【本編完結】始末屋 キリカ   作:☆エイラ★

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 評価を入れてくださった方、誠にありがとうございます。
 そしていつの間にかお気に入りが200超えてて驚愕。感謝です。


拾伍斬 仲間

――動け、動いてっ! 私の身体!!

 

 恐らくこれは無臭の毒。あらゆる器官を封じられ感覚の殆どが失われている。鬼神の力まで沈静化されているのは幸いと言うべきか。

 何とかセリューを倒したと思った矢先に絶対絶命の状況。

 こんなところで死ぬ訳にはいかない。仲間達だけで帝国と戦い続ければ、きっと多くの犠牲が出てしまう。悪逆無道なエスデスや大臣だって始末できていないのに………。

 今回、最大のミスはセリューとの闘いに集中し過ぎてしまったこと。無臭の毒は察知出来なくても、Dr.スタイリッシュの気配には気付けた筈だ。

 

――後悔しても、私に次は無いかもしれませんね。

 

 双眼鏡を片手にゆっくりと近づいてくるDr.スタイリッシュ。その側には眼球、耳、鼻と言った身体の一部がそれぞれ極端に肥大化した三人の男が控えていた。

 

「うふふ、どれだけ強くっても私にかかればざっとこんなものよね」

「ど、どくたー……すたいっ……どうして、こ、の場所が?」

 

 少しでも情報を得て時間を稼ごうと、会話を試みる。

 

「あなたを追跡して来たに決まってるじゃない。上手く痕跡を護摩化したところで臭いまでは消せないわ」

「むふーっ!」

 

 鼻の異様に大きな男が誇らしげに息を荒くした。

 

「なる、ほ、ど………は、ははっ」

 

――ほんと、自業自得じゃないですか………。

 

 自分の愚かさに呆れて乾いた笑いしか出てこない。

 

「さて、あっちの方もそろそろ片が付く頃かしら」

「そ、それが上空から巨大なエイに乗った敵の増援が現れて、襲撃部隊が瞬く間に………」

 

 眼球の異常に大きな男が言う。

 

「増援? あれは………元将軍のナジェンダ!! 特級危険種のエアマンタを乗り物代わりにするなんて中々スタイリッシュじゃないの」

「どうやらインクルシオだけでなく、角付きの男も毒に耐性があるようです」

 

 少し焦った様子の耳の大きな男。

 

「そう。毒が効かないっていうならこうしましょう」

 

 カチリッと何かのスイッチを押すDr.スタイリッシュ。一拍置いてアジトの方角から次々爆音が鳴り響く。

 

「なっ! 味方が!?」

「特製の人体埋め込み式爆弾よ。これで………って! 再生してる!? 不味い。あの角付き男、生物型帝具だわ。急いで撤収よ。鼻、キリカちゃんを回収して!」

「はい、スタイリッシュ様」

 

 私を肩に担ぐ巨大な鼻の男。

 

「………」

 

――名前が鼻って、なんて安直な………。

 

 耳と眼球が大きな他二人も同様のネーミングなのだろうか。そんなどうでも良い事を考えている場合ではなく、このままDr.スタイリッシュに拉致されれば、私はきっと死んだ方がマシという目に合わされる。広場で残虐に処刑される人々、セリューや襲撃者達のような人体改造など。最悪な未来が次々浮かび全身に冷たい汗が流れた。

 絶望的な状況の最中、突如上空より振り注ぐ光弾にDr.スタイリッシュ達が足を止める。発射音からマインのパンプキンによる牽制だと分かった。

 

「ス、スタイリッシュ様、捕捉されてます」

「言わなくても分かるわよ! 流石は元将軍、対応が早いっ」

 

 次いで、巨大なエアマンタが急降下してきて旋風が巻き起こり、私諸共全員吹き飛ばされた。その弾みで鼻男から解放され、地面へ叩きつけられる。

 

「…………」

 

 感覚が麻痺している為、痛みは感じない。視線を動かすとアカメとブラートが駆け寄ってくるのが見えた。恐らくエアマンタの背に乗って移動して来たのだろう。

 

「しっかりしろキリカ!」

「おい、大丈夫かよ。毒にやられたのか?」

 

 私を抱き起こすブラート。

 

「す、すみ……ません。また、ご、めいわく、かけ」

「無理するな、喋らなくて良い」

「ちょっとぉ、人様の実験材料返してくれるかしら?」

 

 土埃を払い、立ち上がるDr.スタイリッシュ。

 

