【本編完結】始末屋 キリカ   作:☆エイラ★

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 原作から離れていきます。作者なりに考察した上での展開ですが、細かい事考えず、別時空の出来事という事でお楽しみ頂けたら。
 展開の細かな理由は後書きにて。


拾漆斬 羅刹

 狩や温泉、バーベキューをしたりもして………楽しい日々というのは、あっという間に終わってしまうもの。約3ヶ月間の修行期間を経て、私達は帝都近郊の新たなアジトに活動拠点を移していた。新しいと言っても場所が違うだけで、以前のアジトと立地環境や外観は殆ど変わらなかったりする。

 さて、いよいよ本格的に革命へ向けての準備が始まる訳だが、ナジェンダの戦略によると作戦は3段階に分かれていた。

 1.宗教団体、安寧堂を東の地にて武装蜂起させる。

 2.帝国によって領土を奪われた西の異民族が攻勢に出る。

 3.革命軍決起。内応済みの関所や城を無血で抜けて帝都へ攻め入る。

 要するに安寧堂と異民族を東西同時に暴れさせ、帝国戦力を分散。帝都の防衛が手薄になったところを狙う訳だ。大規模な戦争状態となれば、必ずオネストや腐った閣僚を始末する機会が訪れる。肝心要の第1段階を達成する為には、教団を影で操る教主補佐のボリックが最大の障害となっていた。

 ボリック──資料によればオネスト大臣と繋がりを持ち、一部の信者を薬漬けにして弄ぶ外道。対立派閥の幹部を毒殺したりもしているようだ。

 早朝、会議室へ集まった面々を前にナジェンダが神妙な面持ちで口を開いた。

 

「一昨日、エスデスがイェーガーズを伴いキョロクへ向けて出立した」

「………」

 

 イェーガーズ──革命時の障害になるとして、既にボルスとクロメ以外も排除対象リストに加えられている。

 

「あいつら帝都専門じゃなかったのかよ」

 

 緊迫した表情を浮かべるブラート。

 

「帝都の警備には新たにワイルドハントという特殊警察が結成されたそうだ」

「………」

 

 イェーガーズが帝都の警備から外された理由。推察に過ぎないが、結成直後の部隊員失踪と私達の雲隠れが影響したのかもしれない。

 

「次に我々がどう動くか、だが。既にボリック派信者の絞り込みは終わっている。奴らの計画も判明済みだ。どうやら、次の満月に行われる教団の設立記念日に教主暗殺を目論んでいるらしい」

「教団そのものを乗っ取られる前に殺るしかないって事か」

 

 腕組みしながら確認をとるレオーネ。

 

「ああ。ただ、現状ボリックの暗殺は非常に難しいと言える」

 

 ボリック邸の詳細な見取り図を広げるナジェンダ。罠、罠、罠、至る所隙間なく様々な仕掛けが施されている。屋敷自体もかなり頑丈な作りで、地下空間が迷宮のように広がっており、普段ボリックと一派のいる部屋はその最奥付近だった。

 

「うわ、標的まで辿り着くのは私でも無理そうですね」

 

 狭い密閉空間となれば身体能力と技術にモノを言わせての強行突破は厳しい。この罠満載の屋敷へ踏み込む事自体が自殺行為だ。

 

「何処かに近隣の墓地へ通じる秘密の抜け道があるらしいがボリックは誰にも場所を教えていないそうだ。加えて以前から皇拳寺羅刹四鬼が常に張り付いて警護している」

 

 説明しながら、緻密に書き込まれたキョロク全体と墓地の地図を提示するナジェンダ。口調には余裕があり、深刻な事態とは思っていないようだ。

 

「………」

 

──羅刹四鬼………確かオネスト大臣直属の処刑人。

 

 顎に手を当て要排除対象リストの内容を思い浮かべる。

 

「羅刹四鬼か………任務を共にしたことがある。特にイバラはかなりの使い手だった。今の私で互角に戦えるかどうか、だな」

「更にエスデスとイェーガーズが加わるって相当ヤバいわね」

 

 危機感を露わにするアカメとマイン。

 

「だから、月に一度ボリックが大聖堂で夜通し祈りを捧げる日を狙う。ボリック派で影響力を持つ信者6人も同様だ」

「あの、ところでこの情報、全部チェルシーさんが一人で集めたんですか?」

「あいつは帝具ガイアファンデーションを完璧に使い熟している。本人の隠密スキルも相まって諜報に関してまず右に出る者はいない」

「それは頼もしい限りですね」

 

