ダン狂~くるみ(偽)とリリのダンジョン探検~ 作:ヴィヴィオ
僕はどうすればいいのだろうか。目の前で行われている激しい戦いを見ながら、悩む。
彼女は、クルミ達は高速で駆け回ってアンタレスの攻撃を回避しながら、ダメージを積み重ねて装甲の薄い部分を破壊して壊れた部分を影に入れて何処かに運んでいく。
それでもアンタレスは破壊された部分を瞬時に再生して攻撃を再開する。クルミもそれがわかっているようで対抗している。アルテミス様の力が宿った弾丸を味方が居るのも気にせずに放ち、的確に破壊していく。アンタレスも負けじと青い光線を放って迎撃し、そこかしこで爆発を起こしている。
「味方ごと……って、言いたいが、全部計算して紙一重で避けてやがるな」
「そうですね。これでは下手に手が出せません」
銃撃部隊と近接部隊で分かれ、同じ存在である事を利用して、戦っているクルミが首を傾げた瞬間、そこを銃弾が通ってアンタレスのハサミを弾き、その隙に柔らかい部分を大剣で切断する。
さっきからこういう戦い方をしているので、アンタレスがかなりダメージを負っている。そんな中にリリが気にせずに突入してアンタレスの尻尾を切断していく。
「リリさんは尻尾をメインでお願いしますね」
「まっかせてください!
リリは二人になり、常に交互で尻尾を斬って叩き落としていく。リリの攻撃はまるでアンタレスの強靭な装甲が普通の鉄のように切断されている。武器自体も炎で赤くなっているけれど、力がおかしいと思う。
「ねえ、ヘルメス。リリ君の力って明らかにレベル4じゃないよね?」
「下手をしたら5か6か?」
「凄いな。だが、何時までも持たないだろう。やはり、オリオンの矢が必要だ」
「確かにクルミ君がアルテミスの力を使うのは驚いたが、それ以上にアンタレスが進化している。おそらく、上に使っていた
「地上と地下で力を割いて慢心してくれていたのが、クルミ君が頑張ったからこっちに集中しだしたってところか」
「だろうね。アスフィ!」
「わかっています! クルミ、一時的に下がりなさい!」
アスフィさんが空を飛んでバーストオイルをばら撒きました。それでもアンタレスには余り効いていないみたい。
「視界を遮りました!」
「助かりますわ。リリさん、これを思いっ切り、アルテミスさんが捕らえられている魔石の周りに突き刺してくださいまし」
「黒ジャガ君を使った特別製ですわ」
そして、四メートルくらいありそうな全てが黒くて先端が円形で中身が空洞な槍をリリに渡した。その槍は何故か変な物がついていて、リリはなんでもないかのように持ち上げてしまった。
「鳥籠がついた槍ですか?」
「抜けないようにできれば胴体もしくは顔面から串刺しでお願いします。囮はこちらが務めますわ」
「お任せください!」
クルミが銃撃を再開すると、そちらにアンタレスの攻撃が集中し、その間にクルミ達が接近して攻撃を行っていく。アスフィさんもアンタレスの頭部の周りを飛びながら、目玉にバーストオイルを投げつけていく。
アンタレスはハサミから光線を放ち、クルミ達ごと周りを破壊していく。クルミ達は走り回り、時には飛び、時には転がって回避しながら攻撃を積み重ねていく。
「
槍を二つにしたリリが走り出し、クルミ達に集中しているアンタレスに向けて思いっ切り投擲する。槍は衝撃波を発しながらアンタレスの身体を左右から刺し貫きました。
「■■■■■■■■■■■■■■■──!? 」
アンタレスが絶叫をあげながら、倒れる音が響きます。砂煙が晴れると、アルテミス様が居る魔石を避けるようにして大きな黒い槍が左右から交差するように突き刺さっていた。露出された大きな魔石に入れられているアルテミス様の目から涙が落ちていくのが僕の目には入った。
「おしぃです! もうちょっと上でしたね。そうすれば頭部を砕けたんですが……」
「十分ですわ」
アンタレスは槍を飲み込むようにして身体を再生させていく。そんな状況でクルミは鳥籠の部分に立ちながら笑っている。
「術式展開」
クルミの言葉と同時に黒い槍に青い光が迸り、刻まれた
「くっ……」
「アルテミス!?」
