ダン狂~くるみ(偽)とリリのダンジョン探検~   作:ヴィヴィオ

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オリオンの矢
オリオンの矢1


 

 

 

「さっきのはどういうつもりだアルテミス!」

「すまない……つい、うれしくて……」

「嬉しいってどういう事だぁぁぁぁっ!」

「め、女神様、僕達、初対面ですよね?」

「え? え?」

 

 薄暗い廃教会の中、ヘスティアさんの叫び声が響きます。アルテミスさんはベルさんをずっと見詰めています。それで尚更、ヘスティアさんがイラついておりますね。

 

「ヘルメス~! アレがアルテミスだって! おかしいだろう!」

「あ~アルテミスも下界の生活に染まっちゃったんじゃないかな?」

「そんなバカな~!」

「元々、どんな方だったんですか? アルテミス様って」

「天界の処女神の一柱なんだ。貞潔を司り、純潔を尊ぶ。言っちゃえば不純異性交遊撲滅委員長。大の恋愛アンチだ」

「「「恋愛アンチ!?」」」

 

 わたくし達の声が揃いました。どう見てもそうは思えません。アルテミスさんはベルさんに恋をしているような感じに見えます。

 

「それがどうしてこうなったぁぁぁぁっ!!」

「でも、なんでそんな恋愛アンチの女神様がスポンサーなんですか?」

「確かにおかしいですわね」

「実はオラリオの外に魔物(モンスター)が現れた」

「オラリオの外に?」

「ああ、アルテミス・ファミリアが発見したんだが、ちょっと厄介な相手でね。それでオラリオに助けを……」

「つまり、観光ツアーとは名ばかりで……」

「アルテミス様がご依頼された魔物(モンスター)討伐のクエスト、というわけですか?」

「さっすが! 鋭い!」

「話が旨すぎると思ったら……」

「詐欺ですヘルメス様! どうしてやりましょうか、クルミ様」

「そうですわね……詐欺はわたくしも困りますわ。この昂った気持ちをどうしたらいいのしょうか? 困りましたわ」

「まあまあ……」

 

 話していると、アルテミスさんが立ち上がって槍を掴み、わたくし達を遮ってベルさんの前に立ちました。

 

「私はずっと貴方を探していた、オリオン」

「いや、僕はベル・クラネルと言って……」

「いいや、貴方はオリオン。私の希望」

 

 アルテミスさんは話を聞いてません。どうあってもベルさんをオリオンさんにしたいみたいです。

 

「どうして僕なんですか? アイズさんとか、僕より強い人はいっぱいいるのに……」

 

 ベルさんはそう言いながらわたくし達の方を見てきました。確かにまだレベル2のベルさん、レベル4になったわたくし達では力が違います。

 

「この槍を持つ資格は強さではない。穢れを知らない純潔の魂」

 

 なるほど、それならわたくし達に反応するはずがありませんわ。わたくし、魂が汚れている自信がありますもの。

 

「わたくし達が引けないのは納得ですわね」

「ですね。リリもそう思います」

「そこで頷くのかい!?」

 

 わたくしとリリさんが汚れているのは知っています。わたくし達はどちらも人を食い物にして生きてきましたしね。わたくしは現在進行形ですけれど。

 

「ヘルメス様、この槍……」

「言っただろう! 伝説の槍だって! ヘファイストスもお墨付きの武器だぜ! 君は槍に選ばれたんだよ、ベル君!」

「「おぉ~」」

 

 リリさんとわたくしで拍手してあげます。ベルさんは未だにキョトンとした感じです。

 

「槍に選ばれた……僕が槍に……」

「うぇっ!?」

 

 アルテミスさんがベルさんの頬に手を伸ばして触れました。それにヘスティアさんが声をあげます。

 

「その穢れなき魂と共に槍を携えて私と共に来て欲しい、オリオン」

「僕は……」

「ソーイ!」

 

 驚いたことに怒りが限界まで来たのか、ヘスティアさんが飛び上がってアルテミスさんの額と自らの額を衝突させました。

 

「くぅ~~」

「うぅ~~痛いぞヘスティア~」

「僕だって痛いやい!」

「大丈夫か?」

「あ、ありがとう」

 

