仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 劇場版編 作:風人Ⅱ
とある平行世界の謎の建造内・玉座の間……
零達一行が順調にライダーの世界を巡って滅びの現象を阻止し続けてるその頃。とある平行世界の謎の建造物内の王座の間では、一人の男と異形が向き合い対談する姿があった。
終夜「――成る程……それが貴様の意見か」
零の持つ破壊の因子と彼の娘であるヴィヴィオを狙い暗躍する組織のNo.1、玉座に座る男……闇無 終夜は目の前に立つ深紅の異形の意見を聞き、何かを納得し目を細めた。
終夜「確かに、我々にとってあの神共は邪魔な存在……しかし、元大ショッカーの残党である貴様が我らに力を貸すとは……何を企んでいる?」
『決まっている。私はかつて、我らの組織の大首領であったオリジナルディケイド……門矢 士の手により潰された。あの忌々しい破壊者の手により、私自身も殺された……だが、我らのよく知る鳴滝とよく似た存在によって再び蘇る事が出来た!私の目的は一つ……全てのライダーを抹殺することだ!』
訝しげな終夜からの問いに、深紅の怪人……嘗て正史世界のディケイドによって倒されたアポロガイストは内なる憎悪の炎を燃やし、握り拳を掲げ力強く叫んだ。
終夜「ほう……で、我らに何のメリットがある?」
『鳴滝の情報では、黒月零……外史世界のディケイドは断罪の神の過去の世界、クロノスの世界に行くように仕向けたそうだ』
終夜「?零の世界の行き先を指定できるのか?」
『キバーラとか言う蝙蝠を上手く使ったそうだ』
終夜「……ふむ」
自分達組織の目的は、零の因子とその娘のヴィヴィオだ。利害は確かに、自分達へのメリットはある。
終夜「……良いだろう……裕司?」
アポロガイストと手を組む事を承諾し、終夜が暗闇に向けて名を呼ぶと、暗闇の向こうから裕司が姿を現し玉座の隣に立った。
裕司「如何しましたか?」
終夜「真也に伝えろ……アポロガイストと共に【人間時代の天満幸助を抹殺し、時と断罪の因子を手に入れろ】とな……今までの失態をココで取り戻せとも伝えておけ」
裕司「御意」
終夜からの指示に一礼してそう応えると、祐司はゆっくりと闇に溶け込むように消え玉座の間から出て行き、終夜はそれを見届けた後にアポロガイストの背後に目を向けて軽く嘆息した。
終夜「……ところで、一つ聞こう、アポロガイストよ」
『何だ?』
終夜「さっきから貴様の後ろで、我らの食糧を淡々と食い続けている男は誰だ?いい加減食うのを止めさせろ……食糧は無限ではないんだぞ」
『……それはすまないな。彼は【ガオウ】、私の同士でもあり、最強のライダーだ』
何処か呆れるような視線を向ける終夜に一言謝りアポロガイストが背後へと振り返ると、其処にはむしゃむしゃとありったけの食糧を喰らう男……かつて、神の電車と路線を操り、時間を消そうとし電王達によって倒され時間に消えたハズのガオウの姿があった。
ガオウ「むしゃむしゃ……美味いな、この飯」
……話を全く聞いていないが。
◇◆◇
―パンデモニウム・訓練室―
そしてその一方、断罪の神を始めとした神々が住まうパンデモニウムの訓練室では、二人の青年が模擬戦を繰り広げる光景があった。
幸助「遅い!!もっと周りを見ろ大輝!!相手の動きを何十通りと予測し、誘導しろ!!」
大輝「グッ!はい!!」
断罪の神としてあらゆる世界から恐れられている天満幸助と、その弟子海道大輝。今回は珍しく幸助に弄られず真面目に修行を受けていた大輝だが、次第に幸助に押され始め、最終的には首に手刀を当てられ今回の模擬戦は終了したのだった。
大輝「ふぅ……背中は遠いなぁ」
幸助「当たり前だ。年季が違う」
