ダン狂~くるみ(偽)とリリのダンジョン探検~ 作:ヴィヴィオ
「どういう事だっ!? どういう事なのだ!」
「そうだ! 勝てるはずではなかったのか!」
私はギルドの長を勤めているロイマン・マルディールだ。その私は現在、オラリオの郊外にある治外法権の場所、
そんな私は目の前に居る長髪の深紅の髪の毛をした女性にここの支配人であるテリー・セルバンティスやその他にも金持ち達が居る。そんな彼等が目の前に居る彼女を睨み付けているが、彼女は気にもしていない。
「私が申し上げたのは此度の
「貴様! こうなる事を知っていただろう!」
目の前の女性が大量の資金を投入して勝利し、貴賓室へとやってきた事が始まりだった。彼女はそこで負けたのだが、その時に近々行われる
「私も最初、アポロン・ファミリアに賭けようとしていたのです。ですが、皆さんがアポロン・ファミリアばかりに賭けられるので、ヘスティア・ファミリアに賭けさせていただいただけです」
「しかし賭ける額が尋常ではなかっただろう!」
「ただの三十億ヴァリスではありませんか。負ければ私の身諸共差し上げる契約でしたので、しっかりと代金を頂きますわ」
「「「ぐっ……」」」
そう、問題はヘスティア・ファミリアが勝った事もそうだが、彼女が賭けた金額だ。三十億ヴァリス。実際に彼女は黄金の山を持ってきて見せた。だからこそ、ここのオーナーであるセルバンティスも受けた。アポロン・ファミリアが勝つのがわかっていたし、話の内容から彼女が私達の後に賭けると言っていた。それで彼女はヘスティア・ファミリアに賭けたのだ。
「全員分を合わせて九十億ヴァリス。しっかりとご用意してくださいね。支払えないというのであれば、このカジノの利権を頂きます」
「ふざけるな……」
「正式な契約書を交わしているのです。拒否されるのでしたら、出るところに出ますが……構いませんか?」
「用意しますが、どうやって持って帰るつもりですかな?」
「もちろん、運び屋を用意してありますので、ご心配なく」
「……わかりました。支払いましょう。少々お待ちください」
私もせっかくため込んだお金が彼女の懐に消えていく。リーゼ・アーベルと名乗った彼女だが、この後、悲惨な目に遭うかもしれない。
少しして彼女が用意した運び屋がセルバンティスが用意したお金を箱に詰め込んで馬車に乗せていく。
「それではまた今度賭けをしましょう」
リーゼ・アーベルが去っていくので、私も自らの馬車に乗ってギルドへと向かっていく。その途中で複数の賊に彼女の馬車ごと襲われてしまったが、何処から飛来した矢が容赦なく身体に風穴を開けて肉片を撒き散らかしていた。
「ど、どうしますか?」
「放っておけ」
護衛の者達にそれだけ告げてしばらく待つと、何事もなかったかのようにリーゼ・アーベルの馬車はオラリオへと進んで中に入っていった。残ったのは矢によってできたクレーターと死体の山だ。
「ガネーシャ・ファミリアに処理させておけ」
「了解しました」
ギルドへと戻り、私はハーフエルフであり、ヘスティア・ファミリアを担当していたエイナ・チュールを呼び出す。
「なんでしょうか、ギルド長」
「これはどういう事だ? 私はこんな報告を受けていないぞ!」
ソーマ・ファミリアがヘスティア・ファミリアに改宗や資産の譲渡に関する報告書を叩きつけてやる。
「ギルド長は
「
「わかりました。では、次は全ての書類をお持ちしますね。早速、ヘスティア・ファミリアに関する書類が六〇〇枚を超えていますので確認をお願い致します」
ドンと机の上に置かれたでたらめな数の書類に頭が痛くなる。
「アポロン・ファミリアからヘスティア・ファミリアに移譲される資産と改宗される冒険者の情報です。これらも
「まっ!」
言う前に彼女が出て行った。私は残された書類を処理するしかない。
◇◇◇
「ただいま戻りました」
部屋に入ってきた深紅の髪の毛をした女性が声をかけてきます。彼女の背後には運び込まれてくる箱が複数あります。その中には金や大量のヴァリスが収められていました。
「あら、お帰りなさい、リーゼ。それでいくら稼げたのですか?」
「九〇億ヴァリス。ちょろいですね」
「偽物の金塊を見て目が眩むなんて可哀想な人達ですね」
「偽物ではありません。本物です。本物とまったく同じなんですから。それよりも良かったのですか? 問答無用で殺してしまって」
「あら、こちらは賊を長距離狙撃しただけです。何の問題もありません」
