ダン狂~くるみ(偽)とリリのダンジョン探検~ 作:ヴィヴィオ
オリジナルが22日にベルと会っていますが、セイバーちゃんはその時にはダンジョンに潜っていますからね。
前の話は追加があるので、今日読んでない人は繋がってないと思います。
ロキ・ファミリアと共にダンジョンに潜る事になりましたので、ソーマ様にステイタスを更新してもらう為に戻ってまいりました。庭からリリさんの悲鳴が聞こえていますが、気にしません。
「ソーマ様、くるみです。失礼しますわね」
ノックしてから返事を待たずに部屋に入ると、ソーマ様は相変わらず酒造りに没頭しています。現在は様々なリキュールを作り出しているようですわね。
「ソーマ様」
「くるみか」
「ステイタスの更新をお願いしますわ。これからダンジョンに潜って参ります。リヴィラまでは行くそうですので、そこで何かお酒に出来そうな物を確保してまいります」
「わかった」
| 【名前】くるみ・ときさき
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|---|
【レベル】1
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【基礎アビリティ】 力 I 036→H 124 耐久 D 535→C 606 器用 H 246→E 408 敏捷 G 120→G 241 魔力 D 503→C 697
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【魔法】
「 【 【 【 【 【 【 【 強力な分消費する時間は多め。 【 【 【 【 【 魔力と寿命を消費して発動する。発動には基礎コストとして十日を消費する。また、発動する魔法の数字が上がるにつれて十日ずつ関数で消費が増加する。
「神威霊装・ 歩兵銃と短銃の二丁拳銃を物質化する。攻撃に使う銃弾は物質化した影で出来ている。
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【スキル】
「時喰みの城(150)」 周囲に影を張り巡らせ、自らの影に異空間を作成する。影に触れている存在の時間を吸い上げる。異空間の中に沈んで移動や潜伏ができる他、特定の人物を引きずり込んでの捕食や保護も可能も可能。作成には寿命を一年消費する。寿命を一年消費するごとに異空間の広さを拡張できる。一メートル四方、一年ずつ増やせる。 |
スキルや魔法の追加はありませんでしたが、それでも順調に成長しております。問題はこれが
「ありがとうございます。それでは行ってまいりますわ」
「ああ」
こちらも見ずにすぐに作業に戻られたソーマ様を置いて、影を使って外に移動します。ついでにルーラーから短銃と
さて、他にも欲しい物があるので色々と買ってから鋼鉄の金庫に保管して影に沈めておきます。
準備が整ったので待ち合わせ場所に向かうと、既に皆さんがお待ちでした。わたくしが一番最後のようでした。
「お待たせいたしました」
「本当にその格好でいくんだね~」
「ええ、これがわたくし達の正装ですもの」
「可愛いから大丈夫」
ティオナさんと話していると、アイズさんもこちらにやってきてわたくしの頭を撫でてきます。何故か、彼女の近くに居ると落ち着くのです。身体の奥底でわたくしの何かが共鳴しているような……もしや、彼女はわたくしの一人!? いえ、それはありえませんわね。
「よしよし、いい子」
「ふにゃ……って、流石に顎とか首は撫でないでくれませんかっ! ペット扱いとかぶち殺しますわよっ!」
「ごめんなさい」
「まったく……」
「二人共、遊んでないで行くよ」
「うん、行こう」
「ええ」
差し出された手を握ってダンジョンに入っていきます。ダンジョンの中に入ればすぐに下の階層を目指すために皆さんが走ります。私は流石に第一級冒険者である彼等にはついていけませんので、アイズさん肩車してもらいながら進みます。
六階層までジェットコースターみたいな速度で駆け抜けたので、すこしフラフラしますが問題ありません。そんなわたくしはある
「ウォーシャドウよ。コレを相手に戦ってみて。危なくなったから助けるから。いいですよね、団長」
「ああ、構わないよ。くるみもいいかな?」
「ええ、構いません」
少し動いてから、影から剣を取り出して構えます。ウォーシャドウは地面に降り立つと、すぐにわたくしの方へと駆け抜けてきます。相手の身長はわたくしよりも大きいので、懐に入り込むように駆け抜けて、刃となっている相手の腕を剣で弾き空いている手で魔石がある位置に手を突き入れて引き抜いてやります。
