低でもウィーシェの森へは連絡が行くだろう。口止めを先にして味方に引き込んだ方がいい」

 

 レフィーヤさんはレベルアップすることは確実でしょう。アイズさんと一緒に精霊の強化種にとどめを刺しておりますしね。そんな彼女なら戦力として申し分はありません。

 

「それに私が護衛につくわけにもいかんからな。その点、レフィーヤならばソーマ・ファミリアとの交流をお題目にして派遣が可能だ。クルミにこちらへ来てもらっているのだから問題は起きない。レフィーヤならば護衛としての実力もある」

「確かにリヴェリア様が護衛をすると、そこから色々とバレますね」

「ハイエルフの王族が直々に護衛するなんて、要人ですって言っているものですものね」

「ああ。それと念の為にレフィーヤが無理でも、ティオナとティオネのどちらかもダンジョンに行くときはついていくよう、指示しておく。あの二人であればクルミに好意的だ。問題ないだろう」

「ありがとうございますわ」

 

 リヴェリアさんはキアラさんの頭を優しく撫でながら、こちらへの戦力派遣を決めてくださいました。それにこれならエルフの方々にバレても、リヴェリア様がコッソリと匿っていたという言い訳もつきます。

 

「他のエルフに接触がないのなら、これでどうにかなるだろう。ロキ・ファミリアに来るのも、クルミと一緒にお酒の納品ついでにレフィーヤと共に授業を受けさすという理由づけもできる」

「ですわね」

「あ、あの……」

 

 リリさんが顔色を悪くしながら手をあげてきました。どうやら、何かやらかしたようです。

 

「どうしました?」

「その、実は一人、エルフの方と会っていまして……」

「誰だ! 話せ!」

「ほ、豊穣の女主人で働いているリュー・リオン様です」

「彼女か。彼女の名前はコミュニティで聞いたことはないが、危険だな。そちらには私が直接会いに行って話をつけよう。豊穣の女主人ならば、打ち上げを開くからな」

「ところが、今回は此花亭の方にロキさんが入れてましたわ」

「……個人的に飲みに行くか。付き合え」

「畏まりました」

「とりあえず、私はレフィーヤを呼んでくる」

「それでしたら、わたくしが行きますわ。お願いします、わたくし」

「畏まりましたわ、わたくし」

 

 すぐに数人のわたくし達が出ていきました。ここの地理はライダーの記憶を参照して隅々まで理解していますので、問題ありません。

 

「それと話は別の、いえ、完全には別ではありませんが……リュー様の件でクルミ様にお伝えしないといけないことがあります。実はクルミ様がこちらで手に入れた武器について、もっというと炎華(アルヴェリア)について詳しいようでして、その……」

「は? もしかしてばらしたんですの?」

「はい……」

「こっそり今から返しても遅いと?」

「ですね☆」

「笑い事じゃないですわ!」

「いたゃいれす」

 

 思わずリリさんの口に両手の親指を突っ込んでぐにぐにしてやります。

 

「ならばその件も私が立ち会って話し合う場所を作ろう。そうすれば平和的に話し合いはできるだろう。後は知らん」

「すいません。助かりますわ」

「ありひゃとうごじゃいます」

「まったく、世話がやける……」

 

 そうこうしていると、天幕の扉が開いてわたくしとレフィーヤさんが入ってきました。

 

「あの、大事な話があるから、私一人で来いとクルミさんが……」

「間違っていない。私が呼ぶように頼んだ。いいから入れ」

「わかりました。失礼します」

 

 レフィーヤさんが入ったので、他のわたくし達には結界を展開させ、防諜をしっかりとした後に見張りとして立っておいてもらいます。セイバーとランサーの二人なら問題ないでしょう。どちらも不壊属性(デュランダル)を装備していますしね。

 

「それで、このメンバーでご用件とは……あと、大丈夫ですか?」

「気にしないでくさい。これはお仕置きですから」

「ひゃ~」

 

 リリさんの頬っぺたで遊びながら、答えます。一応、口から指を引き抜いてあげます。ついた唾液を舐めとるなんて事は流石にできないので、ハンカチを取り出して拭いておきます。

 

「とりあえず、座れ」

「はい」

「レフィーヤ、これから話す事はここに居るメンバー以外には口外を禁じる。いいな?」

「わかりました。それだけ大事な事なんですね?」

「そうだ。事はエルフ全体の問題だ。誓えるか?」

「誓えます。リヴェリア様の仰る事であれば間違いありませんから」

「そうか。今はそれでいい。レフィーヤ、これからハイ・エルフとして命令を出す」

「はい!」

「ソーマ・ファミリアに出向し、彼女の護衛と教育を務めてくれ」

「はい! はい? はいぃぃぃ!?」

 