「それもそうですね。これで資金回収ができました」
「大変結構です。それとその姿はもう解除したらどうですか?」
「そうですね。
深紅の髪の毛をした女性が小さな可愛らしい赤毛の少女へと変わります。そう、彼女はわたくしが所属することになったヘスティア・ファミリアの団員、リリルカ・アーデさんです。
「詐欺をしなくてもよろしかったんですのよ?」
「クルミ様、クルミ様。リリは詐欺をしていません。ちゃんとした賭けをしていただけです。ちょ~と見せ金と話術で誘導しただけです。勝敗はわかりませんでしたしね」
「それもそうですね」
姿を偽った以外は問題ありません。そう、今回の
「これで城の補填ができました」
「お釣りが来ますよ。ほぼ人件費と金属代ぐらいですし」
「深層の素材を除いた代金じゃないですか……」
「それを入れたら赤字ですからね」
立ち上がってから、お金と金を全て影に取り込んで金庫に移動させておきます。それから元ソーマ・ファミリアの本拠地にある地下に移動します。リリさんも後ろについて来られております。
そして、ある部屋に入りました。そこにはある神様が監禁されております。両手を縛られて天井から吊るされ、わたくし達に囲まれながら色々な場所に杭が突き刺されているのです。
「ん! んん~!」
「アポロンさん。貴方の処刑が決まりました。全会一致で天界への強制送還でしたわよ。嫌われておりますね」
彼の身体から杭を通して流れる
その横で机に向かいながらアポロンさんから手に入れた記憶の中から必要な情報を抜き出し、本に書いていくわたくし達が複数います。
「さしずめ
「神様にこのような事、かなり冒涜的ですけどね」
「処刑が決まっているのですから、使える力はいただきますわ。これでわたくし達が作り上げた神造兵器が更なる段階へと進化するのです」
鍛冶の神と
「アルテミスさんの時は彼女を蘇生させるために力を使いましたが、アポロンさんは別です。力さえあれば中身などいりません」
絶望に染まったアポロンさんの顔がとてもいいです。自ら死を願い、
「貴方に眷属を奪われ、強制送還されていった方々の苦しみをその身で受けなさい」
手に入れた術式を下界でも使えるように改造していきます。神威霊装・
「さて、皆さん。残り日数が少ないですが、搾り取れるだけ搾り取りますわよ」
「「「はい!」」」
さて、こちらは別のわたくし達に任せて次の仕事を行います。
翌日。わたくしはアポロン・ファミリアのホームにやってきました。隣にはヘスティアさんもおられます。
「ここが今日からボク達のホームになるんだね!」
「改修しないと使えないですよ」
「そうなのかい?」
「はい。見るに堪えない物が沢山ありますから」
ヘスティアさんと一緒に門を潜ると、複数のアポロン・ファミリアの方々が迎え入れてくれます。もう、ここはわたくし達ヘスティア・ファミリアの物ですから当然です。彼等もヘスティア・ファミリアに編入される人がほとんどです。ただ、こちらも篩にかけないといけませんけれどね。
「ようこそおいでくださいましたヘスティア様」
「いらっしゃいませ」
「うむ。出迎えご苦労!」
ダフネさんとカサンドラさんが中心となって迎え入れてくださいましたので、彼女達に案内してもらいます。
「こちらが食堂です」
「お風呂に……」
わたくしとヘスティアさんは案内されていく度に目が死んでいきます。わかっていた事ではありますが、よく皆さんは平気ですね。
「よしクルミ君! まずはこの邪魔な大量の気持ち悪い像を撤去しようか」
「いいんですか!」
「ダフネちゃん……何時も睨んでるからね……」
「お風呂にすらあるから見られてるみたいで本当に撤去したかったの」
「あ~なるほど。うん、全部撤去だ。必要ない。売れないかな?」
「売れませんが、使い道はありますので庭に運び出すように指示をしてください。それと団長であるヒュアキントスさんはどうしました?」
「それが……」
「ベル・クラネルに負けた事が余程ショックだったのか、部屋に閉じこもっているわ」
「大見栄切って自爆覚悟で特攻したのにあっさり無効化されたから仕方がないね。わかるよ」
「まあ、しばらくは別にいいんですけれど、荒療治が必要ならしますね」
とりあえず全団員に指示を出してアポロンさんの銅像を全て外に出してもらいます。それが終われば全員を集めて庭に整列してもらいました。
