ダン狂~くるみ(偽)とリリのダンジョン探検~ 作:ヴィヴィオ
「うぅ~! ベル君が生きててよかったよぉ~!」
「そうだな、ヘスティア」
「しかし、確実に死んだと思ったんやけど、あのペンダントは……」
「フレイヤの仕業でしょう」
「違うわ。アレは私が別の子にあげたの。その子が渡したようね」
「致死性の攻撃を防ぐ防御魔法……いったいいくらするの?」
「安くはないわね。魔導書ぐらいかしら?」
実際、あのペンダントが無ければ介入していました。ヒュアキントスさんの魔法は予想外でした。なんですか、イカロスをもじった太陽の一部顕現とか馬鹿ですか! 非常識にもほどがありますわ! わたくしが言えませんけれど!
「ああ、僕のヒュアキントス……素晴らしかった」
「確かに素晴らしかったけれど、もう貴方の物じゃなくなるわよ?」
「へ、ヘスティア!」
「僕は君の子供達の頑張りに手心を加えてもいいかとも思う」
「なら!」
「だけどね、アポロン……」
「なんだヘスティア?」
「ボク、今回の件に関して……ううん、ファミリアの運営に関してほぼ全部、クルミ君に渡す契約になっているんだよね~。そう、ボクは雇われ神様なのさ!」
「ぶふっ!? なんやねんそれ!」
「だってボクの仕事ってステイタスを更新するのと、子供達の面倒を見ること。あと、ソーマの味見とかかな?」
「いまなんって!? ソーマの味見やと?」
「うん。毎日一本は出てくる契約だよ!」
「死にさらせぇぇぇぇっ! なんやねんその羨ましい契約は!」
「ボクはお酒にはあんまり興味がないんだけど、ほら、子供達に飲ませるのは問題だろう? 商品としても複数の神様の意見が欲しいらしいし、僕のファミリアだからね?」
「クルミたん! うちに代わって! いくらでも意見を言ったるで!」
「まあ、ヘスティアさんが許せば多少は構いませんが……」
「ふっふっふっ、ろ~き~? ボクに言う事があるだろう?」
「くそがっ!」
ケラケラと笑っている間にこちらを見詰めてくるアポロンさんのところに移動します。
「た、頼む。わかるだろう? 姉がいきなりああなったんだ……」
「わかりませんね」
「なんだと?」
「今のアタランテ……アルテミスさんの何が気に食わないんですか! 獣耳に尻尾! 最高じゃないですか! モフモフでサラサラな髪の毛にスベスベの肌! 処女神の穢れ無き肉体を基にしただけあって最高の肌触りですよ!」
「うんうん」
「最高だよな!」
「全くもってその通り! 反語!」
神々も頷いてくださいます。男神が多いですが、同じくケモナーであろう女神様達も同じです。一緒に女神専用のお風呂に入る事もありますしね。その場合、気を使われたのか洗ってもらったそうです。
「くっ……」
「それにわたくしが頑張った成果を無にしようとしましたね? いったいいくらかかってると思っているんですか? アポロン・ファミリアの総資産なんて軽く超えてますよ? この世にただ一柱しかいない処女神のエインヘリャル。値段なんて兆を軽く超えます。希少価値なんですから」
「ヘスティア、私は希少価値らしいぞ?」
「当たり前だよ! 君はこの世に君一人だけの僕の神友なんだ! 他の代わりなんていないやい!」
「ありがとう」
イチャイチャしているあちらは放置し、アポロン・ファミリアの処遇を決めましょう。
「まず、アポロン・ファミリアの全財産。団員も含めて全て没収してヘスティア・ファミリアの所有とします。アポロンさんの処遇は被害に遭った神々に決めていただきます。天界に強制送還する場合、施行はわたくしが行います。また、団員に関しては無理矢理団員にされた方々へは聞き取り調査を行い、神様達と団員が両方、元に戻る事を希望すれば認めます。ですので、名乗り出てくださいまし」
「はい!」
「俺もだ!」
「私も!」
「わらわは違うが、友の子が奪われてアポロンに送還された。故に友の代わりとして参加したい」
「他の神々が事実であると認めるならば構いません」
アポロンさんの顔が絶望に染まっていきますが、知った事ではありません。さて、鳥籠をしっかりと用意しましょう。今度は安く作れます。何せ必要なのは太陽の力のみ。アポロンさんの精神や心は必要ありません。イフリートをより完成させるために必要です。
「頼む! 私が悪かった! だから送還だけは勘弁してくれ!」
