とある魔術の禁書目録~二天龍を従えし者~ 作:眠らずの夜想曲
メルと一緒に転移してきたのは三沢塾だ。
当麻とステイルの気配が感じられるので、すでに特攻しているようだ。
転移した場所は、ビルのロビーらしき場所だ。
すぐ後方にビルの入口らしき自動ドアがあるのですぐにわかった。
辺りを見回すと、西洋の甲冑のようなものを装備している死体が転がっていた。
うーむ、甲冑がなかったらなかなかグロい光景だっただろうな。
そして今もう一つ気づいた。
周りにいる塾生がこちらに気づいていない。
死体の存在にも気づいていない。
このビルには、俺とメルがいる裏の世界と、塾生たちのいる表の世界があるようだ。
まるでコインの裏表のようだ。
多分、敵は問答無用で裏の世界に行くようになっているのだろう。
それと同時に、裏の世界の者は表の世界の者には一切干渉ができない。
この結界は核がある。
その核を潰せば一発で結界は解ける。
だがその核はなかなかなカモフラージュがかけられていて、見つけにくそうだった。
能力使えば一発だけどな。
だが核を潰すと少々面倒なことになる。
このビルには敵の魔力が充満している。
核を潰すのと同時にそれがバレてしまうだろう。
それと同時に俺の居場所がバレる。
そうすると必然的に面倒が向こうからやってきてしまうわけだ。
「メル、ゆっくりこのビルを見て回ろう。それでこのビルの仕掛けを知ろう」
「はい、兄様」
メルは俺の腕に自分の腕をからませながら返事をした。
なるほど、ちょっとしたデート感覚ですか。
まぁメルの実力ならそう感じてしまっても仕方がないか。
散策を開始したのはいいが、何も面白くない。
ひたすら一階から見て回っているのだが、裏の世界には特に人がいない。
もちろん、当麻とステイルは除外だ。
この二人に関しては、あえて避けているからな。
表の住人は楽しそうに談笑したりしている。
なんか気持ち悪いな。
こっちに視線を向けているのにスルーされる。
これがものすごく気になってたまらない。
このまま散策をしていても仕方がないか……
今度はあえて当麻達の下へ向かった。
☆☆☆
到着したのは食堂らしき場所だった。
塾生が仲良く食事を摂っていた。
ファストフードみたいなセットや定食など様々な種類があった。
そして当麻とステイルの姿を捉えた瞬間だった。
空気が変わった。
今まで俺達に見向きしていなかったのに、急に視線が集まってきたのだ。
それも瞬きを全くせずに、瞳を暗くしながらだ。
これはマズイねぇ……
「始点の翼は輝く光」
男子塾生が呟いた。
それに続くように、
「輝く光は罪を暴く純白」
女子塾生が唱える。
その近くにいた女子も唱え始めた。
「「「純白は浄化の証」」」
そして塾生全員が唱え始めた。
「「「「「証は行動の結果。結果は未来。未来は時間―――」」」」」
………やっぱり面倒なことになった。
だから当麻とステイルと合流するのは避けたかったんだ。
でもまぁ、つまらないと言って合流したのは俺だ。
このくらいはしょうがないか。
これはおそらく、本来表の世界にいる塾生達を裏の世界に立たせたのだろう。
身体にも影響があるはずなんだがな……
呪文を唱えていた塾生達の額から、青白い球体出現した。
これは魔術だな……
と、ここでこの様子を見ていたステイルがこの場を離脱した。
どうやら当麻にすべてなすりつけたようだ。
ちなみに、まだ当麻達から俺とメルは視認できない。
こんなこともあろうかと、ステルスをかけていた。
と、さらにここで当麻がこの場を離脱した。
お前ら本当になんでここに来たんだよ……
相手に取らないならなんにもしないでくれよ……
仕方がない、俺とメルでどうにかするか。
まぁメルの能力は相性が悪そうだが。
青白い光球がこちらに向かって、弾幕のように襲い掛かってくる。
だが速さは全くと言っていいほどない。
この魔術を解析した結果、疑似的な《グレゴリオの聖歌隊》だということがわかった。
《グレゴリオの聖歌隊》は、ローマ正教の切札的な大魔術だ。
聖堂に三三三三人の修道士を配し、その祈りを集める事で目標を狙い撃ち、破壊する『聖呪爆撃』を行う事ができるものだ。
だが、塾生達が疑似的に行ったものは爆撃というのには無理があるだろう。
あまりにも弱々しすぎる。
もしかして触れた瞬間に爆発するのか……?
