ダン狂~くるみ(偽)とリリのダンジョン探検~ 作:ヴィヴィオ
私の夢の事を信じてくれる。だからいっぱい見て頑張って覚えていた。それからもっといい事が起きた。ダフネちゃんが信じてくれたの。いえ、信じてはくれなかったのかもしれない。どちらにしても私の力を頼ってくれる。それだけで私は頑張れる。だから、私は覚えている限りの地獄を書き出した。
「防壁の上は通れないってわけね」
「うん。防壁の上は通ったら今の攻撃がいっぱい飛んでくるの……火力は見ての通りだよ」
「普通のバリスタよりも威力が高いわね。新兵器ってところかしら?」
「詳しくはわからないけれど、速度も威力も高いから普通には防げないよ……?」
「わかったわ。まずは全員の救助が先ね。何人か行って救助してきなさい」
ダフネちゃんが指示を出すと皆が行ってくれて、すぐに助け出されてきた。というのも、防壁の上から下に落ちて回避したから助かったみたい。怪我も私達が用意したポーションで治せる程度だった。貰ったポーションは明らかに質が良さそうなので今は使わないみたい。
「死ぬかと思った。いきなり視界が黒一色になった。アルトが助けてくれなければ即死だったな」
「私も後ろに居たから気付けた。間に合わないから射ったけれど、傷は大丈夫?」
「平気だ。ポーションで治った」
どうやら、気付いたアルトさんが矢でリソッスさんの足を射貫くことで体勢を崩させて回避させたみたい。
「まったくだぜ。危うくおいらの髪の毛が全部なくなるところだった」
「あんた、それ……」
「ぷっ」
「笑うな!」
ルアンさんは髪の毛の真ん中の部分が吹き飛んでいた。どうやら、身長が低いからしゃがんだ事で髪の毛以外の被害はなかったみたい。あくまでもリソッスさん達を狙ったからだと思う。
「ルアンの事はどうでもいい。問題は俺達が進むには連中の思惑通りに防壁の間を進まなくてはいけない事だ」
「そうですね。団長の言う通り、相手が罠を仕掛けている場所を通らなくてはいけません」
「絶対にろくな事にはならないだろう」
「この情報を見る限りではそうね」
皆が私が書き出した情報を見ていく。信じてはくれないけれど、この情報を行動方針に入れてくれるだけでも多分、未来は変わると思う。
「まずは検証からね。これからやるのはダンジョンに潜ってる感覚でやりましょう。それ以上に大変かもしれないけれどね」
「「「了解」」」
改めて先行部隊を出し、ゆっくりと進んでいく。落とし穴とかはないけれど、左右の防壁の一部が開いてそこから矢がいっぱい放たれたり、狭い通路で槍のような矢が正面から飛んできたりもした。
それを前衛の人が弾き、後衛の人が攻撃してその罠自体を破壊して道を作る。今も通路の先から巨大な鉄球が転がってきて、それをレオンさん達が受け止めて防ごうとしてくれているけれど、それは駄目。
「その鉄球は爆発するみたいだから弾き飛ばしなさい!」
「了解だ。おらぁぁっ!」
複数人で大剣を地面に突き刺して、その下に入って支えながら上をすごい勢いで鉄球が転がって空へ上がったところを狙撃されて上空で大爆発を起こしながら私達の城の方へと飛ばされていった。
「殺意やばすぎでしょ!」
「
「それを俺達で実験するとは許せん」
「そうね。それよりもそろそろ、全員解毒ポーションを口に含んでマスクをつけなさい」
ダフネちゃんの指示の通りにして先へと進むと防壁から色のついた煙が出てくる……なんて事はない。無味無臭の毒が漂っている。ここに漂っているのは麻痺毒で、吸い込むと身体が痺れてそのまま動けなくなってどんどん毒が身体に取り込まれて行って最終的には心臓が止まってしまう。
「焼き払え!」
「ファイア!」
魔法使いの人が火の玉を出して通路を焼却して消毒して進んでいく。魔力の関係で連射はできないけれどこれでなんとか進める。
「矢が来たぞ! 盾を構えろ!」
「迎撃はするな! 無駄だ!」
盾持ちの人達の下に潜り込んで上から降ってくる矢を防ぐ。それはまるで雨のように大量に降り注いでくる。威力自体は低いのでどうにかなるけれど、凄い量の矢が絶え間なく降ってくるので盾の人達はみるみるうちに怪我が増えていく。そんな彼等に抱き着いて必死に支えながら耐えていく。