「えっ、えぇ……」
「剣使うんじゃないんだ……」
「この程度なら余裕ですもの」
魔石を袋に入れてから自分の影に落としてから皆の方に向こうとして、即座にその場で回転して一閃します。剣を振るった先にはダンジョンリザードが居ました。そいつの腹を微かに斬りました。即座にバックステップで下がる事で、血と相手の身体が先程までいた場所に落ちて来たダンジョンリザードを避け、影にした部分からそのまま底なし沼のように時喰みの城へとご招待してさしあげます。
「ナニソレ」
「収納スキルか魔法じゃないの?」
「知っておりますか? 生物って高所から落ちたら死にますのよ?」
「「っ!?」」
質問してきたティオナさんとアイズさんに教えてあげてから、松明の光で壁に出来ている影に手を入れて魔石を取り出します。
「なるほど。君にとってそれは収納というだけでなく、攻防一体のスキルでもあるというわけだね」
「ええ、ご慧眼ですわ。これのお蔭でミノタウロスの相手をできましたもの。もっとも、ミノタウロスはこじ開けて出てきましたが……」
「団長。どうですか?」
「使えるね。お金を出して雇っても問題ないレベルだ」
「わかりました。くるみ。ここからは貴女が先行して
「了解ですわ」
「私達はいっぱい来たら処理かな~?」
「ええ、お願いします。アイズさんもくれぐれも手を出さないように」
「うん……残念……」
話は決まったので、アキさんと一緒にツートップで駆け抜けます。現れた
そうして六階層から七階層に移動し、そのままわたくしが先頭で七階層を目指します。七階層ではニードルラビットやパープル・モスが出てきますが、どちらも身体全体で振るう剣で殺せる事がわかっておりますし、アサシンからのフィードバックで嫌というほど戦い慣れているので弱点をついて瞬殺します。
そのまま七階層を突破して八階層、九階層と進んでいきます。九階層はもう通いなれた庭みたいなものです。アサシンのわたくしが常にここに常駐しておりますもの。
「待て。そこに居るのは誰だ!」
フィンさんの言葉でわたくし達は止まり、曲がり角の先を注視します。そこでわたくしは気付きました。ですので、すぐに走ってそちらに向かいます。他の人も追ってきますが、その前に通路に入った瞬間に剣を振ります。相手はしゃがんでそのまま見えなくなりました。
「危ないよ」
「いえ、問題ありませんわ。それに誰も居ませんでした。もしくは逃げたのかもしれませんわね」
「誰かが居たのが確実だが……まあ、逃げたのならいいだろう。他の冒険者かもしれないしね。ただ、くるみ。飛び出すのは止めてくれ。今回は僕達が一緒なんだ。危険がある場合は僕達の中から派遣する。君はあくまでもソーマ・ファミリアから預かっているお客さんなんだからね」
「ええ、そうでしたわ。ごめんなさいまし」
剣を腰にある鞘に戻し、隊列の真ん中に戻りますわ。ここからはわたくしにとって未知の領域ですものね。一人かリリさんと共にあればわたくしが先頭に立ちますが、今は先達が居るのですから、彼等に任せるのが道理でしてよ。そうでしょう、
『ええ、その通りですわ、わたくし。この階層に飽きてきていましたの。ですから、もっと下へ行きたいのです。連れて行ってくださいまし』
『まったく、いきなり現れてビックリ致しましたわ。もう少しでバレるところでしたわよ?』
『こちらこそ、いきなりわたくし達が現れて驚きましたわ。とりあえず、ルーラーには伝えずにこのまま行きましょう。記憶を読みましたが、リヴィラはわたくしも興味もあります。あの街なら何人か消えても問題にならないかもしれませんしね』
『確かにその通りですわね。まずは調べる事が重要ですしね。許可しますが、後で怒られてもしりませんよ、わたくし』
『あちらもわたくしなんですし、連帯責任ですわ。そもそもわたくしの責を糾弾するのもわたくしですもの。意味をなしませんわ』
『やれやれですわね』
影の中に居るわたくしと話している間に新しい階層に踏み入りました。そこは荒野のような場所でした。木々が所々に存在し、寂れた物哀しい雰囲気を醸し出す場所。そんな場所に霧が薄っすらとかかっております。
「ここから十一階層だ。インファントドラゴンも出るから発見したら教えてくれ」
「狩るんですか?」
「彼女に実演しながら危ない所を教える」
「なるほど。わかりました。アイズ、オークを一匹残して潰してください」
「了解」
しばらく歩くと分厚い筋肉の鎧でできた二メートルから三メートルくらいはある巨体の存在が棍棒を持ってやってきました。
