戦場に響く軍楽夢想 スクリームの音色。味方全体の集中力を高める曲のようで私の感覚も研ぎ澄まされていく。
鬼神・闘争剣舞
特攻してくる異形兵の大群、その中央へ風穴を開けるように斬り抜けた。刀に伝わる感触は人体のそれではなく、まるで固い粘土のようだ。剣速が鈍れば敵の体内より刀が抜けなくなるかもしれない。
「「「フシュゥゥウウウ」」」
突出した私を異形兵が包囲。一体一体の身体から複数の触手が飛び出し包み込むように殺到してくる。
「なるほど」
──どうりで武器を持っていない訳です。
二刀を振い触手を弾きつつ、手近な数十匹を纏めて斬り裂いた。
「シャァッ!!」
胴体を半分ほど斬った個体が不気味な挙動で向かってくる。痛みや恐怖を一切感じず絶命するまで襲い掛かってくるようだ。
「ちッ、面倒な」
掴みかかってくる一匹を縦に両断。
「キリカ! 頭部を潰すか切り離せ!」
少し離れた場所で特殊なメイスを振るうスサノオ。
「そうします!」
鬼神・闘争剣舞
クルリックルリと回転しながら移動、敵集団の間をすり抜け、手当たり次第に首を刎ね飛ばす。
「異形兵は帝具部隊を中心に対応。他の兵は必ず3人以上で当たれ!」
指示を叫ぶナジェンダ。
「防御型帝具持ちはヘイトを稼げ! こいつら一番近いやつを攻撃してくる」
ラバックが異形兵の首に糸を巻きつけ複数纏めて刎ね飛ばす。
「毒だぁ! 毒をもってやがる」
「「「ぎゃぁああああああ!!!」」」
「武器がくっ付いて取れない! 腕力も相当だ、気をつけろ!」
帝具持ちの数は少なく戦場全体で一般兵の悲鳴が聞こえる。触手は鋼鉄のように固く兵士の鎧を容易く貫通。更に先端から毒液を流し込んでくるようだ。
ウェイブやブドー、精鋭部隊が動き出す前に一刻も早くこの大群を殲滅しないと犠牲者が増えるばかりだ。
「前方広範囲を一掃します!」
一旦、大きく後退。抜刀術の構えをとった瞬間………強烈な殺気を感じ背筋に悪寒が走る。
「グランフォール・フリューゲル………」
ウェイブが足を突き出して矢じりの如く弾丸よりも早く突っ込んできた。
「まさかッ!」
──刀を納めたこのタイミングで!?
私に隙が出来るのをずっと伺っていたのだろう。後方にはナジェンダ達がいて回避はできず、範囲技での迎撃は威力が足りない。急遽、態勢を変更して下から斬り上げるように抜刀。エネルギーをなるべく一点集中させて解き放った。
鬼神・断界抜刀術
私の生み出した風刃が蜷局を巻き暴竜となってウェイブの爪先と激突。拮抗は一瞬、直ぐにウェイブの蹴りが竜巻を突き破って迫りくる。多少勢いを削ぐことはできたが完全に撃ち負けてしまった。
「圧、殺………」
「………ッ!」
常闇で受ければ刀身を砕かれかねない威力。私は先の展開を見越して
ガギギンッ
──ぐぅ!
腕が痺れるほどの衝撃に手甲が砕け散り、そして周囲にクレーターが出来た。手甲が無ければ骨をやられていただろう。
「ナイト、レイド、オレ、タチ、イェーガーズ………ガ、狩る!」
ウェイブがマスティマの推進力を用いて急上昇しつつ槍を召喚。流れるような動きで踵落としを打ち込んでくる。
「………」
右に身体を反らして紙一重で回避、すると左からは薙ぎ払われた槍の切っ先が迫る。私は先に落ちてきた
「瞬、殺………」
以前と異なり、ウェイブの動きは滑らかで攻撃の後隙は皆無。一太刀を躱すとジェット噴射による不規則な軌道で縦横無尽に攻めてくる。
「………」
だが、私の方も前回とは違う。スクリームの効果で高まった集中力を駆使すれば、特殊な鎧越しでも薄っすら光の線が視えた。マスティマの推進力を利用していたとしても、動こうとする方向へ予め本人の意思が存在している。身体全体を流れる力さえ視えれば十分に対処可能だ。
──後ろへ五歩、左へ三歩。
間合いを調整してウェイブの位置を誘導。
「殴、サ!?」
狙い通りに落ちてきた
バキンッ
刀身を巻き込み、天蓋が砕け散ると同時に黒い煙を吹くマスティマ。
「頭上注意ですよ」
片方だけのジェット噴射でバランスを崩したウェイブへ肉迫。斬り下す、と見せかけてから柄を手放し懐へ潜り込んだ。両掌をウェイブの腹部に添えて発勁。
鬼神・闘身術
「ガフッ!?」
「まだまだッ!」
間髪入れず二歩下がって常闇を掴み取り縮地を使用。ウェイブの背後へ移動して鎧の弱そうな箇所──脇、肘裏、膝裏など間接の内側部分へ斬撃を叩きこんだ。鎧の切り口からは、やはり赤黒いゲル状のモノが溢れ出てくる。
──この手ごたえは?