「よし、防いだわね。ポーションで回復してすぐに行くわよ。次の攻撃までのタイムラグは約六分! それまでに安全圏に移動するわ!」
「「「はい!」」」
ポーションを走りながら使って移動し、防壁が斜めになって洞窟のようになっている場所に潜り込む。ここが今の所、安全なの。
「次のエリアは……」
「火の海だよ」
「火か……全員、サラマンダーウールを着用していくわよ」
ダフネちゃんの言う通りにサラマンダーウールを装備して進むと、広い場所についた。中央には盛り上がった岩があり、外周には赤色の実や葉をしているを黒い木々がある。そして、岩の上には幼い金髪の可愛いハーフエルフの女の子とメイドさんが居た。
「おお、あのお姿は……!?」
「正しく貴きお方の血を引いておられる……」
「うわぁ、ハイ・エルフの王族か……こっちから攻撃したらやばいじゃない!」
「ダフネ、気を付けろ。あのメイドの奴は最低でも第二級冒険者だ」
「団長?」
「見た事がある。アストレア・ファミリア所属、レベル4……リュー・リオンだ」
「レベル4……」
「俺が知っているのは七年前だ。おそらくレベルが上がっている可能性がある」
「第一級冒険者……」
あちらもこちらに気付いたようで、メイドさんが地面にお絵描きをしている女の子に注意を促すと、彼女がこちらを見る。それから、スカートをつまんで挨拶をしてくる。
「……元、ソーマ・ファミリア……ヘスティア・ファミリアのキアラ……よろしく……?」
「私は護衛のリュー・リオンだ。私はキアラ様に危害を加えなければ戦わない」
「ちょ、それって……」
危害を加えなければ戦わないと言っているけれど、あのキアラって子はやる気満々です。
「皆、急いで駆け抜けて! 戦っちゃ駄目!」
「……行ってクーちゃん!」
その言葉と同時に周りにあった木の実や葉っぱから炎が上がる。よくよく見たら、木の実も葉っぱも炎で出来ていて、それらが小鳥の姿へと変化して私達に突撃してくる。
「相手にしちゃ駄目! 物理攻撃は効かない! 何より手を出したらエルフが敵に回る!」
「ひぃぃぃぃっ!?」
ダフネちゃんは事前に指示していた水魔法を放たせたけれど、炎によって水魔法は一瞬で蒸発した。けど、これで発生した水蒸気によって見えなくなる。その間に一気に駆け抜けていく。それでも何人もの悲鳴が上がる。炎に包まれて焼かれていくのだ。
「くそがぁっ! 引火した! もう駄目だ! 後は頼むぞ! うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!」
ハイ・エルフなど知った事かという人達が炎に包まれながら術者である者に突撃していく。当然、彼女の前に立ったメイドさんによって殴り返されて防壁に激突して気絶する。そんな中を突破して進んでいくけれど、背後から炎の鳥が追ってくる。その迎撃をしながらトラップを避けなくてはいけなくて残ったのは二〇人だった。
それに休憩は許されず、絶えず背後から炎の鳥が向かってくる。火力と量は明らかにレベル2を超えていて、レベル3にも到達しているかもしれない。
「掛けまくも畏きいかなるものを打ち破る我が
詠唱が聞こえてきたので即座に防御魔法を展開して防ぎます。ダフネちゃんが指示を出して放った矢を彼女は防壁を蹴って回避し、更にナイフを投げて罠を発動させます。左右の防壁から無数の矢が放たれてくるので、それの対処をしないといけません。それなのに相手は防壁に刺さった矢を足場にして防壁の上に上がりながらも詠唱を続けています。
「我が
魔法が発動し、私達は身体が押しつぶされそうになる。でも、相手も動けない。そこに相手側に増援が来て動けない私達に武器を向けてくる。
「私は動けませんが、他の方が攻撃の準備をする時間は稼げます。それとご愁傷様です」
「え?」
「投げろ!」
彼等が構えていた武器は瓶で、それが投げられて周りが凄くお酒臭くなりました。これだけでは何がしたいのかはわかりませんが……
「ぴぃいぃぃぃっ!」