 アルテミスさんは自ら攻撃してきたヘスティアさんの額を撫でていきました。普通にいい人、いえ、神様なんでしょうね。

 

「って、違うわ~い! アルテミス! そのクエスト引き受けた!」

「え、神様!?」

「神友が困っているなら、助けるのは当然だ!」

「っ!? ありがとうヘスティア! 本当にありがとう!」

 

 アルテミスさんが感極まったのか、ヘスティアさんに抱き着きました。

 

「それに君とベル君を二人っきりにさせるのも危険だしね」

「あ~リリ達はどうしますか?」

「そうですわね……旅行でないのなら、そこまで行く必要はあまりありませんわね」

「「それは困る!?」」

 

 ヘスティアさんとヘルメスさんの言葉が同時に発しました。

 

「どうしたんだいヘルメス? 僕はベル君の護衛に彼女達が来て欲しいと思ったんだけど……」

「あらあら、これは正直に告白して頂きたいですわね。わたくし、別にリリさんと一緒にこのまま帰ってもいいのですが……」

「わかった。正直に言おう。今、僕のファミリアが討伐魔物(モンスター)が居る遺跡を監視している。そこから、大量の魔物(モンスター)が溢れ出している。とてもではないが、僕のファミリアだけでは抑えきれないのがわかっていた。何せ、アルテミスのファミリアでも無理だったんだ。だから、別の優秀な者を追加で連れて行き、どうにかなると思った。その子は大事な用があるから抜けられないと言われたんだ。ああ、もうわかるだろう。君のせいだよ、クルミ」

「知った事ではありませんね。たまたま都合が悪かった。それだけでしょう」

「そうなんだけどね! まあ、用意できないのなら仕方がない。実際に行って確認してみたが……やはり無理だった」

 

 皆さんの視線がこちらに集まってきますが、気にしません。むしろ、ニコニコして答えます。

 

「それもあって、アルテミスと共に奴を倒せる槍の使い手を探し、戦力を集めにアスフィとアルテミスを連れてオラリオに戻って来たわけだ」

「あれ、それなら別にクルミ様でもなくていいですよね?」

「いや、彼女でないと駄目だ。馬鹿みたいに敵の数が居るんだ。被害を抑えるためにはこちらも数を揃えないといけない。それに時間もないから、物資と戦力の輸送に優れた彼女が適任なんだ」

「なるほど。確かに大手が動くのに時間がかかります。それにカバーできる範囲は少ないでしょう。クルミ様ならその手段が全て解決できます」

「と、言うわけだ。頼むよ」

「その敵は魔石がありますの?」

「ああ、あるよ」

「大量に居るのですわね?」

「ああ、地面を埋め尽くす勢いだ」

「なるほど。わたくしを雇うなら高くつきますわよ」

「アルテミス・ファミリアの全財産をあげる。それで手を打ってくれないかしら?」

「アルテミス!?」

「お願い。子供達。今も襲われている子供達を助けるためにもお願いできないだろうか?」

「そう言われたら、断れませんね。リリは行きます。クルミ様はどうしますか?」

「もちろん、胡散臭いおじさんに言われたのならともかく、女神様のお願いでしたら叶えてさしあげましょう」

「おじさんは酷いな。せめてお兄さんと呼んでくれ」

 

 さて、バカンスの予定でしたが、残念ながら楽しい戦争になりそうです。

 

「さて、皆は来てくれるようだ。後はベル君だけだが……答えはもう決まっているんじゃないかな?」

「わかりました。そのクエスト、お受けいたします」

「ありがとう、優しい子供達。貴女達は私の眷属ではない。だが、これからは旅の仲間。どうか私と契りを交わして欲しい」

「え?」

「キスだよ、キス」

「あっ!」

 

 アルテミスさんの手の甲にキスをしていきます。男ならお断りですが、女性なら構いません。キスしてから、すぐに準備をしなくてはいけません。

 

「よし、今から出発だ。準備はすでにできている。アスフィ!」

「はい、ヘルメス様」

 

 アスフィさんが沢山の荷物を持って他の眷属の方々とやってきました。どうやら、忙しかったのはこれらを用意していたからのようですわね。

 