振り向くと、アルテミス様が胸を押さえて蹲っていた。アルテミス様の身体は光の粒子へと変わって、崩れていく。
「アレはアンタレスを通して私の力を吸い取る槍のようだ」
「そんな……」
「いや、これでいい。オリオン。頼む。私を、私達を、世界を救ってくれ。やはり、オリオンでないと駄目だ。クルミでは倒しきれない。彼女は戦いを長引かせ、力を奪う事に集中している。アンタレスを殺す気がないのだろう」
アルテミス様が僕が握っているオリオンの矢を掴みながら、そう言ってきた。アルテミス様の身体から出た光はオリオンの矢へと吸収されていく。
「アルテミス様……わかりました。僕に任せてください。泣いている女の子は助けなくちゃ!」
「そうだな、助けてくれ。よろしく頼む……」
「なぁっ!?」
アルテミス様が僕の頬に口づけをしてから、槍へと消えていった。クルミの言う通り、覚悟を決めた僕は槍を握りしめ、
「俺も行くぜ」
「僕も……」
「いや、ベル君はここで準備をしておいた方がいい。もっとチャージするんだ。先のアルテミスの言葉が本当なら、クルミは妨害してくる」
僕も行こうとしたら、ヘルメス様に止められた。クルミが本当に止めてくるかはわからない。それでももっとチャージした方がいいのはその通りだ。一撃に全てを賭けなくてはいけない。
「ベル君、君はアルテミスを……」
「覚悟はできました。本当はやりたくありません。でも、泣いている女の子を放ってはおけません」
「そうか。君が決めたのなら僕はなにも言わない。頑張れベル君! アルテミスを救ってくれ!」
「はい!」
見ればクルミはリリ達に指示を出し、アンタレスの身体に次々と鳥籠の付いた槍を刺して打ち付けている。そこから血液が抜かれ、血が通った後にはアルテミス様の力が入った結晶とどす黒い結晶がある。
「背中は封じました! これで再生するのは足と頭部、尻尾だけです!」
「ヴェルフさん! 足を斬りますので傷口に突き刺してください! それで再生が止まります!」
「了解だ!」
尻尾はリリが切り落とし続け、頭は執拗にアスフィさんとクルミを追っていっている。下半身のハサミもクルミ達が絶え間なく攻撃しているので完全に防げている。今なら、確実に魔石を貫ける。
「あら、覚悟は決まりましたの?」
「クルミ、教えて。君は何をしているの?」
「言ったではありませんか。アルテミスさんを殺すと」
「うん。でも、僕にはそれだけには見えない。殺すつもりなら今ならすぐに殺せるよね? それなのにアルテミス様を余計に苦しませている」
「でしょうね。常に全力で力を吸い取られ続けているんですもの。苦しくないはずがありません」
「それなら! なんでこんな事をするんだ!」
「報酬のためですわ」
「報酬だって!」
「はい。アルテミス様はアルテミス・ファミリアの全財産をくださるとおっしゃってわたくし達に依頼されました。ですが、アルテミス・ファミリアは既に壊滅し、残っているのは壊れた武器と死体、オラリオにある建物ぐらいです。それでは割に合いませんの。故にアンタレスを利用して
「君は苦しんでいる女の子を放っておくのか!」
「関係ありませんわ。わたくしにとって、大事なのはわたくしの大事な子達であり、それ以外はどうでもいいです。そして、それ以外は数で計算します。小を救うために大を切り捨てるのではなく、大を救うために小を切り捨てます」
「そんなのは駄目だ!」
「何故ですか? これがベルさんの目指すべき英雄と呼ばれる方々が行ってきた事ですよ」
「違う! 英雄は全てを救うんだ! 大も小も全て!」
「子供の理論ですわね。御伽噺の中だけですわよ。現実はそんなに甘くありません。いくら準備しても力が足らずに助けられない事がほとんどです」
「それでも諦めない!」
「ええ、ええ、ですからここでアルテミスさんには苦しんでいただきます」
「は?」
「ベルさんが先程言った、全てを助け、救う為に。わたくしはより強い巨大な力を欲しております。それがこの手に入るチャンスです。何故、ここで止められましょうか? アルテミスさんがおっしゃいました。下界の子供達が好きだと。ですから、わたくしは彼女の子供達も救います。そのための準備をしておりますの。邪魔をしないでくださいませ」
