ダン狂~くるみ(偽)とリリのダンジョン探検~   作:ヴィヴィオ

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クルミの平和な休息日……?

 

 

「ん……」

 

 寒くなって目を開くと見知った天井があります。ですが、何時もはある温もりがありません。ですので、布団を除けて外に出ます。すると姿見に一糸まとわぬ綺麗な肌をしている幼い黒髪ロングの美少女が映ります。はい、わたくしです。

 振り返ってみると、誰も居ません。普段ならリリさんとキアラさんが居ますし、どちらかが居ない場合はわたくし自身を抱き枕にするか、されるかして寝ています。

 

「久しぶりに起きたら一人でした……」

 

 少し寂しいですが、普段の服である赤いドレスに着替えようとしたら、ありません。着替え用の籠に入っていたのは赤色の生地に桃色の牡丹の花があしらわれた着物があります。

 

「ふむ」

 

 着方なんてわからないのですが、まあ適当になんとかなるでしょう。せっかく用意して頂けたのですし、可愛らしいわたくし(時崎狂三)が見られるのなら構わないでしょう。

 そんな訳で着替えたのですが……少しはだけた感じになってしまっています。まあ、これはこれでいいのでよしとします。何時もの通り、ツインテールにして赤いヘッドドレスを装着します。

 今回はこちらにも牡丹の花があしらわれていて、大変よろしいですわ。ツインテールにして鏡を確認すると、ロリバージョンではありますが、浮世絵木版画狂桜美人図時崎狂三のと同じような感じですわ。では行きましょう。

 外に出て廊下を歩いていきますが、人がほぼどころか皆無です。不思議に思って移動し、部屋を探していくとジャガ部屋君から侵入者の反応がありました。

 

『応援は要りますか、わたくし』

『ええ、必要ですわ。対処に困りますもの。ですから早急に来てくださいまし』

 

 わたくし達が対処に困るというのは不思議ですが、影を通ってあちらに移動すると、すぐにわかりました。

 

「カッコイイ」

「いえ、怖いですよ~」

「ふぇぇぇ」

「これは客寄せになりそうだねえ」

 

 此花亭の方々がやって来ていたのです。リリさんとキアラさんも着物姿で居ます。どちらも大変、可愛らしいです。

 

「このような場所にどうなさいましたの、女将さん」

 

 狐人である女将さんに声をかけると、あちらもわたくしに気づいて近づいてきました。

 

「丁度いい。これ、貸して欲しいんだよ?」

「貸すのは構いませんが……この服といい、なんなんですの?」

「新月祭だよ。どうせなら客寄せにできるもんはないかと聞いたら、着物を着せてたリリがコイツの事を教えてくれてね。それと柚、蓮。クルミの服を直してやんな」

「はい!」

「確かにこれはないわ」

 

 女将さんは明るい茶色の長髪で、頭頂部に短い一束のアホ毛がある柚さんと薄いピンク色でやや巻毛のオシャレな蓮さんにわたくしの服を修正させてきました。されるがままになりながら、話を聞いていきます。

 

「それで、ジャガーノートをどうするんですの?」

「ロビーにドンと飾ろうぜ!」

「それは雰囲気がぶち壊しなので止めてくださいまし」

「特設ステージを用意してライトアップかね」

「まあ、その辺りが妥当でしょう。プールの一部を使いましょう。水を抜いて配置すれば構いません。もちろん、プールは侵入禁止にしてです」

「コイツはいくらぐらいするんだい?」

「一部でも億は超えるかと」

「……なんつうもんを置いてんだい。さすがにまずいか」

「いえ、構いませんわ。ライダー、運び出して配置してくださいまし。警備はセイバーとランサー。アーチャーとアサシンはバックアップをお願いしますわ。こちらの警備もお願いします。わたくしは本日、色々と回らなくてはいけませんので」