「実験材料? アジトに入りこんで来た連中を改造したのはお前か?」

 

 険しい表情で問いかけるアカメ。

 

「ええ、そうよ。よく出来てたでしょう?」

「悪趣味だな」

「やだわ、これだから化学と芸術の理解出来ない凡人は………」

「お前にキリカは渡さない」

 

 少しヨロめきながら村雨を構えるアカメ。彼女も少なからず毒の影響を受け足腰に力が入らないようだ。

 

「お下がり下さい」

「ここは私達が!」

「スタイリッシュ様には指一本触れさせません」

 

 男達がDr.スタイリッシュを庇おうと前に出る。

 

「あなた達じゃ無理よ。あまり使いたくない手だったけど仕方ないわ。特別に拝ませてあげる!」

 

 注射器のようなモノを取り出し、自分の右腕に打とうとするDr.スタイリッシュ。

 

「………っ!」

 

 あきらかに敵が何かをしようとしているのに止められないもどかしさ。

 

「これが私の研究成果、危険種いっぱ………」

 

ドスッ

 

 Dr.スタイリッシュの胸にアカメの投げた村雨が突き刺さる。壁となる三人の男達の隙間を縫う見事な一投だった。

 

「敵地で隙を見せ過ぎだ」

「こ、こんな………ひど、い――」

 

 Dr.スタイリッシュは呆気なさ過ぎる幕切れに納得いかない、と言いたげな顔で倒れ伏し絶命。流石はアカメ、容赦なく最適な行動をとってくれる。そして、間髪入れずブラートが残った取り巻き達を片付けた。

 

「………こ、怖かった」

 

――本気で終わってしまうかと思いました。

 

 九死に一生を得る事が出来たのは仲間達のお陰。またもや大き過ぎる借りを作ってしまった。

 その後、ブラートに抱えられエアマンタの上に乗せられる。未だ満足に動けない私にアカメが膝枕をしてくれた。他の面々も次々背に登り、全員揃ったところで飛翔開始。エアマンタの飛行速度はかなり速くアジトが見る見る小さくなっていく。既に襲撃から数十分ほど経過しており、空が白み始めていた。

 

「身体の調子はどうだ?」

 

 心配そうに覗き込んでくるアカメ。周りにはナジェンダ、ブラート、ラバック、マイン、レオーネ、角の生えた男の姿があった。

 

「まだ、本調子じゃありませんけど大丈夫です」

 

 ヨロヨロ起きあがろうとしたらナジェンダに止められる。

 

「無理はするな。まさかお前がここまでやられるとは思わなかったぞ」

「見た目ほど酷くありませんよ」

 

 外見的にはズタボロ状態だが、軽い火傷と打ち身程度だ。それより問題は神経毒の影響が鬼の血液の方に残っている事。他のメンバーと違い回復には時間を要するだろう。

 

「何があった?」

「アジトが襲撃にあった後………」

 

 かくしか略、セリューとの一戦を端的に説明した。加えてエスデスと交戦した挙句、アジトが発見された経緯についても。

 

「………私が居ない間に勝手な事を」

 

 聞き終えた後、こめかみを抑えるナジェンダ。

 

「本当にすみませんでした」

「いや、結果的には上々の戦果だ。今後、独断行動を控えてくれればこの件は不問としよう。気に病まずゆっくり休んでくれ」

「はい」

 

 しっかり頷いて全身の力を抜いた。

 

「それにしてもエスデスやブドー以外にキリカと戦える実力者がいたとは。ラバックの結界を抜けられた事といい想定外の事態は起こるものだな………無駄にはならないはずだ」

 

 ナジェンダがぶつぶつと呟く。

 

「ボス?」

 

 不思議そうに首を傾げるレオーネ。

 

「やはり、アカメ以外の実力に関しても底上げを計ろうと思う」

「けど、キリカに言われなかったっけ? アカメ以外の伸びしろには期待できないって」

「何も技量を上げるだけが戦力アップじゃないさ。過酷な環境下に身を置く事で鍛えられる部分もある」

「………」

 

 確かにある程度の期間があれば、基礎体力の向上や感覚の鋭敏化は十分に可能だと思う。

 

「さて、方針も決まったところで新たな仲間を紹介しよう。私の帝具、電光石火スサノオだ」

 

 角の生えた男を紹介するナジェンダ。

 電光石火スサノオ――確か、文献に載っている中で唯一の人型にして完全な自己判断能力を持つ帝具。

 

「キリカです。よろしく………?」

 

