ダン狂~くるみ(偽)とリリのダンジョン探検~ 作:ヴィヴィオ
「クルミ君! しっかりするんだクルミ君! お願いだ! 目を開けてくれっ!!」
わたくしを呼ぶ声が聞こえ、頬に伝わる冷たい水に目を開けます。すると視界一杯に広がるヘスティアさんの顔が映り込みました。
「あぁっ、良かった! 良かったぁぁぁっ!」
泣きはらした赤くなった瞳で見つめるヘスティアさんはわたくしの頭に両手を回し、その巨大な胸に顔を押し込めてきやがりました。
「はな、放してくださいまし」
「うわぁぁぁぁんっ!」
「離しなさいっ!」
「うひゃぁっ!?」
バァン! と銃弾を放った音が響きます。ええ、わたくしが撃ちました。流石にヘスティアさんも下がってくださいました。
「危ないなっ、もう!」
「窒息死させられそうになったのですから、仕方がありませんわ」
「それよりも、病室で銃を撃たないでください!」
「……ごめんなさい」
よくよく周りを見ましたら、どうやらわたくしは病室に居るようですわね。ここはディアンケヒト・ファミリアのようで、聖女のアミッドさんが怒っておられます。病室で銃を撃つのはわたくしが悪いので、謝っておきますの。
「うぅ、ひどいよクルミ君……」
「それよりも、何故わたくしはここにいますの?」
「クルミ君がバベルの塔の最上階で倒れていたんだ」
「バベルの塔……? そう、ですか……それよりもリリは何処に……」
急に頭が痛くなり、頭を押さえながら聞きます。するとヘスティアさんとアミッドさんの二人は互いを見つめ合った後、頷いた。
「いいかい、よく聞くんだ」
「はい」
「リリ君は死んだ」
「え? は? リリが、死んだ……? そんなはず、ありえませんの……あっていいはずが……」
「ベル君も死んだ。ヴェルフ君もだ。ロキ・ファミリアも消し飛んだ」
「な、何を言って……」
「そんな嘘ですわ。わたくしを騙そうとしたって……」
「事実だ」
「嘘ですわ!」
「クルミ君!」
ヘスティアさんの言葉に思わず外に出て、変わりないオラリオの街並みと人を視界に収めます。
「やっぱり、嘘……」
「よく見るんだ」
「っ!?」
見えていた何時も通りの街並みは陽炎のように消え失せ、複数の倒壊した建物に変わりました。住民は包帯を巻いてほとんどが死に掛けの人達ばかり。
街中から響いてくるの街の喧騒ではなく、ボウケンシャー達の怒声と
「これが今のオラリオだ。あの日、ボク達は敗北しかけた。それをアタランテが吹き飛ばしてくれた。精霊と神の力がぶつかり、街の建物は倒壊し、その代償として巨大な穴が開いた。残っていたフレイヤ・ファミリアの子供達が押さえてくれているが、長くは持たないだろう。それほどに
「あっ、ぁぁぁっ! あああああああああああああああああああぁああああああああああああああああぁぁぁッ!!!! 」
頭を押さえ、叫びながら蹲る。わたくしは全てを思い出した。リリさんが反転して死にました。アイズさんも死にました。パパも死にました。ママに捨てられました。
「ヘスティア様」
「わかっている。【この身は炉の神にして家庭を守護する処女神。死への魅了に平伏せず、其を断固として拒む。邪とは絶望、正とは希望。今、我が子達にかけられた呪縛を祓おう。すなわち破邪、浄化の祭炎】『偽現・炉神の聖火殿(ディオスアエデス・ウェスタ)』」
「っ!? ヘスティアさん……?」
「落ち着いたね?」
強制的に落ち着かされました。ヘスティアさんを見ると、どう見ても神気が、権能が解放されています。彼女の権能がわたくしが持つ絶望を消し飛ばし、安心感を抱かせてくれます。
「何を、何をやっていますの! そんな事をしたら……!」
ヘスティアさんの身体は光っていて、身体の端から消えていっている。
「何って子供達の為にボクの加護、神の力を、街に使うべき物を全て君一人に与えた」
「な、なんで……」
「ベル君が死んだ。ボクの可愛い子供達も死んだ。残っているのはクルミ君だけだ。そのクルミ君を助けるためなら、強制送還ぐらいなんてことはないさ」
「わたくしは……」
「クルミ君はリリ君を失ってどうしていいのかわからなくなっているだけだ。助ける方法を持っていても、それもできない。何故なら代償となる力が足りないから。かと言って、君はボク達オラリオの人達を大切に思っているから無理に殺して時間を奪うこともできない」
