ダン狂~くるみ(偽)とリリのダンジョン探検~   作:ヴィヴィオ

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後始末な感じです。


オリオンの矢6

 

 

 

 

 

 オラリオに戻ったボク達はクルミ君とアルテミス達と別れた。彼女達はギルドに何かされる前にアルテミス・ファミリアの者を押さえにいったようだ。

 ヘルメスはギルドに報告に向かったので、ボクはベル君と一緒にオラリオでしっかりと休憩を取っていた。するとヘルメスとアスフィ君が来て強制的に拉致された。

 

「は、離すんだヘルメス!」

「ヘスティア。諦めろ」

「ヘルメス……ボクを巻き込まないでくれ!」

「無理だ。お前も原因の一旦だ! 神会(デナトゥス)への招集命令が来ている」

「くそぉぉぉぉぉっ!」

 

 無理矢理連れて行かれた神会(デナトゥス)の会場はギルドだった。ボク達が連れていかれたのは広いホールの中央で、そこにボクとヘルメス。それにヘファイストスとゴブニュが居た。二人共、どこか苛立っているみたいだ。

 

「ヘファイストスもなのかい?」

「知らないわよ。それよりも詳しい事を聞かされてないんだから」

「まあ、この席を見ると仕方がないだろう」

 

 周りを見ると、多数の神々がボク達を囲むような席順で座って居た。これはアレだ。裁判だ。うん、なんで嫌そうにしていたのかわかった。でも、ここに肝心のアルテミスとソーマが居ない。

 

「遅い! どうなっている!」

「落ち着けよアポロン」

「これが落ち着けるか! 我が姉の事だぞ!」

「まあ、姉が殺されたとなれば憤るのも当然か」

「それに奴等はアルテミスの資産を全て持っていきよったのだ!」

「あ~」

 

 アポロンの奴はかなりご立腹のようだ。まあ、クルミ君なら本当に笑いながら根こそぎ持っていくだろうね。うん、目に浮かぶようだ。

 そう思っていると、扉が開いて新しい神が入っていた。いや、ここの主催者か。

 

「ウラノスが来たぞ」

「まあ、今回の呼び出した張本人ならぬ張本神だからな」

「ああ……」

 

 ウラノスの後ろにはギルド長であるロイマン・マルディール君もいるね。かなり緊張していて、汗をかいているようだ。その更に後ろからロキやフレイヤ達も入ってきた。他にもデメテルやディアンケヒトなどほぼオラリオに居る神々が全員来たようだね。それだけ今回の件は不味いことでもある。

 

「さて、集まったな? これより緊急の神会(デナトゥス)を開催する」

「ちょっと待った! 肝心のソーマ等が来てへんで」

「それは大丈夫よ。来たみたい」

 

 フレイヤの言葉で扉の方を見ると声が聞こえてきた。

 

流石にそれはまずくないだろうか? 

問題ありませんわ! ええ、問題ないですとも! 

 

 少し待っていると、扉が開けられて何時ものドレス姿のクルミ君と翠緑の衣装を纏った野性味と気品を併せ持つ少女が入ってくる。先導しているのは少女の方で、クルミ君の方が後から入ってくる。

 

「すまない。遅れた」

「おい、アレが……」

「アルテミスだと……!?」

「なんだこのおぞましいものは……」

「何を言っているんだ! 綺麗じゃないか!」

「確かにあの耳は最高……」

「いや、そんな事よりもや! ソーマはどないしてん!」

 

 そう、入ってきたのは彼女達だけで、ソーマが居ない。今回、ベル君が呼ばれる事はなかったけれど、ヘルメスの所は団長であるアスフィ君が連れてこられている。原因を作ったクルミ君が来るのも当然だ。もちろん、話の中心になるであろうアルテミスもだ。だが、クルミ君の主神であるソーマが居ないのはおかしい。

 

「ソーマ・ファミリアの団長、クルミ・トキサキ。神ソーマはどうなさいましたか? まだでしたら少しはお待ちしますが……」

「必要ありませんわ、ギルド長」

 