「ボクがヘスティアだ。これから君達の主神になる。ならない人も居るけれど、そこは置いといてもらおう。ボクが優先するのは子供達の幸せだ。だから、どうしてもボクのファミリアに居たくないという人については退団して別の所に行くのを認める」
「聞いてないんですが?」
「いたくもない人が居て空気を悪くされるよりもいいだろう?」
「まあ、それはそうですわね。効率も悪くなるでしょうから、退団を認めます。ただし、選別をしてこちらから残ってもらわないといけない方は別です。その辺りが妥協点ですわね」
「わかった。それでいいよ。じゃあ、これから君達には……」
「儀式をしてもらいます。こちらに用意したアポロンさんの石像をご自身の手で粉砕し、砕いてください。これを以てアポロン・ファミリアとの決別とさせていただきます。しない方はステイタスを把握し、犯罪歴がないかを調べてから問題なければ退団を認め、問題ありならガネーシャ・ファミリアに引き渡します。では、始めましょう」
躊躇なく壊した人達と躊躇してから壊した人。壊さなかった人に分かれた。もちろん、非力で壊せない人もいるので、そういう人は意思を見せた方向で判断します。
「見事に分かれたね」
「まあ、仕方がありません」
無理矢理加入させられた人達は躊躇なく石像を壊しました。躊躇した人達も居ましたが、そちらは一応アポロンさんにお世話になったからだそうです。そして、破壊しなかった人達はごく少数でした。その筆頭がヒュアキントスさんです。
「私はヘスティア・ファミリアへの編入を希望もしないし、アポロン様を裏切らん。だが、
「勝負なら何時でも受けて差し上げますが、アポロンさんの送還は決定事項です。ステイタスが失われる事になりますが……」
「ちっ。一年だ。一年だけ、お前達に力を貸す。それ以降は私達も好きにさせてもらう」
「ヘスティアさん、どうですか?」
「構わないよ。一年間、僕の子供として力を貸してくれたらいい。僕が君達の主神として相応しいと思えば残ってくれたらいい。思わなければ別のところに行ってもいい。悲しいけれど、それは子供達自身が決める事だからね」
「……ありがとうございます。ヘスティア様。これより一年。我等は貴女様を主神とし、お仕えさせていただきます」
「うん。よろしく頼む」
ヘスティアさんの言葉にヒュアキントスさんを始め、アポロン・ファミリアの人達が臣下の礼を取りました。ヘスティアさんはやはり懐が広いです。ベルさんが関わらなければですが。
「やれやれです。各自、自分の部屋で良ければアポロンさんの銅像を所持する事を許可します。私物までとやかく言いませんので、好きになさってください。それとアポロン・ファミリアへ無理矢理入れられた方は一週間以内に前の神様と連絡を取り、こちらに連れてきてください。一週間後、アポロンさんを送還しますので、それまでに決めるようにお願いします。他の方は一週間は自由時間とします。問題さえ起こさなければいいので、心を決めておいてください」
「一週間か……」
「続いてのお知らせですが、ダンジョンを探索したくない方は探索しなくても構いません。代わりにヘスティア・ファミリアとして商売の売り子などの仕事をしてもらいます。無理にダンジョンに挑まれて死なれるのは困ります。ですので、戦いに不向きな方はおっしゃってください。別の働き先を用意します。また、逆に強くなりたい方もおっしゃって頂ければわたくし達がやっているブートキャンプを施します」
「後はなにかあるかな?」
「そうですね……ああ、ここのホームは宿泊可能なお店に改築しますので、ヘスティア・ファミリアの本拠地になる元ソーマ・ファミリアのホームへ移動する準備もお願いします」
ダンスホールとかあるんですから、利用しない手はありません。一般の人でも気軽に使える場所にすればいいでしょう。ダンスや礼儀作法の講習とかをセットコースとして販売すれば儲けが出るでしょう。
正直、ホームとして使うのなら広い土地を確保できた郊外の此花亭に隣接している場所が一番都合がいいですからね。お酒を造るにしても、わたくしの兵器を保管するにしても、広さが重要ですから。
アストレア・レコードの改変について
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改変有り
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改変無し