ダン狂~くるみ(偽)とリリのダンジョン探検~ 作:ヴィヴィオ
クルミ様が逃げた連中を追っていったので、どうしようか悩みます。まあ、お礼を言ってさっさとお店に向かうとしましょう。訓練……いえ、修行で身体中が痛いですし。
「あの、助けて頂いてありがとうございました」
「いえ、僕の方こそ助けてもらってありがとうございます」
「そもそも助けは必要なかったようですね」
「みたいですね……凄い力をお持ちで……」
壁には人が埋まったような跡があります。これ、リリがやったんですよね。ちょっと信じられないです。確かにクルミ様から施される修行は厳しいですが、着実に力が付いているのがわかります。たった一週間でこれなのですから、リリが今までどれだけ怠けていたのが理解できて、少し憂鬱になります。
「いえ、リリも自分で驚いています」
靴と腕輪、服。どれもかなり重量がある物になっています。クルミ様が用意した鉄製の重りをそこかしこに縫い付けてあるので、重量は数十キロを軽く超えています。リリが普段持っているバックパックより重いです。
「っと、急いでいるのでそれではこれで失礼しますね」
「アレ、もう一人の子は……」
「既に行かれましたよ」
「そうなんですね。それよりも助かりましたリューさん」
「貴方が怪我をしたらシルが悲しみますから。それに私はほとんど何もしていません。声をかけたくらいですよ」
そんな会話を後ろで聞きながら、移動していきます。ある程度離れたら、シンダー・エラで
到着したら、高い物をいっぱい頼んで先に食べておきます。大きな肉に齧りついてパクパクするのはこの姿ではとっても美味しいです。
「霜降りステーキおかわりです!」
「かしこまりましたにゃ。だけど、お金は大丈夫かにゃ?」
「お金なら……あ、予算は二万ヴァリスで、そのうち一万ヴァリスはお持ち帰り用の料理を小分けにしておいてください。お金は先に渡しておきますので、そちらにメニューはお任せします」
「ありがとうございますにゃ」
先にお金を渡しておけば文句は言われません。お持ち帰り用はクルミ様の影へと入れて皆で食べる物だそうです。皆とは誰かは知りませんけど。
それより、次はパスタを食べましょう。たまにしかこんな豪華な食事はできませんしね。明日からまた修行漬けの毎日ですし。
「はうっ!?」
食べていると、後ろから抱き着かれて耳をモフモフ、カミカミされて身体の力が抜けて変な声が出てきます。とりあえず裏拳を放ちますが、その前に離れられました。後ろを向くと予想通り、クルミ様が悪戯っ子のような表情でおられ、こちらに歩いてきます。店の人達の視線がかなり集まっていてはずかしいです。
「な、にゃにをするんですかっ!」
「何って、先に食べていたお仕置きですわ」
「……注文していなかったら、いなかったで怒るじゃないですか。それに熱い内に食べるのが一番美味しいんです。作ってくれた人の為にもその方がいいのです」
「まあ、わたくし達だけですから別に構わないのですけどね」
「でしょうね。リリの耳を弄びたかっただけですもんね!」
向かいの席に座り、テーブルの上にある料理を食べていくクルミ様。クルミ様は肉ではなく、魚をメインに食べられました。マナーが凄く良くて綺麗に食べていく姿は服装も合わさって完全に何処かのお姫様です。
「すいません。お酒は何がありますか?」
「お酒ですね。エールと……」
「ワインとかはありますか?」
「あります」
「では、料理に合うお酒を。値段は気にしなくていいですわ」
「かしこまりました」
いつの間にか近くに居た先程会ったエルフの人がワインを持ってきてくれました。それをグラスに注いでリリとクルミ様に渡してくれます。一口飲むと確かに美味しいです。美味しいですが……
「駄目ですわね」
「何か不手際がございましたか?」
「いえ、わたくし達の舌がこのお酒に合わなかっただけですわ」
「クルミ様。普段からあんなのを飲んでいたら普通のお酒じゃ満足できないのは当然ですよ。少ししか飲んでいないリリでもそうなんですから」
「それもそうですわね。すいませんが、自前のお酒も使って構いませんか? その方が美味しく頂けるので」