「「「横暴ですわ!」」」

「交代で子供達と一緒に新月祭へ遊びに行って構いません。ただ、キアラさんは駄目です。危険ですので、此花亭かホームで過ごしてくださいまし」

「むー」

「むくれても駄目なものは駄目です。まだ変装用の装備ができていませんもの。すいませんが、今回は諦めてください。さすがに祭の中でフードを被ったまま活動するのは怪しまれるだけですから。女将さん、柚さんと櫻さんを貸してください。キアラさんのお相手をお願いしますわ」

「コイツの代わりなら仕方がないね」

 

 さすがにリューさんの件もまだ終わっていません。これから交渉に赴くので無理です。かと言って、ロキ・ファミリアのリヴェリアさんとレフィーヤさんに頼むのもまずいです。お二人も新月祭を楽しまれるでしょうし、注目が集まるでしょう。ですので、ここで過ごしてもらうのが一番です。

 

「キアラさん、祭りは変装道具ができれば此花亭で盛大にやりましょう。それで勘弁してくださいまし」

「ん。我慢する」

「いい子です。ただ、お祭りを堪能できない代わり食べ物は買ってきてさしあげます。わたくし達、三十万ヴァリスで、これで子供達の分もふくめて買ってきてくださいまし」

「屋台まるごと買えそうな値段だね」

「多過ぎよ。一人五千ヴァリスはあるわよ」

「構いませんわ。これからちょっと稼いできますので。リリさんは……」

「リリは今日、ここでお手伝いしますよ。この子達の世話もしないといけませんしね」

「お願いします。わたくしもう出ますわ」

「行ってらっしゃい」

「またね~!」

 

 子供達と別れて、箱を持ちながら新月祭の準備を進めている街の中を歩いていきます。さすがに高い高級な見慣れない着物や髪飾りをしていると注目が集まってきます。まあ、わたくし自身が最速でレベル2になり、レベル3でこそリリさんに負けましたが、レベル4は史上最速ですので結構有名になっておりますわ。まあ、レベル4に関してはまだギルドに報告していませんけれど。

 

「そこ行くお嬢さん。ちょっと私とお茶しませんか!」

「あら、わたくしは高いですわよ」

「おいくらで?」

「お茶なら百万でいいですわよ」

「高いわ!」

「ソーマを買って頂ければお酌ぐらいはしますわ」

「ソレ、高い奴じゃん!」

「ソーマの元締めだから仕方ねえだろ。ところで今夜、ホテルで……」

「星になりたいのしたら、新月祭ですからちょうどいいかもしれませんわね」

「ごめんなさい」

 

 神威霊装・三番(エロヒム)を呼び出し、男神の顎に突き付けてあげると即座に謝ってきます。

 

「クルミた~~ん!」

「っ!?」

 

 振り返るとロキさんがとびかかってきたので、髪の毛を掴んでそのまま体重移動をして投げ飛ばします。投げた先にわたくしが居て、手には神威霊装・三番(エロヒム)を持っており、それで打ち返そうとしたら、さすがに護衛のグレイが掴んで止めました。

 

「ロキさん、わたくしが居るのに浮気とか、良い度胸ですわ。これはもう帰りますわね」

「待って! グレイたんとクルミたんは別腹やねん!」

「「髪の毛の色ぐらいしか違いませんわ」」

 

 グレイが本当にスタスタと歩いていったので、その後をロキさんが追っていき、食べ物で釣り出しました。お二人を見送ってから、わたくしは他の神々や別の人達が声をかけてきますが、簡単な挨拶をしてすぐに別れます。それからお土産のお菓子を買ってから向かいます。

 

「お邪魔しますわ」

 

 目的地に到着したので、中に入ります。中では忙しそうに仕事をしている方々がおります。空いているカウンターの方に行き、用件を告げます。

 

「団長と主神様はいらっしゃいますか? ソーマ・ファミリアのくるみ・ときさきですわ」

「あ~団長でしたら少し前にオラリオの外から戻られました。神様は居ません」

「でしたら、団長さんだけでいいですわ」

「どうぞ」

 