「くるみ。一匹を任せます」
「わかりましたわ」
駆け抜けながら剣を引き抜き、まずは足を狙います。相手が手に持つ棍棒を叩き付けてくるのを横に飛んで、避けます。即座に走り出そうとしたら、相手が棍棒を横薙ぎで振るってきました。それを剣を水平にして片手を剣の腹に添えて盾にしながら自ら飛んで吹き飛ばされながら空中で回転して足から着地します。着地してから確かめますが、両手が少し痺れていますね。幸い、受け身はアイズさんに何度も飛ばされているので平気です。
『使います?』
『いえ、ここではまだ温存ですわね』
『わたくし、どうせなら
『確かHUNTER×HUNTERに出て来た暗歩の応用技でしたか。歩行速度に緩急をつけることで、敵に残像を見せるとかでしたがこんなのいきなり出来る訳ないですわ! むしろ、貴女が習得すべき技術でしてよ、アサシン』
『試してみたけど無理でしたわ』
『鍛錬が足りませんの』
『こっちは実戦で試しているので、なかなかできませんの』
『交代要員が要りますわね。今度、進言しておきましょう』
オークがこちらを見失った瞬間、相手の振り向く速度に合わせながら常に死角にいながら近付いて背後から首へ刺突を叩き込みます。
「はっ?」
パキンッという音と共に剣が折れました。余りの事に驚いて隙が出来たわたくしを相手は見逃すはずもなく、棍棒を振るってわたくしの頭を弾き飛ばそうとして一刀両断されました。オークの血飛沫を浴びながら、目をぱちくりしていると、オークが消滅してその先に剣を振るった状態のアイズさんが居ました。
「大丈夫?」
「ええ、大丈夫です。助かりましたわ」
「ううん。ごめんね、武器が折れたの……たぶん私のせい」
「アイズさんのせいじゃありません!」
「毎日アイズと打ち合っていたし、折れるのも仕方ないわよ」
アイズさんにエルフのレフィーヤさんが慰めている間にやってきたアナキティさんがわたくしの顔を拭いてくれますが、焼け石に水ですわね。
「少々お待ちくださいませ」
「え?」
影の中に沈んで身体を拭きながら、アサシンとバトンタッチします。アサシンにはゾルアスを持たせていきますので、戦いも問題ありません。わたくしは着替えて休憩しておきましょう。
◇◇◇
「お待たせいたしましたわ」
「あ、綺麗になってる」
「大丈夫なんですか? 影に沈んでいきましたけれど……」
「予備の服に着替えて武器を取ってきただけなので問題ありませんわ」
「あ、それ私の!」
「正解ですわ。こないだ貰ったゾルアスです」
セイバーの彼女が使うより、アサシンのわたくしが使う方が効率がいいですもの。交代できるのであれば交代するのが当然ですわ。
「つまり、これからはゾルアスを使うんだ~」
「ええ、そうなります。もちろん、別の装備もありますが……シッ!」
湧いてきたオークにアームカバーに取り付けてある針を飛ばし、瞳を貫通させてやります。そこから走って暴れるオークに背後から肩の上に飛び乗り、首筋にゾルアスを一閃して首を斬り裂いて殺してやりますわ。そして、返り血を浴びないように後ろへと飛び降ります。
「うわ、暗殺者みたいな戦い方だね~」
「こちらの方が効率よく殺せますからね。それに武器によって戦い方を変えるのは当然でしてよ」
「確かにね~」
「うん……細い剣と普通の剣じゃ壊れる時間が違う」
「それ、別の奴ですよ、アイズさん……」
「話はそこまでにしておけ。早くリヴィラに向かうぞ」
「そうだね。ここからはアイズとティオナが先頭で行ってくれ」
「了解!」
「任せて」
「では、わたくしは荷物持ちに努めましょう」
「頼む。では行くぞ!」
フィンさんの指揮で彼女達が殲滅していく
一瞬で十八階層まで到着しました。出て来た
十八階層は水晶と大自然に満たされた地下世界でした。一瞬、アガルタかと思ってしまいましたわ。面積はオラリオの半分くらいのようで、天井が全て結晶で出来ておりました。時間に合わせて結晶の光がなくなり夜になるそうです。とても幻想的でロマンチックな光景に思わずクルクルと回りながら空を見詰めます。
「危ないわよ」
「ああ、気をつけるんだ」
「ええ、わかりましたわ」
ティオネさんとハイエルフのリヴェリアさんから注意されたので、大人しくついていきます。それでもちょっとワクワクしてアッチにフラフラ、コッチにフラフラしてしまいます。そのせいか、アイズさんとレフィーヤさんに手を繋がれてしましました。