「少しお待ちを。相談してまいります」
「お願いします」
嫌な客ですね。まあ、リリはこのお酒でもいいのでリリが飲みましょう。
「あ、こら。待ちなさい。これは混ぜて使うのです。全部飲んだら駄目ですわよ」
「何にするんですか?」
「カクテルといって、複数のお酒を組み合わせて飲む物があるんです。そうすればここのお酒だって飲めるように……」
「へぇ、私んとこの酒が飲めねえってのかい?」
クルミ様の肩に大きな手が置かれました。クルミ様はギギギという感じで後ろを向くと、そこに身長の高いポニーテールの女性が居ました。
「いえ、飲めなくはないんですが、料理に比べるとお酒がいまいちなのです」
「ここは高級なもんもあるけれど、あくまでも大衆食堂だからね。お嬢ちゃんのようなお貴族様に合うようなお酒は高すぎて置いてないよ」
「ですが、料理のレベルは高いのに勿体ないですわよ?」
「安く仕入れられるんならいいんだけどね……とりあえず、嬢ちゃんの言うお酒を少し飲ませてもらおうか」
「なるほど、勝負ですわね。賭け金は……そこのエルフさんの耳を触らせてくれれば……」
「え、嫌です」
「リューの耳はお高いから駄目だね」
「エルフに何を言っているんですか」
「じゃあ、そこの猫さんで。一緒に試飲していいですよ」
「私ですか?」
「クロエか……いいだろう。アンタもいいよな?」
「私は構いませんよ」
「では、勝負と参りましょうか」
クルミ様はリリが持っていたバッグに手を入れるふりして影の異空間から必勝のボトルを取り出しました。ええ、必勝です。
「あほかぁっ! ソーマなんて持ってくるんじゃないわっ!」
「きひひっ! 純正品の市場にほぼ出回らない物でしてよ! これでわたくしの勝ちは確定ですわね!」
「大人げないですよ、クルミ様」
「まったくだ。数千から下手したら数億ヴァリスの酒なんて出されたら勝ち目ないっての」
「勝負ならばありとあらゆる手段を用いて勝ちますの。まあ、冗談ですが」
ボトルを仕舞いこんで、次のボトルを複数出しました。この一週間でソーマ様と一緒に隙を見て作られていたお酒ですね。製作日数が一週間ですが、ソーマ様とクルミ様が協力して作られたお酒は大衆向けの物です。
「こちら、わたくしが販売する予定のリキュールと言われるお酒です。大衆向けの量産品となりますのでかなりお安くできますわ」
「ちゃんとした物もあるようだね」
「まずは単品で飲んでみましょう」
リリも含めた四人で飲みます。まあ、これは先程のお酒よりも少し美味しい程度ですね。ソーマには比べ物になりません。
「これならそこまでかわらんだろ」
「ですね」
「はい。次はこちらの器具を使いまして……」
クルミ様が器具を取り出して複数のお酒を混ぜたり、果物の汁を絞って混ぜました。それから蓋を閉じて両手でシャカシャカ振っていきます。というか、楽しそうに踊りながら振っていますね。
「それ、要るのかい?」
「いえ、別に上下に振るだけで問題ありませんわ。今のはパフォーマンスですわね」
「なるほどね」
新しいグラスを用意し、そこに器具の中身を入れていきます。色が赤くてとても綺麗です。やっぱり赤が好きなようですね。
「カシスです。もう一品作りますので飲んでみてください」
「ふむ。これは美味しいね。どちらかというと女性向けの物になるか」
「はい。男性向けのもありますが、とりあえずは女性向けを出しました。見た限りでは女性客は少なそうですし」
「男共の方が多いから、これは客寄せになるかも」
「だね。問題は値段だが……」
「一杯三〇〇ヴァリスぐらいですわね」
「これなら冒険者なら飲めるか」
「ええ。それにもっと高級にもできます。例えばこちらの市販されているソーマよりも熟成が弱い、若い物ですが、お値段はボトルで六〇〇万ヴァリス。ですが、一滴からスプーン一杯分を混ぜるだけでかなり味が変わります」
クルミ様が新しく作ったお酒をソーマを入れた物と入れない物を作り、それぞれ飲み比べをさせてくれました。ソーマが入った方はランクアップしていました。もう、存在としての格が上になっているのです。
「一気に美味くなったね。確かに入れるのが少しならその分安くはできるか……」