 何度も訪れていますので、普通に通してくれます。そして、部屋の前でノックしてわたくしが来た事を告げると嫌そうな声が響いてきました。

 

「どうぞ」

「お邪魔しますわ」

 

 案内してくださった方にお礼を言ってから、部屋の中に入ります。そこではここのファミリアの団長さんが書類の束に囲まれております。

 

「本日はどのようなご用件でしょうか?」

「本日はこちらをお渡しに参りました」

 

 木箱を渡すと、不思議がりながらも開けました。

 

「美味しそうなメロンですね」

「ええ、そうですわ。お買い上げありがとうございます。こちら請求書です」

「は?」

 

 胸元に手を入れて、丸めた紙を取り出して開き、相手に渡します。受け取った彼女は請求書を見てから、付き返してきました。

 

「こんな物、頼んでいませんし要りません! 大体、なんですか、このべらぼうに高い金額は!」

「おや、それはおかしいですわね。ヘルメス様のご注文ですよ。その場にアスフィさんもいらっしゃったではありませんか」

「そんなはずは……」

「つい先日、ダンジョンで透明な兜を見せて頂いた時ですわ」

「っ!? そういう事ですか! ですが、それはギルドに罰金として支払わされています!」

「ギルドに支払った罰金はあくまでも、ダンジョンに神様が侵入された事による罰則です。ですが、そこにもう一つの罪が加われば罰金が五割から八割に上がるでしょうか? いえ、九割?」

「待ってください! 待ってください! お願いですから!」

「では、お支払い頂けますわね?」

「む、無理です。今、五割もギルドにもっていかれたばかりなんです! 七千万もの大金はありません!」

「でしたら、その身体で支払ってもらいましょうか」

 

 神威霊装・三番(エロヒム)の小銃を呼び出し、アスフィさんの身体に押し付けてするりと撫でるように降ろしていきます。

 

「なっ!?」

 

 アスフィさんが身体を抱きしめて後ろに下がります。

 

「団長である貴女が支払いますか? それとも団員に支払わせますの?」

「……うぅ……わ、わたしが支払います……」

 

 涙目になってこちらを見詰めてくるアスフィさんにゾクゾクしてしまいます。

 

「では、こちらの製作をお願いしますわね」

「え? 製作?」

「あらあら、何を想像したのでしょうか? わたくし、子供なのでわかりませんわ。ですから、教えてくださいます?」

「ななななっ!」

 

 顔が真っ赤になったアスフィさんをニヤニヤしながら見ていると、彼女は即座にわたくしが出した要望書と設計図をひったくって見ていきます。

 

「変装用の魔導具ですか」

「変身魔法、幻影を利用した魔導具はすでにありますの。それを応用してこのように動く機能を付けた猫耳と尻尾を作ってくださいまし。エルフの付け耳もですわ」

「これなら確かに作れますが、費用は……」

「そちら持ちですわ。販売もお願いします。安く広めてくださいまし」

「いやいや、こんなの……」

「神様の趣味としてなら売れるでしょうが、普通には売れない、ですか?」

「ええ、そうです」

「それは効果を追加したらどうですか?」

「効果ですか?」

「例えば猫耳とかに音を増幅して遠くの音をよりよく聞こえるようにしたり、尻尾を金属製にして動かせるようにしたりです。後、尻尾は……」

 

 アスフィさんの隣に移動して耳元でゴニョニョと伝えると顔を真っ赤にしました。

 

「絶対に売れますわよ。特に金持ちに。マンネリは嫌ですものね」

「わ、わたしにこんな物を作れというんですか!」

「別にただ動くだけの機能なら、アスフィさん以外の方がパーツを取り換える程度で作れるでしょう。これ、儲け話なのですが、いやなのでしたらわたしが自分で作ります。時間をかければ作れますもの。わたくしのファミリアであるリリさんとキアラさん。それに友好関係にあるヘスティアさんとヘファイストスさんのファミリアの救助に来てくださって負った五割ですからそちらに提供させてもらおうと思ったのですが、どうなさいます?」

