ダン狂~くるみ(偽)とリリのダンジョン探検~ 作:ヴィヴィオ
「団長様! 団長様! お願いです! ヘスティア・ファミリアとの
団長様にすがりつき、なんとかお願いする。このままじゃ、黒い時計に太陽が飲み込まれて皆が死んじゃう!
「ふざけるな! ここまで虚仮にされているのだぞ! 我らは既に勝たねばならんところまで追いつめられているのだ! それがわからんのか!」
「無理です! 勝てないんです!
「黙れ! 我らは勝つ! 卑怯な手で我らの妨害をしようが、ヘスティア・ファミリアの独力などたかが知れている!」
「敵はヘスティア・ファミリアじゃないんです! ソーマ・ファミリアです!」
「ふん。それこそ話にならんな。奴等は参加できん。たとえ改宗したとしてもレベル1がほとんどで2は二人だけだ。そのレベル2と副団長は団長であるトキサキが溺愛している。あの糞ガキを手放すことなどないだろう。故に貴様の心配など杞憂だ! それよりも食料と武器はどうなっている!」
団長様が話を聞いてくれずに弾き飛ばされて床に転がる。それでもお願いしないといけない。夢で見たのは黒鉄の城から放たれる攻撃によって防壁から外に打って出た私達が全滅させられるところ。周りが火の海になり、黒鉄の城から放たれた無数の矢や岩が空から降ってくる。皆は必死で走って炎に焼き殺されていく。黒鉄の城の防壁に到達したところで私達には突破する手段がなくて……そのまま嬲り殺しにあう。
「どちらも予定通りには揃っていません。ですが、どうにか外から来る商人達を捕まえて用意しました。代金は予想以上にかかりましたが……」
「武器もか?」
「はい。問題ありません。現在輸送中です」
「だったら護衛を出せ。途中で襲われて奪われてはならん」
「は!」
「くそっ! 神殺しをしようとしたなどというデマがなければどうにでもなったものを! だいたいオラリオの鍛冶師は何をしている!」
「その、全ての鍛冶師が大口の依頼が入っているとの事で……調整程度なら極微かに可能との事です」
「こちらは
「報酬が違いすぎます……深層の素材が貰えるのですから……」
「どこのどいつだ!」
「ソーマ・ファミリアです。ソーマ・ファミリアがリヴィラなどで使う巨大な防衛装置を作るために鍛冶師を集めたとの事です。こちらは
「くそがっ! だが、まあいい。このままでも勝てるだろう」
「無理です。団長様!」
「まだ言うか!」
「せ、せめて、攻撃する準備も、攻城兵器の準備をしてください!」
「ふざけるな! そんな無駄なことはできん! そもそも今回は防衛側だぞ! そんなこともわからんのか!」
「今、ソーマ・ファミリアで造られているのは防衛装置なんかじゃありません! 敵を滅ぼす破壊の、悪魔の城なんです! ここの城なんて簡単に壊されてしまいます!」
「ふん! 問題はない! そのソーマ・ファミリアであればエルフ達が妨害しているはずだ」
「お願いします! お願いします! 今のままじゃ絶対に勝てないんです!」
「黙れ! おい、こいつを連れ出せ!」
「なあ、ここまで
「え? ちがっ」
「……そうだな。そうだ。裏切り者だ! 俺達を惑わそうとしているんだ!」
いつの間にか集まっていた人達の中からそのような声が聞こえてくる。
「そもそも神殺しの汚名をきせられたのだって、ダフネが指揮したからだろ? ダフネを操ったのはコイツじゃないか?」
「ありえるな……」
「ちがっ、違います! 私はそんなことをしていません! 信じて! や、やめて、こないで……信じてください! だ、団長様! たすけ……」
「牢屋に入れておけ。裏切り者がどうなるか、見せしめだ。殺しさえしなければ何をしてもいい」
「よろしいのですか?」
「今回、我らはなんとしても勝たねばならんのだ! 我らアポロン・ファミリアは神殺しをしようとしたという汚名を着せられた! この
「「「はっ!」」」
口を塞がれて牢屋に連れていかれ、両手を縛られて吊り上げられて服をはぎ取られる。そこらひたすら殴られる。恥ずかしさよりも痛みが支配して必死に耐える。
「吐け! なんの情報を漏らした!」
「わ、わたしは……裏切って……あがぁっ!?」
気絶しても叩き起こされる。顔だけはアポロン様の事もあって殴られないけれど、逆に言えばそれ以外は好きなようにされる。
