ダン狂~くるみ(偽)とリリのダンジョン探検~ 作:ヴィヴィオ
「なんやアレは!?」
バベルの塔にあるフレイヤのところに怒鳴り込んできた。ここからが一番よう見えるからな。
「
「んな事はわかっとるわ! 下界であんな力は明らかなルール違反や! アルテミスのあほが使ってるなら、とっくに天界に送還されとるはずやろ!」
「或いは……何かに囚われているか……」
フレイヤの言葉と同時に地震が……いや、ダンジョンが振動する。
「ダンジョンが震えとる……」
「怯えているんでしょう。アレが発動すれば下界なんて吹き飛ぶもの」
「ウラノスの爺め! こうなる事がわかっとってうちらをオラリオから出さへんかったな!」
「無駄よ。たとえ、オラリオ中の神が束になっても受け止めきれないもの」
「知るか‼ たとえそうでもケジメをつけるんはうちらしかおらんやろ!」
「そうね。そもそもアルテミスの矢は既に対処がされているわ」
「なんやて!?」
「あの可愛くも小憎らしい娘が登っているわ」
「あ?」
部屋から出ようとしていたのを止めて、バルコニーに戻って空を見上げると、一本の矢が空へと昇っていきよる。そこから小さな人影が飛び出しては打ち上げていきよった。
「アレはクルミたんか」
「彼女はこの件を知っていたみたい。だから対策を練っているわ」
「いや、無理やろ。いくらクルミたんが例外的で反則な特別な力を持っとるからと言って、神ですら無理なもん……」
「地上では
「まさか……」
「神の権能を簒奪した
「いや、いくらなんでもそんなん神の協力でもない限り……ヘファイストスとゴブニュか」
「下界の危機だもの。協力ぐらいするわ。オッタル。ロキ・ファミリアがダンジョンから溢れる
「よろしいので?」
「ええ。その代わり、ロキにはここに居てもらうわ。いいわよね?」
「ふん。ええで。ここで子供達の冒険を見といたるわ。うちにも酒を寄越せ」
「好きに飲みなさい」
フレイヤからもらった酒を飲みながら見学していると、アルテミスの矢がクルミたんに吸収されていく。それだけやない。クルミたんが取り出したのはどう見ても死体や。
「おい! クルミたんが禁忌を犯すつもりや!」
「あらあら、怖いわね。子供というのは無邪気で恐ろしい事を平気でやるわ」
「
「無理よ。今回の事で彼女はアルテミスの矢を解析して手に入れた。アルテミスの
「クルミたんの暗殺には対抗できんか」
「レベル5なら数人。6ならなんとか対処できるでしょうね。それも何時までも続かないわ。そもそも、あくまでも神々のルールであって子供達には関係ないし、周知されていないわ。ちゃんと公布しろと言われるでしょうね」
「まあ、どうせ失敗するやろ。術式を見る限り、無駄が多いし破綻も存在しとる」
「普通なら失敗するでしょう。欠陥だらけの術式ですもの」
その欠陥を埋めるもんがアレば別やけど、そんなもんは存在せん。それこそ下界に存在できへんもんや。この企みは失敗する。そもそもクルミたんも成功するとは思ってへんやろう。あくまでも自分のルーツを探すための実験やろうしな。
「どっちにしても、禁止事項として公布せなあかんな」
「そう簡単に実行できないでしょうけれどね」
しかし、クルミたんの倫理観はどうなっとんねん。自分の分身を普通に素材にして使い捨てにしとる。ヤバイ子やわ。
◇◇◇
「クルミ、彼女達は……」
「素材になっていただきます」
「何を……」
「っと、お話ししている暇はありませんわ」
「っ!? 来る!」
上からアンタレスが降ってきます。わたくし達を確認したアンタレスは着地する前に胸の青い結晶、アルテミスさんが入れられている魔石から青い光を収束して放ってきます。
アンタレスの瞳はアルテミスさんの残留思念やベルさん、オリオンの矢を無視してわたくしを見詰め、攻撃もわたくしに向けております。
「きひっ! そんなに力を簒奪されたのがムカつきましたの? それでしたらごめんなさい。でも、アルテミスさんから盗んだのですから、盗まれる覚悟はするべきでしてよ?」
相手の攻撃をバックステップで影に回避して、アンタレスの上に乗りながら告げます。アルテミスさんとベルさんは別のわたくし達が掴んで影に避難しましたので攻撃は完全に回避しました。
「アァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァ!!!」
背中にあるハサミがこちらに迫ってくるので、剣斧を取り出して突き刺して飛び降りて影に逃げこみます。剣斧によって重量が格段に増したアンタレスはそのまま地面に突き刺さります。さすがに剣斧はしっかりと刺さってくれました。
「わたくし達」
アンタレスが地面に着地すると同時に
「アアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァ!!!」
アンタレスは口から黒い光線を吐きながら攻撃してきますが、こちらも飛び回って回避します。中には黒いジャガーノートで作った盾を構えてあえて光線に突撃する子までいます。
「「まずは腕を一本、いただきますわ」」
二人のわたくしが上下から同時に大剣と戦斧を振り下ろしと振り上げのタイミングを合わせて激突させ、両方から斬る事で切断しました。ですが、すぐに肉が盛り上がって新しい腕ができます。
「……」
「ねえ、わたくし。空は対処しましたよね?」
「ええ、対処して地上は問題ありませんわ」
「時間経過でエネルギーを奪い取れますわよね?」
「
「でしたら、黒ジャガ君と同じではありませんの?」
「……本当ですわね」
わたくし達の目の色が変わり、全員が武器を持ち出しました。神話生物である素材なんて黒ジャガ君よりもレア物ですわ。ここでやらなければボウケンシャーではありません。
「
全員が一斉に
「狙うは装甲の、皮の隙間ですわ!」