 クルミ君が手を出すと、アルテミスが何かの書類を出して彼女に渡した。クルミ君はそれを開いてこちらに見せると、誰もが息をのんだ。

 

「マジでやりやがった!」

「そら遅れるし、機嫌が悪くなるのもわかるわ」

 

 それは委任状と書かれていて、全権をクルミ君に与えると書かれていた。もちろん、ソーマの実印もつけられている。ところどころに何かの液体がついているようなのは気にしないでおこう。つまり、ソーマは来ないということだ。

 

「どうにかソーマ様に委任状を書かせるので遅れました。文句があるなら買いますわ」

 

 ほぼ全員が頭を振るう。だってクルミ君から神の力(アルカナム)が漏れ出ているからね。アルテミスはかなりオロオロとしている。

 

「ど、どうしましょうか、ウラノス様」

「構わん。全権を委任したのだ。決定には従ってもらう。始めろ」

「かしこまりました。それでは今回の件についてお知らせします。まず、今回の緊急の神会(デナトゥス)は先にアルテミス様の神の力(アルカナム)が使われ、下界が消滅の危機にあった事とソーマ・ファミリア団長、クルミ・トキサキが行ったエインヘリャルの儀式とその……かの方についてです」

 

 エインヘリャルと言った瞬間、神々が全員クルミ君を見た。それほどやばい事だからだ。

 

「下界でエインヘリャルを作るとか、マジかよ」

「それも神ではなく、子供がだろ?」

「明らかな違法行為だろ」

「処分しろ! 私は断じて認めぬ!」

 

 神々が好き勝手に言っていく。事が事だ。ボク達神々は子供の改造や死者を冒涜するエインヘリャルは禁止している。そもそも、エインヘリャルとは神々の黄昏、終末戦争で使う為に作り出された兵器だ。下界で運用していいものでは断じてない。

 

「やはりこうなったか……」

「ヘルメス、アルテミスは大丈夫なのかな……?」

「出来る限りの事をするが……正直言ってわからん」

「アルテミスが殺されるなんて事は嫌だよ」

「わかっている。俺もそれだけは防ぐ」

「鎮まれ!」

 

 話していると、木の槌が叩かれて視線が一斉にウラノスに向く。ウラノスはボク達を見渡してから、ヘルメスを見る。

 

「ヘルメス、説明を」

「わかった」

「待ったヘルメス。その前にわたしから言いたい事がある」

「ウラノス」

「構わん」

「ありがとう。皆、今回は私がしでかしてしまった事、誠に申し訳ございませんでした。皆の子供達を危険にさらしてしまった」

 

 アルテミスが皆に頭を下げる。でも、クルミ君は下げたりしない。それどころか、アルテミスが下げた頭にある耳を触ろうとしていた。うん、宣言していたもんね。ボクがしっかりと防止しておこう。

 

「こほん。皆、気になるのはわかるが、静かに聞いてくれ。今回起こった事を嘘偽りなく伝えよう!」

 

 ヘルメスが今回の事件について話していく。アルテミスは頭を下げたままだけれど、クルミ君は飽きたのかテーブルを取り出して紅茶を入れだした。完全な熟成されたソーマまで入れた物だ。それをヘファイストスやゴブニュに渡していた。

 

「自由か!?」

 

 当然、神々はこちらを睨み付けてくるけれど、クルミ君は一切気にしていない。

 

「ああもう! ともかく、遥か昔アルテミスが遣わした大精霊達によって封印されていた魔物(モンスター)、アンタレスが密かに長い年月をかけて力を蓄えていた。それに気付いたアルテミスが自らの眷属と共にアンタレスの討伐に赴き、敗北した。この時に取り込まれたアルテミスはアンタレスによって力を吸い取られ、神の力(アルカナム)を使ってオラリオと下界を滅ぼそうとしたという事だ」