 スサノオが徐に私の側へ来て、髪型と衣服の乱れを整え始めた。

 

「えっと、あの?」

「よし!」

 

 そうして納得したのか満足げに頷いた。

 

「………」

 

 なんと言うか、几帳面な性格をしているようだ。そして、大まかに感じ取れた力量は十分に高く、ブラートに引けを取らない位階_()クラス。

 

「お前の実力はナジェンダから聞いている。こちらこそよろしく頼む」

「ど、どうも。ところでつかぬ事をお伺いしますけど……あなたって毒が効かなかったり、身体の一部が吹き飛んでも修復出来たりします?」

 

 ヘカトンケイルやセリューの事を思い出し、生物型帝具の特徴を本人に確認してみる。

 

「核さえ無事ならな」

「凄いですね」

 

 人間的な思考と理性を備え、捨て身の攻撃はし放題。加えて熱や冷気、毒、電撃などにも強い。セリュー戦において生物型の特性が如何に厄介か思い知らされた。超常的な存在が今度は仲間に加わってくれるとは心強い限りだ。

 

「そういや、例のチームの生き残りはどうしたんだ? うちに加えるって話だったろ」

 

 と、ブラートが話題を変えてナジェンダに尋ねた。

 

「ああ。チェルシーならキョロクへ向かわせた。現在は安寧堂の内部調査を頼んでいる」

「教主補佐ボリック暗殺の下準備ってやつか?」

「そうだ。更に奴だけでなくボリックと関わりのある教団信者を一掃しておきたい。革命時に不安要素は残したくないからな」

「あの、安寧堂というのは?」

 

 右手を挙げて聞いてみる。

 

「民衆に広く信仰されてる宗教よ。善行の積み重ねが幸せや長寿に繋がるってやつ、くだらないわ」

 

 吐き捨てるように言うマイン。彼女は大事そうにエクスタスを抱えている。襲撃者の誰かが所持していたようで、無事シェーレの帝具を回収出来たようだ。

 

「安寧道はこの10年で信者を増やし帝都の東側で大きな勢力となっている。そして、その内部には色々と火種が燻っていてな。上手くいけば大規模な宗教反乱が起こりそうなんだ」

「上手くいけばって………まさか、民衆を革命に利用するつもりですか? 無辜の民が大勢死にますよ」

「私だって出来る事なら犠牲は避けたい。しかし、帝国の腐敗政治は民をいじめ過ぎた。安寧道の反乱が起きなかったとしても必ずどこかで民衆の怒りは爆発する。もう、この国は末期に来ているんだ」

「革命軍とナイトレイドだけじゃ戦力不足なんですか? エスデスの相手は私が勤めますし、スサノオさんとブラートさんがブドー大将軍を押さえてくれれば………」

 

 雷撃が効き難く相性有利な位階_()クラスの2人を上手く連携させれば、帝具含めて位階_()相当と思しきブドーを押さえる事は十分可能だと思う。

 

「厄介なのはあいつ等だけじゃない。以前にも話したが直属の精鋭軍や宮殿の防衛帝具などは個の力だけではどうにもならん。お前の理念に反することは理解してる。すまない」

「いえ、分かりました………」

 

 ナジェンダの戦術的な知見は信用に値する。この件はどうしても避けられない犠牲なのだろう。

 

「キリカ、エスデスに勝算はあるのか?」

「切り札を使えば仕留められる可能性は十分にあります。ただ………」

 

 私という強者を知ったエスデスは間違いなく別れの時より強くなっている。もし、鬼神顕現中に勝負を決められなければ敗北は必至。

 

「無理はしなくていい、抑えてくれるだけで十分過ぎる。それにアカメを含め誰かしら加われば勝てるんだろう?」

「ええ。あと、確実に足止めする為に出来れば専用の装備を作って頂けるとありがたいです。構想としては………」

 

 考えうる対エスデス戦を想定した決戦用の装備案を伝えた。

 

「ふむ、分かった。早急に伝令を飛ばして素材の手配をさせよう」

「採寸なら任せてよ」

 

 勢いよく手を上げるラバック。

 

「ぜひお願いします」

 

 装備の制作にはラバックの持つ繊細な技術が不可欠。

 

「キリカに変なことしたら何本か折るからな」

 

 パキパキと拳を鳴らすレオーネ。

 

「な、何もしないって!」

「………」

 

 私としては別に減るものじゃないし多少触られても文句は無い。まあ、そもそもの話、起伏に乏しく筋肉質なこの身体を触って喜ぶ男性がいるのだろうか。

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