「あなた達! 何をやっているの!」
「だ、ダフネ、ちゃん……たすけ……」
「コイツは裏切り者だ。お前もそうなのか?」
「は? そんなわけないでしょうが! だいたいヘスティア・ファミリアに勝ち目なんてないのになんで裏切るのよ」
「……本当にそうか? お前が指揮したせいで俺達は神殺しの汚名を着させられたんだからな……」
「違うわよ!」
ああ、ダフネちゃんまでこんな目に合わされるのは駄目。ここは私がどうにかするしかない。私がもっとちゃんと止めなかったのが悪いんだもの……
「わ、わたし……が……ダフネちゃんを……そそのかしたの……ダフネちゃんは、騙された、だけよ……」
「カサンドラ? 何を言って……」
「ようやく吐いたか。おい」
大丈夫。耐えて神様の前で証言すれば私は助かる。だから、頑張ればいい……だから、ダフネちゃんは生き残って……
◇◇◇
「あらあら、追い詰められた人の行動とはかくも醜きものですわね。いくらポーションで再生させられるとはいえ、同じファミリアの仲間をここまでしますか。これはちょっとやりすぎましたわ。でも、貴女の名前からしてこれは運命なのかしら?」
辛い辛い時間が終わって眠っていたら、声が聞こえてきた。また酷い事をされるのかと思ったら、もうどうでもよくなってきた。
「起きなさい」
「ぎぃっ!?」
「あら、ごめんなさい」
身体に液体をかけられて激痛を感じる。意識が強制的に覚醒させられ、掠れる視界で見たら牢屋には不釣り合いな女の子がいた。その子はよく知っている子。街でよく見るし、有名な女の子。最速で駆け上がっていった私達アポロン・ファミリアの天災。
「生きてはいますわね。さて、ポーションを使いました。これで会話ができるでしょう」
「ソーマ・ファミリアの団長……クルミ・トキサキ……なんで、ここに……」
「それはもちろん……情報収集と工作のためですわね」
「っ!? だっ……あがっ!?」
声を上げようとしたら、小さな手を口の中に入れられて舌を掴まれた。
「歯がないとこんな感じなのですわね。不思議な感触ですね……ああ、噛みつこうとしても無駄です。それと人を呼んでいいのですか? わたくしはさっさと消えますので、貴女だけになります。そうなると、酷いことが再開されますわ。それともお人形さんでいたいのかしら?」
その言葉に恐怖が浮かんできて、涙目になりながら必死に首を振るう。すると、彼女はニコリと微笑んでくれた。
「では、お話をしましょう。大丈夫です。ここに来る連中はしっかりとわたくしが気絶させておきますから。いいですわね?」
頷くと、口から手を抜いてくれた。
「今から歯を治療します。眼を瞑りなさい」
「んがぁ」
「いい子です。<
目を瞑ると、衝撃を感じた後、あれほど感じていた身体中の痛みと倦怠感、不快感とかが全て消えました。視線を下ろして身体を見ると傷一つない綺麗な肌に戻っていて、思わず涙が溢れてきました。
「ありがとう、ございます……」
「いえ、正直言ってわたくしのせいですしね。むしろ、ごめんなさい」
「え?」
「ここまでになるとは予想外でしたの。はい……」
しょんぼりしたような感じの言葉に驚いていると、彼女は話だしてくれました。
「ほら、裏切り者とか怪しいとか誰かが言ったでしょう?」
「あ……あれ……」
「わたくしがコッソリとばれないように誘導しました。内部分裂なんて策略の基本でしょ?」
「ま、まさか……」
「城の内部構造の把握。妨害工作や離反工作。戦争では基本的な手段です。遊戯とはいえこれは戦争です。ですので、勝つために必要な事は全てやりますの。ヒュアキントスさんが輸送部隊に護衛を派遣しなければ奪う予定でした。もちろん、商人の方々にはお金を倍額で支払って商品をもらいますが……」
「ひ、ひどい……正々堂々……」
「正々堂々なんてしませんわ。だって、貴女達もしていないでしょう? 一人しかいないファミリアを百人以上いるファミリアが襲う。これは卑怯ではありませんの?」
「卑怯……です……でも、違うファミリア……」
「関係ありませんわ。わたくし達はヘスティア・ファミリアより依頼を受けました。