「追加しますと、ギルドは複数のファミリアを調査隊として派遣しましたが、どの隊も全滅しておりました。そこでヘルメス・ファミリアにお願いいたしました。はい」

「そこでアルテミスは取り込まれた後で最後の力を振り絞り、自らごとアンタレスを殺すために神造武器であるオリオンの矢を下界に召喚した!」

「間違いないか?」

「ああ、間違いない」

 

 アルテミスがウラノスの言葉に素直に頷いて答える。

 

「俺達もアンタレスが居る遺跡にアタックしたが、アルテミスの大精霊達が封印した門に阻まれてどうすることもできず、溢れ出てくる魔物(モンスター)を狩るしかなかった。だが、アルテミス……オリオンの矢に宿ったアルテミスの残留思念と合流し、俺はオラリオの街に戻ってオリオンの矢を使える純粋な白き魂を持つ者を探した。そこでヘスティアの眷属がヒットし、俺だけでは足りない戦力を補う為にソーマ・ファミリアに依頼して、来てもらった。結果、世界を滅ぼそうとしたアンタレスは無事に討伐されてめでたしめでたしだ」

「それがどうしてエインヘリャルの発生になるねん!」

「俺だって知るか! 気付いたら手遅れだったんだよ!」

「おいおい……」

「沈まれ! ロイマン」

「はい! 被告人。クルミ・トキサキ。アルテミス様をエインヘリャルにした件について……」

「何故我が姉を汚した! 答えろ! 貴様が何をしたのかわかっているのか!」

 

 クルミ君がロイマンを見た後、席を立って神々の前に堂々と移動した。ヘルメスと交代した彼女はニコリと微笑む。

 

「知っていますし、わかっておりますが?」

「なんだと!?」

「それにわたくしは悪くありません」

「「「は?」」」

 

 堂々と宣言したクルミ君に神々がコイツ何言ってんだ? という感じになった。一部の神々はやっぱりと思っているようだね。

 

「そもそもわたくしが最初に今回の件に関わったのは、アルテミス・ファミリアがスポンサーで、ヘルメスさん主催者の旅行ツアーです」

「え? 旅行ツアー?」

「もしかして、神話の魔物(モンスター)討伐が旅行ツアー?」

「ええ、ヘルメス様に騙されました!」

「いやいや、待ってくれ。それは仕方がなかったんだ。オリオンの矢を使える者を探すためさ」

「まあ、オラリオを出る前に魔物(モンスター)討伐の話は聞きました。ええ、ただの魔物(モンスター)討伐です。その魔物(モンスター)神の力(アルカナム)を使ったり、ましてや何も知らない無垢な他のファミリアの方に神殺しをさせようだなんて一切思っていませんでした。ですので、報酬としてアルテミス・ファミリアの全財産でお受けしました。そのアルテミス・ファミリアも壊滅していたのですが……」

 

 皆の視線がヘルメスに集中していく。さすがにこれはね。ボクも未だに許せていない。

 

「わたくし達がソレを知ったのは旅の途中です。ヘルメスさんはそのまま隠して連れて行きたかったようですが、アルテミスさんが食事を取らなかった事や自身のファミリアについて何も言わない事などがあり、不審に思って問い詰めさせていただきました。ええ、自白剤のような物を使って洗い浚い吐いていただきました」

「ヘルメス」

「事実だ。だが、言い訳をさせてもらうと、オリオンの矢はアルテミスと信頼を築き、関係を深める事で力を増していく。だからこそ、アルテミスを取り込んだアンタレスを討伐するにはこうするしかなかった。さすがにアルテミスと下界を救うためとはいえ、彼女を殺すために彼女と仲良くしてくれとは言えなかった。それにクルミ君ならなんとかできるんじゃないかとも思っていた。予想の斜め上をいかれたけどね」

「ふむ。それでどうした?」

「当然、糾弾させていただきました。討伐魔物(モンスター)への虚偽の報告はわたくし達の生死に直結します。事前に知っていたのでしたら、伝手を頼ってロキ・ファミリアかフレイヤ・ファミリアの方々から団員をお借りして連れていきましたわ」