 【帝具 変幻自在ガイアファンデーション】………化粧品箱みたいな外観で他人や動物等、様々なモノに変身可能な帝具だったはず。

 

「正直な話、ボリックを含む一派を暗殺するだけなら容易だろう。我々が敵の注意を引きつけるだけでチェルシーが自由に動けるようになるからな………」

 

 しばしの沈黙。

 

「どうした? ナジェンダ」

 

 紅茶を出しながら様子を伺うスサノオ。

 

「すまない………マーグ高地でのお前達を見て一つ確信した事があるんだ。今の我々ならエスデス相手でも十分な勝算がある。今回の任務、キョロクにおける標的に帝国最強を加えたいと思う」

「昨日からずっと悩んでると思ったらそんな事考えてたんですか、ナジェンダさん」

 

 ごくりっと喉を鳴らすラバック。

 

「これ以上無い絶好の機会なんだ。あいつの得意分野は攻めの盤面。昔から好きに暴れまわれない防衛戦は苦手としている。余計な事に気を取られれば必ず隙が生まれる筈だ」

「………」

 

 ナジェンダの見解は正しい。私とエスデス、実力が近い者同士の勝敗は場の条件に大きく左右される。

 

「俺たちも強くなってるし、互角に渡り合える頼もしい奴がいるからな」

 

 ブラートに続き、皆が納得した様子で頷いた。

 

「分かりました。エスデスは私が必ず倒します!」

 

 個人的な信条を貫く為に殺せる機会を見逃した挙げ句、Drに追跡され仲間達を危険に晒してしまった。もうこれ以上の失態と迷惑は掛けられない。

 

「いや、必ずしもキリカが倒す必要はない」

「へ?」

 

 どういう事だろう、と首をかしげる。

 

「では、詳細な説明に入る………」

「………」

 

 様々な状況を想定したブリーフィングが終わったのは夕方。その後、私達は闇夜に紛れてエアマンタでキョロクへ移動する事になった。

 

 ◇

 

 朝日に照らされた町並みを上空から眺めるというのは中々出来ない経験だ。巨大都市キョロクは安寧堂の聖地だけあって、美しい造形の宗教施設が至る所に見受けられる。

 身を乗り出してあちこち眺めていると、やがてエアマンタの高度が下がっていく。着陸地点は森の中にひっそり建つ隠れ家前。

 

「やっと、やっと着いた………」

「もう、乗りたく、無いわ」

 

 エアマンタ酔いしたのか、若干顔色の悪いラバックとマイン。

 

「大丈夫ですか?」

「あんた達は良く平気ね。落ちたらどうしようとか、思わない訳?」

 

 マインがジト目でアカメやブラート、私を見る。

 

「気持ち良くてつい寝てしまった」

「俺は軍属時代に色々乗ってるからな」

「別に落ちても平気だから、でしょうか?」

「そ、そう………」

「皆、ここでチェルシーと合流する手筈になっている。一先ず休憩にしよう」

 

 ナジェンダを先頭に隠れ家へ入った。

 

「………」

 

 全員で軽食をとっていると窓の隙間から小さなリス──キョロスクワロルが入ってきた。愛くるしい動きで首を傾げたりしている。

 

──あれ? 何か違和感が。

 

 重心、歩き方、前足から後ろ足に移る力の流れ………

 

 キッキキ! きゅ?

 

「なに、こいつ。可愛いわね」

 

 席を立ち近づこうとするマイン。

 

「っ!」

 

 得体の知れない気配を感じ咄嗟に殺気を放つ。

 

「「「………!!!?」」」

 

 即座に反応したアカメ、レオーネ、ブラート、スサノオが緊迫した面持ちで臨戦態勢を取る。

 

「………きゅぅ」

 

 注目を浴びたキョロスクワロルは固まっていた。

 

「ちょ!? いきなりどうしたのよ」

「間違いだったらすみません。普通の動物じゃない気がして………」

 

 どろんッ

 

 リスがいきなりヘッドホンを付けた女性に変化。

 

「待って待って! ちょっと驚かせようと思っただけだから」

 

 床にぺたりと座り込んで涙目を浮かべている。

 

