ダン狂~くるみ(偽)とリリのダンジョン探検~ 作:ヴィヴィオ
「これで、どうだぁぁぁっ!」
ヘスティアさんがテーブルの上にあった書類を全て片付けました。ですので、それを受け取って確認しながら別の書類を渡します。
「はい、確認しましたお疲れ様です。では、次はこちらの書類をお願いしますね」
「待って。まだあるの!?」
「冗談です。これからやってもらう事がございますが、こちらはわたくしの方で処理する書類ですもの」
「良かった~」
おかわりのソーマ入り紅茶を入れて渡してあげます。ヘスティアさんは美味しそうに飲んだ後、机の上にぐったりと倒れました。
「もう腕が上がらない。ボクは寝るぞ!」
「残念ながらこれからもっと大変ですわ」
そう言うと、執務机の扉が乱暴に開けられました。顔面蒼白なソーマ・ファミリアの団員に何かがあったのは確実でしょう。
「団長! た、大変です!」
「落ち着いて報告してくださいまし」
「は、はい……前団長が主導した悪事が広まっています!」
「そうですか」
「いや、大変な事じゃないのかな?」
「その程度なら問題ありません。すでに前団長は逮捕され、死亡しています。関わった者達もファミリアにはいません。この事を神の前でしっかりと説明すればいいだけです」
「じゃあ、大丈夫……」
「だ、団長! え、え……」
「「え?」」
「エルフが攻めてきました! 色々なファミリアのエルフ達が、武装してきています!」
「なんじゃそりゃぁぁぁぁぁっ!」
ヘスティアさんの言葉を聞きながら、即座に他のわたくしから情報を広います。同時に窓から外を見ると、確かにエルフの方々が武装してソーマ・ファミリアの前に陣取っておられます。
「く、クルミ君」
「面倒ですね。テストがてら皆殺しにしてやりましょうか」
「駄目だからね!」
「わかっていますよ。どうせ彼女の事がバレたのでしょう。なるほど、ファミリアの不正を知っているというのはこちらでしたか」
「冷静だね。どうするんだい? ボクの
「大丈夫ですよ。既に対策はとれていますから。わたくし達、ソーマ・ファミリアが運営する全ての店を封鎖。出店している場所から撤収させてください」
『『了解ですわ』』
さて、誰が仕掛けてきたのかはわかりませんが、売られた喧嘩は買うとしましょう。
「ヘスティアさんはこちらです。次のお仕事を頑張ってくださいまし」
「わ、わかった! そっちも頼むよ!」
「ええ。お任せください。ああ、エルフの皆様を倉庫にご案内してください」
「かしこまりました!」
黒ジャガ君を保管している倉庫にエルフの方々を呼び、時間を稼ぎながら現在のキアラの位置を確認します。今はダンジョンでわたくしとレフィーヤさん、リヴェリアさんの四人で戦い方を習っておられます。
この時点でエルフを差し向けた方々がわたくし達が既にリヴェリアさんを抱き込んでいる事を知らない事がわかります。
『アサシン。ダンジョン探索を中断し、リヴェリアさんにこの事を伝えて戻って来てくださいまし』
『了解しましたわ』
さて、倉庫で黒ジャガ君の展示を見ながら少し待っていると、扉が開いて続々とエルフの方々が入って来られました。皆様、とても殺気だっておりますのが背中からわかります。
「さて、アポイントメントもなく武装しての今回のご来訪。
左右に黒ジャガ君を置いた状態でクルリとスカートを翻しながら振り返ります。すると、先頭に居た男性はアポロン・ファミリアの方でした。
「ファミリアは関係無い! だが、貴様らソーマ・ファミリアが我らが王たるハイ・エルフのお方を凌辱し、無理矢理産ませた子供を売ろうとしていた事は明白である! 我々は彼女の引き渡しを要求する!」
そう言って彼が提示してきたのはあの男が所属していた闇派閥の契約書類でしょう。実験材料として捕らえたハイ・エルフの子供の売買記録です。そこに確かにソーマ・ファミリアに所属していた男の名前があります。
「それが本物であるという証明をしてくださいまし」
「なんだと?」
「いくらでも偽造ができますもの。そんなものを提示されたところで困りますわね。それよりも、こちらとしてはたとえエルフの方々だけとはいえ、各所属ファミリアの正式回答として宣戦布告を受けたと判断し、正式にギルドを通し、抗議させていただきます」
「ならば探させてもらう! 居なければ我らも引こう!」