どちらにせよ、さっさと片付けてしまった方がよさそうだ。
重力を操りブラックホールを創造する。
そして青白い光球を全て吸い込ませる。
ただそれだけだ。
簡単な作業でしたな。
そこで新たな人影が出現する。
白いスーツに黒いシャツ、そして白いネクタイ。
見事に俺の服装とかぶっているな。
あぁ、もちろん今の服装ではない。
特別なときとかしか着ない。
髪型はオールバックで、結構整った顔だ。
そしてこいつから感じる魔力は僅かだが、このビルを満たしている魔力と同じものだった。
どうやらこいつが面倒事の張本人らしい。
でも魂の質が悪い。
どうやらダミーのようだ。
そいつは何かダラダラと言っているが、全く頭に入らない。
それだけ俺は考えていたということだ。
メルも何やら思うことがあるのか、顎に手を当てながら難しい顔をしていた。
その時だった。
突然男が首に針を刺したと思ったら、
「ここで起きたことは全て忘れろ」
などと言ってきた。
そんなことできるわけないじゃないか。
と言うかその前に―――
「誰に命令しているんだ?―――調子に乗るんじゃねぇぞ。『跪け』」
「―――ッ!?」
《絶対命令権》を行使し、男を跪かせる。
そして威圧を掛けながら言葉を続ける。
「神(俺)に命令とはいい度胸だな?それ相応の覚悟はできているんだろうな」
少し威厳のある感じで言ってみた。
すると、男は顔中に汗をかき始めた。
「まぁいい。今は機嫌がいいからこの程度にしておいてやる。あばよ」
男の顔面に拳を入れると、男は吹き飛んで行ったが、最終的には霧散してしまった。
分身だから当たり前か。
よし、それじゃあ当麻達を回収しに行くか。
☆☆☆
二人は三沢塾の近くの公園のブランコに仲良く座っていた。
馬鹿みたいに。
何やら話し合っているようだが関係に。
一気に目を覚まさせてやるぜ。
気配を消して当麻の背後に近づいていき、そして当麻の右手を当麻の頭に触れさせる。
その際、当麻が驚いて声を上げそうになったが目で黙らせる。
大人しく当麻は下がってくれた。
状況判断力が上がっているようで何よりだった。
当麻が全てを思い出したのと同時に、ステイルに右アッパーをプレゼントしていた。
それも顎に。
もちろんステイルは盛大にぶっ飛んだ。
当麻は気で腕力を強化したようだ。
ステイルはごろごろと地面を転がっていたが、メルが気体を制御してそれを止めたようだ。
メルさんマジ天使!!
そして当麻とステイルはまた何かを話し始めた。
だがそれを黙って眺めているほど俺は忍耐強くない。
「おいお前ら。俺が来てやったのにシカトか?」
「「うぉ!?いたのかお前」」
こ、こいつら……
折角来たのになんだその反応は。
もう俺帰っちゃうよ?
いいよね?
まぁもちろん止められたのでその場にとどまったがな。
公園を出ると、そこには甲冑を着た人間が何人も発見した。
どいうら十三騎士団の生き残りらしい。
「砲撃を開始する!!」
リーダーらしき人物の掛け声とともにそれは始まった。
「グレゴリオクライアー……正真正銘の《グレゴリオの聖歌隊》か」
ステイルが呟いた。
どうやら三沢塾で行われた疑似的な《グレゴリオの聖歌隊》ではなく、本物らしい。
《グレゴリオの聖歌隊》には三三三三人が必要だったはずだ。
あぁそうか……どこか違う場所で三三三三人の信徒が祈りをささげているのか。
簡単な話だったか。
リーダーらしき人物が立て続けに何かを唱えると、掲げていた剣から出ていた光線が強くなった。
そして天候が変わった。
ビルの上空に雲が集まり始め、雷が鳴り響いた。
そしてその雷がビルに落ちる。
同時にビルの窓ガラスが全て砕け散る。
そしてビルが斜めに傾き崩れ落ち―――なかった。
うーむ、あの男の仕業か……?
さらに面倒なことになってきたな。
そんなことを考えていると、メルがこちらに何かを持ってきた。
渡されたものを確認すると、それはインデックスのシスター服だった。
どうやらこれはビルの入口で見つけたらしい。
あー……
インデックスめ、面倒事を増やしやがって。
とりあえず、このことを二人に報告しておかないとな。
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