ダン狂~くるみ(偽)とリリのダンジョン探検~ 作:ヴィヴィオ
ヒュアキントスさんが信じられない事に新型の連射型バリスタから放たれる矢に対処しておられます。こちらはオリオンの矢に仕込まれていた加速術式を解析して、魔石で代用できるようにした術式を
主砲の方はもっとちゃんと作っていますこちらは実際に爆発させて弾丸を発射していますので、威力は更に高いです。
「キアラやリュー様は大丈夫でしょうか?」
「まあ、平気でしょう」
「それでも心配だよ……」
どうやら、ヒュアキントスさんは矢を回避しながら並行詠唱で光弾の円盤をキアラさんやリューさんに放ったようです。当然、リューさんが対処しに前に出ましたが、弾く前に爆発して煙で視界を遮られたようですね。まあ、キアラの無事は確認しているので問題ありません。
「アロ・ゼフュロス!」
「っ!?」
そう思っていると、爆発の煙からヒュアキントスさんが円盤に乗りながら、更に数十メートルはあろう巨大な円盤を作成していて、こちらに投げられていました。
高速回転する巨大な円盤はわたくし達の目前へと迫っており、わたくしはベルさんとリリさんを弾き飛ばします。
「クルミ様!?」
「クルミ!?」
わたくしの身体は真っ二つに切断されてしまいました。ですが、くるみねっとわーくからダウンロードとインストールした別のわたくしが起動し、問題ありません。そもそもオリジナルであるルーラーは
「大丈夫です……ね、はい」
「か、身体が真っ二つなのに……」
「死体は回収ですわ」
しっかりと取り込んでからあちらを見ると、耳が無くなったヒュアキントスさんが防壁の上に立っておられます。彼の横には通常サイズの円盤と特大サイズの円盤があります。
「一騎討ちなのですが、わたくし達を狙いましたか」
「知らん。私はベル・クラネルを狙っただけだ」
「あくまでもそうおっしゃいますか……」
「事実だ。そもそも、ベル・クラネルなどは前座にすぎん。お前達が戦えというから戦ってやるだけだ。私の敵は貴様等だ」
ベルさんを見ると、悔しそうにしておられます。ですが実際問題としてヒュアキントスさんはレベル3で、ベルさんはレベル2ですからね。ヒュアキントスさんからしたらわたくし達の方を警戒するのは当然です。
「では、わたくし達がお相手いたしましょうか?」
「リリがしますよ。今度もボコボコにしてやります」
「ごめんなさい。この人はボクが、ボクがやります!」
ベルさんがわたくし達の前に立ちました。やはり、男の子としてはここまで虚仮にされたら前に出ざるをえませんね。それにヒュアキントスさんの狙いはおそらく、ベルさんと戦いながらわたくし達を狙う事でしょう。ベルさんと一騎討ちの最中、攻撃がソレてこちらに来たとしても、ヒュアキントスさんの落ち度はないわけですしね。安全な場所で見学しない方が悪いのです。
「よかろう。相手をしてやる」
「はい。お願いします!」
わたくしとリリさんは下がりながら、二人の戦いを見学します。ヒュアキントスさんは容赦なく、円盤をベルさんに向けます。同時に巨大な方は近場の攻城兵器群へと向かっているので、急いで回収しておきます。壊されたら大損ですもの。
「ファイアボルト!」
ベルさんがファイアボルトで円盤を攻撃しますが、円盤は炎を高速回転することで後ろへと流してダメージらしいダメージを受けていません。
「我が名は愛、光の寵児。我が太陽にこの身を捧ぐ! 」
ヒュアキントスさんは追加で更に円盤を増やしていきます。マジックポーションをがぶ飲みして自動迎撃させながらわたくし達との戦いの準備を整えておられます。
「我が名は罪、風の悋気。一陣の突風をこの身に呼ぶ! 放つ火輪の一投! 来れ、西方の風! アロ・ゼフュロス!」
ベルさんに向けて飛んでくる円盤が増えました。ベルさんはバク転することでどうにか避けましたが、その円盤は途中で空中に静止して、またベルさんを襲います。
「自動追尾か迎撃の魔法ですね」
「そうですね。魔力さえあればいくらでも出せるようですし、厄介な魔法です。ベルさんは果たして対処できるでしょうか?」
「伊達にアポロン・ファミリアの団長ではありません。ベル様では辛いかもしれません」
下以外の全ての場所から順番に襲い掛かってくる円盤をベルさんが必死に回避しながら、ヒュアキントスさんに向かいます。ヘスティア・ナイフを持ちながら背後からやってくる円盤もしっかりと余裕を見て回避しました。円盤は鉄を削りながらヒュアキントスさんの方へと向かっていきますが、彼は円盤を止めて投げてきます。その間も詠唱を続けて数を増やしていっております。
「ベルさんが飛んだり跳ねたりしていますね」
「本当にウサギさんみたいです」
ヒュアキントスさんが油断せず、確実にベルさんの回避行動を見極めて攻めたてています。ですが、ベルさんも回避技術がかなり成長しているようで既に円盤の間合いを把握したように行動しだしております。