クルミが立ち塞がり、銃を構える。僕も槍を持ちながら、ヘスティア・ナイフを抜いて構える。
「仲間割れは止めてください! 時と場合を考えてください! リリが死にますよ!」
リリが実際に光線に貫かれて分身が消えた。僕とクルミは互いを見合わせた後、すぐに武器を仕舞う。
「……はぁ……リリさんを殺すわけにはいきませんね。それだけで再走案件ですし。ベルさん、これだけは教えてくださいまし。貴方は現在で救えれば過去と未来はどうでもいいのでしょうか?」
「違うよ、クルミ。僕は全部助けたい。それだけの力を手に入れたい。でも、その力は今はない。だけど、今、泣いているアルテミス様を放ってはおけない」
「……ベルさんは不合理ですね。まあ、不条理のわたくしが言ってもアレですが……いいでしょう。ボウケンシャーの先達としてここは譲ってさしあげますわ。どうせ必要分は足りました。他の分はここを使えばどうにかなるでしょう」
「ありがとう。僕が手伝える事なら手伝うから、なんでも言って」
「本当に意味がわかりませんわ。敵対しているわたくしに何をおっしゃっていますの?」
「クルミは敵対していないよ。ただ、どういう方法で救うかの違いでしょ?」
「ああもう! 本当に訳がわかりませんわ! 全員、
「「「絆されましたか、ルーラー!」」」
「うるさいうるさい! ぶち殺されたくなければ動いてくださいまし!」
「「「横暴反対! 労働基準の改定と労働組合の設立を要求しますわ!」」」
「却下です。はい、閉廷! 時間がありませんの。行きなさい、わたくし達!」
「「「「「「は~い」」」」」」
散っていったクルミ達を確認したのか、僕の前に立ったクルミは僕に銃を向けてくる。でも、今度は嫌な感じもしない。
「<
「任せて!」
撃たれると、身体が軽くなって全てが遅く見える。それに少し先の未来まで見えてきた。だから、アンタレスに向けて駆け抜ける。アンタレスはこちらに気づいて目の前に弓を形成してくる。
「その
クルミ二人が左右から矢に向かって鳥籠がついた槍を振るうと、鳥籠の中に光が吸収されて霧散してしまった。アンタレスは即座に紫色の光線を放ってくる。それを高速で移動しながら回避していく。未来が見えているので楽に躱せる。
それにリリがアンタレスの頭を蹴り上げて、ヴェルフが足を切り落として体勢を崩してくれた。アスフィさんがアンタレスの大きな目に何かの瓶を投げつけると、アンタレスの絶叫が響く。
「特殊な酸です。炎は効かなくてもこれは効くでしょう。行きなさい、ベル・クラネル」
「行ってくださいベル様!」
「行けっ、ベル!」
「ベル君! アルテミスを助けて!」
「アァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァ!!!」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■────!!!!!!! 」
全力でオリオンの矢を投擲する。アンタレスは絶叫を上げながら、急速に新しく生やした大量のハサミでオリオンの矢を防ごうとしてきた。でも、不安は全然ない。だって、僕には強い味方が居るから──
「させませんわ」
──青い光を纏った弾丸が上から僕を避けて降り注ぎ、アンタレスのハサミを全て粉砕してオリオンの矢が命中する。
「胸を閉じなさいアンタレス!」
「「「なんで!?」」」
クルミの発言にアンタレスが咄嗟に胸の装甲を閉じてオリオンの矢を防ぎ、速度を落としてアンタレスの身体のほとんどを吹き飛ばす。そして、オリオンの矢はギリギリに魔石に命中して魔石を砕いた。中から一糸まとわぬアルテミス様が落ちてくる。僕はナイフを抜いて駆け抜ける。
そして、アルテミス様の胸に突き刺そうとしたら、クルミが飛び込んできてボクのナイフは彼女の背中にあっさりと突き刺さった。
「なんで!?」
別のクルミがアルテミス様の身体を鳥籠のついた黒い槍で身体中を串刺しにしていく。