前は気づけなかったが、ウェイブは既に人間をやめていた。鎧と人体の間にゲル状のモノがあるのかと思っていたが、多分違う。恐らくゲル状の物質が肉体そのものであり、ウェイブは完全にグランシャリオと同化しているようだ。
「オレ………ハ、負ケ、ナイ」
ウェイブが振り向きざまに回し蹴りを放つ。その鎧と肉体が驚異的な速度で修復されていく。
「自己再生!?」
光の流れを観察。よく視ると胸元に生命の源とでも言うべき何かが仕込まれており、そこを起点に回復を行っていた。
──参りましたね。長丁場になりそうです。
アカメさえ戻ってくれば鎧の中身を村雨で斬って貰えるのだが………。
ウェイブはジェット噴射が片方だけになり機動力は大幅に低下している。とは言え、他の誰かが相手を出来るほど弱体化はしていない。
私が手こずっている間に異形兵が革命軍兵士の命を奪っていく。ウェイブの反撃をいなしながら、焦りを感じ始めていると………。
突如、稲光が迸り雷雲に覆われる空。
「ブドー大将軍………浮いている、帝具の力なのか」
驚いた様子で上空を見上げるナジェンダ。
「総大将の位置はあそこだな。ナジェンダ共々消し飛ばせば貴様らなど総崩れだ。なにがなんでも反乱分子は残らず殲滅する。ソリッド・シューター!」
総大将とナジェンダへ向けて極太の雷撃波を打ち出すブドー。
「いけないッ!」
あんなものが直撃すれば、ナジェンダや総大将の部隊が消し飛んでしまう。
「マインッ」
「やっと私の出番ね。精神力は十分!」
浪漫砲台パンプキンを構え、極太のエネルギー波を放つマイン。
エネルギー波と雷撃波が激突。凄まじい攻めぎ合いの末に相殺される。
──良かった、流石マインさん。
「アドラメレクの全力を防ぎきるだと!? 小癪な。ならば親衛隊の道を開く! 雷帝招来!!」
天空より雷槍が無差別に降り注ぎ始めた。
「くッ!」
雷の直撃を避けながらウェイブの相手をするのは辛すぎる。
加えてウェイブや異形兵は高い雷耐性を持っているようだ。革命軍兵士達だけが一方的に被害を被り、次々吹き飛び黒焦げになっていく。
「ブドー、奴は天候そのものを操れるのか」
ナジェンダやマインの盾となって雷槍に撃たれるスサノオ。
「こんな攻撃いつまでも続けらんないでしょ!」
ブドーへ向けて低威力のエネルギー波を連射するマイン。
「帯電切れを狙っているのなら無駄なこと。私も帝具も怒っているのだ!」
電磁バリアでパンプキンの射撃を防ぎながら、自身にも雷を落とすブドー。アドラメレクにバチバチと激しい雷エネルギーが溜まっていく。
「これ以上は!」
──撃たせない!
マインの精神エネルギーには限界がある。
「閃、殺」
私の視線が逸れたのを見て隙と判断したのか、ウェイブが槍を突き出してくる。
「はぁぁああああああ!」
その攻めには付き合わず思いっきり地面を踏み砕き、粉塵を巻き上げて即座に跳躍。ウェイブが私を見失っている隙に空を駆けブドーへ突撃した。
【
ブドーの全てを視て私の存在位置を誤認、錯覚させるべく揺蕩うように接近。
鬼神・闘争術 秘奥の舞 百鬼繚乱
「なっ!? 空中で多重分身だと!?」
「終わりです」
無防備な側面を狙って斬りかかる。
「エスデスを倒した女か。あまり舐めてくれるなよ!」
ブドーが全方広範囲へ微弱な放電。即座に私の本体を見抜き、常闇の一太刀を籠手で受け止めた。
「ッ!」
闘技場で会った時より遥かに強い。間違いなく位階_
「アドラメレク!」
雷槍とは比べ物にならない程の高圧電流を収束させて放つブドー。
「うぁぁぁあああああああ!!!」
至近距離で直撃を受けてしまい、全身に激痛が走り無防備に落下してしまう。その最中、下方向より迫る強烈な殺意を感じ取り、強引に姿勢を整える。
「斬、殺………」
「痛ッ」
しかし、僅かに遅くウェイブの槍に脇腹を抉られての着地。
「先に貴様からだ!」
そこへ放たれる追撃の高圧放電。
「やらせないわよ」
危機一髪のところをマインのパンプキンが撃ち払ってくれた。
「助かりました」
しかし、戦況は全く好転せず私は地上で再びウェイブとの攻防を強いられてしまう。更には落雷によって生じた前戦の穴を突いて精鋭部隊1万人が猛進撃してくる。
「総大将の本隊は南東へ移動、大勢を立て直せ!」
ナジェンダの指示を受け総大将の部隊が移動を開始。
「逃さんぞ」
落雷を集め、先ほど同様にソリッド・シューターを放とうとするブドー。
ゴォォォオオオオン
突然、気勢を削ぐように帝都の方から響く大きな鐘の音。
「!?」
──この合図は一体?