「確かに貴様は前に戦った時とは別人のようだ。だが、そんなものはリトルの連中なら当然だ。数日でレベルを上げてきやがるからな!」
「くっ!?」
円盤をくぐり抜けた瞬間、ベルさん目の前にヒュアキントスさんの足が迫っており、ベルさんは蹴り飛ばされました。倒れる前に片腕を床について即座に移動すると、先程までベルさんが居た場所に円盤が衝突して床を削ります。
「さっさとくたばれ!」
「嫌です! 僕は神様のためにも負けません!」
「自らのファミリアを売り払った神のためか! くだらん! 私はアポロン様の威光を知らしめる! その為に貴様は邪魔だ。死ね」
冷徹な声と共に十もの大小さまざま円盤が一斉にベルさんを襲います。ベルさんは身体を回転させるようにしなが自ら前にとんで一部の円盤をヘスティア・ナイフで動かしてどうにか突破しました。ですが、全身にできた傷から血が噴き出します。
「まだだ! 僕は負けてない!」
「そうか。その心意気は認めてやろう。だが! もはや付き合う理由はなくなったぞ」
「え?」
ヒュアキントスさんはマジックポーションを飲んで、その空き瓶を捨ててから空を見上げます。
「時間だ。我が名はイカロス! たとえこの身が滅びようとも我が太陽にこの身を捧ぐ! 我が名は傲慢! 一陣の突風をこの身に宿し自由の翼持ち、遥かな頂きへと到達す! 我が身は
無数の円盤が全てヒュアキントスさんに集まると、彼の円盤が変化して光の翼に変化しました。また空に輝く太陽からヒュアキントスさんに膨大な力が降り注がれているのを感じます。
「なんですか、なんですかこの暑さ!」
「あははははは! 太陽! 太陽の力を一部とはいえ地上に顕現させますか! 馬鹿ですわ! 馬鹿に間違いありません! わたくし達ごと自らを消し飛ばしますか!」
「笑い事じゃありませんよ!」
イカロス。翼を作り、自由に空を飛べる力を手に入れた者達。しかし、傲慢にも太陽に近づきすぎたために太陽によって翼を固めていた蝋を融かされ落とされました。なるほど、ヒュアキントスさんがイカロスという事でアポロンさんが太陽。ならばこの魔法を覚えていてもおかしくありません。
もちろん、普通は使いません。疑似的とはいえ地上に太陽を顕現させるのですから、その力に身体が耐えられるはずがありませんもの。アポロンさんからも使用を禁止されているでしょうし、ダンジョンで使うわけにもいきませんし、使えないでしょう。キアラさんと同様の制限がかかっていると見るべきです。
「我が身が蝋として燃え尽きる前に貴様等を滅ぼしてくれるわ! プロミネンス!」
紅の炎がヒュアキントスさんの左右の手に現れ、そこから炎の龍が現れてわたくし達を襲い掛かってきます。当然、避けますが……先程まで居た砦の部分が燃え尽きた上に残った部分までガラス化しています。
「ベルさん、これベルさんの負けでいいですか?」
「え?」
「何を言っているんですかクルミ様! 今はそういう事じゃないでしょう! 死にますよ!」
「いえいえ、あくまでも一騎討ちですから」
「そうだ。一騎討ちだ。貴様等がそこに居るから巻き込まれるだけだ! この城もろとも全てを燃やし尽くすだけだからな!」
「まだ……まだ僕は負けていない!」
「いや、ベル様!?」
「よろしいですわ! では続行です!」
「ベルさんは男の子です。ですから、決着をつけさせてあげましょう」
「馬鹿ですか! 馬鹿なんですね! 死んだら元も子もないんですよ!」
「大丈夫ですわ」
「絶対にですか!?」
「たぶん」
リリさんに肩を掴まれてガタガタと揺らされますが、ベルさんが動きました。何も気にせず突撃しています。いえ、両手を後ろにやってプロミネンスが迫る前に自分から飛びました。
「ファイアボルト!」
後ろにやった手からファイアボルトを地面に撃って爆発させ、加速と飛翔能力を得てヒュアキントスさんへと突っ込みます。ヒュアキントスさんは動きません。いえ、動けません。空を飛びながらもその身が融かされていっているので、動けないのです。
「トキサキ・クルミィィ! リリルカ・アーデぇぇぇ! 死ねぇっ!」
ベルさんが炎に包まれます。一度これで死にますが、ベルさんが首にかけているペンダントから防御魔法が発動しました。それにより焼失を免れてヒュアキントスさんの前へと到達します。ですが、彼の身体からもプロミネンスが生み出され、ベルさんを焼きます。その状態でもベルさんはヒュアキントスさんをヘスティア・ナイフで斬ります。顔に傷が刻まれますが、気にもしていません。
「お前の相手は僕だ! 僕を見ろぉぉぉぉぉぉっ!? ファイアボルトォォォォ!」
「っ!?」
ベルさんがヘスティア・ナイフを持っていた片手はなくなりした。残った手でファイアボルトを更に放ち続け、加速してヒュアキントスさんの喉元に噛みついてえぐり取りました。血飛沫が一瞬で蒸発させながら、ベルさんが落ちていきます。
「ベル・クラネルゥゥゥゥッ!」
「あぁぁぁぁっ!」