それゆえ、ヘスティア・ファミリアを勝利させるだけの事。ヘスティアさんが悲しむと、わたくし達のファミリアに居る子供達が悲しみますもの。子供達を預かる団長としては助けないわけにはいきません。
さて、こんな話はどうでもいいです。それよりも……何故、貴女が知っているはずのない事を知っているのか、教えてくだいません?」
そう言って彼女は私の頬を撫でてくる。さっきまでの申し訳なさそうで優しそうな雰囲気は完全に霧散して、とっても怖い顔をしている。
「な、なんの事……」
「あら、貴女がヒュアキントスさんに報告していたじゃないですか。わたくし達ソーマ・ファミリアが作っているのが、防衛装置ではなく、敵を滅ぼす破壊の、悪魔の城だと」
「あ……」
「ですから、わたくし。予定を変更して貴女を裏切り者に仕立て上げました。誰も信じないように他の場所に偽造した証拠まで作って見つけさせましたよ」
「あ……じゃあ、あなたのせいで……」
「当たり前です。こちらの
我々ソーマ・ファミリアの勝利が儚く消えてしまうのは困ります。ええ、非常に困ります」
ヘスティア・ファミリアの勝利なのに、ソーマ・ファミリアの勝利? どういう事なの?
「今回の件でスポンサーをつける予定なんです。ですので……アポロン・ファミリアの方々には精々わたくしの掌で踊っていただきたいんです。そのため、鍛冶師の方々はもちろん、ソーマ・ファミリアを含む全ての方々にはソーマ・ファミリアから出さないように軟禁までして情報封鎖を徹底しております。気付かれないように細心の注意を払っていますが……」
「絶対になんてありませんよ……?」
「いいえ、ありえます。だって、全員をわたくしが展開する檻の中に入れて、わたくし達が常に監視していますもの。
ですから、逃れられるはずがないんですよ。逃ればわたくしが必ず感知いたします。だというのに……貴女は知っていた。まるで未来から過去に遡ってきたかのように……」
「わ、私は……」
「話してくだされば助けて差し上げますわ。なんならわたくし達のファミリアに迎え入れても構いません」
「……いらない、です」
「何故です?」
「皆を、裏切れません……」
「こんなにひどい目にあわされたのにですか?」
「貴女のせいだってわかったから……」
「わけがわかりませんわ。これを実際にやったのは彼等ですよ?」
「それでも、です」
「まあいいでしょう。誰も貴女の事を信じないように手を打ちました。ですが、念の為にここで殺しておくのも手なんでしょうね」
いつの間にか彼女の手に巨大な鎌が握られていて、私の首に刃あてられる。
「っ!? し、死にたくない……」
「なら……わたくし達のファミリアに来ますか?」
「で、できないよ……ダフネちゃんだっているんだから……」
「やれやれです。では殺しましょう」
身体を震わせながら、額に何かを押しあてられた。私は目を瞑ってくる痛みに備える。
「本当に殺しますわよ? ほら、わたくし達のファミリアに来れば待遇は今までよりも明らかにいいですわよ?」
「それでも嫌。でも、ダフネちゃんは助けて欲しいの……」
「殺されるのも嫌で、ついでに別の人も助けて欲しいなんて調子に乗っていますか?」
「ち、違います! ほ、本心です!」
「……もういいですわ。では、こうしましょう。貴女の能力だけ教えてくださいまし」
「それなら、信じないと思うけど……夢で未来が見れるの……」
「なるほど、なるほど……未来予知ですか。貴女はわたくしと同質の力をお持ちのようですわね。ますます気に入りました。裏切るのであれば迎え入れる価値は無いかと思いましたが……カサンドラさん、貴女……わたくしの物になりなさい」
「え? え?」
信じてくれたことも嬉しい。それに私と同じような力を持っているのなら、本当にとても嬉しい。でも、でも、自分のモノになれなんて告白――
「ですから、わたくしの物になるのでしたら、特別に貴女とそちらのダフネさんでしたか。彼女も助けましょう。すくなくともこの
「ほ、本当ですか?」
「はい。嘘はつきませんわ。貴女の力、わたくし達の為に生かして頂きたいのです」
「本当に信じて、くれるの……? 誰も信じてくれないのに……」
信じてくれるとは言ってくれたけれど、やっぱりどこか信じられないところもある。