湖畔にある島の東部に木で作られた町に連れていかれました。ここで本来はドロップアイテムを売る予定でしたが、わたくしが居るのでその必要はありません。野営道具も持ってきているので泊る必要はありませんが、どうせなので案内していただくようにお願いしました。
「ここがリヴィラですか……」
「ボッタクリだから、くるみちゃんには必要ないかもね~」
「物資を大量に持ち込めるならそうよね……」
「本当に便利なスキルだよ」
「ええ、このスキルはとても使えますわ。それとお願いがありますの。物を売れる場所に連れていってくださいますか?」
「どうしたんだい?」
「地上で大量に物資を買い占めてもってきていますの」
「……流石はソーマを売り込んできただけはあるね。わかったよ。ここの顔役に案内する」
「……」
「リヴェリア、どうしたの?」
「妙だ。街の雰囲気が少々おかしい」
「そういえば人が少ないような……」
「わたくしははじめてなのでよくわかりませんが……」
話していると、少し先の扉が開きました。看板を見る限りではおそらくお店なのでしょう。そこから眼帯をした中二チックなオジサンが愚痴りながら出てきましたわ。
「たっく、たまったもんじゃねえぜ」
「ボールス!」
「あぁ? ロキ・ファミリアか……なんだってこんな時に……」
「何かあったのかい、ボールス?」
「殺しだよ。ビリーの宿でな」
「それなら僕達も行こう」
「関わってくれなんぞ一言も言ってねえぞ」
「今回はこの街で厄介になるしね。それに商談を持ってきた」
「ロキ・ファミリアが商談だぁ?」
「今は殺しの方を優先するべきだろう。商談は何時でもできる」
「ちっ、そうだな。わかった。こっちだ」
案内された部屋には下着だけの男性が地面に寝転がっておりました。彼の頭には白い布が被せられ、その周りには血の塊があります。フィンが男の身体を確認しながら、犯人の目星についてフィンさんがボールスさんに聞いていきます。その間にわたくしは移動して布を剥ぎ取ります。
「ひっ!?」
「おい、この嬢ちゃんは……」
「くるみ?」
「おやおや、顔の皮が剥ぎ取られておりますわね。なるほどなるほど……」
「おい、お前はコイツが誰か知ってるのか?」
「いいえ、まったく存じませんわ。何処の何方でしょう? ですが、顔の傷を治す事はできますわ」
「本当か!?」
「ええ、本当です。ですが、お高いですわよ?」
「金を取るのかよ……」
「代償がそれなりに高いので、代金はキッチリと頂きませんと……そうですわね、この人の死体を頂きたいですわ」
「死体だと?」
「ええ、地上に持ち帰ってファミリアの方々に引き渡します。そうすればコネクションができますから、報酬になりますわ。どうなさいますか?」
ちなみに死体を回収して恩を売るだけでなく、別の目的もあります。ここまでこれるならレベルは3から4はありそうですし。まあ、2でも問題ありません。
「ボールス、彼女の言う事は本当だ。実際に彼女は傷を瞬時に癒す魔法を持っている」
「お前がそう言うんならそうだろう。それに俺達に損はないしな。いいぜ、やってくれ」
「畏まりましたわ」
影から短銃を取り出して、
「
「おいっ!」
声に出して言いますが、実際には何もおきません。普通に撃つだけですわ。撃たれた男の顔は巻き戻るように綺麗になりました。身体は生きている状態と変わりませんが、死んでいます。魂まで戻せないので仕方がありません。しかし、
「見覚えはありますか?」
「確かガネーシャ・ファミリアだったはずだ。名前はわからないが……」
「それならやっぱコイツを使うしかないか」
「ステイタスシーフか。死者を冒涜するつもりか?」
「そんな事言ってる暇はねえだろ」
「ガネーシャ・ファミリアの人を探してくるとか?」
「そんな時間はねえ。ハイエルフさんよ、コイツが読めるだろ?」
「……ガネーシャ・ファミリア。名前はハシャーナ・ドルリア。レベル4だ」
「んな馬鹿な! レベル4が何もできずに一方的に殺されたってか!」
彼等が話している間に周りを調べて、彼の身体もしっかりと調べて情報を集めます。わかった事は店主のビリーさんが言う通り、二人で泊って事に及ぼうとしたところで女性に殺されたという事。殺害方法は絞殺。両手で首を絞めて殺していますわね。時間を戻した時に首元に手の跡がくっきりと残っていたので間違いはありません。
『問題はどうして殺したか、何故頭皮を剥いだか、その二つですわね』
『ええ、どう考えても殺して顔を剥ぐ理由はありませんものね』
「さて、とりあえずこの死体はもう回収させていただきますわ」
指を鳴らして彼の死体と荒らされている荷物を含めて影に仕舞いこみます。
