あと仕事で投稿忘れてて出る出る詐欺してしまったことをお詫び申し上げ給わりあげ奉り候う。
「うげっ…………」
「初雪の負けー!」
ゲラゲラ笑う深雪をジッと睨む。いくら睨んでもじゃんけんの結果が変わるわけじゃないけれど。
「それじゃあ罰ゲームを決めましょうか」
「あんまりキツいのはやめてあげてね?」
白雪がこういう罰ゲームにノリノリだったのは意外だった。何回も繰り返してるうちに楽しくなってきたのかもしれないけど。吹雪の苦笑に頷く辺りはまだ良い。深雪なんてたまにとんでもない罰ゲームを考えてくるんだから。こういう場面で一歩引いて自制を促してくれる吹雪はやっぱり天使だ。
「でも、どうしましょう。定番はだいたいやり尽くしちゃいましたし」
「無難に買い出しとかで良いんじゃない?」
「…………地獄」
訂正、やっぱり天使じゃない。この猛暑の中を買い出しとかどんな苦行だろうか。
「思い付いたぁ!」
さらにドギツいのをひらめいたというのか深雪。
「買い出しの帰り、『アイツ』に話しかけてこいよ!」
悪魔かキサマ。
吹雪と、ノリノリだったはずの白雪でさえも引き攣った顔をしていた。
「あれ? 珍しい、初雪じゃない」
「…………どうも」
暑い中をフラフラになりながら酒保へ辿り着くと、レジカウンターで暇そうに欠伸してる明石さんがいた。
「…………日曜日なのに、暇?」
非番の多い日曜日は、酒保にそれなりの客がいるはずだけど。
「みんな外出してるわよ。アイツが来てから商売あがったり」
「…………ドンマイ」
まあ仕方ない。日曜日は鎮守府内の色んな所を掃除してるからな。神出鬼没の歩く公害。そんな奴がいる敷地内だと羽が伸ばせないだろうし。
私は出不精だから外出とか無理だけど。この暑い中でよく外に出ようって気になるな。
そういえば。深雪から告げられた罰ゲームだけど、今日はアイツどこにいるんだろうな。分からないままこの炎天下の中を歩き回るのは勘弁してほしい。
「そうそう、聞いてよー!」
話し相手がいなかったのか、明石さんがずっと話しかけてくれる。
「今朝アイツが酒保に来やがってさー」
「…………ほう?」
どうやら居場所が簡単に分かりそうだ。
「雑草抜きするからゴム手袋欲しいなんてほざくから、とうとう出禁にしてやったわ!」
ケラケラ笑う明石さんに合わせて下手くそな愛想笑いをしつつ、雑草が多い場所はどこだっけと考える。
……………………ダメだ。最近ほとんど部屋から出てなかったから分からん。
「だから、今日の裏庭には近づかない方がいいわよー」
何から何まで教えてくれてありがとう明石さん。
「…………うわ」
酒保の帰り道、明石さんに言われた通り裏庭を覗くと、いた。全身ビッチャビチャの汚いアイツだ。すでにここからでも匂ってくる汗の臭いに逃げ出したくなるが、これが失敗したら深雪になにされるか分からない。やるしかない。
「…………何やってんの」
「雑草抜いてんスよ」
見りゃ分かるよ。うわ、こっち向いた。全身汗でビショビショ、ヌルヌルテカりまくってて深海棲艦みたい。気色悪いからそのまま雑草抜いててくれないかな。
「初雪さんこそ何やってんスか」
「…………じゃんけんで負けた」
そう言って右手にぶら下げたビニール袋を持ち上げると納得したような表情になった。
「俺も休憩するかなぁ」
おいなんで立ち上がったんだコイツ。くっさ! とにかく汗くさい! なんかイカと貝が夏の砂浜に打ち上げられて干からびた臭いがする!
「…………臭い」
思わず声が漏れる。面と向かって言っちゃったよ。大丈夫だよね? 逆ギレして襲いかかってきたりしないよね?
「仕方ないじゃないスか」
は? なに開き直ってんだコイツは。
ああ、もしかしてドクダミの事だと勘違いしてるのか。自分は臭くないとでも思い上がってるのか?
自分がどんな悪臭を振り撒いてるのか自覚していないバカ野郎にムカついた私は、やめとけばいいのについつい余計な一言を漏らしてしまった。
「…………違う」
キョトンとしてるその顔にまっすぐ人差し指を突き付ける。
「…………臭い」
なに「ですよねー」みたいな顔してんだコイツ。無駄に不遜な態度しやがって。ドクダミの悪臭と相まって鼻が曲がりそうなんだけど。
「…………手袋とかしないの」
「売ってくれなかったんスよ!」
ああ、そういえば明石さんも出禁にしたって言ってたな。その体臭が原因だから自業自得とはいえ、素手でドクダミ抜くのはさぞかし辛いだろう。コイツが来る前、雑草抜きは私たち駆逐艦の仕事だったからよく分かる。
「…………ドンマイ」
「アザス…………」
すっかり落ち込んでる。さすがにちょっと可哀想に思えてきた。
…………そうだ。お詫びにこのスポーツドリンクをやろう。別にこれが深雪から頼まれたやつだからとかそういうわけじゃないぞ? ちょっとした仕返しになるとか思ったりはしてない。
「……………………ほれ」
「へぶぅっ!?」
ダッサ。頭でヘディングしてるし。
「…………頑張れ」
倒れられたりしたら困るし。私たちが雑草抜かないといけなくなる。それはイヤだ。
「は、初雪さん!」
「…………?」
うるさいな。さっさと帰りたいんだよ。わざわざ呼び止めないでくれる?
「ありがとうございます!」
「!!!」
うっわ! お辞儀した瞬間、髪の毛から汗が舞い上がったの見えた!
「あの……?」
「! ぅ、ぅくさい!」
空気中を舞うコイツの汗を吸い込みたくない。私はとにかく全力でその場から逃げ出した。
可哀想とか思って飲み物を恵むんじゃなかった。ほんと最悪、戻ったらすぐ風呂に入ろう。
勘違いルートは執筆中なのでしばらくお待ちを