とある魔術の禁書目録~二天龍を従えし者~ 作:眠らずの夜想曲
「もう一度問おう。―――俺に何の用だ聖人」
「……………」
本当に何をしに来たんだコイツは。
容姿は日本人だ。
ひざ裏までありそうな黒髪をポニーテールにしていて、上は白い半そでシャツの裾を胸の下までまくって結んでいる。
下はデニムで、左側は太股の付け根のあたりでバッサリと裁断されている。
ウエスタンベルトにウエスタンブーツを装着しており、ウエスタンベルトには刀を携えていた。
ウエスタンルックサムライガールってやつ?
さらに本人のスタイルが合わさると……
うん、エロい。
ジーっと見たくなるやつですね。
おっと、そんなことは今はどうでもいい。
あくまでも、今はだ。
「インデックスを保護したいのですが……」
腰に携えている刀に手を掛けながら言ってくる。
余程警戒しているらしい。
「え?嫌だけど」
「仕方ありません……」
刀に添えられている手に力が込められた。
そして抜刀摺るふりをしてワイヤーを使って斬撃攻撃してきた。
「おっと……手癖が悪いな」
「な!?」
もちろんそのまま殺られる俺ではない。
ワイヤーを全て左手で掴みとる。
「何を驚いているんだ?この程度なら幼稚園児でもできるだろ?」
「できるわけないでしょうが!!」
そう叫びながら、攻撃を加えてくるのはやめてもらいたい。
しかもワイヤーじゃなくて刀で。
「―――唯閃!!」
キィィィン!!と耳障りな音が鳴り響いたと思ったら、もう凄い斬撃が俺の身体を襲った。
身体に傷はないが、服がボロボロだ。
上に来ていたシャツは刻まれて地面に落ちているし、ズボンはかろうじて大事な部位を隠している程度しか布が無くなってしまった。
「……本当にあなたは何者ですか?―――唯閃」
再び同じ攻撃を放ってきたのでそれを手刀で全て捌く。
うーむ、単調な攻撃過ぎてあくびが出そうだ。
「もうさ、いい加減帰ってくれないか?お前じゃどう逆立ちしても俺には勝てないし」
「……あの子を、インデックスを保護するまでは帰れません」
この子面倒だな……
自分の考えを一切曲げないタイプの人間だ。
故に、本当のことを聞いても全く聞き入れない。
「まず保護してどうするんだ?」
「……私の所属する組織は『必要悪の教会(ネセサリウス)』」
「へぇ?インデックスと同じ、イギリス清教のねぇ」
「彼女は私の同僚にして、大切な親友なんですよ」
突如語りだしたので、黙って聞くことにした。
敵対して保護しないとインデックスは生きていけないらしい。
インデックスは完全記憶能力を持っているらしく、それがすべての元凶らしい。
一〇万三〇〇〇冊の魔導書の記憶がインデックスの脳を圧迫しているんだと。
魔導書の記憶だけで脳の八五パーセントの容量を使っているらしい。
残りの一五パーセントは一年でうまってしまう。
それだけならまだしも、完全記憶能力を持っているインデックスは忘れることによって情報の整理ができない。
それができないせいで、脳のキャパシティがすぐにオーバーしてしまうらしい。
それで、インデックスと女の子が敵対している理由は単純だった。
何も覚えていない。
ただそれだけだ。
一年周期で記憶を消しているのだから当たり前と言えば当たり前だ。
自分を狙う魔術師は、一〇万三〇〇〇冊の魔導書を狙う敵だと判断するしかないインデックス。
不憫すぎじゃね?
だって勝手に魔導書を一〇万三〇〇〇冊も覚えさせといて記憶を消すとか……
俺だったら、世界を壊してでも反抗するね。
まぁ覚えてないだろうからできないだろうけど。
とりあえず正しい知識を教えておこうか。
「一年周期で記憶を消す必要はないだろ。だって人間の脳は確か一四〇年分くらいは記憶を溜めこめるはずだ。その前にさ、一五パーセントで一年分の記憶しかため込めなかったら、人間はみんな五年ぐらいしか生きれないよな」
「あ………」
どうやら矛盾に気づいたらしい。
なぜ今まで気づかなかったのかが不思議だ。
そしてこの結論から導き出される事実は―――
「結論な、結論。『必要悪の教会』の仕業だったってことだろ?インデックスに記憶を消さなければならない魔術を仕掛けて、それをインデックスが裏切らないようにするための首輪にしただけの簡単なお話でした」
「そんな……まさか……」
なかなか呑み込めないのですね?