「それでは町に居る全員を集めましょう。それからこの顔をしているのが犯人か、持っているのが犯人ですわ」
「え? 何を言っているんですか!」
「ああ、そうか。顔を剥ぐ理由として考えられるのは変装だな。確かにそういう魔法があってもおかしくない」
「それもあるし、荒らした荷物からして物取りなのは確実だ。ただ、暴れた理由を考えるとその品物がまだ見つかっていないのだろうね」
「つーことは町に居るってか。よし、持ち物検査と顔を調べればいいんだな。すぐにやるぞ! ビリー全員を集めろ!」
「ああ!」
さて、これで犯人さんがどう動くか高みの見物ですわね。わたくしは美味しい所を取るために動くとしましょう。そうでしょう、わたくし。
しばらくして全員が集められ、女は脱げと言われました。そこから逃げる女の人が居たので、そちらに移動するとレフィーヤさんも気付いたようで、アイズさんと一緒に追いかけていきました。もちろん、わたくしも分かれて行動します。一人はこちらに残し、もう一人が追います。
それから二人が追いついて話を聞いていきます。わたくしも一緒に話を聞きましょう。
「そのお話、わたくしも交ぜていただけますか?」
「えっと……」
「あ、この子は私達の仲間ですから大丈夫です」
「そうなんだ……」
「それで、これがハシャーナさんの荷物?」
「うん、そうだよ……」
アイズさんが布を開くと、そこに宝玉がありました。それをアイズさんが持つと宝玉の中に居た何かが叫び声を上げ、アイズさんが何かを感じています。いえ、わたくしもです。
「っ!?」
「これは……」
左目が疼きます。その宝玉をアイズさんが落としたので、私が拾います。その瞬間……宝玉の中から赤ん坊みたいなのが飛び出してきました。だから、咥えてやります。すると何故わたくし達の中に何かが入り込んでくる感覚がありました。これは同化とかそんなものですわね。
『『『『『いらっしゃいませ。わたくし達の中へようこそ! 歓迎いたしますわ。ええ、それはもう盛大に』』』』』
わたくし達と主導権争いをするなど無意味。時喰みの城を全員で展開してしっかりと吸収してやります。すると、何かの欠片が現れるではありませんか。まるであの“
「きひっ! きひひひひっ!」
取り込むと力が格段に増えました。ああ、これでわたくしはよりわたくしに近付きます!
「く、くるみさん?」
「っ! 危ない!」
「ふぇ?」
誰かが私の身体を掴んで高速で移動していく。そう、まるで誘拐みたいな感じですわね。いえ、誘拐ですね。アイズさんが必死に追いかけてきてくれます。相手を見たら赤髪の短髪さんですわね。
「まさかこんなところで失敗作と出会うとはな。いや、生きて動いているのだから失敗とはいえんか。それにアレを取り込んで意識を保っているのなら……彼女の器として成功か」
「ちょっと貴女は誰ですの?」
「私か? 私はお前の……っと!」
後ろから風を纏ったアイズさんが来てくれました。それに対して犯人はわたくしを俵のように持って片手で剣を使って防いでいきます。レベル5であるアイズさんが全力で戦っているのにこの人、まだ余裕があります。わたくしのために争わないで! と言いたいですが、やる事はやりましょう。
剣戟による火花を利用して時喰みの城を発動。彼女から時間を吸い取ります。チビチビとしか吸えませんが、問題ありません。後は片手で短銃を呼び出して
「そうか、お前はアリアか。これはいい。一度に二人も回収できるとは幸先がいい、なっ!」
「くっ! くるみを返して!」
「これは私達の物だ。返すのではない取り返しただけだ」
「違う。彼女は……」
アイズさんも精霊。つまりご同輩ですのね。なら、情報収集も兼ねてあちらに行くのもいいですわね。どうせこの身は分身ですもの。
「アイズさん」
「今、助けるから!」
「さようならです」
「え?」
「
「なに、を……」
至近距離から埒外の存在による一撃。見事にアイズさんに命中し、彼女の動きは遅くなりました。
「さて、連れていってくださいませ。ただし、連れていくのはわたくしだけですわ。アイズさんも連れて行こうとするのなら、覚悟してくださいませ」
「お前が私に勝てると思うのか?」
「思いませんので、自害いたします」
「……本気か?」
「試してみますか?」
自分の蟀谷に銃口をあてて本気度を教えてあげます。
「だ、だめ……くるみ……」
「……いいだろう。この場は引いてやる」
「感謝しますわ」
アイズさんが吹き飛ばされて転がっていきます。そして、すぐに槍が飛んできたので、彼女に
「待てっ!」
「くそっ!」