さて、一部は返還しないといけませんがアポロン・ファミリアの戦力が手に入りました。ヘスティア・ファミリア、ソーマ・ファミリア、アポロン・ファミリア、アストレア・ファミリアの四つが融合しました。いえ、アルテミス・ファミリアも含めれば五つですね。規模としてはそれなりにはなりました。遠征もさせられるでしょうが、そちらはそちらでどうにかなります。
「クルミ」
「むぎゅ!?」
後ろから抱きしめられましたので、上をみます。大きな二つの山の間からヘファイストスさんの顔が見えます。
「私の許可も得ずにうちの子達を好き勝手に使ってくれたわね?」
「何を言っていますの。子達達の意思ですわ。神友であるヘスティアさんが悲しめばヘファイストスさんも悲しむと伝え、わたくしの仕事を受けてもらいました。皆さん、大喜びでしたよ?」
「でしょうね。あんな馬鹿みたいに物を深層の素材使い放題で持ち帰り用まであるとなれば私でもやるわ。私が怒っているのは何か、わかるかしら?」
「もしかして、省いたことですの?」
「ええ、そうよ。あんな楽しそうな事を除け者にされて怒らないとでも思ったのかしら?」
「いえ、流石にヘファイストスさんを呼ぶ訳にはいきません。わたくし達がヘスティア・ファミリアに移動すると、ヘファイストスさんがヘスティアさんに力を貸した事になりますから。子供達だけならちゃんとした依頼なので問題はないですが、流石に神様は駄目です」
「わかっているわよ。でも、色々と作ってみたいのよ。特にあの主砲はいいわね」
「でしたら、よかったですわ。これから反省点を生かして改造しますので、もとからヘファイストスさんとゴブニュさんを呼ぶつもりでしたもの」
「つまり、私達に見せる前にある程度は作っておきたかったというわけね?」
「子供達の成長を見るいい機会でしょう?」
「確かにそうね。だって、ゴブニュ。貴方はどうする?」
「決まっておる。参加する。既に色々と図面を引いておるわ。城……いや、城塞都市を作るなど滅多にできん。ましてやそれがダンジョンで運用するなど面白い事この上ない。むしろ、参加させなければ許さん」
「では、改めましてよろしくお願い致します」
「うむ。任せよ」
「私もね」
よし、予定通り二柱の鍛冶神が釣れました。ギルドからも依頼は入るでしょうし、他のファミリアからも間違いなく入ります。特に連射型バリスタなんて小型化すればサポーターの人達だって普通に戦力になります。冒険者の予備武器としても使えます。また、加速術式なら弓や杖に適応する事だって可能です。
「クルミちゃん」
「ヘルメスさん」
ゴブニュさんとヘファイストスさんの二柱と別れて撤収準備をしていると、ヘルメスさんが声をかけてこられました。
「悪いんだけど、魔導具を組み込んだ武器について俺達のファミリアも交ぜて貰えないかな? クルミちゃんも一人じゃ大変だろう?」
「財政難なんですね」
「そうなんだよ。頼むよ」
「まあ、構いませんわよ。ただ一つ。お願いがございますの」
「なんだい?」
ヘルメスさんの服を掴んでしゃがむように指示すると、しっかりとしゃがんで耳を差し出してくださいました。小さな声で告げます。
「イシュタル・ファミリアが手に入れようとしている殺生石。それをわたくしにくださいな。アレは使わせてはなりません」
「殺生石か……確かにイシュタル・ファミリアから依頼されているな。だが、俺は受けた依頼は確実に守る」
「でしたら、この話は無しですわね」
「まあ、待て。これは一般論だが、俺達が受け取る前に奪われたのなら、それは俺達ヘルメス・ファミリアの責任じゃない」
「なるほど、なるほど。ヘルメスさんも悪ですわね」
「いやいや、クルミちゃんほどじゃないさ」
イシュタル・ファミリアが殺生石を狙っているのは知っています。殺生石がどんな物かも知りました。アレは
こんなもの……此花亭に居る子達はもちろん、春姫さんにも使わせません。それに殺生石は……わたくし達が解析して量産すれば悪用が可能です。ですので、なんとしても確保します。わたくし達は人には使いません。ええ、人には使いませんとも。
◇◇◇
「くそっ! 途中からわかり切っていたが負けた! 持っていけ!」
「まいど!」
「こんなにいっぱいのお金……ど、どうしましょう!」