「ミア母さん。買ってください」
「そうにゃ! クロ達だけずるいにゃ!」
「そうだそうだ! 俺達にも飲ませろ!」
「あ~ソーマ・ファミリアに注文したらいいのかい?」
「わたくし達はソーマ・ファミリアではありますが、これはわたくしが作っているお酒なので、わたくしにお願いします。この権利は誰にも渡しません。わたくしが命を削って作っているんですもの」
普通に聞いたらそれだけ大事な物って聞こえますが、文字通り命を、時間を削って作っているので嘘とも言えないんですよね。
「ああ、ボトルはお高いので樽で買いませんか? そちらの方が安くなります。まあ、劣化も早くなりますが……」
「ボトルと両方かね。気に入った客が買って帰るようにするべきだろう」
「いえ、そこまで生産が追いつかないので、この店だけにしばらくは卸しますわ」
「いいのかい?」
「代わりに大量の注文に応えてくれませんか? ここの料理をわたくし達全員で食べたいと思いますので」
「……事前に注文してくれたら仕入れの量を増やすからいいよ。予約なしは無理だけどね」
「では、それでいきましょう。器具に関しては発注をあげないといけませんが、とりあえずはこちらでお試しくださいませ。味は振り方などによっても変わるらしいので、研鑽が必要です」
「リュー、アンタがやんな」
「わかりました」
エルフさんが色々とやっていきますが、早すぎて分離までしたものまでありました。クルミ様がしっかりと教えていってます。所々でエルフ耳を狙って動いていますが、キッチリガードされていますね。
「ところで、アンタ……いいのかい?」
「はい?」
「ほとんど連れの嬢ちゃんに食べられてるけど……」
「え? あーっ! リリさん! ずるいですわよっ!」
「クルミ様。食事は弱肉強食なのです。早い者勝ちです。ちなみにコレ、クルミ様に教えられましたからね。何度リリのおかずを取られたか……」
「くっ……アレも修行の一つですが……いいですわ。追加注文するだけですし」
「じゃあ、これとこれを……」
「アレ、なんでリリさんが注文を……」
「文字読めませんよね?」
「くっ……」
ちなみに私が注文したのは激辛料理です。それをミアさんに監視されながらヒーヒー言いながら必死に涙目で食べるクルミ様は可愛らしかったです。これで少しは復讐できました。もちろん、監視して影に収納させるような事はさせません。
「リリさんのバーカ、バーカですわっ!」
「馬鹿じゃないです。クルミ様が文字を読めないのが悪いんですよ。一つ賢くなりましたね?」
「このっ! 覚えているがいいですわ! この恨み、何れ晴らしてくれます!」
「それはリリの台詞です! 無茶苦茶な修行をされている恨みは忘れていませんからね!」
「隙ありですわ!」
「甘いです」
リリの口に目掛けて投げられた激辛肉団子をフォークで弾きます。クルミ様も打ち返そうとして別の手が肉団子を掴んで食べました。そして、すぐに私達の口に更に激辛なヤバイ鶏肉が放り込まれ、私達はそろって口を押え込んで悶えます。
「アンタ達、食べ物を粗末にするんじゃないよ! 遊ぶなんてもってのほかだ! いいね!」
「「(こくこく)」」
二人で一生懸命に頷いてとっても怖くなったミアさんから許してもらい、二人で和解して全部平らげました。その後はクルミ様に
お酒の売り込みをしつつミア母さんにお叱りを受けるというだけのお話です。
続く? 続かない?
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続く
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続かない
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そんなことより狂三が可愛いから書け
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リリを曇らせて虐めたい
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狂三だらけの狂三ハーレム