とある魔術の禁書目録~二天龍を従えし者~ 作:眠らずの夜想曲
第Ⅰ話~物語始動~
俺のいる学園都市は、二大勢力の一方たる科学サイドを支配する総本山だ。
東京西部に位置する完全独立教育研究機関であらゆる教育機関・研究組織の集合体であり、学生が人口の八割を占める学生の街にして、外部より数十年進んだ最先端科学技術が研究・運用されている科学の街だ。
また、人為的な超能力開発が実用化され学生全員に実施されており、超能力開発機関の側面が強いとされている。
学区も、一学区から二十三学区まである。
この学園都市では全学生を対象に『時間割り(カリキュラム)』という超能力開発が実施されている。
学園都市における能力は学力と同等以上に重要視されるステータスであり、LEVELの高低がコンプレックスに繋がる事も少なくなく、まるで熾烈な競争社会のようだ。
また、『SYSTEM』と呼ばれる概念が学園都市のスローガンであり存在意義とされている。
超能力とは、薬物投与、催眠術による暗示、直接的な電気刺激などを施すことによって脳の構造を人為的に開発し、科学的に作り出された物だ。
ようは、人の脳をかき回して、無理やり発現させたということだ。
基本的に一定のカリキュラムを受ければ誰でも能力を開発することが可能だが、能力の系統・種別は各個人の先天的資質に大きく左右され、どんな能力が身に付くかは開発するまで分からない。
これもかなり不便なことだ。
《念》とかならリスクもほとんどない状態で能力が使えるというのに。
気もまたしかりだ。
能力は一人につき一種類しか使えず、一度発現した後では能力の種類の変更は不可能とされる。また能力は全て六段階の強度(レベル)に分類される。
レベルはこんな感じで分かれている。
無能力者(レベル0) 測定不能や効果の薄い力
低能力者(レベル1) 日常では役に立たない力
異能力者(レベル2) レベル1とほとんど変わらない力
強能力者(レベル3) 日常生活で便利と感じられる力
大能力者(レベル4) 軍隊で価値を得られる程の力
超能力者(レベル5) 単独で軍隊と戦える程の力
と、まぁこんな感じだ。
正直に言えば、レベル2まではいらない。
確かにあってよかったという時もあるだろうが、ほとんど役に立たないからな。
そしてもう一つレベルがある。
絶対能力(レベル6)だ。
超能力者を越えた能力とされる仮定のレベルで、理論上の概念であり、実際には未だ到達した人間はいない。
『最強を超えた無敵の存在』『神の領域の能力』とも評され、『SYSTEM』と同一視する者もいる。
これ、俺のことですか?(笑)
神だし。
そうだ、レベル5の人たちの説明もしておこうか。
第一位 一方通行 《一方通行(アクセラレータ)》
第二位 垣根帝督 《未元物質(ダークマター)》
第三位 御坂美琴 《超電磁砲(レールガン)》
第四位 麦野沈利 《原子崩し(メルトダウナー)》
第五位 食蜂操祈 《心理掌握(メンタルアウト)》
第六位 不明 《不明(わからない)」》
第七位 削板軍覇 《名称不明(わからない)》
と、こんな感じで中二感極まりない名称だ。
この俺でも第六位は分らない。
さて、テンプレもいいところな説明も終わりにして、今の状況でも説明しようか。
「不幸だぁぁぁぁぁ!!」
「うるさいぞ当麻!!」
当麻と一緒にランニングしてます。
ちなみに、後ろからは馬鹿が団体様でついて来ている。
「オラァ!!止まれクソガキ!!」
「待て!!この逃げ足王!!」
こんな感じでたまにヤジも飛んできたりする。
なぜこうなったかというと、夜の街を散歩していた時に、当麻が馬鹿共を連れて俺に声をかけてきたのだ。
そして俺も仲間ということになり、一緒に追われているのだ。
「もういい加減飛ぼうぜ当麻」
「そうだなぁ……そうしようか」
俺と当麻は舞空術を使って空を飛ぶ。
「能力者だったのか!!」
「しかも飛んでるぞ!!」
「クソッ!!ふざけやがって!!」
後ろからヤジが聞こえてきたが全く気にしない。
気にする必要がない、というのが正しいか。
「あの橋でいったん降りるか?」
「あぁ、そうしようぜ」
俺と当麻は鉄橋に降り立つ。
当麻も成長した。
一年前までは舞空術も安定せず、途中で落ちることがよくあったが、今はそんなことはない。
舞空術は最高速で飛んでも一日は持つようになり、気弾も体育祭の大玉ころがしなどで使う玉ぐらいの大きさまで撃てるようになった。
気を操って拳や足だけに纏い、強化することもできるようになった。