「……あ、ありがたく頂戴させていただきます……」

「では全体の利益から一割、いただきます」

「わかりました。三割と言われないだけましですね」

「もちろん、提供者がわたくしである事は内緒にしてくださいまし。ヘルメスさんが持ってきたという事にすればよろしいかと」

「わかりました。って、何をしているんですか」

「紅茶を入れておりますの」

 

 設計図を見ていたアスフィさんの横で大人のわたくし(時崎狂三)に教え込まれた方法で紅茶を入れ、そこにソーマをちょこっと入れます。

 

「さあ、どうぞ。疲労回復になりますわ。お菓子のパウンドケーキもございます」

「ありがとうございます……」

「それはそうと、ヘルメスさんにお仕置きをした方がいいですわよ」

「お仕置きですか……?」

「ええ、コレの実験台になってもらえばよろしいかと」

「……なるほど。確かに罰になりますね。ふふふ」

「アレ、冗談のつもりだったのですが……」

「聞いてください! ヘルメス様ったら、私に後処理と外出申請書類を押し付けてご自分はもう遊びに出かけているんですよ!」

「あらあら、それはひどいですわね」

「本当です!」

 

 ソーマを飲んだせいか、たまりに溜まった文句というか、のろけを含んだ部分もどんどん聞かされていきます。逃げられないので少し手伝えるお仕事を手伝ってさしあげます。

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 午前中に行ったのに出た時にはお昼を過ぎており、約束の時間に遅れそうで走って待ち合わせのところにやってきました。そこにはウエイトレス姿のリューさんが噴水の前でオロオロしながら待っておられました。

 

「お待たせしました」

「遅いです! 何かあったのではないかと心配したではないですか!」

「すいません。ちょっとアスフィさんの愚痴を聞かされておりまして……」

「ああ、彼女の……ギルドからの罰則、聞きました。確かに愚痴も言いたくなりますね」

「はい。それでは参りましょう」

「ほ、本当に大丈夫だろうか?」

「大丈夫ですわ。ほら、行きますわよ。改宗するにしろ、しないにしろ、どちらにせよ筋を通すためにお会いしなければなりません」

「わかった」

 

 リューさんの手を掴み、彼女を連れていきます。アストレア・ファミリアの主神、アストレアさんの居場所は把握しております。別のわたくしを護衛として配置しておりますので、現在位置もバッチリです。

 

「や、やっぱり無理だ……」

「問答無用ですわ!」

「ちょっ!?」

 

 扉を開き、とある一軒家の中に入ります。そこには何処かやつれた雰囲気のある茶色の髪の毛をした女性が席に座っていました。家の割に不釣り合いな大きなテーブルには遺影のような物が置かれており、そこにはお菓子のような物が捧げられています。

 

「あ、アストレアさま……」

「りゅ、リューなの……?」

 

 彼女はこちらを見て、後ろに居るリューさんを見ると立ち上がってフラフラしながら寄ってきます。リューさんはどうしていいのか、オロオロしていたので、後ろに回って彼女の方に向かって背中を押してあげます。

 

「リュー、リュー……」

「アストレア様……」

 

 アストレアさんは泣きながら彼女に縋り付いています。リューさんはようやく、アストレアさんを抱き締めかえします。

 しばらくかかりそうなので、家の外で待っています。暇なので歌いながら待っていると、扉が開いて目を真っ赤にしたアストレアさんとリューさんがやってきました。どうやら、泣き止んでからしっかりと話し合ったようですね。

 

「待たせた。どうぞ入ってくれ」

「ええ、詳しい事を聞かせてちょうだい」

「はい」

 

 改めて家の中に入り、彼女達の遺影に手を合わせてからお二人に向かい合います。それから、しっかりとご説明させていただきます。

 