「確かに教えてくれたら、オッタルを派遣したわね。下界の危機は見逃せないもの」

「うちもや。港へ行こうと思って準備してたから、すぐにでもほとんどの子供達を動かせた。それこそ、オラリオをフレイヤに任せても遠征に出たったわ」

「無駄では無いが、意味がない。アンタレスはオリオンの矢でしか殺せない。クルミが居た時点で過剰戦力だ。実際、クルミは途中までアンタレスを相手に生かさず殺さずにして、神の力(アルカナム)を回収していた」

「弁明は?」

「ありませんわ。事実ですもの。神の力(アルカナム)はその後に行うアルテミスさんを転生させるために必要でした。もちろん、わたくしが強くなるという目的もございます。でも、それは何もおかしな事ではありません。力を得られる機会があれば逃さないのが普通です。おかげでこんな便利な力を手に入れましたわ」

 

 クルミ君の掌に青い神の力(アルカナム)で作られた矢が形成される。それは小さいながらも確かにオリオンの矢だった。その矢を握りつぶして取り込み直したクルミ君は改めて神々を見渡す。

 

「貴様! どれだけ不敬な事をしているのかわかっているのか?」

「不敬、ですか。では、言わせてもらいますが、わたくし達下界に住まう者は神々の玩具ではありません。わたくし達にだって譲れないモノがございます。それを侵されたら、たとえ神々だろうと例外なくぶち殺してやりますわ」

「貴様! それは全ての神々に対する宣戦布告と取るぞ!」

「戦争をしたいのでしたらどうぞ。何時でも相手になってさしあげますわ」

「待った! 止めろアポロン!」

「黙れ! 穢れた口で私の名を呼ぶな!」

「アポロン!」

「黙れ! 私は断じてお前をアルテミスなどとは認めん! 認めんぞ!」

「静まらんか! ガネーシャ! アポロンを黙らせろ!」

「俺がガネーシャだ!」

 

 ガネーシャがしっかりと他の神々と協力して口をふさぎました。

 

「ヘルメス、ロキ、フレイヤ。戦争になれば彼女を止められるか?」

「そもそも私は戦わないわ」

「うちもやな。今回の件についてはヘルメスが悪いわ」

「正直に言おう。オラリオが壊滅する。まず、アルテミスはエインヘリャルになった。この意味がわからない者はここには居ないだろう。下界で問題なく神の力(アルカナム)が使える神殺しが可能な存在だ。そして、エインヘリャルには裏切り防止機能としてマスターである神への服従権が存在する。この時点でオラリオにオリオンの矢が降る事を意味する。皆は能力を制限された下界で狩猟の女神であるアルテミスの本気を相手にして生き残れるか? 俺は無理だ!」

 

 ヘルメスが説明していくと、神々が青ざめていくのがわかる。エインヘリャルは巨人族の神々を殺すために存在するのだから、下手したら強化されている疑惑すらある。

 

「了解した。クルミ、嘘偽りなく申せ。エインヘリャルについてどう思っている。これは明らかな禁忌である」

「知った事じゃありませんの。エインヘリャルを禁忌と定めたのは神々だけであり、わたくし達下界の法律にはそんなもの、存在しておりません」

「当たり前や! エインヘリャルを作るには神の力(アルカナム)が必要なんやからな!」

「ええ。神の力(アルカナム)が必要です。ですので、頂きました。さて、ここに神の力(アルカナム)とそれを受けられる受皿がございます。術式もヘルメスさんなどから貰いました。更に下界の危機という事で超一流の技術者である鍛冶神の方々にご協力もいただきました。そして、何より……」

