青春とは嘘であり、悪である。青春を謳歌せし者たちは、常に自己と周囲を欺き、自らを取り巻く環境のすべてを肯定的にとらえる。何か致命的な失敗をしても、それすら青春の証とし、思い出の1ページに刻むのだ。
彼らは青春の二文字の前ならば、どんな一般的な解釈も社会通念も捻じ曲げてみせる。彼らにかかれば、嘘も秘密も罪科も失敗さえも青春のスパイスでしかないのだ。
そして彼らはその悪に、その失敗に特別性を見出す。自分たちの失敗は遍く青春の一部分であるが、他者の失敗は青春でなくただの失敗にして敗北であると断じるのだ。
仮に失敗することが青春の証であるならば、友達作りに失敗した人間もまた、青春のど真ん中でなければ、おかしいではないか。しかし、彼らはそれを認めないだろう。すべては彼らのご都合主義でしかない。
なら、それは欺瞞だろう。嘘も欺瞞も秘密も詐術も糾弾されるべきなのだ。
彼らは悪だ。
結論を言おう。青春を謳歌した愚か者の俺は砕け散った。
朝起きてサブレと歩く散歩道。彼と出会って2年経ったんだ。ちょうどこの道でサブレを助けてくれた。まるでヒーローのようだった。だから最初の1年は緊張して声をかけられなかった。2年に進級し、このままじゃいけないと平塚先生に相談したっけ。そしてあたしは奉仕部を紹介されて運命の再会をした。まさか奉仕部にあたしのヒーローがいるとは思わなかった。ヒーローは捻くれてて解決策はいつも斜め下、ちょっと幼稚で純粋、でもそんな彼の言葉に救われた。そんな彼の言葉で恋をした。そんな彼と親友の彼女との時間はあたしにとってかけがえのない宝物だ。昨年本当にいろいろあったなあ。なんかいろいろありすぎてわけわかんないや。そんなわけわかんない時間を過ごすうちにあたしのヒーローは親友と付き合うことになった。悲しくないといったら嘘になる。苦しくないなんてただの欺瞞。でも、ちゃんと奉仕部は残った。だからこれでいいんだ。あたしの望みは叶ったんだから。
なんて物思いにふけるうちにサブレが飛び出してしまった。そしてあの日のように車の音が聞こえる。あたしは無意識的にヒーローが、ヒッキーが助けてくれる、そう思ってしまった。周囲に人がいないのに。ここにはあたししかいないのに。
「サブレ!!」
あたしはそういって駆け出した。間に合わな・・いや、間に合わせる。あたしはさらに速度を上げて走った。
「サブレ!!」
もう一度叫んでサブレを胸に抱え込む。守るように、傷つけないように。
ドン
衝撃音があった。なにかにぶつかったのだ。急いでトラックから降りてぶつかった正体を確認する。女の子が頭から血を流して倒れていた。そばの犬がご主人を起こそうと何度もほえる。急いで119を押して救急車を呼んだ。