「先も言いましたが、わたくしも似たような力を持っていますからね。ですから、貴女の力がわかります」
「あっ、あぁ……」
思わず涙が溢れてくる。幼馴染で仲のいいダフネちゃんだって信じてくれない。それなのに信じてくれて、私と同じような力まで持っているなんて……
「わたくしの力は時間の操作。先程、貴女の身体を巻き戻して治療しました。ですから諸々の心配はありませんわ」
「わ、私は……」
「どうしますか?」
「お願い、します。助けて、ください……」
「では、
「はい。それまではアポロン・ファミリアとして頑張ります」
「ここに居たら辛いままですわよ」
「それでも、です。その方が、喜んでくれますよね? わ、私達が頑張ってヘスティア・ファミリアを追い詰めたら……」
「きひっ! ええ、ええ、その通りですわね。わたくしは全力で貴女達、アポロン・ファミリアを叩き潰す用意をしています。それらを突破してこれるのであれば……貴女達の魂は輝き、更なる昇華を向かえるでしょう。それほどの試練を用意いたしました。ええ、わたくし自身がドン引きするような数々の仕掛けが施されておりますし」
「それは……」
「死ななければ回復はしてあげます。頑張って冒険をしてください、ボウケンシャー」
「はい!」
「それでは見守らせていただきましょう」
そう言って、彼女は拘束を外してから楽しそう踊るように回りながら影に入って消えた。影から影へと移動するスキル。あんなのがあるなら、どんなに守ったところで意味はない。彼女が遊んでくれているうちに私達の価値を見せないといけない。
でも、その前にまた酷いことをされるんだよね。そう思っていたけれど、いつの間にか牢屋じゃなくて別の部屋に居たみたいで知らないところだった。ベッドも食料もあって過ごす事は問題ないみたい。
少し調べると、ここが隠し部屋である事はわかった。私の無実か、
カサンドラは原点のアポロンから求愛され、その代わりに未来を見れる予言の力を授けられます。ですが、その力で自分がアポロンに弄ばれてから捨てられる事がわかり、求愛を断ります。
アポロンは与えた力を取り上げる事はできず、変わりに予言の事を誰にも信じてもらえないように呪いをかけました。
予言の力でトロイの木馬などを見破りますが、信じてもらえずに大虐殺が起こりました。その時、逃げ込んだアテナ神殿で敵軍の将小アイアスに強姦され、総大将アガメムノンに引き渡されました。そして彼に妾にされますが、その際彼に「自分を連れ帰れば不名誉な死を遂げることになる」と警告し、同時にそれが自分の最期となることも予知していたとのこと。
しかしどうすることもできず、予言を聞き入れなかったアガメムノンは妻とその愛人によって暗殺され、彼女自身も殺されてしまいました。
これがカサンドラの名前と能力の由来だと思います。実際にアポロン・ファミリアがどこまでやったかはご相談にお任せします。
ですが、まあ神殺しをしようとしたという汚名で彼等は精神的にも多大に追い詰められ、ストレス過多の時にカサンドラのように不安をあおるような言葉を言い、先導者まで隠れていたら……暴走します。
ヒュアキントスとしてはこれ以上、団結に罅が入らないように締め付けるためにストレスの捌け口としてカサンドラを利用しました。その後、実際に偽造されたとはいえ、裏切りの証拠がでてきたので、どんどんエスカレートです。クルミもびっくり。
でも、止めるタイミングが無かったので仕方ありません。敵のカサンドラか、味方の計画となれば味方を優先します。クルミとしてもカサンドラは仲間にならないなら、最優先で排除する対象です。
彼女の力がどれほど恐ろしいかはクルミ自身が特にわかっていますから。それこそ白の
さあ、アポロン・ファミリア。生き残る道筋が一つできました。攻略の正解ルートをたどればカサンドラ以外も生き残れます! やってね!
※黒鉄の城はマジンガーではありません。ロボットはさすがに作れませんのであしからず。
次回「
アストレア・レコードの改変について
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改変有り
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改変無し