「何より?」

「神々が行った事すらない、神その者を素材として作り出されるエインヘリャル! 更にそこにその神すら取り込み、神の力(アルカナム)を使う事のできる魔物(モンスター)の素材! 神の眷属である精霊の残滓! また神々からオーダーがありました。アルテミスを救ってくれと! ですから、ええ、救いました! 好奇心の赴くままに神々ですら見た事がない未知の領域! 未知の存在! ここでやらなくてなんとするのです!」

「「「確かに!」」」

「故にわたくしはアルテミスさんが殺され、彼女を構成する魂が天界に送還される前に閉じ込め、死した神の肉体と彼女の新旧含めた全ての眷属達とアンタレスを融合させたわたくしオリジナルのエインヘリャルを生み出しました。オマージュこそしましたが、オリジナルなのですから神々に文句を言われる筋合いはありません! 別の術式ですから!」

「あの欠陥はわざとかぁぁぁぁ!」

「あの大きな術式の空白はアルテミス本人を入れるためだったのね。だったら、あの不合理な術式も説明できるわ。何せあくまでも素材を精錬していた段階なんだもの」

「アルテミスさんの死は逃れられません。神造武器であるオリオンの矢を召喚した時点で強制退去は免れませんし、一度強制退去したら戻ってこれないらしいではありませんか。かと言ってオリオンの矢で殺されては助けることができません。確かに神々は何千何万もの年月をかければ転生するのでしょう。ですが、そこに居るわたくし達子供達は別人です。同じ魂を持っていても、記憶もない別人なのです! 故にわたくしは認めません。記憶も出来る限りの能力も引き継がせ、死した神々をこの世界の者として甦らせたのです。だからあえていいましょう。わたくしは悪くありません! 神だろうと人だろうと助けたい存在を助けることの何がいけない事なのでしょうか!」

 

 虚空を掴むようにして拳を掴んで演説するクルミ君に多数の神々が乗せられた。この場を支配して見せたのは小さな半分人で半分精霊の彼女だ。

 

「よく分かった。だが、ヘファイストスとゴブニュについてどう説明する? こちらでは買収したという話があるが?」

「全くの事実無根ですわね。わたくしが徹頭徹尾利用しただけです。ですが、実際に嘘はついていません。こちらに現れたアルテミスさんの矢は消して見せました」

「そうね。私達は神の力(アルカナム)を取り込んで止めるための物を作っただけよ」

「うむ。依頼は魔物(モンスター)に使われる神の力(アルカナム)を捕らえ、抑え込む事であった」

「故に二柱の神々も無罪を主張します。ヘスティアさんに至ってはヘルメスさんに騙されて大切な一人しか居ない眷属に神殺しをさせられそうになりました。ですので、こちらは被害者です」

「良かろう。その旨、認める」

「やった! やったよアルテミス! ヘファイストス!」

 

 思わず二人に抱きついてしまったけれど、仕方がないよね。

 

「クルミ・トキサキのエインヘリャルを生み出した件についても無罪とする。だが、これ以降は禁止とするよう公布を出す。エインヘリャルなど地上に居ていい存在ではない」

「神よ、ここはエインヘリャルである彼女をギルドの管理としましょう。そうすることで、罰金などの免除する方向で……」

「ふむ」

「却下ですわ」

「なに?」

「彼女はわたくしのものです。誰にも、いえ、彼女本人が心から愛する人以外には渡しません。何せ、彼女はわたくしが苦労して生み出した子なのです。故に断じて渡しませんわ」

「貴様……」

「ヘスティア、私はクルミの子供なのか?」

「う~ん、確かにクルミ君も今のアルテミスを構成している素材になっているし、血縁関係はあるといえるのかも? 生み出した事からして子供といえなくもないかも」

「つまり、クルミがお母さんか」

「幼女がママだと!?」

「アリか、いやなしか……」

「アリだ!」

「ナシだぼけぇ!」

「アリだぁぁぁっ!」

 

 変な争いが勃発したけれど、まあいいや。今はそれよりもギルドとクルミ君だ。

 