「それで、本当に皆を甦らせる事ができるの? ちょっと信じられないのだけど……」

「過去の改変ができますので、七年前に行って暗黒期を改変すれば可能ですわ。実際に試して数時間ですが、やってみせました。ですが、今回はわたくしがオラリオに存在しません。その事も考えると、どうしてもわたくし自身が行く必要があります」

「嘘ではないわね。それで時間を逆行するために必要な時間を集めるのが、リューの仕事になるのね?」

「はい。正直に言ってわたくしは当事者ではありません。あくまでも第三者の協力者です。そこまでの労力を賭けてまで行くメリットはないかと言えばあります」

「あるのね」

「あるのか」

「はい。ですが、彼女達を助けられるかと言えば無理です。そもそも聞いたような状況で見ず知らずの子供に力を借りますか? レベルが明らかに強いのに今まで聞いたこともないような子にですよ?」

「どう考えても怪しいな」

「確かにそうね。あの時期は疑心暗鬼にもなっていたから……」

「そこでリューさんです。エルフであるリューさんならば七年前と姿はほぼ変わりません。ですので、アストレア・ファミリア以外の方々にご紹介頂ければなんとか問題を解決できます。それこそエルフの森からやってきた協力者という役割でもいいですしね」

「そううまくいくかわわからないけれど……」

「アストレア様のサインと私が要れば情報収集はできるはずだ。それに倒すべき敵もわかっている。だから、アストレア様……お願いします」

「……わかりました。リュー、貴女をアストレア・ファミリアから除名します。ギルドにも通達してブラックリストからも解除させます。ですが、以後私と会う事も許しません」

「……はい……」

「だから、次に合う時は皆でね」

「それは……ありがとうございます!」

「クルミ。リューの事、よろしくお願いね。なんとか伝手を頼って根回しをしてくるわ」

「お供しますわ。<刻々帝(ザフキエル)>、八の弾(ヘット)

 

 分身を二体、改めて生み出します。わたくしが読んだ記憶のせいで、アストレアさんをこのまま一人にさせておく訳にはいきません。闇派閥から狙われている可能性だってあるのですからね。

 

「この子達をアストレアさんの護衛とお世話係とします。レベル4二人なので、護衛として問題ないでしょう。武器は後程届けますが、今は不壊属性(デュランダル)の刀を使ってください」

「輝夜の子供みたいね」

「よろしくお願いしますわ、お母様。それともお姉様かしら?」

「お母様でいいわ」

「クルミ、頼む。私は……」

「今日ぐらいはいいでしょう。というか、こちらの受け入れ準備ができるまで少々お待ちくださいまし。少し考えている事があるので、そちらをする場合、アストレアさんに協力していただかなければなりません」

「あら、いいわよ。昔みたいに過ごすのもいいものだし」

「では、しばらく私はアストレア・ファミリアのままで居た方がいいのか」

「ステイタス更新もアストレアさんにして頂けばいいだけですから、改宗する意味は本当にありませんもの。それから、会わなくなるのはこちらの準備が出来てからでお願いしますわ」

「わかりました。伝手を頼るにしても、時間がかかるからちょうどいいわ」

「数ヶ月以内にはこちらに移っていただきますので、ご安心ください」

「随分と幅があるわね」

「ソーマ・ファミリアは色々と問題点がありまして……具体的には過去の犯罪です。もちろん、わたくしはしておりませんが、その辺りをキッチリと精算してからお迎えにいたします。アストレア・ファミリアの方をお迎えするのであれば、それが筋というものでしょう」

「ありがとう」

「では、わたくしはこれで失礼いたします。どうぞ、ごゆるりと久しぶりの再会をお楽しみくださいまし」

 

 しっかりと挨拶してから外に出ます。続いて行く場所はミアさんのところです。ウエイトレスを一人、ほぼ辞めさせてしまうので、代わりを用意しないといけませんもの。

 