 当然のように混乱しているレフィーヤさん。彼女はリヴェリアさんとわたくし達を見た後、額を指で押さえてからもう一度聞いてきました。

 

「私が、ソーマ・ファミリアに出向して、そこで寝ている子の護衛と教育をしろと言いましたか?」

「ああ、間違いない」

「それがリヴェリア様が普段絶対に使わないハイ・エルフとしてのご命令ですか?」

「そうだ。私の弟子であり、後継者であるレフィーヤであれば適任であり、やってくれると信じている」

「あの、それは大変うれしく思います。身に余る光栄なんですが……その子はもしかして、リヴェリア様の……その……」

「私の子では……いや、そうだ。私の子供のようなものだ」

「お子さんがいらしたんですか!」

「私も会った事はなかったが、王族である事は保証する。クルミ、対外的には私の子という事にしておけ。それでどうにかなるだろう」

「ありがとうございます」

 

 そうこうしていると、キアラが起きてきました。目を擦りながら起き上がると、すぐにわたくしを見つけて飛びついてきます。彼女に押し倒されそうになりますが、なんとか耐えました。

 

「キアラ、紹介する人がいます。貴女の親族であるリヴェリアさんとレフィーヤさんです」

「ひっ!? いや、捨てないでっ! なんでも言う事を聞くから!」

 

 キアラは何を勘違いしたのか、思いっきり抱き着いて頭を押し付けてきます。その言葉にエルフのお二人から殺気が漏れ出てしまっていますが、気にせずにキアラを抱きしめかえして撫でます。

 

「大丈夫です。捨てたりしません」

「本当?」

「本当です。いいですか、貴方の父親は屑です。最低のごみ野郎です」

「ん!」

「ですが、母親である方はそうでありません。彼女達は貴女の母方の親族です。かと言って、わたくし達がキアラを手放すつもりはありません。ですが、エルフにはエルフにしかわからない事や常識があります。例えば病気ですが……」

「クルミ様なら治せる」

「そうですね。ですが、エルフに伝わる礼儀作法とかその辺りの事はわたくしではわかりません」

「いらない」

 

 ……よくよく考えたら、キアラからしたらエルフ関連の事って必要な事ではないですね。世間一般的な事は普通にわたくし達、ソーマ・ファミリアが教えておりますし。礼儀作法に至っては此花亭の方に協力頂いているので普通にお客様をお迎えして問題ないレベルです。

 

「……よし、わかりました。では、こう言いましょう。キアラがわたくし達と一緒に居るために彼女達が持つエルフのコミュニティに対する影響力が必要です。それがない場合は離れ離れにされてしまいます。キアラもそれが嫌ですよね?」

「やっ!」

「普通に説得するのを諦めましたね」

「五月蠅いです。そんなわけで、彼女達から教わりましょう。大丈夫です。お二人も納得してくださっているのです。それに……そうですね。わたくしと一緒にエルフについてお勉強しましょう。リリさんも巻き込んで構いません」

「リリもですか!?」

「リリならエルフにも変身できますし、カモフラージュにも持ってこいですもの」

「ああもう、わかりましたよ! キアラ、一緒に勉強しましょう」

「ん、それならわかった」

 

 さて、こちらが落ち着いたのでエルフのリヴェリアさん達の方に見ます。一応、キアラを膝の上に乗せて話をします。

 

「こういう事になりましたが、構いませんか?」

「一人に教えるのも二人に教えるのも纏めてやるならばたいした労力ではないから構わん。レフィーヤもいいな? レフィーヤ?」

「……リヴェリア様……この子、いえ、この方の顔に似た方を、私、知っています……壁画で見ました。確か、少し前に行方不明になったと……」

「少し?」

「エルフは長命種ですから……数年から数十年は少しかもしれません」

「なるほど」

「そうか。わかったようで何よりだ。口外するなよ」

「なんでですか?」

「色々と事情がある。先程の事を見てわかるだろう」

「はっ!? クルミさん! こともあろうに……」

「ひっ」

「……もしかして、ですけどエルフの事、嫌いですか?」

「エルフどころか、わたくし達以外の人は基本的に嫌いか苦手ですわ」

「リリと同じく虐待されて育てられておりましたからね。ですから、ならす為にもよろしくお願いします」

「ウィーシェの森には……」

「話すな。話したら絶対に連れ戻しに、奪いに来るだろう。そうなると……」

「焼き払って差し上げますわ」

「エルフすべてを敵に回しますよ?」

「レフィーヤさん。バレなきゃ犯罪ではありませんの。ええ、ええ、こと暗殺と諜報に関してわたくしとやりあってみますか?」

「レフィーヤ、止めておけ。クルミの能力からして行方不明者が続出するだけだ。たとえ見つけて倒しても、別の者が現れるだけだしな」

 