休憩に入り、汗だく塗れの大輝は首にタオルを掛けてスポーツドリンクを飲み、一息ついていた。……幸助は全く疲れていないので汗一つ出していなかったが。
そして、そんな大輝の隣で先程模擬戦で使用した愛剣を磨いていた幸助は綺麗に磨かれた刀身を眺めると、剣を鞘に納めて次の修行を何にするか考えようとした。その時……
―シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ……―
幸助「ん……?なんだ?」
大輝「……えっ?幸助さん!?」
幸助が地面から腰を上げ様としたその時、突然幸助の身体から無数の粒子が立ち上り始めたのだ。それを目にした大輝も思わず疲れを忘れて立ち上がり、幸助の全身から立ち上る粒子を見て目を見開いた。
大輝「ちょ!?何ですかそれ!?」
幸助「……ああ、大体理解した。誰か知らんが、俺の過去を変えたようだな」
大輝「って、何であわててないんですか!?」
そう、一大事の筈なのに、全く慌ててなく、寧ろ落ち着いてすらいる幸助にツッコミを入れてしまう大輝。
幸助「んにゃ、いずれこうなるとは分かっていたしな……まさか今頃とは」
大輝「いや、分かるように説明して下さいよ……」
余りに冷静な調子で返され、大輝も落ち着きを取り戻して状況の説明を求めるが……
幸助「すまん、話している時間はないようだ」
そう言う様に幸助の粒子化のスピードが徐々に上がり始め、その姿もだんだんと透明になって見えなくなってきていた。
大輝「幸助さんっ?!」
幸助「大輝!零の写真館に向かえ!!そこから過去の――クロノスの世界に行け!!敵は恐らく、力がまだ未熟だった時代の俺を狙う筈だ!!」
その言葉を最後に、幸助の身体は無数の粒子となって宙に拡散し消えてしまった。
否、幸助だけではなかった。
大輝は確認しなかったが、シズクやなのは、レイにナナに雷に刹那も既に消滅していたのだ。
そして、幸助に助けられた並行世界の人物にも影響は出始めていた。
幸助の消滅
それは、彼と関わった世界の消滅に繋がる出来事でもあったのだ。
大輝「不味いな……幸助さんが消えれば、過去にあの人に助けられた人達は……いや、それは俺や零にも影響することだ……時間が無いっ!」
先程まで幸助が立っていた場所を見つめ、これまでにない危機を感じた大輝は、急いでその場から駆け出し光写真館に向かっていった。
◇◆◇
―光写真館―
そして、パンデモニウムでそんな大事件が起きているとも露知らず、Wの世界を後にした零達一行は次に現れた背景ロールの絵を見て揃って首を傾げていた。
はやて「今度の世界……何やろコレ?宇宙の真ん中に、消え掛かってる時計?」
零「……クロノスの世界か」
なのは「え?クロノスって、幸助さん達の世界って事?」
背景ロールの絵を見て次はどんなライダーの世界かとなのは達が考えていた中、鋭い目付きでクロノス……幸助達の世界であることを呟いた零に一同の視線が集まる。だが……
スバル「あれ?でも待って、何でまたクロノスなの?私達は前にクロノスの世界に行って修行したりしたし、確か幸助さんが一回死んで断罪の神(メモリー)になったから、もうクロノスじゃなくなったハズでしょ?」
ティアナ「そうよね……あの時はもうホント、なのはさんたちの訓練の方がマシだって思えるくらいヒドイ修行をさせられたし、もう関わる事もないって思ってたのに……」
ノーヴェ「ま、まさかっ、またあんな地獄みてぇな修行を受けさせられたりとかするんじゃねぇだろうなぁ……」
前回訪れたクロノスの世界で幸助達に受けさせられた地獄のような特訓を思い出したのか、スバルにティアナ、ヴィータやナンバーズは顔を青ざめあからさまにテンションダウンして落ち込んでいき、その特訓を受けていないメンバーは頭上に疑問符を浮かべて不思議そうに彼女達を見ていくが、それを否定するように零が首を振って口を振った。