「それは……いえ、わたくしはできますわ」
「ああ、そうだね。できるかもしれない。でも、ボクはやらせたくない! 」
「ヘスティアさん……」
「だから、ボクはボク自身の力を全て託すよ。クルミ君は皆を助ける為に過去へと行くだろう。多少は立ち止まったとしても君は行く。ボクには確信している。何故って? ボクは君の神様だからさ!」
「なんですか、それ……」
消える身体でわたくしを抱きしめてくださり、頭を撫でてきます。まるでお母さんみたいです。
「でも、わたくしはママにも見限られました……」
「本当に?」
「え?」
「本当に彼女は見限ったのかな?」
「でも、ママはわたくしに……」
わたくしはママに言われてやられた事をそっくりそのまま告げます。
「あははは、君は勘違いしているよ」
「え?」
「彼女が素直に伝えるはずないじゃないか。聞いた限りでは不器用なツンデレっ子なんだよ?」
「いや、いくらなんでも……」
「ボクから見た彼女は本当に君達の事を愛していたよ。子供としてね。家庭を司るボクが保証する」
「でも……」
「その証拠にほら」
「……あ……」
ヘスティアさんが渡してくださったのは壊れた懐中時計と……二発の銃弾。その内の一発は弾丸が無く、使用済みの物です。ですが、残されたもう一つの弾丸にはたっぷりといえるほど潤沢な霊力が込められた弾頭が残っている物でした。
「それに彼女はどう言ったか思い出してごらん」
「たしか……」
懐中時計を壊された時の事を思い出します。そうするとママの言葉が一字一句たがわず思い出されました。
「惰弱なわたくしなど必要ありません。必要のない物は処分します……」
「惰弱なクルミ君は要らない。逆に言えば惰弱じゃない何時ものクルミ君は認めていたってことだよ。残されたクルミ君だけが使える弾丸とこの言葉から考えられるに……彼女にとっての励ましってことじゃないかな?」
「わかるかぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
思わず喉が痛くなるほど絶叫をあげました。ええ、なんですかそれ。いくらなんでもひどすぎます。荒療治にほどがありますの。そして、なんでわたくしはそれに気付かなかったのでしょうか? 相手は時崎狂三だというのならばあんな感じでもおかしくないではないですの。ファンとして猛省ですわ。
「うんうん、そうだよね。でも、言いたい事があるなら本人に言うといいよ。これで追えるだろう?」
「ええ、ありがとうございます。こんなところで立ち止まる事はできません。ヘスティアさんに頂いたこの聖火がある限り、止まりませんわ」
「それでいい。ボクは子供達の道標になれて幸せだ」
「わたくしも、ヘスティアさんの子供になれて幸せですわ。ですから、ベルさん達の事は任せてください。必ず助けます」
「そうか。それならついでにロキ達も助けてやってくれ。ロキの子供達に悪い子はいないからね」
「はい……はい……」
「っと、もう無理みたいだ。じゃあ、後は頼んだよ」
「お任せくださいませ、ヘスティア
「じゃあ、ばい……いや、またね!」
「はい、因果の交差路でまた……」
夕日が照らす中、笑顔で消えていったヘスティア様。わたくしの中に灯る聖火が消えるまでは問題なく行動できるでしょう。ならばやることは一つですわ。
「ん!」
腕で涙を……目の汗をゴシゴシと拭ってから、ママが残した弾丸を仕舞いこみます。
「使わないのですか?」
「ええ、使いません。これはママに叩き返してやりますわ。娘はそんなに弱くないと知らしめてやりませんといけません。これ以上の施しを受けるなんてごめんですもの」
「では、どうするのですか?」
「決まっています。奪って問題ないところから奪いますわ。来なさい、アタランテ」
「覚悟は決まったようね」
「ええ、決まりましたわ。
「
アタランテを引き連れて新しくできた大穴に移動します。移動しながら
歩いていくと、大穴の下に神々が集っていました。まるでわたくし達を送り出すかのように無数の神々が左右に分かれて道を作ってくださっています。
「止めるべきなのであろうが……」
「止めるのであればわたくしの敵ですわね。だったら殺しますわ」