 

 

「話はわかった。つまり、リューが冒険者として復帰するから、ここでの仕事があまりできなくなるという事だな」

「困るにゃ! リューがいなければ誰に仕事を押し付ければいいにゃ!」

「そうにゃ! 困るにゃ! 仕事は押し付けないけれど、使える奴がいなくなるのは困るにゃ!」

「ええ、代わりにわたくしの分身達がお手伝いいたしますわ」

「レベル3だろ?」

「レベル4になりました。ですので、リューさんの代わりに二人、派遣させていただきます。お酒に関してお任せくださいまし」

「……いいだろう」

「いやいや、いくらなんでも嘘にゃ! そんなに早く上がるはずないにゃ!」

「いやでも、コイツら、あたまおかしいからにゃ……」

「ちょっと待ちなさい。誰が、頭がおかしいとおっしゃいますの? ぶち殺しますわよ」

「面白いにゃ! やれるものならやってみるにゃ」

「よろしい、では戦争ですわ」

 

 指を鳴らして二四人ほど呼び出します。それを見てアーニャが青ざめます。レベル3でも、二四人とわたくしの合計二五人を相手すればさすがにレベル4だろうと倒せます。

 

「止めんか、馬鹿者」

「止めるにゃ! だから戦いはなしにゃ!」

「あの、聞いていたらアーニャさんはよくサボるのですよね?」

「違うにゃ!」

「サボるにゃ!」

「サボるね」

「でしたら、彼女も貸していただけませんか? ダンジョンで魔石を稼いで欲しいのです」

「嫌にゃ! でも、たまにならいいにゃ!」

「にゃーもたまにならいいにゃ」

「なるほど、つまり仕事を押し付けられた分だけ、ダンジョンに叩き込んでこき使えばいいのですわね」

「それなら文句ないよ」

「確かにそれがいいにゃ」

「待つにゃ。にゃーは全然よくにゃいにゃ!」

 

 アーニャさんの言葉を無視して、わたくし達は話していきます。ついでなので皆でお仕事を覚えるためにもお手伝いします。ピカピカに綺麗にします。料理の方もミアさんのをトレースしていけば問題ないでしょう。

 

 

 

 

 

 すっかり夜になりました。新月祭なので何人か、働いてもらっておりますが、まあよいでしょう。すると誰かにつけられている気配がしたので、裏路地に移動してしばらくしてから振り返ります。同時に時喰みの城(ときばみのしろ)を展開しておきます。

 

「どなたでしょうか。か弱いわたくしを襲おうとする狼さんですの?」

「……ソーマ・ファミリアの団長だな」

「ええ、そうですわ」

 

 フードで顔を隠し、口元も布で隠した怪しい人達がやってきました。明らかに犯罪者ですので、殺してもいいでしょうか? 

 

「ソーマがお求めなら、販売店の方に行ってくださいまし」

「我々はお前に資金提供を願いたい」

「あら、代価は何かしら? 生憎と借金だらけでわたくし共は自転車操業をしているだけなのですが……」

「なんだそれは?」

「いえこちらの話ですわ。それで資金提供した見返りはなんですの?」

「ソーマ・ファミリアが行ってきた悪事を黙っていよう」

「何の事かわかりませんわね」

「とぼけるつもりか?」

「ええ、だって本当にわかりませんもの。知っていそうな方々は既にいませんからね。わたくし、新しく団長に就任して、そういう方々はキッチリと脱退していただきましたもの」

「それでも、こちらは貴様らがやった悪行の証拠を握っている。これを公開すればギルドからの罰則は避けられん」

 

 わたくしの周りを囲むようにやってきたので、こちらもその外側から囲んでさしあげます。もちろん、ばれないようにです。

 