「今からサイズを調整します。急いで着替えてください」

「わたくしは自前のがあるので必要ありません」

「リリもです」

「まあ、君達の装備は馬鹿みたいにお金がかかってるしね。それより、リューを呼べるかな? 戦力が多い方がいい」

「それは駄目です。今、リューさんはアストレアさんと共に居ます。ですので、邪魔はできません。彼女の分もわたくしが努めますわ」

「なるほど、相手はアストレアか。それなら仕方がないか」

 

 ヘルメスさんも納得してくれたようなので良かったです。わたくし達が話している間に皆さんが準備できたようです。

 

「後は細かい準備だが、出来次第南外壁の上に来てくれ。そこから出発する。そうだね、一時間で用意してくれ」

「「「はい!」」」

 

 さて、わたくしも用意しましょう。どうせなら黒ジャガ装備を作ってみるのもいいかもしれません。ヘファイストスさんと椿さんにお願いしておきましょう。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 南外壁の上に移動したわたくし達はそれぞれ装備をしています。もちろん、わたくしの装備は輸送する予定なので持っていません。服は何時もの赤いドレスです。

 

「あれ、ヴェルフ様、魔剣を持っていくんですか?」

「一応な。敵が多いらしいからな」

「あの、アルテミス様。ここからどう行くかわかりますか?」

「……ごめんなさい。わからないの」

「そうなんですね」

「安心したまえ! 今、来た!」

 

 ヘルメスさんが上を指さすと、空から誰かが落ちてきました。

 

「ガネーシャ!?」

「そう、俺がガネーシャだ!」

 

 どうやら、ガネーシャ・ファミリアに依頼したみたいで、外壁の上に複数のワイバーンが降りてきました。そのワイバーンがリリさんを舐めまわしだしました。

 

「ガネーシャに事前に依頼していた。地上から向かうと三十日はかかるけれど、これなら十日で行けるからね」

「竜の数が足りませんね」

「確かに足りないな」

「ぶっちゃけ用意できなかった!」

「そんなわけで二人から三人で頼む」

「二人!? それならベル君と……ベル君と……」

 

 ヘスティアさんがベルさんを誘う前にアルテミスさんが誘って二人で乗りました。わたくしは当然、リリさんと乗ります。残ったのはヴェルフさんとヘルメスさん、それにヘスティアさん、アスフィさんです。

 

「アスフィは……」

「私はヘスティア様と乗ります。ヘルメス様はヴェルフさんとお願いします」

「アスフィ!?」

「ヘスティア様、こちらに」

「うむ。ベル君がいいけど、仕方ないね」

 

 そんなわけで、ワイバーンに乗って飛び立ちます。こちらの意思通り、ちゃんと伝えれば飛んでくれます。しっかりとテイミングされているだけはあります。さすがはガネーシャ・ファミリアです。

 

「いってらっしゃーい!」

 

 ガネーシャさんに見送られつつ、わたくし達は空の旅へと出ていきます。

 

「大丈夫ですか? 怖くないですか?」

「怖い?」

「暗いし高いし、竜が怖かったりとか……実は僕もちょっとドキドキしているっていうか……」

「鼓動が早くなってる。これがドキドキというのか?」

「むきー! ベル君から離れろぉぉぉっ!」

「ヘスティア様! 待って、落ちますから!」

 

 あちらは混沌としています。わたくしは大人しくリリさんをモフモフしていましょう。そう思って振り返ると、後ろにリリさんの顔があります。

 

「はいはい、大人しくしておいてくださいね、クルミ様」

「むぅ……」

 

 リリさんに後ろから抱きしめられて固定されてしまいました。これではリリさんをモフモフできません。むしろされる側です。ですので、大人しく景色を眺めるとしましょう。山の先から太陽の光が差し込んでとても幻想的な光景です。

 

「ところでヘルメスさん。急いでいるんですよね?」

「ああ、そうだが……」

「わかりました。<刻々帝(ザフキエル)>、一の弾(アレフ)。さっさと行きましょう。でないとパーティーに遅れてしまいますからね」

「「「いきなり速くなったぁ!?」」」

 

 ワイバーン達の身体能力を上げて加速させ、素早く移動しましょう。時は金なりです。ここからしばらく空の旅を楽しませてもらいましょう。

 

 

 

アストレア・レコードの改変について

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