仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 劇場版編   作:風人Ⅱ

16 / 32
劇場版小説/仮面ライダー×仮面ライダー ディケイド&ツヴァイ NOVEL大戦Evole ディケイドパート②

 

―安土城・謁見の間―

 

 

―――安土城。現代の歴史では織田信長が建てた城として有名であり、本能寺の変で明智光秀に織田信長が討たれた後、その後を追うように焼かれて崩れ落ちたとされている。そうしてそんな有名な城で、あの謎の戦士についてと零自身についての説明を聞きたいと申し出た信長達に保護された零は、今現在城の謁見の間に通されている訳なのだが……

 

 

零(―――想像していた城のイメージと随分掛け離れ過ぎてるな……おい……)

 

 

若干気落ちした様子で内心そう思いながら零が謁見の間の部屋中を見回していくと、先ず零の目に付いたのは、畳み18以上はあると思われる部屋の壁にこれでもかと言うぐらいに埋め込まれたモニターの数々。

 

 

次に、零の正面に腰を下ろしているこの城の主の信長の背後に掛けられた信長の刀……のすぐ隣の壁に立て掛けられてる、火繩銃よりも高性能なライフルやハンドガン等の様々な銃器。

 

 

……折角の立派な城の和のイメージが台無しである。

 

 

信長「―――?どうした、ディケイドよ?何やら落ち込んでいるように見えるが」

 

 

零「……いや……なんか、一種のカルチャーショックみたいなものを受けている真っ最中というか……まぁ気にするな……」

 

 

信長「?」

 

 

何気に歴史の教科書に書かれているような、日本の城というものに始めて訪れるとあって少なからず期待があったのだが、実物を目にして想像してたイメージと違い過ぎててあからさまにテンションが下がっている零。

 

 

因みに何故こんなモニターやらハンドガンなどの現代的な品物があるのかというと、どうやらこの戦国世界は科学技術が異常なまでに発達しているらしく、その技術力は現代に追い付くかそれ以上にまで匹敵するらしい。

 

 

それ故に釜は勿論、炊飯器に似たような機械とか普通にあるし、筆も使われるがペンに似た筆も普通に使われている。

 

 

戦場においても、ロケットランチャーや戦車までもが持ち出されているらしく、これらを始めとして若干の違いはある物の、この世界の歴史や文化は零達の知る日本の史実とは大きく掛け離れているらしい。

 

 

零(信長を始めとした武将が女だったり、武者ライダーがいたり、この戦国世界も平行世界の可能性の一つって訳か……最早なんでもありだな……)

 

 

信長「――ふむ……つまり今までの話を纏めると、こういう事か?お主やお主の仲間達は様々な世界を旅しており、その折に訪れたとある世界であの敵と遭遇して戦いになり、奴がこの世界に逃げた際にお主とその仲間達も巻き込まれてこの世界に飛ばされてしまった……と?」

 

 

零「……ん?ああ……一応はそんな感じ、だな」

 

 

少しばかり考え事をしてたせいで後半の部分しか聞き取れなかったが、取りあえず話を進める為に一応頷いておく零。そしてその話を今まで訝しげに聞いていた、蘭丸と信長の家臣の一人である白の甲冑を纏ったポニーテールの茶髪の女性、柴田勝家は戸惑いを覚えていた。

 

 

勝家「しかし、俄かには信じ難い話ですね。此処とは別に違う世界があるなどと……」

 

 

蘭丸「私は寧ろ一つも信じられません、そんな異世界などと突拍子もない……。この男が虚言を吐いているだけなのでは?」

 

 

「そうかもしれませんね。ですが、彼の話が本当ならただ虚言と吐き捨てることも出来ないでしょう。実際あの敵は、我等と家康の軍の武者ライダーを二人も圧倒して取り込み、更に無数に怪物を生み出して戦場を掻き乱している……それに私達の知る武者ライダーと違って、人間である彼そのものが、今までの話の信憑性を物語っていますし」

 

 

零に疑いの眼差しを向ける蘭丸にそう言って宥めるのは、温厚な雰囲気を漂わせる赤み掛かった長髪の女性……信長の家老の丹羽長秀であり、彼女の言葉に同意するように信長も静かに頷いた。

 

 

信長「武者ライダーはこの世界において、武の概念が守護者として具現化した、言わば守り神のような人間とは異なる存在だ。人間が変身して戦うなど聞いた事がない。……最も、伊達家の武者ライダーが例外で、人間が変身していたとあらば話は別だが」

 

 

零「……伊達家、ねぇ……そういえばさっき戦場でも気になる質問を幾つか受けたが、その伊達政宗に何かあったのか?無事なのかとか生きているのかとか、何やら随分穏やかじゃなかったが……」

 

 

武者ディケイドの主君……この世界の伊達政宗の身に何かあったのか。零がそう質問を投げ掛けると、信長は無言のまま長秀に目配りし、長秀も小さく頷き返し代わりに零に説明し始めた。