そのせいか、気で強化した当麻の百メートルのタイムは、五秒を余裕で切る。
「何やってんのよアンタ」
どこからか女の子の声が聞こえてきた。
俺と当麻は辺りを見回す。
後ろを向いたところで、声の主を補足する。
「不良を守って善人気取りか?熱血教師ですか?」
この人物を俺は知っている。
学園都市第三位《超電磁砲》御坂美琴だ。
「当麻……お前そんなことしたうえに俺まで巻き込んだのか?」
「うぅ……しょうがねぇだろ!!そうしないと不良達が黒焦げになっちまうだろうが!!」
当麻はお人よしだ。
だからいつも「不幸だー」とか叫んでいるのだろうけど。
「そう言えばあいつらが追っかけてこなくなったのって―――」
「うん、メンドいから私がやっといた」
美琴が前髪をかき上げながら言う。
そのさい、少しビリビリしていたのはご愛嬌だろう。
「あはは、面白いなこいつ」
「……ねぇ?」
俺の言葉に反応したのか、美琴がスカートのポケットからコインを取り出しながら言う。
「レールガンって……知ってる?」
「れーる、がん?」
当麻よ、この前散々説明したではないか。
「別名、超電磁砲。フレミングの運動量を借りて、砲弾を打ち出したりできるもんなんだけど―――」
そう言い、美琴はコインを弾く。
「―――こういうのを言うらしいのよね!!」
そしてそれに向かって美琴が電撃を放つ。
ソレは俺と当麻の間を通って真っ直ぐ進んでいった。
ふむ、この程度の速さなら普通に避けられるな―――当麻でも。
「こんなコインでも、音速の三倍で飛ばせばそこそこ威力が出るのよね」
「まさか……連中を追い払うのにそれを?」
「馬鹿か当麻。そんなわけがないだろう」
「ソイツのいう通りよ。馬鹿にしないで。レベル0の無能力者どもの料理法ぐらい、心得てるわよ」
料理法まで心得ているとは……
生粋の女王様か?
あぁ、女王様は操祈だったな。
「じゃあそう言うことで。帰ろうぜ、当麻」
「お、おい待てよ!!」
美琴に背を向けて歩き出す。
それに続いて当麻も歩き出す。
だが―――
「待ちなさいよ!!」
美琴が言うと同時に、電撃のレーザーが飛んでくる。
それを当麻が当たり前のように右手で防ぐ。
すると、ガラスの砕けるような音と共に電撃が霧散する。
「……なんだ当麻。面倒事か?」
「や、刃?」
「面倒事なら―――お暇するぞ!!」
「さすが刃!!」
俺は素の身体能力で、当麻は気で身体を強化して一気にこの場から逃げる。
後ろから「待ちなさい!!」という叫び声と高電圧な電撃が発せられていたが気にしない。
☆☆☆
美琴の襲撃から一夜明け、現在は朝だ。
昨夜から学園都市のほとんどが停電に襲われるという最悪の事態に陥っているのだが、もちろんうちは無事だ。
「やーくん、朝だよー」
ドリーか。
どうやら起こしに来てくれたようだ。
「起きてるよドリー」
「ご飯もできてるから早く来てねー」
「はいよー」
基本的にご飯は俺の部屋で食べる。
レストランもあるが、基本的には使わない。
当麻やその友人を呼んで打ち上げをするときぐらいだ。
「それじゃいただきます」
「「「いただきます」」」
朝食を食べ終えた俺は、シャワーを浴び、甚平に着替える。
色は黒だ。
甚平は涼しいし、動きやすいしなかなか重宝。
今日から学校は夏季休業だ。
そう、夏休みなのだ!!
「それじゃあ当麻に朝食届けに行くわ」
「「「いってらっしゃい」」」
多分、昨夜の停電の影響で冷蔵庫の中身は全滅だ。
朝食がないだろうからな。
俺は当麻の家に転移をした。
☆☆☆
俺は当麻の部屋に来て戦慄した。
なぜなら、シスターらしき女の子が裸で腰に手を当てて立っていたからだ。
もちろん当麻は顔を赤くしながらもガン見だ。
シスターは自分の身体を見て、
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
と叫んだのはしょうがない事だと思う。
シスターが当麻に向かって噛みつこうとしたのを止めるついでに、空間倉庫からタオルケットを取り出し、シスターの身体に巻きつける。
「シスター服が直るまでそれでも巻いてろ」
「……あなた誰?」
「刃!!ナイスタイミングで来てくれた!!」
「当麻、これ朝飯だ。どうせ冷蔵庫を死んで食材全滅だっただろ?」
「さすが刃だ!!」
そう言いながら、当麻は俺が持ってきた朝飯を食べ始める。
それを横目に俺はシスター服―――《歩く教会》を修復していく。
簡単な作業だ。
《時間を操る程度の能力》で破壊される前まで時間を戻す―――わけではない。
ネックレスに《歩く教会》の術式を加えた俺だぞ?