ベルさんは更に空中で身体を高速回転させました。残っている彼の腕にはしっかりと鎖が巻きつけれらています。リリさんがプレゼントした盗難防止用の鎖です。それよってヒュアキントスさんの炎により鎖が消滅してそのまま彼に刺さりました。
「まだ、だぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
地面に足がついて瞬間、全身の火傷を無視して飛び上がり、ファイアボルトを使って加速。そのままアポロンさんの身体を空いている手で引き寄せます。当然、手は燃えますが、その前にベルさんは刺さっているヘスティア・ナイフを咥えて斬り裂き、首へと顔の動きだけで突き刺しました。
「
「あぁあああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!」
何時か見たように身体の中から炎の魔法が放たれ、ヒュアキントスさんの熱量が更に上がります。ヒュアキントスさんの魔法は太陽の力が使えるとはいえ、イカロスの翼。つまり、身体という蝋が融けるまでしか使えません。故に彼も燃え尽きるまで止まりません。ですが、それをベルさんは加速させました。
「自爆を速めたんですか? 無茶苦茶ですよ!」
「リリさんが言うとアレですね~」
「リリは勝算があるからです! でも、ベル様のこれは……」
「わたくしでもタイミングが非常にシビアですわ」
互いに燃え尽きるのがどちらが早いかの勝負でしかない。いえ、どちらに女神が微笑むかですわね。ええ、女神という時点で勝負は決まっています。
「<
準備だけはしておきます。二人が燃えながら地面に落ち、炎が消えます。そして、立ち上がって咆哮を上げたのは幼い方です。
「……貴様等も……太陽に……近づき……れば……こうなる……覚えて……おけ……」
もう一人の方は灰となって──
「
──消えたりしません。なんということでしょう。お二人の身体が逆再生するかのように戻っていくではありませんか。はい、わたくしです。
「「「
「ところがぎっちょん。という奴ですわね。まさか、まさかわたしくが華々しく散らせてあげるとでも思いました? 残念でした。自爆特攻が可能な者をむざむざ捨てるわけないじゃないですか、もったいない」
「本音が出ました! 使い潰す気満々です!」
「ふざけるな! 私は、私は皆に死ねと命じたのだ! だからこそ私も死なねばならん!」
「そうですか。無駄でしたわね。そもそもわたくしに姿を見せた状態での自爆攻撃なんて効きませんわ。ご愁傷様ですわね。きひひっ!」
「くそがぁああああああああああああああああああぁぁぁぁっ!!」
「あははは……これ、どっちが悪役なんだろう?」
「決まってるじゃないですか、ベル様。クルミ様とアポロン様ですよ」
「ヘルメスさん!」
『勝者ヘスティア・ファミリア! どちらも素晴らしい。大変素晴らしかった。アポロン・ファミリアとヘスティア・ファミリアの死闘は我等神々が認め、祝福しよう! この戦いは新たなオラリオの歴史として刻まれる! 誇るがいいアポロンの子供達!』
さて、勝利しました。砦に
ポイポイ、ポイっと。彼等も治療してあげているので元気いっぱいです。アシッド・レインを撃った人も回収してちゃんと再生させてあります。
「
「待て。全員無事なのか……?」
「言ったではありませんか。わたくし達に貴方達の価値を示せと。示してくださったのですから、殺しませんわ」
「そうか……」
「なんとも言えませんが……乾杯でもしますか団長?」
「そうだな。どうせこいつらの奢りだ。たらふく飲んでやるぞ」
さて、こちらは料理とお酒をいっぱい出して色んなところで酒盛りを始めます。まあ、殺しあった仲なので微妙かもしれませんが、美味しいお酒と料理にはかないません。
「あ、皆さん。攻略側と防衛側で何処が悪かったのか、しっかりと話し合って後程レポートを出してください。それによっても報酬を差し上げますので」
こちらはこれでいいとして、問題はあちらですわね。さて、あの泣き虫神様をどうにかしましょう。
ベルさんの最後の攻撃はガンゲイル・オンラインのレンちゃんみたいな感じですね。喉笛を噛んでダメージ。そこから更に追撃ですが、こちらはミノタウロス戦。
ヒュアキントスさんの力はアポロン・ファミリアの団長に相応しい太陽の力を追加しました。あの人、円盤だけだと少し弱い気がするの。覚えていなかっただろ? 負けが確定した時点で残していた魔導書を読んだに決まってるじゃないですか。ですから、自ら死んでも相手を確実に殺すための魔法を発現しています。最初からヒュアキントスの狙いはクルミとリリですから、仕方がありません。
アストレア・レコードの改変について
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改変有り
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改変無し