「ウラノス、ヘスティアがあそこまでの覚悟を示したんだ。それに俺達にとってもいい事だろう。それに一人立ちしようとしている子供は黙って見送るもんだ」
「好きにしろ」
「と、いうわけで行きたい奴等だけ行かせてやってくれ」
「ヘルメスさん達の勝手にしてくださいまし。わたくしは止まりません」
「だったら、勝手にするわ」
穴の縁に立つと、わくしの背後にオッタルさんやアレンさん、ガリバー兄弟が立ちました。更にアスフィさんやリューさんまでいらっしゃいます。本当に物好きですね。
「いいんですの? 死にますわよ?」
「構わん。このままではオラリオが崩壊する。それはフレイヤ様の望むところではない」
「そういうことだ」
「そもそも死ぬ気じゃねえよ」
「そうだそうだ」
「私は非常に行きたくありませんが、いくしかありません。リヴェリア様を助けるためですから、頑張りますよ」
「リューさん」
「キアラは別のエルフに任せて閉じ込めてきました。問題ありません。この命はアストレア様とクルミの為に使わせていただきます」
「そうですのね。本当に馬鹿ばっかりですの。じゃあ、殴り込みましょうか」
「「「「ああ(おう)!」」」」
穴に飛び降り、出てこようとするワイバーン達を虐殺し、皆さんを
「アタランテ」
「ああ」
アタランテにチャージさせた後、わたくしもチャージして地面に向けてオリオンの矢を放ち、ダンジョンの地面を数十階層、纏めてぶち抜きます。そこに全員で降りますの。
到着した階層で突撃してくる
蹴散らされた連中は全て
「次」
撃って貫き、虐殺してを繰り返してどんどん下へ行きます。他の方々が手足を失おうが、
「居たぞ」
「ではやりましょう」
黒いドラゴンとそのそばにいる白いわたくし。楽しい楽しい全力の殺し合いですわ。他の方々には黒いドラゴンさんの相手をして頂き、わたくしは白いわたくしが相手ですわ。
「このような暴挙、狂ったか」
「クルミちゃんですから!」
時間と空間の戦いは決着がつきません。いえ、むしろ無駄な事はしません。適当に相手して遅延戦闘に努め、バフとデバフ、回復をまきながらアタランテ達がドラゴンを殺すまで待ちます。
「■■■■■■■■■■■■■■■■ッ!!!!」
決着がついた瞬間、ドラゴンさんを皆さんごと
「そでは皆様、いつかまた因果の交差路で会いましょう」
「「「また」」」
オッタルさんはアタランテと軽く武器を打ち合わせた後、再戦を約束なさいました。わたくしはアスフィさんと魔導具を作る約束を交わしました。アレンさん達とは再戦ですわね。
「
「あら、来ましたのね?」
声が聞こえて目を開くと、そこにはママが壊れる前の外壁の上に立ちながら、こちらを見詰めていました。ママはそこから飛び降りてこちらにやってきたので、わたくしは心の中に灯る聖火を意識しながら強い意志を込めて見返します。
「ふむ……ちょっとはマシになったようですわね」
「ん」
「はい?」
「返しますわ」
「使いませんでしたの?」
ママが
「自分で集めてきましたわ」
「まさか……」
「キッチリ
「あらあら、それは災難でしたわね。
ママは優しく頭を撫でてくれます。どうやら、ヘスティア様が言っていた事は本当のようです。
「それで、貴女はこれからどうしますの?」
「決まっています。リリもアイズさんも皆も助けてハッピーエンドを目指しますわ」
「幾千幾億の苦労に襲われるいばらの道ですわよ」
「それでも、走りきりますわ。それが
「よろしい。それでは行きましょう。わたくし達の
「はい。
聖火をこの胸に込め、わたくし達は成し遂げる。それが家庭を守護するヘスティア・ファミリアですわ。
可哀想なダンジョンさん。特に必要ないのにクルミちゃんの意地のためだけにぶち壊されて襲われました。
サポーターのクルミちゃんが本気出して、レベル10の神気解放アタランテとオッタル達がいればね。
ヘスティアのは絶望など負の感情を打ち消し、強制的に正常な状態へと戻します。負の感情に魅了されていたクルミちゃんを打ち消します。聖火がともり続ける限り。効果はBST無効、強制的に勇気状態。もう何も怖くない。
|太陽の魔導書《ブック・オブ・ヘリオス》は誰の手に?
-
ヘスティア・ファミリア
-
ロキ・ファミリア
-
フレイヤ・ファミリア
-
豊穣の女主人
-
その他(タケ、此花亭)