空から絶望が飛んできました。炎の鳥が着地すると同時に液体に、お酒に火がついて一気に周りを炎の海へと作り替えていきます。
「足止めは十分です。参ります!」
「馬鹿な! この炎の中で戦うつもりか! 死ぬぞ!」
「ソーマ・ファミリアの連中は頭がおかしい奴等しか居ねえのか!」
「ご心配なく。この炎は我等には効きません。それに私はソーマ・ファミリアではなく、タケミカヅチ・ファミリアからの異動ですし、我等はヘスティア・ファミリアになりました」
「命」
「失礼しました。総員、攻撃開始!」
ヘスティア・ファミリアに移籍した方々が武器を抜いて突撃してきます。私達は炎に口や身体の中を焼かれながら武器を交わしていきます。
戦場で怒声が響きながら、幾度も鉄と鉄の衝突する音が聞こえてきます。こちらは人数を削られているのに相手は炎を一切気にせずに攻撃してくるのです。
「取った!」
「カサンドラ!?」
後ろを振り向けば炎の壁を強引に突破してやってくる人が見えた。その赤髪の人は大剣を振り上げながらこちらに降ってきていて、視界いっぱい大剣に埋まって死んだのが自分でもわかる。でも、夢だったら私は助かった。
「させないわよ!」
ダフネちゃんが私の前に飛び出して大剣を横から細剣で斬って弾いてくれた。赤毛の人はすぐに追撃せずにバックステップで距離を取る。するとそこに複数の矢が炎の壁を越えて飛来してくる。それをダフネちゃんが切り払うけれど、少しは通る。その矢はダフネちゃんの身体に張られた防御魔法によって弾かれる。
「治療は必要ないけど、これはキツイわね。仕方ない……放て!」
「あめぇよ……燃えつきろ、外法の業、 ウィル・オ・ウィスプ!」
ダフネちゃんの合図に魔法使いの人達が一斉に魔法を放とうとしたら、赤毛の人に妨害されたのか盛大に爆発した。爆発が起きる事自体は予知していた私はソールライトを発動してまとめて治療する。
「戦いの内容までは詳しくわからないか……」
「ごめんなさい」
「いいわ。それより出口はわかる?」
「出口はあっち……でも、タイミングはまだ……」
指差した方を見たダフネちゃんは頷いてくれてから、相手と向き直る。相手の人も下がってから背中に背負った剣を取り出してくる。
「魔剣……」
「いいや、違う。魔砲剣だ」
「え?」
剣をこちらに向けてくる。その上の部分には筒みたいなのがあって、その中に剣がセットされていた。
「エクレール!」
筒から閃光が放たれ、それをダフネちゃんが真正面から回避して剣に流して防いだ。でも、防御魔法が打ち消してくれた。ダフネちゃんの魔法も消えちゃった。
「今のを防ぐのか……」
「そちらこそ、クロッゾの魔剣を使ってくるなんてね」
「これでもクロッゾなんでな!」
「ちっ!」
ダフネちゃんが魔剣を放たれないようにしながら斬りあっていく。一対一ならダフネちゃんが有利なのは間違いない。でも、周りが炎だらけなせいで呼吸もままならないから、ダフネちゃんが不利。それを覆すために何度も回復魔法を放つ。
「魔法を準備できたら放ちなさい。コイツはウチが押さえておく! カサンドラは回復を続けなさい!」
「「「了解」」」
相手は詠唱と攻撃をしないといけないからこのままでも大丈夫。他の団員もサラマンダーウールを盾にして炎を突っ切り、矢を放った人達に襲撃をしている。それに団長も動いて複数の相手を倒してくれている。本当は団長は温存しておいた方がいいんだけど、そうも言ってられない。
「ヴェルフ殿! そろそろ潮時です!」
「ああ、わかった! 勝負は預けるぜ!」
「何を……」
「ダフネちゃん! 上!」
空には巨大な、それはもう巨大な氷の塊が存在していた。今まで炎や熱によってできた陽炎でわからなかった。どちらにしても、あんなのが落ちてきたら終わる。
「カサンドラ。タイミングは?」
「もうすぐ」
「わかった。総員、こちらに来て! 今から突破する!」
皆が集まり、陣形を組んで一斉に突撃する。突撃する場所は私が指示した場所で、そこには防壁しかない。でも、この防壁は回転扉になっていて、ヘスティア・ファミリアの人達が撤退した奴と同じ。もちろん、私達じゃ開けられないけれど……
「おらぁぁっ!」
「ふんぬぅっ!」