「生憎と、ベルさんに……殺させはしませんわ……これはわたくしの獲物ですもの!」
「そこまでベル君に殺させたくないか……」
「クルミ君……君は……」
アルテミス様の身体が光に包まれ、光の柱が生まれて僕の視界を押しつぶした。
「オリオン」
アルテミス様の声が聞こえて見を開けると、そこは満天の星空が広がる場所だった。遠くには木々が見えて、足元からそこまですべてが見渡す限り水面で、星空や木々が水面に映っていて、光の弾が水面から生まれて星空へと昇っていく。その光景がとても綺麗だけれど、悲しくて涙が出てくる。
「……アルテミス様……」
「知っているか? 神も死んだら生まれ変わるんだ」
それを聞いて、僕の顔は自分でもわかるほど歪んでいく。
「だから笑って。また出会うために」
拳を握りしめながら、必死に笑顔を作ろうとするけれど、どうしてもできなくて歪な感じになってしまう。
「それは何時……」
「さぁ? 百年後か千年後か。ひょっとしたら一万年、かかってしまうかもしれない」
「僕、もう生きてないですよ……」
アルテミス様は近づいてきて、僕の頬に手を伸ばして撫でてくる。その感触が冷たくて、もうアルテミス様が死んだのだと理解させられる。
「でも、きっと生まれ変わった貴方がこの下界には居る。きっとまた貴方と巡り合える」
アルテミス様の言葉で涙が溢れ出しそうになる。そんな僕からアルテミス様が後ろに波紋を生み出しながら下がっていく。
「だから、次に会った時は一万年分の恋をしよう、ベル!」
涙を流しながら、笑顔でそう言ってくれるアルテミス様に僕は泣きながら返事をした。
◇◇◇
「お、魔法陣が完全に消えたな」
「クルミも居なくなったようね」
「やっぱり失敗か」
「どちらにしろ、アルテミスは死んだようね」
「間違いないやろ。見送ったるか」
「そうね」
◇◇◇
「ヘルメス様」
「大丈夫。俺達は待っていよう。それにまだクルミが動いていない」
「絶対に何かやらかしますよ。リリにはわかります」
「そんなエッヘンみたいな感じで言うなよ。本当に思えるだろ、リリスケ」
「何を言っているんですか。クルミ様の事はリリが一番良くわかっています。ですから、まだ終わっていません」
「本当にそうだったらいいんだけどね……今回ばかりは流石に無理かもしれないけど」
「いいえ、消えているクルミ様がその証拠です」
「普通にベルに突き刺されて死んだんじゃないのか? アレがオリジナルだったらやばいんじゃ……」
「アレは分身ですよ。それよりもこんなに明るくて天気がいいんですか……ら……」
「ああ、うん。リリ君の言う通りだね」
◇◇◇
遺跡から出ていく皆を見送ってから、僕は湖を見る。
「救えませんでした。僕、約束したのに……結局、クルミに全部押し付けて……クルミを殺してしまった」
「ベル君。君は自分が許せないかもしれない。でも、クルミ君は自分からわかっていてああしたんだ。それにアルテミスだって救われているよ」
「どうしてそんな事がわかるんですか?」
「だって、ほらこんなに綺麗な光が……光が……」
「どうしたました、神様?」
「ベル君。僕の目の錯覚かな? 空が黄金に光輝いているんだけど……」
「え?」
空を見ると、確かに一面が黄金の光に輝いていました。そのタイミングで後ろから誰かに蹴られて僕と神様は外に投げ出された。
「な、なんだい!?」
「か、神様!」「あぁ、ベル君にお姫様抱っこ……最高! ってちが~う!」
空中でどうにか神様を確保して橋の部分に着地したけれど、先程まで居た遺跡の外壁を見ると、そこには僕と神様を突き落とした……ううん、蹴り落した犯人が居た。
「こほん。さてさてさ~て、始めましょう」
クルミは服装が違っていた。フリフリした白と赤の衣装。たしか、極東の服だったと思う。
「巫女服だと!?」
「知っているのかいヘルメス!」
「アレは神に仕える者達が着る極東の女神官にのみ許された服だ。清い乙女しか着る事が許されない」
「じゃあ、クルミ様は駄目じゃないですか? いえ、そこまではやっていないのかも?」
「知っちゃいけない情報じゃ……」
「こふ」