「チェルシーか。予定より早かったな」

 

 警戒を解くよう目配せするナジェンダ。

 

「し、死ぬかと思った………」

「怖がらせてすみませんでした。大丈夫です?」

 

 手を差し伸べて、チェルシ-を引き起こす。

 

「キリカってあなたの事でしょ」

「はい、何か?」

「後学の為に教えて欲しいんだけど、どうして分かったの?」

「えっと………重心の置き方、力の流れが普通の動物と違うように視えました」

 

 普段、二足歩行の人間が四足動物の真似をしたせいだろうか。

 

「マジかぁ、私もまだまだだなぁ」

「いいえ、私の感覚が少々特殊なだけで、チェルシーさんの擬態は完璧だったと思います。それにバレても命の危険が無い、仲間の前だからこその油断もあったんじゃないですか?」

「そうね、でも良い経験になったかな。さぁて、ちょっと情けない姿で初顔合わせになっちゃったけど、改めてみんなよろしくね♪」

 

 全員と軽い挨拶を交わすチェルシ-。

 

「状況に変化はあったか?」

 

 空気を切替えて尋ねるナジェンダ。

 

「羅刹四鬼がボリックから離れるよ。明日から街へ出て密偵のあぶり出しを始めるみたい。屋敷の警備はイェーガーズに選任させるって」

「敵戦力を削る好機だな。先ずは羅刹四鬼から消していくとしよう」

「あいつらは裏社会の人間を見分ける術に長けている。上手く利用すれば釣れるかもしれない」

 

 と、提案するアカメ。

 

「なるほどな。手配書の出ていないラバックを囮にするか」

「え? ぇぇええええええ!!!」

「………」

 

 そんな訳でちょっと可愛そうな悲鳴が響き、方針が固まった。

 

 ◇

 

 翌朝、早速ラバックを兎役にした囮作戦を開始。場所はエスデスが警護する屋敷から十分離れた商店街だ。私はボロの外套で全身を包み、距離を取ってラバックを追跡。視線や殺気を向ける者がいないか監視する。私自身の設定は生活の困窮に耐えかねて安寧堂へ救いを求めに来た村娘。空腹に苛まれている風を装いフラフラ歩いていく。時折、商店の食べ物を物欲しそうに見つめてみたりして、数十分が経過しただろうか。

 

──見つけました。北北西、高い建物の上。

 

 鋭い視線をラバックへ向ける4人組を発見。足がもつれたフリをして前へ倒れ込む。

 

「っ!」

 

 合図に気づいたラバックが待ち伏せ地点へ向け逃走を始めた。

 

「………」

 

 4人組はラバック目がけて建物の屋根上を駆けている。私は外套を脱ぎ捨て、追跡者の背中を見据えて走り出す。すると、私に気付いた男女2人が反転、飛び降りてこちらへ向かって来た。

 

──鋭い感をしてますね。

 

 どちらも情報にあった羅刹四鬼の一員。

 男の名はイバラ。短パンしか身につけておらず、目元に血涙のような刺青がある。極限まで鍛え抜かれた筋肉と体捌きを視るに位階_()相当。アカメの言っていた通り、中々できる相手のようだ。

 女の方はスズカ。袴姿で顔を含め全身の生傷が目立ち、実力は大凡位階_()といったところ。

 私なら二人相手でも十分に勝てる。正面から迎え撃ち、すれ違いざまに斬り抜けるとしよう。刀の鍔へ手を掛け、一気に加速………しようとしたタイミングでイバラが両腕の骨や関節を鳴らした。

 

「へぇ~強ぇ気配がビンビンするぜぇ」

 

 腕を何倍にも伸ばして手刀を次々繰り出してくるイバラ。

 

「ゾクゾクしちゃう! でも、残念。近づいたらヤバそうなのよね」

 

 更にスズカが銃弾のような勢いで五指の爪──爪弾(そうだん)を射出。

 

「っ!?」

 

 咄嗟に急停止、双剣と廻苦無(めぐりくない)を用いて迎撃する。鍛えられたイバラの両腕は鋼のように硬く、スズカの爪弾も貫通力がかなり高い。

 

──この攻撃方法は!?