 リヴェリアさんがレフィーヤの肩に手を置いて止めました。実際に事、殺しと諜報に関してならわたくしは白の王女(プリンセス)と同じくらい得意ですわ。空間と時間、扱うのは違えどどちらも反則級の力ですもの。

 

「リヴェリア様はそれでいいのですか?」

「勘違いするな。エルフの教示や国の威信よりも、彼女の幸せが優先だ。遥か昔とはいえ、知人の、始祖を同じくする友の忘れ形見だ。そちらを優先するに決まっているだろう。あまり私を見くびるな」

「す、すいません! わ、私もそちらの方がいいと思っています。でも、ちゃんと確認しておかないと覚悟が決められません……」

 

 下手をしたら全てのエルフを敵に回す事になるのですから、仕方がありません。むしろ、彼女はリヴェリアさんの弟子なだけあって、リヴェリアさんと同じ考えをしてくださるようで助かります。

 

「基本的にはフードを被ってもらって小人族(パルゥム)と偽装します。リリも一緒に獣人に変身して過ごしていれば恥ずかしがり屋の妹が居る姉妹とみなされるでしょう」

「フードが取れた時が問題だが……」

「その辺りはお任せください。取れなくしたり、取っても判別できなくしたりすればよいのです」

「ん? どういう事だ」

「まず、魔導具で動くつけ耳と尻尾を開発して売り出します」

「「「は?」」」

「ジョークグッズやなりきりセットなど、おもちゃとして販売するのですよ。つまり、これをつけることで本物のエルフなのか、獣人なのか、わからなくします。耳も尻尾も動くようにして、それ専用のフードも販売します」

「なんというか、無駄に高度な技術を使うんですね……」

「木を隠すのは森の中、か。確かにそれならぱっと見はわからないだろう。開発費などは私の個人資産から出そう」

「ありがとうございます」

「あれ、これってクルミ様が好きなケモナー計画なだけが……」

「シャラップです、リリ」

 

 とりあえず、これで誤魔化す方向にもっていけます。

 

「キアラ、私達は味方だ。信じて欲しい。誓って君に危害を加える事はない」

「そうです。私達がなんとしても守ってあげますからね」

「ん……?」

 

 二人がそう言って手を差し出してきたので、キアラがこちらを見てきたので、頷いてあげます。

 

「ん!」

 

 キアラもおずおずと握り返しました。エルフ関連はひとまずこれで大丈夫……そう思ったら悲鳴が聞こえました。男性の悲鳴です。

 

「ベル様の声ですね」

「ベルの声~」

「どうやら、クルミの悪戯が成功したようだな」

「失礼ですね。ご褒美をあげただけです」

「とりあえず、見に行きましょう」

「アイズさんになにか……」

 

 皆でアイズさんの天幕を覗くと、なんということでしょう。アイズさんがベルさんを膝枕して押さえつけているではありませんか。

 

「あ、アイズさん! は、離してください!」

「駄目。離したら前みたいに逃げる」

「逃げませんから!」

「なら……いい」

「あの、それでボクの仲間は……」

「男の人ならそこ。女の子ならそっち」

「え? リリにキアラ! それにクルミまで! よかった無事だったんだ!」

「はい。無事でした」

「無事~」

「ゴライアスは?」

「当然! リリだけで倒しました! と、言いたいんですが、クルミ様が助けてくださいました。ですので、二人での討伐ですね」

「それでもすごいよ! って、あ……もしかしてさっきの見て……」

「昨夜はお愉しみでしたわね!」

「違いますぅうううううううううううぅぅぅぅっ!」

「「???」」

 

 キアラさんとアイズさんはわかっていないようで小首をかしげていますが、リヴェリアさんとリリさんは噴き出しました。レフィーヤさんはベルさんに殺意の籠った視線を向けています。はい、元気なようでなによりですわ。

 

 

 




次はリュー様との話し合いの下です。リュー様とは一度ガチ勝負させてみるのもいいかもです。ベル君ももルドたちとやりあいますからね。

ゴライアスレベル4をレベル3、二人で討伐するのは偉業?

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