「エインヘリャルのような危険な存在を一ファミリアに置いておくことなどできません!」

「知りませんわ」

「話になりませんな。では、ソーマ・ファミリアに制裁をかしますが、よろしいですか?」

「なるほど、そうするのであればギルドはわたくし達に挑んでくるという事ですわね。よろしい、ギルドを破壊しましょう」

「なっ!? 正気ですか!?」

「何か勘違いしているようですから、教えてあげますわ、森の豚さん。ギルドは絶対必要ではありません。便利だから使っているだけですわ。必要がないどころか、邪魔であれば排除する。当然の事ですわ」

 

 いつの間にか、武器を装備した大量のクルミ君達にボク達は包囲されていた。もちろん抜いていないけれど、何時でも戦いを始められるという宣言だ。つまり、最初から武力衝突も考えられていた……違うか。武力制圧をする気だったんだ。

 

「知っていますか? 戦争も政治のカードなんですのよ?」

「ちょっと待ちなさい。さすがにギルドが壊されたら面倒よ」

「確かにそうやな」

「ああ、そうですわね。でしたら、ギルドはわたくしが制圧して代わりになりましょう。わたくしなら分身達が作業してくださいますしね。業務を問題なくこなせますわ。あら、これならエインヘリャルをわたくしが持っていても問題ありませんわね。ええ、解決ですわ! 解散!」

 

 すぐにぞろぞろと神々の影を通って帰っていくクルミ君達。恐怖でしかない。

 

「ふ、ふざけるな!」

「ウラノスさん、どうですか? わたくしがギルド長になるというのは?」

「ふむ。確かにエインヘリャルを自由に扱えるのであれば考慮する価値はあるか」

「安全面を考えると中立のギルドがエインヘリャルを保有するんは確かに問題ないで。今回のような事がまたあるかもしれんし、暗黒期のようにならんとも限らん」

「確かにそうね。神の力(アルカナム)を使える戦力を保有しておけばいざという時、便利よ。それに彼女は下界で生まれたエインヘリャルだから、生み出したクルミが責任を持つのもおかしくはないわ」

「か、神よ! それでは公平性が認められません!」

「だが、ロイマン。彼女はアルテミスを手放すつもりはないだろう」

「当然ですわね。そもそも何故、最強の矢を自ら手放すのですか? あり得ませんわ。アルテミスさんが欲しいのであれば、戦争遊戯でもなんでも挑んできなさい。アルテミスの矢が粉砕してくださいますわ」

 

 わぁ~喧嘩を売ったらもれなく下界産、神のエインヘリャルが出てくるってことだね。悪夢かな! 

 

「クルミたん、敵には本当に一切容赦せんから、出すやろうなあ」

「そうね。使わないはずないもの」

「絶対に使う。断言していいわ」

「ロキやフレイヤ、ヘファイストスに同意かな」

「わ、わかりました! わかりました! 認めます! 認めます! ですが制限をつけないといけません!」

「それは当然だな」

「うむ」

 

 我関せずのガネーシャまでそう言ってきたので、神々の満場一致でアルテミスには制限が設けられる。と、言っても現状では下界を救った事と武力に関する事でクルミ君の意見が通りやすい。フレイヤもロキも反対しないしね。

 

「制限についてはダンジョンでの神威の使用禁止。ギルドのクエストを受ける事、オラリオの治安維持に協力する事。緊急事態における戦力となる事。この辺りか?」

「ダンジョンでの制限は了解しました。神威の危険性はわかっておりますからね。ギルドのクエストに関しては難易度と報酬次第です。今回のようなオラリオや下界の危機という時は協力させていただきますが、それ以外はエインヘリャルを使うだけに値する報酬を頂きます。格安で馬車馬のように働かされるつもりはありませんもの」

「くっ……」

「また個人依頼は禁止です。わたくしを通して受けてもらいます。オラリオの治安維持に関してはガネーシャ・ファミリアの要請に従います。ガネーシャ・ファミリアに派遣しているわたくしを通して連絡をいただければ緊急事態と判断すれば援軍として派遣しましょう。それ以外は自由にさせてもらいますわ」