壊してしまえば関係ない。だから、ハンマーで連続して叩いて破壊し、全員で通る。すぐ後ろから衝撃が伝わってきてどうにか私達は助かる事ができた。でも、その代償は大きい。残ったのは十人にも満たない。
「もう少しで到着するわ。でも、本番はここからね」
「ここから先は城の攻撃範囲だったな」
「はい。それに炎の魔人達も……」
「駄目だって……無理なんだ……オイラ達はここで死ぬんだ……」
「進む気のない者は置いていく。来れるものだけ来い。私達はアポロン・ファミリアだ。太陽の輝きを見せてやる」
団長様はミアハ・ファミリアの最高級ポーション、エリクサーを飲んでから先へと進んでいく。私とダフネちゃんも一緒に続く。私達以外にも残った人が立ち上がる。エルフの二人、リソッスさんとアルトさんは耳が切り落とされ、腕に深い傷ができている。傷はエリクサーで癒せたけれど、耳はどうしようもない。それに武器の弓は壊れている。
「なんでだよ……どうあがいたって無駄じゃん」
「ならそこで寝ていろ、ルアン。運良く生き残れば故郷に帰れ。お前は冒険者に向いていない」
「……そんなの、オイラだってわかってらぁ! でも、
「大丈夫。ルアンならできるよ」
「あ? それも夢で見たってのか?」
「うん」
「信じられるか!」
「でも、ここまではある程度はあっているのよね。信じる価値はある。というか、それしか信じる物がないわ」
「……わかったよ! やってやる!」
ルアンさんが立ち上がって私達を追って、追い越して先に向かって罠を調べていく。リソッスさんとアルトさんも予備の近接武器を取り出してルアンの近くで警戒している。
「伏せろ!」
リソッスさんの言葉に全員が地面に倒れる。その次の瞬間には私達の背後が爆発してクレーターができた。
「すぐに起き上がって走れ! 出来る限り防壁に沿ってだ!」
言われた通りに走る。飛んできたのは岩だった。どうやら、こちらの退路を封鎖しにかかっているみたい。背後から炎の鳥も来ているので、どうしようもないし、進むしかない。
更に砦から黒い鉄の塊が飛んでくる。それは空中で爆発して無数の金属片を撒き散らかしてくる。それらを団長様が中心になって前衛の人達が身体を張って防いでいく。私はマジックポーションを飲みながら範囲回復魔法を使ってどうにか傷を癒していく。それでも無理ならエリクサーを使う。
「うわっ! 宝箱があるぜ!」
「絶対に罠だ。止めておけ」
「いやいや、でももしかしたらお助けアイテムが……」
「あると思うか?」
「ないな」
「ないわね」
宝箱は放置する。放置が正解。アレは開けた瞬間、拳が出てくるしアラームがなってそこに沢山の攻撃が集中される。何度か見た夢で倒れた原因の一つなの。
こんな風に罠や城からの攻撃を回避しながら、犠牲を積み重ねて進んでいく。私達は全身が傷だらけになりながらも必死に先へと進む。
「次は……」
「ここが終わりか」
城の前に到着した。城までの距離は約五百ぐらい。でも、その前に彼等も布陣している。城門の前にはハイ・エルフの血を引く幼い女の子とその護衛。その前には武装したヘスティア・ファミリアの人達。防壁の上には無数の矢を高威力で連射する攻撃兵器。
「ここを突破して扉に触れればいいんだったな?」
「そのはずですが……」
「そうか。ならばお前達が道を切り開け」
「わかっています」
団長様とダフネちゃんが作戦を練っている間に皆を回復する。もう私の役目は盾になるぐらいしかない。マジックポーションもほとんどを団長様に渡しておく。
相手を見ていると、城の前に陣取っている人達に炎の鳥が舞い降りてその身体を燃やしていく。その人達は全身を炎に包まれながら武器を構える。
「アレが炎の魔人か。正気じゃないな」
「クレイジーすぎるわよ……」
城の防壁に居る人達もちょっと引いている感じがする。あの人達は報酬に釣られた元ソーマ・ファミリアの人達だったと思う。ソーマの為にとか言いながら突っ込んでくるから。
「……ダフネ。ルールは私が到達し、門に触れればいいんだな?」
「そうです」
「部位は指定されていなかったと記憶しているが、どうだ?」
「していませんね」