そのまま湖に飛び込んで連れていかれました。後は任せます、わたくし。ロキ・ファミリアについては説明をお願いしますわね。
『リヴィラでやる事が終わればいいですわよ』
あ、すぐに出るつもりはありませんのね。
◇◇◇
さて、さて、セイバーであるわたくしはアサシンのせいで深層に行けませんでした。ロキ・ファミリアの皆は即座に深層へと追撃に向かいましたので、その間にリヴィラで用事をすませますの。まあ、
「ボールスさん、商談と参りましょう」
「あ? 嬢ちゃん、誘拐されたって聞いたんだが……」
「魔法でちょちょいとかわしました」
「ロキ・ファミリアの連中が必死の表情で追ってたんだが……」
「迫真の演技で騙されたでしょう? それに敵を騙すにはまず味方からといいますしね」
「……小さいなりして悪女だな」
「わたくし、悪い子ですもの。というわけで、商談をしましょう」
「ああ、いいぞ。で、何を売ってくれるんだ? 先の戦いで色々と足りねえからな。売ってくれるもんならなんでも歓迎だ」
「では、こちらを」
時喰みの城から大きな鉄製の金庫を取り出します。驚いた表情のボールスさんを無視して中身から地上で買い付けた品々を出していきます。その量は大規模な遠征で使われる量とほぼ同じです。
「さて、見ての通りわたくしは地上から大量の物資を持ってきました」
「マジかよ……」
「貴方達が買い叩いているドロップ品と交換としましょう。お金よりもそちらの方が好ましいですわ。値段は互いに利益が出る値でどうですか?」
「……いいだろう。乗ったぜその話!」
値段交渉をする事一時間。ドロップ品をこちらで買い取る値段と同じ金額で買い取ります。あちらは食料を地上と同じ値段で手に入れます。これにより、相手側は高額な輸送費が丸々浮く事になりますの。物資を補充するにも、ドロップ品を売りに上がるにもそれなりの人数が必要ですからね。わたくしの場合はここに分身を常駐させておけば時喰みの城での物資交換はもちろん、わたくし自身の影から影への移動は普通にできるので、本体に連絡して一体派遣しておいてもらうだけですの。後は地上で買って、こちらに輸送すれば丸々儲けになります。
「交渉成立ですわね。きひっ!」
「あくどい顔してんな」
「だって、ぼろい商売ですもの」
「俺達もかなり儲けが出るからいいけどな」
「持ちつ持たれつでいきましょう。なんでしたら、リストを作って頂ければそれも買ってきますわよ」
「おう。それならすぐに作らせる」
「後、ここまで壊されたのならいっそのこと区画整理もして、防衛の事も考えませんか?」
「あ~バリスタとか確かに欲しいな。頼めるか?」
「お任せくださいまし。ああ、それともう一つ条件をつけてよろしいですか?」
「なんだ?」
「犯罪者をわたくしに引き渡してくださいませ。そうですわね、一人につきそれなりの金額で買い取りますわ」
「おいおい、何をする気だよ」
「名声を手に入れるためですわ」
寿命のほとんどを貰ってからガネーシャ・ファミリアやギルドに引き渡せばそれで解決ですもの。わたくしにとって、どちらも大変美味しゅうございます。
「わかった。それぐらいならいいぜ。しかし、人も運べるなら俺達も頼めるのか?」
「あ~お勧めはしませんわよ。わたくしのスキルって普通の人が入ったらそれ相応の代償が発生しますからね。あくまでも攻撃スキルの応用ですもの。死んでも責任は取りません。それでも良かったらお好きにどうぞというところですわね」
「……おっかねえな、おい」
「あ、それとわたくしの家も用意してもらえますか? ここで活動する事になりますので、拠点は欲しいですわ」
「用意してやるよ。だから良い物をくれよ」
「良い物……お酒ですわね」
「酒か!」
「ソーマ・ファミリアで作っているお酒とかいかがですか?」
「最高だ!」
「では、改めて交渉をしましょう」
「おうよ!」
楽しくお話して家を一つ貰いました。そこでルーラーにお願いしてこの階層に常駐するわたくしを作ってもらいました。それとアサシンの代わりもですわね。ルーラーも何時の間にか人数を増やしてキラーアントで狩りまくっていたのと、あちらに連れて行かれたアサシンが魔石をパクパク食べているようで、時間の回復が結構はやくなっているようですの。ですので、人数を増やしてこの階層に三人ほど常駐させます。
この子達の役目はこの階層にある薬草や水の回収と探索。それとリヴィラへの物資の売買。ここでならソーマ・ファミリアのお酒を売っても団長にバレませんのでとやかく言われません。魔石は全て時間に変換し、ドロップ品は他のファミリアに卸してお金を稼ぎ、良い武器を持ちます。その武器を使ってどんどん