 

 

長秀「もう半年ほど前になるのですが……我々や他の陣営と同じように武者ディケイドを従え、天下取りの戦いに明け暮れていた伊達政宗率いる武者ディケイド軍が、突如何者かの襲撃を受けたのです」

 

 

零「襲撃……?他の陣営からか?」

 

 

長秀「分かりません。我々も散々調査を繰り返しましたが、武者ディケイド軍を襲撃した者の正体に繋がる手掛かりは何一つ得られませんでしたので」

 

 

信長「……その襲撃により、武者ディケイド軍は事実上の壊滅。伊達家の当主である伊達政宗は消息不明。奴に付き従ってた武者ディケイドも見付からず、恐らく襲撃を受けた際に何者かに倒されたのだと思われるが……」

 

 

零「……成る程……だから俺を見て、その武者ディケイドが現れたと勘違いしたって事か」

 

 

伊達政宗と共に行方知れずになってる武者ディケイドと寸分違わない外見をしたディケイドがいきなり目の前に現れれば、伊達政宗が生きていて差し向けたか、そうでなくても武者ライダーが死んだ伊達政宗の弔い合戦で戦に乱入してきたと考えても無理はない。零がそう考え一人納得する中、信長が不意にニヤリとその顔に笑みを張り付けながら立ち上がった。

 

 

信長「しかしまあ、お主が武者ディケイドであろうがそうでなかろうが、そんなのは我等にとって些細な事だろう……寧ろ、運はまだ我等を見放していなかったと喜ぶべきか」

 

 

勝家「……え?」

 

 

蘭丸「姫様?それは、どういう……」

 

 

家臣である勝家や蘭丸でも信長が何を言っているのか分からないのか、二人揃って頭上に疑問符を浮かべているが、長秀は何か知っているのか両瞼を伏せて何も言わず、信長は何処からか美しい扇子を取り出し零に突き付けて……

 

 

信長「ディケイド――いや、その姿では零だったか。お主は確か、お主と一緒にこちらの世界へ飛ばされた仲間達を探し、あの敵を見つけ出して倒そうと考えているのだろう?」

 

 

零「?……ああ。あの二人、特に片方の力がないと元の世界に戻れんし、アイツの能力を考えると放置するのは危険だろうしな。なにより奴には個人的な借りもあるから、それを返さないと気が済まん」

 

 

信長「ふむ、そうか。――では零よ、我等がその二人を探す手伝いをする代わりに、我が軍の武者ライダーにならぬか?」

 

 

零「…………は?」

 

 

まるで不意を突くような、予想外な言葉を投げ掛けられた零は鳩が豆鉄砲を食ったような顔を浮かべて信長を見上げていき、零と同じように今の信長の言葉を聞いて唖然としていた勝家と蘭丸も我に返って慌てて声を荒げた。

 

 

勝家「ひ、姫様ッ!突然何をおっしゃるのですかッ?!」

 

 

蘭丸「そ、そうですよッ!そんな、何処の馬の骨かも分からぬ輩を武者ライダーにするなどッ!」

 

 

信長「突拍子もない事を口にしている自覚はしておるよ。だがな、我が軍は先の戦でツヴァイを失ってしまっている……。戦国バトルロワイヤルの要である武者ライダーが無くては、この先の戦を戦い抜くなど到底不可能に近いのだ。それは、お主達とて分かっておるだろう?」

 

 

勝家「そ、それは……そうかもしれませぬが……」

 

 

信長「……我はどうしても天下が欲しい。この手で、天下を取らねばならぬのだ。その為に武者ライダーが必要ならどんな手を使ってでも手に入れてみせる……それが異世界人であろうとな」

 

 

蘭丸「し、しかしっ!長秀様も何とかおっしゃって下さいっ!」

 

 

長秀「?あら、私は姫様の意見に賛成ですよ?」

 

 

勝家「は、はぁッ?!何を言ってっ……!」

 

 

長秀「止める理由こそ、それこそ私達にはないハズでしょ?姫様が今言った通り、我が軍が武者ライダーを損失したのは相当の痛手……無論、例えこのまま武者ライダーを失った状態でも策を張り巡らせさえすれば、武者ライダーの一人や二人は倒せるかもしれないけれど、それは得策とは言えない。こちらの方が甚大な被害が出るのは目に言えているし、そんな無茶な戦法でこの先も勝ち続けていくなんて、不可能よ」

 

 

蘭丸「それはっ……むぅっ……」

 

 

零「……おい……勝手に話が盛り上がっているところ悪いが、俺はお前達の武者ライダーになる気なんてないぞ」

 

 

信長「ぬ?」

 

 

零を新たな武者ライダーとして迎えるか否か。それについて徐々に熱を帯び始めている武将達の会話を断ち切るかのように零が横から割って入ってそれを止め、信長達の視線が零に集まっていく。