「ハサミに気を付けて! 毒針には警戒を怠らないように!」
「ガァァァァァ!!!」
アンタレスの尻尾が高速で振るわれます。槍を持つわたくしが弾こうとして潰されました。別のわたくしが槍を回収して戦い直します。遅くしてもまだまだ速いのでどんどん畳み掛けます。三百六十度、全方位から影を通って槍や剣を突き刺して部位を切り取っていきます。次の瞬間には再生しており、黒ジャガ君より再生能力が高いですわ。
「無駄だ! アンタレスはオリオンの矢でしか倒せない!」
「無問題ですわ!」
「僕がやらなきゃ……」
「覚悟を決めたなら参加して構いませんが、殺す覚悟がないんでしたら邪魔ですわ。それに……わたくし!」
離れた位置で小銃を構えているわたくしの前には
「アンタレスさん! わたくしとあなたのアルテミスの矢! どちらが強いか勝負ですわ!」
「■■■──!!!」
青い光を纏う小銃から放たれ、加速していく青い弾丸とアンタレスのアルテミスさんが入った魔石から放たれる青い光線。どちらも中央で激突します。銃弾が光線を引き裂いて進んでいきますが、途中で減速して押し切られました。残った光線は撃ったわたくしを飲み込みますが、その前に黒ジャガ君の大盾を持ったわたくしが前に立って防ぎます。
反射された光線は周りを破壊していきますが、次第に大盾に罅が入っていき、割れてしまいました。当然、そこに居たわたくし達は吹き飛ばされて空中で体勢を整えて天井から伸びている鍾乳石を蹴ってこちらに戻ってきます。
「盾が割れましたわ」
「さすがに何度も
「巻き戻せないから回収して別のに作り変えますか」
黒ジャガ君の装備は魔法を全て反射するので、巻き戻しが効きません。故に使い捨てにできない貴重な武器です。一応、
「今のは私の力か……?」
「どういう事ですか!?」
「クルミ、何をしたんだ?」
「ベルさん。言いましたわよね。アルテミスさんを殺すと。ええ、わたくしが殺します。ですから、殺す手段を用意してきましたわ。ですのでご安心くださいまし。貴方はアルテミスさんを殺す必要はありません。そこで大人しくしアルテミスさんを守っていてください」
言外に邪魔だと伝えてながら、全力で戦闘を続けます。相手はどんどん学習して進化してくるようで、ハサミが伸びるようになり、振るう速度が格段に速くなりました。それによってハサミに捕らえられたわたくしが頭と足を少し残して潰されました。
「ちぃっ!」
尻尾も全てがブレードとなり、武器で滑らせるしかありません。更にハサミの間から紫色の光線も放つようになり、尻尾の先端も合わされば十もの砲塔が加わりました。
もちろん、わたくしも負けておりません。くるみねっとわーくを使って常に相手の進化に合わせてデータを収集して適応化させて戦います。また並行して遺跡内部の探索と掌握を行い、各所にアルテミスさんの力を吸収する魔導具、鳥籠を設置していきます。
「散開!」
即座に前衛のわたくし達が影に逃げ込むと、先程まで居た場所を無数の光線が通過して洞窟内部を破壊していきます。そこに後衛部隊からオリオンの術式を使った弾丸の雨がプレゼントされます。
アンタレスは即座に光線をその弾丸達に向けますが、微かに勢いを削いで軌道を変えるしかありません。その弾丸がアンタレスの身体に命中すると、その部分が弾けとんでいきます。
「高速回転させる術式でライフリングを再現し、弾丸を球体からライフル弾に変更しました。貫通能力は上がっておりますわね」
「それはいいけれど、撃ったら即座に逃げなさい! 反撃が来ますわ!」
見ればお返しとばかりに魔石に青い光が収束して散弾のように矢を放ってきます。こちらも緊急回避をして、被害を最小限に済ませます。手足を貫かれた子は即死していなければ
「「……」」
互いに気づいたのは
「きひっ! 楽しいですわね!」
「まったくですわ!」
「もっと、もっと
「■■■■■■■■■■■■──!!!!!」
ハサミを剣で受け止め、足を切り裂き、関節を砕いて破壊して部位を回収します。代わりに三人が死にました。ですが、遺跡中から回収しているので問題にもなりません。
そう思っていると、尻尾にある方からハサミが開いて砲塔から極大の光が集まってきます。どう見てもやばい奴です。
「退避~~!」
一目散に散っていきますが、間に合いません。これ、死んだかと思いましたが、尻尾が何かにぶつけられて尻尾ごとアンタレスが吹き飛んで壁に激突して爆発しました。
爆炎の中、光る物があり、そこに視線をやると煙の中から大きな炎を纏った戦斧が飛び出してきます。その戦斧が行く先を見ると、崖がありました。三メートルほど高い場所に平らな場所があり、そこに戦斧が銀の糸に引っ張られて飛んでいき、小さな女の子の手に収まります。
「遅いですわよ、リリさん」
「無茶苦茶言いますね!」
飛び降りるのではなく、震脚で地面を蹴って天井から伸びている鍾乳石に移動し、そこを蹴って煙の中に入って爆炎を撒き散らかします。
煙が晴れると、そこには背中の腕を交差させてリリさんのイフリートを防いでいるアンタレスの姿がありました。一回り大きくなり、皮が装甲のようになったアンタレスが雄叫びを上げます。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■──!!!!!」
どうやら、ここからが本番のようです。それでも、こちらにも増援が来たので問題はないでしょう。ちゃんと切り取った部分は一時的に時間停止して確保しておきましょう。これも必要な素材になるかもしれません。
アストレア・レコードの改変について
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改変有り
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改変無し