こんな感じで過ごしています。なんとこの階層で武器が盛り上がった土に突き刺されている場所がありました。なんでしょうか? これを引き抜いた勇者は……とかいう奴ですか? まあ、ボロボロのようですが、使えない事はないので貰っておきましょう。
ボルスさんの所に戻り、本日の物資を引き渡していると、扉が開いて誰かが入ってきました。
「あの、これを預かって……え? くるみ……?」
「ふぇ? あ、アイズさん。お帰りなさいませ。お元気そうでなによりですわ」
「それはこっちの台詞だよ?」
「まったくだな」
入ってきたのはアイズさんとリヴェリアさんでした。アイズさんは私に抱き着いて涙を流しております。リヴェリアさんも涙を浮かべながら、わたくしの頭を撫でてきます。なんだか、すっごい罪悪感が湧き上がってきます。アサシンの私だって普通に魔石を食べてあの赤髪の人と訓練していますもの。
「ソイツ、お前等が追って行った直後に現れたぞ」
「どういう事だ? 説明してもらおうか」
優しく撫でていたのが、頭をガッチリと捕まれて強制的にリヴェリアさんの方を向かされました。アイズさんは不思議そうに首を傾げております。
「ほ、ほら、敵を騙すには味方からと言いますし? 必死に追撃してくれたおかげでわたくしは無事です。ありがとうございます……」
「つまり、お前は私達を利用したわけだな?」
「ごめんあそばせ」
「よし、わかった」
リヴェリアさんに頬っぺたを掴まれてグニャグニャされていきます。
「私もする」
アイズさんまで参戦して身体中を弄ばれました。もうお嫁にいけません。元から行くつもりはありませんが。
そんな訳で、無事にアイズさんとリヴェリアさんと合流したので帰ります。別のわたくしが既にここには待機しているので問題ありません。
帰っている途中でルーラーの知り合いである人が倒れていました。
「マインドダウンだな。考えもしないで魔法を撃っていたのだろう」
「私、この子に……」
何か相談している間にリヴェリアさんの言葉でアイズさんが膝枕をする事になりました。わたくしもここに残って狩りをしようとしたのですが……
「お前はこっちだ」
「あ~れ~」
首根っこを掴まれてリヴェリアさんに引きずられていきました。それから地上で皆様の前で正座させられ、説明することに……どうしてこうなったのでしょうか? はい、全部わたくしが悪いですわね。
「ああ、そうだ。それとくるみ」
お仕置きが終わった後、フィンさんとリヴェリアさん、それにロキさんとガレスさんを加えて団長のお部屋に連れ込まれました。
「なんですかフィンさん」
「君、何人居るんだい?」
「え? どういうことですの?」
「流石に君が誘拐されて僕達が確認しないわけないだろう。ソーマ・ファミリアへ行ったら、君はここ数日庭でずっと訓練をしているというじゃないか。だが、それは明らかにおかしい。僕達とダンジョンに潜った。それ以外にも君の目撃情報が出ている。それも同じ場所、同じ時間。有り得ない位置でだ。一応、神ソーマにも確認をとろうとしたが出来なかった」
「だけど、目撃証言をした者達に嘘はなかったで。うちが酒を奢りながら確認したから間違いない」
「私も違和感があった。味方を騙すために誘拐された。そこはいい。だが、あれほどの手練れからレベル1のくるみが脱出できるとは思えない。しかし、そもそもくるみが複数人居ると考えると合点が行く。攫われたくるみはまだ敵の手に居るのだな?」
「やれやれ……」
パチパチと手を叩きながら、ロキ・ファミリアの幹部の皆様をみます。
「おめでとうございますわ。皆様はわたくしの魔法の効果を一つ、解き明かしましたわ」
「では……」
「はい。わたくしの魔法は分身を作り出す事ができますの。この身も分身であり、攫われたのも分身ですわ。ですので、本当に気にしなくて構いませんわ。どうせ残り一年も無い命ですからね」
「どういうことだ!」
「わたくしの魔法で作られた分身は活動できる時間が決まっております。それを超えた分身は元の塵芥へと戻るのは必然です。この身も一年未満しか生きられませんの」
「それは……」
「嘘やないな」
「君はそれでいいのか?」
「ええ、構いませんとも。わたくしはわたくしですし、記憶や知識など経験は全てオリジナルへ引き継がれますので、無駄でもありません。わたくし達は個であり群なのです」
「それが強くなる速さの秘密かいな。アイズたんが知りたがってたけど、こんなん普通に無理やん」
「……納得はできんが、確かにそれなら……」
