-幻想郷
それは忘れ去られた者達の楽園。妖怪と神々と人間が共存する、幻想の楽園。その楽園は今、とある奇妙な異変に見舞われていた-
「お~い、霊夢~」
良くいえば歴史を感じさせる、悪く言ってしまえば古くさい神社の境内の上空に、綺麗な金髪を無造作に伸ばし、いかにも魔女ですと言うような三角帽と、白黒のエプロンドレスを着て、その上から暖かそうなポンチョを被り、マフラーを付けて箒に乗った可愛らしい少女が、自らの大親友を呼んでいた。彼女の名は霧雨 魔理沙、普通の魔法使いである。寒さで頬を赤く染め、手を擦りながら神社のはなれに回る。
「なによ魔理沙、うちは今日はお休みよ」
それにうっとうしそうに答えたのは、美しい黒い髪を紅白のリボンで纏め、脇の空いた紅白の奇妙な巫女服を纏い、炬燵に入って暖をとる博霊 霊夢であった。楽園の素敵な巫女と呼ばれ、この幻想郷で起こる異変を解決するという使命を帯びている彼女はしかし、とても面倒くさがりな怠惰な巫女である。
魔理沙は炬燵に入ってほう、とため息を付き、炬燵の上にある蜜柑の皮を剥きつつ首を傾げながら疑問を呈した。
「神社に休みってあるのか?」
「あるでしょそりゃあ。無かったら労働基準法で訴えてやるわ」
「誰をだよ」
「そりゃあ経営者を…って私か。じゃあ大丈夫ね、私はこうして休みを作ってるんだし」
「そうだなぁ。だけどな霊夢、ここは幻想郷だ、労働基準法は無い」
「そんな馬鹿な。責任者呼びなさい責任者。訴えてやるわ」
「責任者はもう冬眠してるな」
「ちっ、使えないわねあの隙間婆」
「ついでに言うと裁判所も無い」
「なんですって、責任者はどこよ」
「だから冬眠中だって」
軽口を叩きつつ皮を剥いた蜜柑を頬張り、美味しそうに顔をほこらばせる魔理沙を見て、霊夢も蜜柑に手を伸ばし皮を剥き始める。
「それでなんの用よ魔理沙、このクソ寒い日に」
「んー?用がなかったら来ちゃダメなのか?」
「ダメって言っても来るんでしょ」
「へへへ、まあな」
悪戯っぽく笑う魔理沙に呆れたようにため息をついて、蜜柑の白い筋をとる霊夢。食べ終わった魔理沙はそれを見て意外そうな顔をした。
「あれ霊夢、お前白い筋とるタイプだったっけ」
「んー?あー取ったり取らなかったりね、そもそも私この白い筋苦いから嫌いなのよ」
「ふーん…よっ」
「あっ、こら」
魔理沙は白い筋を取り終わった蜜柑のひとつをとって、口にポイっと放り込んだ。霊夢がそれにまったくと言うように息を付くと、魔理沙はキュッと顔をしかめた。
「う゛」
「?どうしたのよ変な顔して」
「…これすっげー酸っぱい…」
霊夢は声をあげて笑った。
「はー、おっかしい…で、なんの用なのよ」
笑いすぎて出てきた涙を指で拭いながら、もう一度訊ねると、自分で淹れたお茶で口直ししながら恨めしそうに見ていた魔理沙が、軽く身を乗り出しながら話し出す。
「あ?あー…いやな、なんか今年、やけに寒いと思わないか?」
「ん?あー…まあ、そうね。寒波でも来てるのかしら」
「もう1ヶ月はこの調子だぜ?それにまだ10月なのにもう氷点下だ。それでゆかりはとっとと冬眠しちまったし。さすがに変だろ」
「まあ、ねえ」
「それに、こんなに寒いのにどうゆう訳だか雪も降らないんだぜ?」
「ああそういえば…ここ最近、ずっと晴れてるわね。良いことじゃない」
「んなわけあるか。1ヶ月もずーっと雲ひとつ無いなんて、あるわけ無いだろ砂漠じゃないんだから。異変だろうこれ、どう考えても」
「………やっぱそう?」
「そう」
はー、と深いため息を付き、面倒臭そうにガシガシと頭をかきながら得物であるおおげさを手に取る。
「こんな寒いのに、誰よまったく」
「いや寒くしてるんだろ?」
「ああそっか…まあ、寒いってんならチルノかしらね、第一容疑者は」
「まあそうだろうな。でも晴れてるのは何でだ?」
「さあね、聞いてみりゃわかるでしょ多分」
「だな。じゃあ行くか」
「はー…めんどくさい」
そういって、二人は霧の湖を目指して飛んでいった。魔理沙は箒にのって、霊夢は能力を使って。
しかし二人はまだ気づいていなかった。
-この異変が、一筋縄では行かないことを
はい、多分この話は三話くらいで終わると思います
ゆるゆると更新していきます