「拒否しますわ。何故、捜査権も何もないあなた方の言う事を聞く必要がありますの?」
「ふざけているのか?」
「立ち入り調査がしたいのであれば、正式なウラノスさんの印が入ったギルドからの書類を持ってきなさい。それができないのであれば、せめて一般エルフではない、王族を連れてきなさい。権力もない、ファミリアの団長でもないのであれば、話を聞く必要も一切ありません。こちらは現在、大変忙しいのです。何せ
エルフの方々が殺気を振りまいてこられます。中にはすでに詠唱を始めようとしているエルフも居ますので、こちらも攻撃準備はできています。
「ちょっと待った!」
「貴女は?」
「ガネーシャ・ファミリアに所属するエルフです。こちらとしても色々と聞かないといけない事があります。ガネーシャ・ファミリアであれば、捜査権を持っておりますので、問題ないですね?」
「ふむ。確かにガネーシャ・ファミリアであれば問題ありませんが、団長か副団長を連れてきなさい。そうすればある程度は譲歩してもよろしいです」
「まあ、その前に一部確認したいのです。こちらにお暇している神様も連れてまいりました」
「俺が、ガネーシャだ! 連れて来られたぞ!」
本当にガネーシャさんを連れて来られたので、対応するしかありませんね。まあ、別に構わないのですが。
「で、ガネーシャさんは何しにきましたの?」
「うむ。騒乱の気配がしたので先に布告されたギルドの法を利用し、戦いを停止させに来たのだ!」
「案外まともな理由で文句も言えませんわ!」
「ガネーシャだからな!」
「では、解決の為にお聞きします。ハイ・エルフの血を引かれる方はソーマ・ファミリアに居ますか?」
「答えるのであれば、今は居ません」
「今は、ですか」
「では居るのだな! 魔の手からお救いせねば!」
「では、答えたのでお帰りを。わたくしの時間を割き、これ以上邪魔をするのであれば本当に敵対者として駆逐させていただきます。続きを聞きたいのであれば代価を支払ってもらいましょう。こちらは一分一秒が争われる戦争状態ですの。ヘスティア・ファミリアとアポロン・ファミリアが終わった後、ロキ・ファミリアにいらっしゃるリヴェリアさんを交えて話し合いを致します。わたくしが問題点としてあげている一つが、権限がろくにないエルフの代表者でもない方とお話しても同じ話をしなくてはいけないという時間の無駄があるからです。皆様もリヴェリアさんの言葉なら従うでしょう?」
「確かにリヴェリア様のお言葉ならば従います」
「今は忙しいのも事実でしょうが……」
「騙されるな! その間にかのお方が隠されたらどうする!」
ここ、ですわね。
「では、ガネーシャさんもいらっしゃるのでこう致しましょう。わたくしは作業時間の関係で今は対応できません。ですので、わたくしの時間を欲するのであればあなた方が労働力としてわたくしの分まで働くというのはどうでしょうか? それでしたら、わたくし共といたしましても、労働力が手に入るので少しばかり時間を消費しても問題ありません」
「確かにそれならそちらも損害は生まれないので、お話はできますね。ですが、アポロン・ファミリアの方はどうしますか? 彼等はこれから
「彼等はこの場でお帰り頂きます。他の方々も神様方に誓って話の内容を漏らさないで頂きます。この内容はとてもデリケートな事ですから、公表するなどもってのほかです。また、働いてもらう間はソーマ・ファミリアから一切出しません。
「うむ。クルミの言葉に嘘はない!」
「では、私は参加します。構いませんね、ガネーシャ様。休暇という事にしておいてください」
「任せろ!」
「ああ、アポロン・ファミリアの方もこの条件で良ければ参加して構いません。ですが、
「くっ……」
アポロン・ファミリアの方が出ていきました。ガネーシャさんが居ますし、普通の言葉ではエルフの方々が納得しないとわかっているのでしょう。
「では、ぶっちゃけますので最後まで静かに聞いてください。質問などは終わってからでお願い致します」
エルフの方々がわたくしの言葉に頷きます。
「ハイ・エルフの血を引く方はいらっしゃいます。現在ソーマ・ファミリアの団員としてわたくしの世話係という特別な役職に入れて保護しております」
「事実だ」