普通に修復するわ。
「ほれできたぞ」
「《歩く教会》が完全に修復されてる……君、一体何者?」
「魔術を知っているし、使える。ただそれだけだ」
インデックスが考え込む。
と、ここで当麻が話しかけてきた。
「刃……こいつの名前はインデックスって言うらしいんだけど……」
「偽名ではないだろう。その子がそう言ったんだから。それに偽名ならもう少しマシなものがあるだろう」
「確かにな……」
当麻は右手を見つめ、何かを考えているようだ。
おおよそ、「修道服が壊れたのだから魔術は存在する」とでも考えているのだろう。
「当麻。そんなことより補修はいいのか?」
「やべっ!!そうだった!!」
当麻はインデックスの方を向き、
「俺、これから学校行かなきゃなんねぇんだけど……お前どうすんの?ここに残るなら鍵渡すけど?それか刃のところにでも―――」
当麻がイケメンすぎるのだが……
さすが一級フラグ建築士。
だがな、俺を巻き込んだのはいけないな。
「いい、出てく。いつまでもいると、連中ここまで来そうだし。君だって、そこっちの君だってこの部屋ごと爆破されたくないよね?」
「おい!!」
玄関に向かったインデックスを追う当麻。
だがその途中で転んで携帯電話を踏みつぶしたのはしょうがないのだろうか?
「当麻、貸してみろ」
「いつも悪いな……」
壊れた携帯電話を投げ渡してくる。
《時間を操る程度の能力》で、携帯電話の時間を壊れる前まで巻き戻す。
「ほれ、これでいいだろ」
「おーさすが刃」
携帯電話を当麻に投げ返す。
受け取った当麻はインデックスに向き直った。
「お前、ここを出てどっか行くあてでもあるのかよ?」
「ここにいると、敵が来るから」
「敵?」
当麻が訊き返す。
魔術師のことだろう。
「この服は魔力で動いているからね。それを元にサーチかけてるみたいなんだよ。でも大丈夫。教会まで逃げ切ればかくまってもらえるから」
「ちょっと待てよ、それをわかってて放り出せるかよ!!なぁ刃」
「俺に振るのか……まぁそうだな」
可愛い女の子を放り出すことなんてできるわけがない。
これ常識ね。
「じゃあ―――私と一緒に地獄の底までついて来てくれる?」
インデックスは顔を下にうつむかせながら言った。
ようは、ついてくるなと言っているのだ。
まぁ俺も当麻も答えは決まっている。
「「もちろんだ」」
「え……?」
インデックスが目を見開いて驚いている。
「別に地獄なら何回も行ったことがあるから」
「うげぇ……刃はやっぱり規格外だな」
「よせ、照れるだろ」
「……お、おぅ」
当麻、そこでガチ引きはないと思うんだ。
先に仕掛けてきたのは当麻なんだから。
「で、でもやっぱりいいよ。迷惑かけたくないし」
「ゴメン、それ無理。最低でも教会までは俺が送り届ける。当麻、お前は補修に行け。後は任せておけ」
「お、おぅ。じゃあ頼んだぞ」
当麻は靴を履き、玄関から外に飛び出す。
鍵はピッキングを応用すればいいだろう。
「……君は自分勝手だね。どうなっても知らないよ?」
「安心しろ。最低でも自分の身ぐらいは守れる。じゃあ行こうか?」
インデックスを部屋の外に出し、俺も出る。
そして鍵をかける。
ははは、面倒事の予感しかしねぇ。
☆☆☆
辺りも暗くなり、街灯がつき始めた。
教会まで行くのにものすごく時間がかかった。
途中でインデックスがあちらこちらで食べ物を食べ始めたせいだ。
全て俺が金を払った。
……諭吉が何十人と俺の下を去っていったよ。
だが過ぎたことは仕方ないし、インデックスが可愛いから許そう。
そして教会に着いた。
そう、一度教会に着いたのだがここでインデックスはあることに気づいた。
頭に被っていたものがないのだ。
思い当たる場所など一つしかない。
当麻の部屋だ。
あそこで一度修道服を脱いだのだ。
というわけで、当麻の部屋まで来たのだが面倒事が起きた。
「その子を渡してくれないかな?」
赤髪で神父の格好をして、頬にはバーコードのタトゥー。
そしてタバコを吸っている。
神父にあるまじき行為だ。
「あんた誰?」
一応聞いておく。
「んー……僕達、魔術師だけど?」
なぜ疑問形で答えたのかは聞かないでおこう。
というか、自分から複数人ってバラしてるし。
インデックスが俺の背後に隠れる。
ステイルは今は敵と判断していいらしいな。
「じゃあ初めまして魔術師。『二天龍を従えし者』、神浄刃だ」
「へぇ……君が例の……」
アレイスターの野郎バラしやがったな。
まぁいいか。
さて、ステイルをどう料理しようかな?