 

 恐らく、幼少期より特殊な訓練と危険種の体液を用いた肉体改造を行っている。以前、倭国で戦った事のある忍集団の中にも似たような身体の敵がいた筈だ。

 

「へいへいへいへい、どぉんどんいくぜぇ!」

「格上相手は苦手そうな距離から攻めるのが大事」

 

 イバラとスズカは距離を保ったまま、激しい連携攻撃で攻め立ててくる。私との接近戦は分が悪いと考え、中距離から削りきる戦法を選んだのだろう。

 

「………」

 

 敵の判断は悪くない。力量差を理解した上で最適な行動を取っている。けれど、追加装備に身を包んだ私を相手にするには戦力不足。

 

──押し切らせてもらいます!

 

 私は右へ左へクルクルと回転しつつ、手刀と爪弾を斬り払いながらズンズン距離を縮めていく。

 

「こいつッ、止められねぇ!?」

「くぅ この!」

 

 焦りながら、後ろへ下がろうとするイバラとスズカ。

 

「………」

 

 縮地零式にて急加速。逃さないよう間合いを詰めた。

 

 我流・肆刃剣舞 鍾馗水仙(しょうきずいせん)

 

 花弁のような軌跡の斬撃を放ち、すれ違い様に二人を斬り刻む。

 

「は、速ぇ………惚れち、まったよぉ───」

 

 全身の毛穴からトゲ状の毛を吹き出しながら真っ二つになるイバラ。

 

「………」

 

 体毛で私を攻撃するつもりが、間に合わなかったようだ。

 

「あんっ! あぁぁあああんん♡ 逝く、逝くぅぅうううううう!!!───」

 

 身体が分かたれていく最中に奇声を上げて絶命するスズカ。

 

「え、ええ?………」

 

──何故、すっごい気持ち良さそうなんでしょうか………。

 

 私もかなりの数を殺してきたが、初めて見る死に様にポカンっとしてしまう。しかし、そんな事を気にしている場合では無い。速やかにラバック達の元へ合流するとしよう。

 待ち伏せ場所の墓地へ着くと既に決着が付いていた。

 羅刹四鬼の残り二人、顎髭を蓄えた巨漢──シュテンと褐色肌の小柄な少女──メズが血溜まりに沈んでいる。私以外の全メンバーに襲われては為す術もなかっただろう。

 

「キリカ、そっちはどうだった?」

 

 駆け寄ってくるアカメ。

 

「二人片付けました」

「そうか。これで憂いの種が一つ無くなったな。だが、正念場はここからだ」

 

 拳を握りしめるナジェンダ。

 

「………」

 

 エスデスとの決戦前に邪魔な敵戦力を削るのは最重要事項。まだまだ、キョロクにおける任務は始まったばかりだ。




余談
 チェルシ-のキャラ性能が強すぎる。
 敵の情報が全部丸わかり。情報こそが最大の武器です。
 ☆原作との違い
 ・ロマリー街道編がない
 ・イェーガーズのキョロク派遣が早まる。
 ・ワイルドハント早期結成
 ・Drの危険種がまだ出てこない。
 ・チェルシー効果で地理情報も完璧なのでキョロクの下調べパートが無い。

 原作改編の一番の原因はセリューの有無です。
 原作だと良くも悪くもセリューが疑わしきは罰せよと悪即斬しまくってました。それが、帝都の治安維持に大きく貢献していたと推察しています。しかし、今作では早々にSV2へ改造され、自由意志を失い悪即斬活動が出来ていません。結果、ちょくちょく帝具シャンバラで帝都の様子を見に来ていたシュラがイェーガーズよりワイルドハントの方が治安維持出来ると大臣に進言したと思われます。
 あと原作だとDrの改造危険種を遊び感覚で解き放っています。ワイルドハント結成が早まった結果、シュラのお遊びタイムが無くなりました。

 ☆ボリックは無能上司
 羅刹四鬼が突出してナイトレイドを狩りに来た結果、各個撃破される原因は原作同様ボリックさんです。
 イェーガーズが来たから羅刹四鬼を攻めに使えるようになったとか、訳の分からないことを言っています。イェーガーズと一緒に護衛として引き続き側に置いておけば良いのに・・・。罠だらけの屋敷を作ったりする臆病者の割に意味不明な行動だと思ってます。
 ナイトレイドにとっては有難い出来事。

引き続き、頑張って参ります。
評価、感想など良かったらお願いします。
次話は少しお時間下さい。お読みいただきありがとうございました。
 
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