「ヘルメスさまぁぁぁっ!」
クルミは外壁の上に立ちながら、鳥籠のついた槍を持ち、それで遺跡を何度か叩く。すると、魔法陣が遺跡全体を覆うようにして現れた。
「天よご照覧あれ! 誇り高き勇者達に貞潔なる処女神のご加護を!」
「それ俺の奴じゃん! いや、アルテミスのか?」
「どうでもいいよ! それよりも……」
クルミが防壁の上で踊りながら青い光を発する鳥籠の槍と短銃を振るっていく。それと同時に遺跡中に小さな青い魔法陣が生み出されていく。
「うわぁ、アレ……
「何をする気なんでしょうか? 止めなくていいのですか?」
「やらせてみよう」
次第に遺跡中から青い光の柱が立ち上がっていく。よく見ればここに居るクルミ以外にも、別の場所でクルミが鳥籠がついた槍を持って踊りながら遺跡を叩いている。
「<
遺跡中から銃声が響き、同時に周りの何かが変わり、遺跡が振動して崩れていっている。
「たしか、
「遺跡を巻き戻したところで……」
「何をしている? 何をしているんだ! 神の気配が強くなっている!」
「うわぁ……」
神殿へと空にあった黄金の光が降り注いでいく。
「さぁ、お休みの時間は終わりです! 目覚めなさいわたくし達の同胞よ!」
アルテミス様の気配が強くなってくる。
「巻き戻したのは力を失った精霊か!? だが、意味がないぞ。いくら
「なんか出してきたぞ」
「アレはアルテミス様のファミリアの方々です!」
死体の彼女達は身体中が結晶化していた。その中にはクルミも居る。そして、その人達の前にアルテミス様の死体が置かれる。その人達と一緒に新しい魔法陣が展開され、重ねられて一つに変化していく。
「死体に
「そ、そそそれってやばくないかなぁ!」
「やばいぞ! クルミ君! やめるんだ! それは駄目だ!」
「きひっ! きひひっ! 今まで鳥籠で集めに集めたアルテミスさんの
「止めろ! 神々はたとえ死んだとしても転生するんだ! 君がやろうとしている事は大罪だ!」
「知った事ではありません。それに転生だって何百何千、何万年も先の話でしょう? そんな物は認められませんの。ええ、認めてやるもんですか。私は助けたい方を助けるのです」
「まさか……」
「今転生させる気かあぁぁぁぁぁっ!」
「アスフィ! 止めろ!」
「やらせるなベル君!」
「「っ!?」」
「クルミ君! 君はアルテミスを救えないって!」
「わたくしはアルテミスさんを殺すと言いましたが、転生させないなんて言っていませんわ。死体と魂、素材があればエインヘリャルが生み出されるのです。神様を素材にしても何の問題もありませんわ!」
「ありまくりだぁぁぁっ!!」
「わたくしを騙して利用しようとした報いです! 後処理を頑張ってくださいまし!」
「あぁ……ヘルメス様……」
アスフィさんが泣き出した。無理もないし、僕には助けられない。僕もクルミに賛成だ。
「アスフィ、頼む防いでくれ!」
「無理です。これを見てください」
「え……? あ……」
「えへへ、逃がしませんよ~。リリの所属はソーマ・ファミリアで、クルミ様の補佐をする副団長なんです♪」
「うん。無理かな!」
リリがアスフィさんの腕を抱きしめている。アスフィさんが下手に動いたら彼女の腕は折られるか、もぎ取られると思う。もしくは燃やされる。
「周りに漂っていた意思が消えていた精霊達もクルミ君に巻き戻され、アルテミスの
「クルミ君の分身が素材にもなってるから生きている精霊という部分にも当てはまる。ガチのエインヘリャルだ。それもアルテミス自身でだ。これ、俺が報告して後始末しなきゃ駄目なの?」
「頼むよヘルメス!」
「ああくそがぁ! 腹くくってやる! 神友のためだもんな!」
「そうだそうだ」
ヘルメス様がドカッと座り込んだので、全員が儀式を見ている。アルテミス様の身体に全ての力が入り、いつの間にか回収されていたオリオンの矢も取り込んでいく。アルテミス様の周りには死んだはずの彼女達がおり、順番に入っていった。
「さて、それでは最後の素材を入れましょう」
「待て! それは待て!」
「ちょ!? 何を考えているの!」