「一時撤退せよ、だと!?」
「テッタイ………」
ブドーとウェイブが攻勢を弱め、精鋭部隊の進撃が止まる。
「………」
雷撃や斬られたダメージも残っており、無理な追撃はせず様子を伺う。
さりげなく都内の様子を見ればあちこちに煙が上がっていた。事前に知らされた作戦通りなら、革命軍の内部工作が成功したのだろう。
「まさか帝都の中にまで敵が入り込んだのか!? 陛下ぁぁああああ」
帝都陥落の危機に気づいたのか、猛スピードで宮殿の方へ飛んで行くブドー。そのすぐあとをウェイブが追いかけて行き、精鋭部隊もゆっくり後退を始めた。
「追わなくていい。今のうちに異形兵を殲滅するんだ!」
ナジェンダが馬で駆け回りながら叫ぶ。
「はい!」
異形兵には撤退の合図を理解する知性はない様子。周囲の帝具持ちと協力して片っ端から斬り刻み、程なく殲滅が完了した。
「「「おおおおお!!!」」」
革命軍兵士の歓声が沸き起こる。
「この戦、勝ったぞぉぉぉおおおお」
「あのブドー大将軍を退却させるなんて」
「このまま一気に宮殿を制圧するぞぉ」
士気が高まる兵士達。
「キリカ、大丈夫か?」
「はぁ、はぁ。
受けた傷のせいか込み上げてくる嫌な衝動。周りにいる負傷した兵士達が美味い食事のように錯覚してしまう。
──私は人間、私は人間…………落ち着いて深呼吸を。
先生の薬は鬼の血を酩酊させて衝動を抑える代物。飲めば、大幅に弱体化してしまう為戦いが終わるまで服用する訳にはいかない。
「私たちがブドーとウェイブを引き付けている間に反対側の城門は完全に崩れた。この
ハッと何かに気づいた様子で言葉に詰まるナジェンダ。
「どうしました?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ
地響きと共に帝都の中心、宮殿の地下から超巨大な何かが出現。思わず見上げると、それはマントを付けた人型の機械で頭頂部までの高さは優に200mを超えていた。
「護国機神シコウテイザー、存在していたのか!?」
「シコウ、テイザー………」
確か文献の一番最後に記載されていた皇帝の一族のみが使用できる最強の帝具。
ズシンッ
シコウテイザーが南側を向き、胸元にある目玉の様な部分から迸る閃光。
「み、南側の部隊が………」
ガチャン
更にシコウテイザーの全身各部の装甲が開き、内部の細かな目玉から無数のレーザーを照射。帝都外周の革命軍兵士を吹き飛ばし焼き払っていく。
「こんな………」
数千、数万と瞬く間に消えていく命。こんなモノ殺し合いでも、ましてや戦争ですらない。
──これが………これが人間のやることかッ!
撃たせれば撃たせるだけ、犠牲者が星の数ほど増えてしまう。一刻の猶予も無い状況で私は居ても立っても居られずに跳躍。空を駆けて一直線にシコウテイザーへ突撃した。
次回、最終話です。
感想、評価、是非ともお願い致します。
捕捉解説
異形兵
DRの改造人間をベースにドロテアの手が加わっている。原作の12巻、粘着質の体でアカメから村雨を奪った特性と改造コスミナが使用した毒液触手が攻撃手段。
奇奇怪怪 アダユス
描写はしませんでしたが原作通り革命軍兵士が使ってます。
当作品においてレオーネの腕を奪った強力な帝具ですが、強力な分制約も多々あります。振るう速度や角度によって空間の抉れる場所が変わるので使いこなすのは大変。更に亜空切断は連発出来ず、範囲、射程も狭い為、大規模な戦争だとあんまり活躍しません。
タイマン向けの帝具です。
ウェイブ
キリカとの初戦後、原作においてコスミナに使われた賢者の石を埋め込まれてます。肉体は錬金術により改造を受け、筋肉と脳、臓器以外は得体の知れない何かに置き換わってます。ドロテアって、地面に錬成陣書いて変なもの呼び出したりしてましたし割と何でもありなキャラです
ブドー大将軍
原作だと帯電残量がぁって電池切れでマインに打ち負けましたよね。でも降らせた雷で充電すれば良いのではとずっと思っていてオリジナルの解釈となっています。