「皆様も知っての通り、前団長は犯罪を犯しておりました。どうやら、その伝手を頼って暗黒期の間にソーマ・ファミリアへ逃げ込んできたようです。そこからその子を売るために育てておりましたが、わたくしが団長になった時にまとめて処分しました。団長はギルドの牢獄で死んだのはガネーシャさんは知っておられますね?」
「うむ。死体は確認した。老衰と判断された」
「はい。ガネーシャ・ファミリアでも確認しております」
「さて、売るために虐待されて育てられた彼女は激しい人見知りで、エルフの常識など一切知りません。普通の常識も知りません。知っているのは娼館に売られる予定でしたので、それに関する知識だけです」
「「「っ!?」」」
エルフの方々は怒りと悲しみで涙を流したり、歯を食いしばって血を流したりしている人もいます。特に年齢が高そうな方が多いです。外見はすごく若いのですが。
「ああ、まだ続きがありますので聞いてくださいね。さて、彼女を保護したのですが、わたくしが団長になって知りました。もちろん、団長としてソーマ・ファミリアを安全に運営し、団員を守る義務がございます。ですので、ハイ・エルフの血を引くことから、血族であられるリヴェリアさんに助けを求めることにしました。ハイ・エルフの血を引くとはいえ、凌辱されて無理矢理産まされた子供です。わたくしはエルフを含めて信用していません。何が起こるかはわかりませんが、彼女もわたくしが守るべき団員です。ですから、秘密裏にリヴェリアさんに接触して彼女の人となりを確認し、問題がないとわかった時点で助力を得ることにしました」
「事実だ」
「それからとても大変でした。何せ、ロキ・ファミリアの副団長様ですからね。伝手を作り、関係を深めてリヴェリアさんがわたくしのお願いを聞いて頂けるように環境作りをして、そこで彼女の事を打ち明け、ご協力をして頂きました。そこで決まったのが、リヴェリアさんの弟子としてだけではなく、リヴェリアさんの養子として引き取って頂ける事になりました」
拳を突き上げながら演説をすると、エルフの方々はおおっと喜ばれました。
「つまり、彼女はリヴェリアさんの養子として後ろ盾を得ることができました。そうは言っても、リヴェリアさんですら、彼女からしたら赤の他人です。ですので、心を開かれているわたくし達のファミリアに居るまま、家庭教師や護衛として日々の時間を少しずつ共に過ごしていただいて、交流を深めてリヴェリアさんに慣れていってもらっているのが現状です」
「事実である」
「護衛は?」
「リヴェリアさんと彼女の弟子であるレフィーヤさん。それにわたくしの分身とレベル4のエルフの方を我がファミリアに神様ごと招き、護衛をしてもらいます。この方はこちらに改宗しても構わないと伝えていただけております。ですので、護衛は基本的に足りております。今は心の傷を癒し、ハイ・エルフの常識などをリヴェリアさんに教えていただいています。ですので、皆さん。彼女の幸せを願うのであれば、接触せず、付け回さず、街で見かけた時に軽く注意を払うぐらいでお願いいたします。それ以外であれば街の治安維持にご協力くださいまし」
「接触は駄目、なのですか?」
「虐待されて過ごしていたので、人を怖がります。知らない人が大勢いればストレスを感じてしまいます。ですので、まずはわたくしのファミリアとリヴェリアさんがいらっしゃるロキ・ファミリアの方々。それから懇意にしているヘファイストス・ファミリアなど、だんだんと人の輪を広げていっております。まあ、どうしても接触したいのであれば……此花亭で働いてください。ソーマ・ファミリアの家事などは全て此花亭にお任せしています。そちらであれば従業員として少しずつ彼女と仲良くなるか、ソーマ・ファミリアの団員となって仲良くなるかの二択ですわ。それと今、こちらにリヴェリアさんと一緒に向かってきてもらっていますので、武装解除してお待ちください」
エルフの方々は即座に武装を解除してくださったので、争う必要はなくなりました。さて、ここから調査をさせていただきます。誰が主導したとか、しっかりと教えていただかないといけませんもの。
後、エルフの方々はキアラさんの為という理由でしっかりと働いてもらいましょう。魔石から魔力を吸うだけでは連射できませんしね。
アストレア・レコードの改変について
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