「わかった。なら、私の覚悟を見せてやる」
そう言って団長様は耳を自ら切り落とした。慌ててエリクサーを使って傷を治療する。欠損は治らないけれど、傷自体は塞がりました。
「ダフネ、リソッス。片耳ずつお前達が持て。私が到達できなければソレを門に叩きつけろ。それで条件は達成できる」
「団長様……」
「お前達も私の手足が吹き飛んだら、それを拾っていけ」
「その前に俺らが死んでますって」
「ふん。行くぞ」
団長様に包帯を巻いてから、全員で団長様を守りながら進むために武器を仕舞い、サラマンダーウールの外套の上にウンディーネウールの外套でしっかりと全身を覆っていきます。外に出すのは目の部分だけです。
「やれ」
「はい。ご武運を! 先に行って待っています! 我、願いたもうは天より賜りし災禍の雫。火の災禍を退ける恵の雨。されどそれは破滅を呼ぶ雫なり! アシッド・レイン!」
大規模な魔法が発動されます。空から降り注ぐのは酸の雨。炎の魔人達の周りで水蒸気が発生していきます。土砂降りの雨は鉄を溶かしていきます。しかし、術者の方も口から血を吐き、身体の端から溶けていきます。相手も味方も溶かし、自らも内側から溶かしていくこの魔法は普通なら彼も使いません。使えば死ぬのですから、使うはずがありません。アポロン・ファミリアと敵対していた派閥に居た彼が使える人生で一度きりの魔法です。
「総員、突撃!」
視界が塞がれたところを相手を避けながら駆け抜けますが、相手側からも攻撃が飛んできます。相手からしたら、こちらの位置など気にせず攻撃したらいいからです。矢が雨のように降り注いできますが、その一部は酸の雨によって溶かされるので私達に被害はありません。
「……凍って……」
ハイ・エルフの血を引く女の子の瞳が光ったと思ったら雨と矢が一瞬で氷柱となって降り注ぎます。
「どう考えても禁忌の精霊と契約しているんだけど!」
「何を考えているんだ! あの護衛はちゃんと役割を果たしているのか!」
「ヒャッハー! ソーマのためにしねぇぇぇっ!」
「一人一本だ! 絶対に潰すぅぅぅ!」
「この酒狂い共がっ!」
地上から炎の魔人が襲い掛かり、私達はそちらの対応をするしかありません。ですから、皆で体当たりのように身体が燃えるのも気にせずに相手を押して団長様の道を開きます。団長様は一人で砦に向けて突撃します。当然、攻撃が集中しますが剣で必要最低限の攻撃だけを弾きながら並行詠唱をなさっていきます。
「我が名は愛、光の寵児! 我が太陽にこの身を捧ぐ!」
矢が頬を切り裂き、腕を貫こうとも気にもしていません。
「我が名は罪、風の悋気! 一陣の突風をこの身に呼ぶ!」
駆けながら、左右に移動して的を絞らせずに最小限の動きで矢を避けて近づきます。すると門の上から油が流し落とされます。こちらのアシッドレインは停止したので、炎が自由に使えるようになりました。
「放つ火輪の一投! 来れ、西方の風! アロ・ゼフュロス!」
放たれた円盤の光弾は矢を粉砕して道を作っていきます。それだけではなく、即座にエリクサーとマジックポーションを使って続けて詠唱をします。
「我が名は愛、光の寵児。我が太陽にこの身を捧ぐ! 我が名は罪、風の悋気。一陣の突風をこの身に呼ぶ! 放つ火輪の一投! 来れ、西方の風! アロ・ゼフュロス!」
一切止まらずに団長は駆け抜け、円盤をハイ・エルフの女の子へと放ちました。すると一瞬だけ、炎が弱まります。当然、護衛の人が動いて円盤を防ぎましたが、団長様は円盤をその前に爆発させて視界を防ぎ、晴れた時にはいませんでした。
ヒュアキントスさんが強い? 精神的に追い詰められまくっているので覚悟も完了して油断も慢心もありません。レベル3としてフルスペックの力を出してきます。魔法戦士が並行詠唱できないはずがないよなぁ……?
アストレア・レコードの改変について
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改変有り
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改変無し