「確かにそんなもんとちゃう? うちらかてそういうので協力するし」

「いいだろう。他にあるか?」

 

 ウラノスがボク達を見渡す。すると、おずおずと言った感じでアルテミスが手をあげた。

 

「アルテミス、なんだ?」

「その、今の私はアルテミスであるが、それ以外も混ざっている。神ではなくなったのだから、新しい名前を貰おうと思う。それにこの名は子供達と一緒に眠らせたい。転生したのだから、新しく神生、人生を歩むからな。いいだろうか?」

「確かにそうやな。さっき、アポロンが認めんとかも言っていたし」

「いいんじゃないか?」

「でしたら、わたくしが決めます。親として断固として譲りませんわ!」

「とりあえず、候補を言ってみ?」

「アタランテです! アルテミスさんの加護を受けた純潔の狩人ですからね!」

「ああ、彼女か」

「確かにかの英雄の名ならエインヘリャルとしても問題ないと思う」

「私が彼女の名を名乗るのか?」

「間違いではないな。下界で生まれて加護を得てるんやし……」

「その、駄目でしたら別のを考えますが……」

「いや、それでいい。彼女も納得してくれるだろう。だからそんな不安そうな顔をしなくていい。よし、これから私はアタランテだ。そういう事でよろしく頼む、皆」

「「「おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!」」」

 

 神々が雄叫びをあげる中、ボクはアルテミス……アタランテに聞いてみる。何か嫌な予感がするんだよね。

 

「本当に良かったのかい?」

「ああ、これでいい。アルテミスなら、オリオンと恋愛ができないからな」

「まてぇぇぇぇい! ベル君はボクの子供だぞぉぉぉ!」

「知っているが? それがどうしたんだ?」

 

 不思議そうに小首をかしげてくる彼女。ああ、くそぅ! あの時の事が思い出されて文句も言えない! 本当に生まれ変われてよかった! でもベル君はあげないからなぁ! 

 そう思ってきたけれど、普通にアタランテはついてきて、ベル君と楽しそうにお話していく。クルミ君に聞いてみたら、必要な時は召喚するから、自由にしていいと言ったらしい。

 

「ヘスティア、ここに泊まっていいか?」

「いいよ、ちくしょう!」

 

 もちろん、ベル君とは寝させない。ボクが抱き枕にして寝てやるんだ。アルテミス……アタランテが笑って過ごしている姿を見たら、文句は言えないし、これでいい。ベル君も笑顔になっているし、鏡を見たらボクも笑っていた。うん、予想外ではあったけれどこれでよかったのだろう。これ以上は願えないよ。

 

 

 

 

 

 

 ありがとう、クルミ君。ボク達は幸せだ。

 

 

 

 

 

 

                       ~オリオンの矢 Fin~




次回は第二期だよ! 予想外に大変でしたが、楽しんでいただければよかったです。


ヘルメスさんはさすがに記憶を読まれた事は伝えておりません。それとアルテミス、アタランテ出力ですが、だいたいアンタレスがベル達に、ベル達がアンタレスに攻撃したのと同じぐらいです。大空に大量に魔法陣を生み出すのは使いませんし、使えません。
名前を変えた理由ですが、ぶっちゃけると、このままいけばアルテミスが二人になってしまうからです。アストレア・レコードをやると、どうしても二人になりますので、そういう意味で名前を変更しました。

クルミが今回、神々に対する態度が悪いのは怒っているのもありますが、アタランテを取り上げられないためと罰金などを課せられないためです。優しくしたら奪い取られる危険が高いですし、何をするかというよりも、本当に武力行使してくると思わせた方が安全を確保できるからです。クルミだけなら問題ありませんが、事がソーマ・ファミリアやそこに居る子供達も狙われるかもしれないからです。なお、子供達の守護はアタランテさんがしてくれます。ついでに黒ジャガ君の守護もね! 是非もないよね!

アストレア・レコードの改変について

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