「後、言っておきますがわたくしはわたくしであるので、与えられた命題をこなしつつ楽しんで生きておりますからね」
「命題?」
「剣を極めることですわ。わたくしが与えられた役割はセイバー。剣を極め、剣に生きる事。そしてわたくしが培った剣技はわたくし達に延々と受け継がれ、精錬されて昇華されるのです。わたくしがわたくしとして生きた証は確実に残ります。だからいいのです」
与えられた役割ではあるとはいえ、好きな事を突き抜けてやり切る事が求められております。代わりがいくらでも生み出す事が可能だからこそ、逆に諦められません。それにオリジナルの中に私が居たという事を剣技という形で刻み込んでやるのです。
「そうか……」
「それじゃあ、最後の質問や。くるみたんは精霊なんか?」
「ええ、
「嘘やない。嘘やないけど……くるみたんは……人やで?」
「いいえ、この身は精霊です」
「わかった。それでええわ。で、アイズたんと狙われる心当たりはあるか?」
「わたくしが彼等の実験の失敗作から成功体へとなったかららしいですね。まあ、どうでもいい事ですわ」
「彼等の情報がわかるのかな?」
「ええ、記憶を繋げばわたくし達はそれぞれの記憶を閲覧できます。ですから、アサシンが何をしているかもわかります」
「そのアサシンというのは……攫われた子か?」
「そうですわ。暗殺技術をメインに鍛えていた子ですわね。あの子から伝わってくる情報はありますが、まだ詳しいのは教えてもらっていません」
「ほんまや」
「じゃあ、情報が分かり次第教えてくれるかな?」
「そうですわね。ものにもよりますが、代価は頂きますわ」
「代価か。何かな?」
「別のわたくしに槍を教えてくださいませ」
「……君達はもしかして全部を極めるつもりなのかな?」
「もちろんですわ。人海戦術が取れるのですから、やらない手はありませんもの」
「……影に潜む大量のレベル2か。それも様々な武器を使いこなす……厄介だな」
「厄介ってレベルじゃないで。下手したら……待てよ? くるみたんは増えるんやんな?」
「ええ、増えますわよ。今は十人を超えていますし」
「なら、一人ぐらい貰ってもええやん。うちのファミリアにこうへんか?」
「……改宗は……ソーマ様のところがはじめてなので、可能ですが……いいんですか? いろんな情報が抜かれていきますわよ」
「……それはまずいね。今みたいに外部協力者の方がいいだろう」
「いやや! うちは欲しい! 一家ならぬ一ファミリアに一人のくるみたんがええ!」
「あ、それ計画していますわ。数が確保できたらわたくしのレンタルサービスをする予定ですの。もちろん、エッチな事はなしで」
「マジかいな! エロなしでも買うわ」
「後、改宗は試した事がないのでわかりませんの」
「まあ、せやろ」
「どちらにしろ、鍛える事は確定だ。アイズと同じ精霊なのだから、奴等に渡すわけにはいかん」
「僕としてはロキ・ファミリアに入ってくれるのがありがたいんだが……」
少しルーラーに聞いてみましょう。記憶を見てもらえばすぐですし、どうぞ。
『問題ありませんよ。むしろやってくださいませ』
「あ~ルーラー、オリジナルからギルドに報告せずにコッソリと入るのなら別に問題はありません。実験してみましょう」
「ひゃほーっ! 赤ロリ幼女ゲットやで!」
「身の危険を感じるのでやはり無しで」
「待って! 冗談やから!」
「まあ、情報の取り扱いを気をつけなくてはいけないが、物は試しかな」
「リヴェリアさん、一緒に居てください。ロキさんが怖いですから」
「わかった。任せろ」
「信用ないやん!」
当たり前なんですよね。さて、本当にどうなるのでしょうか。わたくしも彼女のように消滅するのか、それとも生き残るのか、わかりませんが……面白いスキルか魔法が欲しいですね。ロキさんから連想するとやはりレーヴァテインですね。そうなると火ですから、例えば
ロキによる発現する天使
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レーヴァテインから灼爛殲鬼(カマエル)
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変身術の逸話から贋造魔女(ハニエル)
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空飛ぶ靴から颶風騎士(ラファエル)
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このまま|刻々帝《ザフキエル》のみ