零「いや、どうやら今回は前回とは少し違うようだ。ほら、見てみろ」
なのは「え…?」
そう告げて零が指差したのは、自分が座るテーブルの上に置かれた一枚の新聞紙。それを見た一同は怪訝な顔を浮かべながらテーブルの周りへと集まると、フェイトが新聞紙を手に取って記事を読み上げていく。
フェイト「えっと……【時渡り町の都内某所にて怪人再び、仮面の戦士達は正義の味方か?】これって……」
なのは「この写真に写ってるのって、クロノスだよね?ちょっとピンぼけしててわかりにくいけど」
零「それだけじゃない、その新聞に書いてあるだろ?此処は時渡り町……前回はミッドチルダに跳ばされたのに今回は全く別の町で、しかも町の人間にクロノス達の事がまだ知れ渡っていない。つまり――」
ヴィータ「……!まさか、幸助達の過去の世界だってのか?!此処が?!」
零が言わんとしている事が伝わったのか、背景ロールの方に振り返って驚愕の声を上げるヴィータ。それを聞いたなのは達もこの世界があの幸助達の過去の世界と知って驚愕していくが、零は何処か複雑げな表情で頭を掻いていた。
零「まぁ、雷達の件もあるから有り得ない話ではないだろうが、アイツ等の人間時代の世界ってのはな……未来であんなチートになる経緯を見る事になるんじゃないかと恐ろしくも思うが……」
姫「そうか?私は毟ろ興味があるぞ?あの断罪の神達の人間時代というのも滅多に見られないだろうしな。なあ、ウオミー?」
「そうですね。彼等がどんな人間時代を過ごしていたかは、彼の七柱神ぐらいしか知り得ないですし。私も非常に興味が沸きます」
余り乗り気ではない様子の零とは対称に同じ神として有名な幸助達の人間時代が気になるのか、姫と彼女の友神である水ノ神……市杵宍姫ノ命(いつきししひめのみこと・戸籍上は宍戸 魚見)は好奇に満ちた目を浮かべ、そんな彼女を横目に映紀が零へと近付き口を開いた。
映紀「ま、この世界がなんであれ取りあえず外に出てみるしかねぇだろ。此処でウダウダ言っていても仕方ねえんだし」
零「ああ、分かってる。何だか嫌な予感もしなくもないが、とにかく外に出てみるか……」
映紀にも促され、とにかく外に出て此処がどんな世界か自分の目で確かめようと、零は椅子から立ち上がりなのは達と共に外に出ていった。
◇◆◇
そして……
零「――んで、最早恒例の衣更えな訳だが……」
なのは「にゃはは……また学生服、みたいだね……」
写真館の外に出れば、例に洩れず零となのはの服装が変化していた。今回は以前にもあった何処かの学校の学生服のようだが、やはり実年齢からして少々無理があるように見える。特に、なのはなんかは出てる所が出っ張っており、それに気付いた零はジト目でなのはの胸の辺りを見つめながら口を開いた。
零「なのは、お前……また増えたんじゃないのかっ?」
なのは「え?…う、嘘っ!そんな筈ないよっ!だって最近はちゃんと調整したりして気をつけたりしてるんだからっ?!」
零「あ?……ああ、いやそっちじゃなくて、その無駄にデカイち―ドグオォッ!―ゴハァッ?!」
アリサ「余計なことを口にせんでいいっ!」
どうやら体重のことを指摘されたと思い込んで激しく動揺するなのはに訂正して何かを言おうとする零だが、それを阻むようにアリサの肘が横っ腹に打ち込まれその場に蹲まってしまい、他の一同はそんな三人を無視して外の町並みを興味深そうに見回していく。
セッテ「此処……ほんとにミッドチルダではないようですね」
セイン「時渡り町、だっけ?此処が幸助さん達が人間時代に住んでた町なのかね?」