「それは困りましたわね。今、罰則を受けては立ち行かなくなりますもの」

「ならば支払え」

「と、言いましても今はお金はありませんし、さすがにわたくしの一存では決められませんわ。ファミリア内で相談しませんとね」

「貴様が全てを牛耳っているのはわかっている」

「ですが、主神様や副団長とは相談しますわよ」

「どうやら身の程をわきまえさせる必要がありそうだな」

「言ったでしょう。わたくし、か弱いので戦いは嫌なのですが……」

「問答無用だ。だが、殺しはしない」

「あら、お優しいのですね。わたくしと違って」

「ぬかせ!」

 

 沢山の方々が一気に襲い掛かってきましたので、手をあげます。すると複数のところから銃声が響いて襲撃者さんの方々を撃ち抜きます。運が良ければ手足を撃たれ、悪ければ頭や急所にあたって即死です。

 

「貴様!? どうなってもいいのか!?」

「あら、わたくし言いましたわよ。か弱いので戦いは嫌いだと。ですから、護衛ぐらい配置しているに決まっているではありませんの」

 

 残っているリーダーさんに近づきます。彼の視界を遮りながら、アサシンのわたくし達には生き残っている方の影に入っていただきます。

 

「それにわたくしは断るとも言っていませんわ。早い男性は嫌われますわよ?」

「くっ……」

「武力で来るのなら、ちゃんと殴り返される覚悟はしておくのですわ。勉強になりましたわね?」

「覚えていろ! 必ず後悔させてやる!」

「あら、お金は要らないんですの? やりあうのなら、容赦はしませんわよ」

 

 そう言ってから、リーダーさんの横を通って歩いていきます。草履で血を踏まず、着物につかないように気を付けて歩きます。

 

「待てっ!?」

「あら、ここに居ていいのですか? 銃声を聞きつけてガネーシャ・ファミリアが来ますわよ?」

「くそがぁっ!」

 

 生きている動ける人達と共に動けない人を殺してから走り去っていきました。どうやら、口封じのようですが、その前に時間は吸い取っておきますので、自分たちで殺したつもりになってくださるでしょう。

 

「ガネーシャ・ファミリアだ! 動くな!」

「あら、ご苦労様ですわ。今しがた襲われまして、撃退させていただきましたの。あちらの方に逃亡していったので、追うなら追ってくださいまし」

「君は……」

「そいつなら問題ない」

「あら、シャクティさんではありませんの。団長自ら警邏ですか?」

「新月祭をパトロールも兼ねて楽しんでいただけだ。お前はもう少し格好をどうにかしろ」

「あら? 襲われたせいで少し乱れておりますわね」

 

 肩からずり落ちて胸元が現わになりかけております。手で直しながらシャクティさんの横に移動します。

 

「それでお前の事だ。情報を得るためにどうせわざと逃がしたんだろう?」

「あら、何の事ですか?」

「わからないはずがないだろう。ガネーシャに居るお前には何度もやられているからな」

「シャクティさんにはかないませんわね。どうやら、ソーマ・ファミリアが過去に行った不正の証拠があるようですわ。ですので、お金をゆすられました。まあ、考えさせていただきます。と、返答しておきましたわ」

「どう始末するかを考えるわけだな」

「ご想像にお任せしますわ。まあ、有象無象に好き勝手やられるのは気に食わないので、根元から処分させていただきますわ」

「不可能だろう。どちらにせよ、一時的にダメージを受けるのは確実だ」

「でしょうね」

 

 ギルドの豚さんなら、わたくし達から黒いジャガーノートを取り上げようとするでしょう。その前に手を打たないといけません。いっその事、全部ヘファイストス・ファミリアに渡してしまうのも手です。あ、それいいですわね。担保として預けておきましょう。管理はわたくしがして、所有権はヘファイストス・ファミリアにある。書類上だけでもこうしておけばどうにかできますわね。念の為、他の資産も全て別の場所に移しておきましょう。

 ツインテールをクルクルしながらそう考えていると、シャクティさんが飽きれた表情になっております。

 