「護衛を呼んであるから大丈夫」
「護衛、ですか?」
「わたくしですわ」
「あ、クルミさん!」
「お前ら、ソーマ・ファミリア……ヘスティア・ファミリアと繋がっていたのか?」
「わたくし達が勝つのでそちらに賭けるように言ってお願いしただけです。問題ありませんわ」
「だな」
「ああ」
各地の酒場などを巡って賭けをしているところからお金を徴収します。そのお金の一部は奢りの代金として還元しておきます。これでヘイトは下げられます。それにわたくし達でないとアポロン・ファミリアが実際に勝っていたと思われるので問題にもなりません。
◇◇◇
「白髪頭が勝ったにゃ!」
「本当にゃ。死んだかと思ったにゃ!」
本当によかった。あのペンダントを持ち出してきて良かったです。届けてくれたアレンさんには感謝しないといけません。
「しかし、リューはあまり活躍しなかったにゃ」
「あくまでも護衛だからにゃ。そもそもリューが出てたら勝負になってないにゃ」
「それもそうにゃ」
「話題のほとんどがアポロン・ファミリアの善戦についてなのがおかしいですよね。勝ったファミリアじゃなくて負けたファミリアなのに」
「無理もないにゃ。連中の勝ちは始まる前から決まっていたにゃ」
「そうにゃ。クルミとリリが動いたらその時点で負けだったにゃ。そもそも主砲とやらをぶっ放す場所を変えたらそれで終わりだしにゃあ」
実際、最初に見たあの一撃ならアポロン・ファミリアの城を壊すことなんて容易いはずです。バリスタの攻撃だってお城に届いていたんですから、いくらでも倒す方法があったのをアポロン・ファミリアにも花を持たせてあげた感じです。
「どちらにしろ、ソーマ・ファミリアがヘスティア・ファミリアに変わっただけで、看板を付け替えて営業を始めるはずにゃ」
「ソーマの美味しいお酒が飲めるなら文句はないにゃ」
「それじゃあ、今日のお仕事を頑張って終わらせましょう。クルミちゃんにお願いして私達も宴に交ぜてもらいましょうよ」
「それはいい考えにゃ!」
「確かにただ酒が飲めるにゃ!」
「アンタ達! 何時までもサボってないで働きな! こっちは大量注文が入っているんだからね!」
「はい」
「「はいにゃ~!」」
◇◇◇
「うん。なんというか……善戦したんじゃないかな?」
「そうだな。キアラの魔法はやはり地上で使うのは危険だな」
「ですね。炎だけでなく氷まで……地上ならあそこまでの火力を発揮するとは思わなかったです」
「レフィーヤも姉弟子として負けていられないな」
「はい! 私もお姉さんとして頑張ります!」
「キアラも凄かったけど、やっぱりアルゴノート君だよ! 身体を燃やされながらも最後まで諦めずに喉元を噛み千切ってからの追撃! すごくかっこよかった!」
「確かにそうね。アレはいい闘志だったわ。ね、アイズ」
「うん。でも、すごく不安。あんな戦い方じゃ……すぐ死んじゃう」
「……成長しおったな」
「確かにそうだね」
「あのアイズがな……」
「むぅ……私だって何時までも子供じゃない。お姉ちゃんだもん」
「そうだね。ところでベートとグレイ。どこに行くのかな?」
「何処だっていいだろう?」
「そうです。何処だっていいのです」
「ダンジョンか?」
「ダンジョンだね?」
「グレイは駄目だぞ」
「そんな……身体がうずうず疼くのです。だから、ダンジョンに行くのです。ベートさんが居れば大丈夫です」
「俺を巻き込むな。というか、裾を掴むんじゃねえ!」
「ん~そうだ。どうせなら私達も行こうよ。見てたらグレイじゃないけれどうずうずしてきたしさ!」
「そうね。それもいいかも。団長もどうですか?」
「僕は……」
「私は残る。ヘスティア・ファミリアにキアラを労いに向かうからな。レフィーヤもアイズも来い」
「なら、わしは残るか」
「わかった。それなら僕がダンジョン組についていこう。グレイは特に心配だからね」
「大丈夫なのです」
「鬼神を使ったら駄目だよ」
「……」
「顔を逸らさない。まったく、変な霊を降ろさないで欲しいよ」
アストレア・レコードの改変について
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改変有り
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