わかりま―――せん。
現実はしっかりがっしり受け止めなければ痛い目に合う。
これは今まで神として生きてきた数万年間の間に学んだことだ。
そしてその現実から対策をすぐに考える。
そうしなければどんどん不利になっていく。
「まぁそういうわけだから。じゃあな」
ハラハラと手を振りながらこの場から離脱しようとした。
だが―――
「唯閃!!」
向こうは俺を逃がすつもりはないらしい。
それならこっちも攻撃してやろうか。
もういい加減やられてばっかりでムカついていたからな。
久しぶりに使ってみよう。
そして、この世界での扱いを知ろうか。
「〈神威霊装・十番(アドナイ・メレク)〉―――〈鏖殺公(サンダルフォン)〉」
俺の身体に霊装が纏わられていく。
紫色の鎧と燕尾服が混同しているような、イメージは十香の霊装のドレスを燕尾服に変わったものだ。
唯閃による攻撃が霊装を纏った俺に直撃する。
だが全く効かない。
さすが霊装だ。
「もういい加減にムカついらからこっちからも仕掛けるぞ」
そう言いながら〈鏖殺公〉を横なぎに振るう。
女の子は危険を察知したのか、上へ跳んだ。
そして道路標識の上に降り立った。
それは悪手だぞ。
道路標識に向かって跳び、そしてその勢いのまま〈鏖殺公〉を縦に振るう。
それを受けようと、刀を振るった女の子。
だが当然受け切れるはずがない。
向こうは魔術霊装でもないただのデカイ日本刀。
対してこちらは精霊の天使だ。
負ける理由がない。
「さすがにあっけなさすぎるな……そっちから仕掛けてきたくせにワンパンとかつまらなさすぎるぞ」
そう呟くと、女の子がこちらに特攻してきた。
それを〈鏖殺公〉でさ捌いていく。
上下左右に突き、すべてを例外なくだ。
一撃一撃が結構な重さで、少しずつだが後退させられていく。
だがそれも経った一撃で終わりを告げる。
後方に控えさせていた玉座を蹴り、粉砕させる。
そして細分化された玉座を〈鏖殺公〉と一体化させる。
「―――【最後の剣(ハルヴァンヘレヴ)】」
一振りするだけで山をも両断する。
なので―――
「やべ……」
縦に振るったので、地面が深くえぐれてしまった。
底が全く見えない。
これはアレイスターにドヤされてしまう。
とりあえずは、女の子が近くから離脱したので地面を直そうか。
時間を操って、地面がえぐれる前まで時間を巻き戻す。
それと同時に斬ってしまったビルや道路標識も元に戻す。
さて、これからどうなるんだか。
☆☆☆
「―――と、まぁこんな感じで襲撃に会ったわけだ」
「また女ですか?」
「それは俺に言われても困るな」
メルに今日あった魔術師による襲撃のことを話した。
だが襲撃されたことはそこまで重要ではなかったらしい。
問題は、襲撃してきた魔術師が女だということらしい。
「私がその魔術師を殺りましょうか?」
「いやいや、やめろよ。それは俺の仕事だし、そいつは聖人だから死なれると困れる」
この世界での聖人の存在は貴重だったはずだ。
なので、聖人の消失によってこの世界にどのような影響が出るかはわからない。
世界崩壊、みたいなことになったら面倒すぎる。
そのあと、どうにかメルをなだめた俺は操祈とドリーの様子を見に行った。
メルの話では鍛練場で念能力の強化をしているらしい。
鍛練場につくと、二人は《念》を使っていた組手をしていた。
《堅》も滑らかになり、すぐに各部に移動できるようになっている。
と、そこで俺に気づいたのか組手を止めて俺の方に走ってきた。
「ねぇねぇ、やーくん。そろそろ《発》をやってみたいんだけど……」
「系統がわからないのよねぇ」
そういえばこの二人に水見式をやっていなかったな。
グラスに水を入れてその上に葉っぱを浮かべたものを創造し、床に置く。
「両手をグラスの脇にかざして《練》をしてくれ」
二人は無言でそれを行った。
すると、操祈のグラスの葉は動いていた。
ドリーのグラスの葉は何も変化がなかった。
「やーくん、私の葉っぱ、何も変化がないんだけど……」
「水を舐めてみろ」
「う、うん……あ、甘いね!!」
これで二人の系統がわかった。
操祈は操作系、ドリーは変化系だ。
予想通りと言えば予想通りだ。
このことを二人に伝えると、二人とも納得してうんうん、とうなずいていた。
それからは、二人は各々に《発》の開発に臨んでいた。
話を聞いたが、操祈は短刀を浮かべてそれを操作することに重点を置くらしい。
ドリーは属性方面で行くらしい。
電気や炎、水などの。
《発》が完成したらこの二人も本格的に戦闘に参加してもらうことになるだろう。
まぁそれは当分先のことだろうけど。
《発》の具現化は今までよりも何倍も難易度が高い。
一ヶ月はかかるだろう。
楽しみだ。