「あくどい顔をしているぞ」

「気のせいですわ。それより、やる事がありますので、これでお暇いたしますわ」

「事情聴取は……」

「何時もの通り、ガネーシャに居るわたくしが書類作成までしっかりとやってくださいますわ」

「わかった……行け」

「それではごきげんよう」

 

 シャクティさんと別れてからお土産を買い付けて此花亭に送っておきます。その途中で人だかりを見つけました。そこから知った事のある声が聞こえてきます。

 

「さぁさぁ、お立会い! 遠き者は音に聞け、近き者は目によ見よ! そして、腕に覚えのある冒険者であれば名乗りをあげよ! さぁ、この槍を引き抜く英雄は誰だ!」

 

 どうやら、ヘルメスさんが舞台の上で水晶に突き刺された槍を前にして口上を述べておられます。

 

「これは選ばれた者にしか抜けない伝説の槍。手にした者には貞潔なる女神の祝福が約束されるだろう! 更に抜いた者は豪華世界観光ツアーにご招待! それにギルドの許可済みだぁぁぁっ!」

 

 ふむ。これは是が非でも抜かなくてはいけませんわね。外に出られるのなら、わたくし達を投下するチャンスでもありますし。

 

「「あ~~~!」」

 

 知り合いの声が聞こえますが、無視して舞台の上に上がります。

 

「おっと、ソーマ・ファミリアの団長、クルミちゃんの登場だ! 彼女はトップスピードでレベルを上げている期待の新星だ! 果たして伝説の槍を引き抜けるかぁっ!」

 

 槍を握りしめ、少しあげてみますがびくともしません。ですので、魔力を流し込んで水晶を破砕させて引き抜きます。

 

「ちょっと待ったぁっ!」

「なんですの?」

「それ引き抜くじゃないから! ぶち壊そうとしてるよね!」

「ちっ。結果は同じですわ」

「駄目! 駄目だからね! はい、次の人!」

 

 仕方ないので降りると、代わりにリリさんがやってきました。

 

「あら、どうしたんですの?」

「ちょっとベル様達と遊びにきてます」

「リリさんなら抜けるかもしれませんわね」

「はい! あの、フル装備をお願いします」

「かしこまりましたわ」

 

 リリさんに装備を渡します。彼女が槍の前に立ち、全力を出して引き抜こうとすると……舞台の方が壊れて槍が持ち上がりました。

 

「見てください! 抜けました~!」

「ちが~う! そうじゃない! 水晶から抜かないと駄目!」

「ぶ~ぶ~! 言われ通りに抜きましたよ~!」

「説明不足のヘルメスさんが悪いですわね」

「確かに俺が悪かった! でも、舞台ごとぶっ壊すなんて思わないじゃん! だから勘弁してくれ!」

「仕方ないですね。どうしますか、クルミ様?」

「そうですわね。わたくし達も旅行についていくという事で手を打ちましょう」

「最初からそれが狙いか! はぁ~わかった。それでいいよ。まあ、確かにその方が都合がいいか

「次は私です!」

 

 レフィーヤさん、アイズさんが挑戦し、続いてベルさんが挑戦します。どうやら、レフィーヤさんとアイズさんはキアラさんの様子を見た帰りみたいです。

 

「うわぁっ!?」

 

 どうやら、ベルさんが引き抜いたようで、ヘスティアさんがベルさんに抱き着きました。そのあと、旅のスポンサーであるアルテミスさんが紹介され、ヘスティアさんが抱き着こうとしましたが、無視されて彼女はベルさんに抱き着かれました。その後、怒ったヘスティアさんが皆さんを連れてホームへと向かわれます。

 もちろん、わたくしもご一緒します。書類は別のわたくし、オペレーター達に任せておきます。楽しい旅行の始まりです。あの人達はもうちょっと泳がしてから収穫しましょう。

 

 

 




バカンスが楽しみですね。なお、そこには……

アストレア・レコードの改変について

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