ディード「さあ……ですが、この時代の幸助さん達がまだ人間だとも限らない気がしますけど。もう人間を辞めているか、或いは神として目覚めてる可能性もありますし」
オットー「後者はともかく、前者は普通にありそうで怖いけどね……」
未来であんな理不尽窮まりない存在になってるぐらいなのだから、この頃から既に人間を辞めてたとしても何ら不思議でもないような気がする。そんな事を考えながらセッテ達が苦笑いを浮かべてると、零がアリサに殴られた横っ腹を抑えながらユラリと立ち上がった。
零「うぐぅ……まぁ、何れにしろこの世界の幸助達に会わないと何も始まらないしな……取りあえず、この制服の学校に行ってみるしかないだろうっ」
なのは「うん、えっと……あっ、あったあった」
零の提案に頷きながら自分の制服のポケットを漁って調べると、胸ポケットから生徒手帳らしき物を見付け、なのはは中身を開き手帳の中を一同にも見えるように見せていく。其処には……
優矢「……TIME学園?」
すずか「この学園に通う事が、この世界での零君となのはちゃんの役目ってこと?」
なのは「うん、多分。でも前回が前回だったし、どうせ今回もそんな大した事件なんて起きないと思うよ?」
零「甘いな。前回があんなだったからこそ余計に油断出来ないんだろ?もしかしたら、実はその学園自体が既に幸助達に支配されていて、またあんな地獄のような特訓を無理矢理受けさせられたりとか……」
なのは「そ、そうとは限らないでしょっ。だってほら、カードだってあるんだし、もう修行させられる必要は……えっ?」
最悪のビジョンを想像する零に苦笑いを向けながら、彼を安心させようと事前にKウォッチで出しておいた自分のライドブッカーからジェネシックと冥王の二枚を取り出すが、なのはは二枚のカードを目にした途端何故か突然固まってしまう。
零「……?なのは?」
なのは「……え……嘘っ、何で……?」
突然様子が変わったなのはが気になり問い返してみるが、なのはは信じられないものを見るかのように二枚のカードを見比べ何も答えない。そんななのはの様子から何かあったのかと余計に気になり、一同はなのはの下に集まって彼女が持つカードを覗き込んでいく。其処には……
優矢「――っ!え、なんだこれ?」
アズサ「カードの能力が、消えてる……?」
そう、魔界城の世界や前回クロノスの世界を巡った際に手に入れたジェネシックと冥王のカードの絵柄がシルエットだけになり、二枚のカードに宿っていた能力が何故かいつの間にか消滅してしまっていたのである。能力が消えてシルエットのみとなった二枚のカードを見てなのは達も動揺を隠せない中、その様子を見ていた零も険しげに眉を寄せながら懐からライドブッカーを取り出してクロノスのカードを確認すると、クロノスのカードも同じように絵柄が消えシルエットだけとなっていた。
零「クロノスのカードも、力が消えてる……?」
なのは「ど、どうしてっ?だって、今まではちゃんと使えてた筈なのに……」
零「……単純に此処が過去の世界だからとかじゃないか?ま、何にせよこの世界での役目を果たせばカードだって力を取り戻すだろう。多分」
カードが力を失った原因を適当にそう考えながらクロノスのカードを仕舞うと、零は地面に置かれた学校の鞄を掴んで背中に背負いながらなのはを置いてとっとと歩き出した。
零「とにかく、今はそのTIME学園とやらに行ってみるしかないだろ。急ぐぞ」
なのは「え、ちょ、ちょっと待ってっ?!」
せっせと歩き出す零を見て地面に置かれた鞄を掴み、慌てて零の後を追い掛けるなのは。そんな二人の後ろ姿を見送りながら優矢達も苦笑いを浮かべてしまうが、この時誰も気が付いてなかった。
彼等の知らないところで、世界の命運をかけた死闘が始まろうとしていると言うことに……
過去と未来を掛けた決戦の幕が開き始めた……