「ある程度は分離させましたが、アルテミスさんとアンタレスは融合しすぎております。どうしてもアンタレスの残滓は残ります。ですので、それならこっちが色々と細工して使ってやるんです。ええ、アルテミスさんの力を散々使ったんですから、次はアンタレスが使われる番ですわよね?」
「倍返しですね!」
「そういう事です!」
黒い結晶体がアルテミスさんの身体に入れられると、彼女の身体がビクンッと震えて髪の毛の色が変化していく。いや、髪の毛だけじゃない。他にも色々と変化していく。
「諸君!」
「はい?」
「うん?」
「わたくしはケモ耳が好きです!」
「何を言っている?」
「愛しています! 大好きです! ですから、わたくしのものであるこの身体にケモ耳をつけても何の問題もありませんわ! 以上、証明終わり。QED」
「「「まてぇぇぇぇっ!」」」
「「あはははは……」」
リリと僕だけが乾いた笑いをする。本当に獣耳が生えていきた。それに髪の毛の色も色々と混ざったせいか、青色から緑と金色に変化したみたい。
「術式施術終了」
全ての光と鳥籠がついた槍ごとアルテミス様の身体へと入れられ、一人の女の子が目を覚ます。彼女はキョトンとした表情で周りを見てから、僕を見つけると──
「オリオン! 私
──抱きついてきた。裸のままで。
「こらぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
「ごめんなさいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃっ!!」
僕と神様の絶叫が崩壊していく遺跡に鳴り響いた。
クルミちゃん式エインヘリヤル計画。
アルテミス様の記憶とアンタレスの記憶、オリオンの矢の記憶。ここから必要な術式を習得します。具体的にはオリオンの矢とエインヘリヤル関連の術式など。
二人の神様監修の下で黒ジャガ君の魔法反射装甲を使い、
過去と人とやり取りをできる力を利用し、情報を伝達。技術情報を改変し、改変して作り上げた鳥籠を黒ジャガ君を使って量産。両ファミリアが全力を持って他の仕事を無視してやったために完成。両ファミリアは報酬の黒ジャガ君を一匹ずつ自由に作れる権利を得ました。
ちなみに……エインヘリヤルとか聞いてません。おふたりはクルミちゃんに利用されただけです。
神の肉体アルテミス本人と彼女のファミリアの死体。生きた半分人で半分精霊のクルミ。どちらも神の力を取り込んで親和性を格段にアップさせた状態で、遺跡に眠るアルテミスの眷属である精霊達をアルテミスの
以上が、今回クルミちゃんが計画したアルテミス救済作戦。殺すのはどうしようもありません。巻き戻しても無理ですし、アルテミス・ファミリアが崩壊する前にしても、そこまで戻れません。また、その場合だとオリオンの矢も使い手もいないのでクルミだけでやり切れるかわかりません。
そもそもが、リューさんが過去改変のために協力してくれるので、その時にやればいいとクルミは思っています。そのために戦力となる使い魔としたエインヘリヤルを手に入れる計画ですね。アルテミス・ファミリアの主神含めて全財産を余すところなく使い切る作戦です。
ケモ耳は完全にクルミの趣味です。耳と尻尾はライオンです。クルミがイメージしたのが、FGOのアタランテなので、そちらになります。
下界の子供であり、女神アルテミスの加護(神の力)を受けた子なので名前的にも間違っていません。中には当然、アルテミス、アルテミス・ファミリアの子供達、精霊達が居ますが、基本的にはアルテミスがメインであり、取り込んだアンタレスの制御をしております。ときおり、表に出て遊ぶぐらいですね。
ステイタス? アルテミス様と基本的には同じ。
やったね、ヘスティア様! 神友を助けたら強いライバルが出来たよ!
アストレア・レコードの改変について
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改変有り
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改変無し