 

 

長秀「何故ですか?貴方が織田家の武者ライダーとなれば、貴方が探しているお仲間を広い範囲で探せますし、なにより此処で不自由なく過ごせる……悪い条件ではないと思いますけど?」

 

 

零「確かにそれは願ったり叶ったりだが……生憎俺は天下に興味はないし、戦の道具にされるのも御免だ。そもそもそんなに天下取りをやりたいって言うなら、お前達だけでやればいいだろう」

 

 

蘭丸「なっ……貴様ぁっ!我等の戦への決死の想いを侮辱するつもりかっ?!」

 

 

零「だからこそだ。俺にはお前達が戦に掛けてる覚悟なんぞ分からんし、興味も一切沸かない……そんな奴がお前達と肩を並べて戦っても、お前達のその想いとやらを汚すだけにしかならないだろ」

 

 

信長「ふむ……成る程……だから我等の武者ライダーになる気はない、と……お主の気持ちは分かった。

 

 

 

 

 

……しかし、お主に拒否権はないと思うぞ?」

 

 

零「……何?」

 

 

ヒュッと、零と信長の間に冷たい風が吹き抜けたような感覚がした。その意味深な言葉に場の空気が不穏な物へと変わり、零は険しげな目付きで悠然と佇む信長を見据えた。

 

 

零「どういう意味だ、それは……何が言いたい?」

 

 

信長「どうもこうもない、そのままの意味だ。お主には、我等の武者ライダーになる以外に道はないのではないかと言っている」

 

 

零「それがどういう意味かと聞いているんだ……まさか、従わなければ此処で俺を捕らえて、拷問でもするつもりか?」

 

 

信長「最初は必要とあらばそうせざるを得ないかとも考えはしたが、今のところそれも必要ないだろ。そんな無粋な真似をせずとも、お主は今や我と共に戦うほか選択肢はないのだからな」

 

 

零「……意味が分からないな。俺にはお前に従う理由などない……その底抜けの自信は一体何処から来るんだ?」

 

 

例え此処で今さっき言ったように信長達が零を捕らえようとしても、ライダーに変身さえすれば此処を抜け出す事など簡単に出来る。だというのに、零には自分の意向に従うしかないなどと絶対の自信を持って言い切る信長に零は目を細めて思わず身構えていき、信長はそんな零にニッコリ、と天使のような悪魔の笑顔を向けて……

 

 

 

 

 

 

 

 

信長「自信ならあって当然だろう?何せ、我とお主はもう『夫婦』なのだからな♪だから、『夫』が『妻』を裏切るなど出来るハズがないだろ?」

 

 

零「………………………………………………………………………………………………………………はぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

何言ってんだコイツ?、とそう思うしかない戯言を口にしたのであった。無論、そんな意味不明な言葉を向けられた零も頭の可笑しい人間を見るような目でニコニコと笑う信長を見上げ、勝家と蘭丸も間抜けな顔で呆然とそんな信長の背中を見つめているが、丁度そこへ城の廊下から一人の侍女が現れ、信長の傍に近づき頭を下げて一枚の文書を手渡した。

 

 

「姫様、こちら、先程届けられました」

 

 

信長「む、丁度いいところに来たな。よし、下がっていいぞ」

 

 

「はい、では」

 

 

信長と家臣達に深々とお辞儀をすると、役目を終えたからか侍女はそのまま謁見の間を後にして出ていき、信長は侍女に渡された文書に目を通しニヤリと不敵に笑った。

 

 

信長「よし、これでやっと杞憂は全て晴れたな」

 

 

零「…………おい、こっちは杞憂どころか疑問一つも晴れていないぞ、さっきのはどういう意味だっ?」

 

 

信長「ん?ふむ、そうだな……まっ、実際にその目で見てみるといい。百聞は一見に如かず、だ」

 

 

零「あ?」

 

 

にんまりと満足げな笑みも隠さずに文書を見せてくる信長に若干イラッと苛立ちを覚えつつも、零、ついでに勝家と蘭丸もその背後に回って怪訝な目付きで文書を覗き込んでいく。其処には……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

婚姻届 【承認済み】

 

 

妻 【織田 信長】(拇印)

 

夫 【黒月 零】(拇印)

 

 

(中略)

 

 

以上、上記二名を『夫婦』と認め(略

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零「…………………………………………………………………………………」

 

 

勝家「………………………………………………………………………………」

 

 

蘭丸「………………………………………………………………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はあぁぁぁぁああぁぁぁあああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ?!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一同絶叫。其処に書かれていたのは、信長の達筆な字と零の字で書かれた二人の名前と、二人の拇印が確かに押された婚姻届だったのである。その見覚えのない紙切れを見て零と他二名の、最早喧しいを通り越して心地好いとすら感じるほど気持ちよく重なった三人の悲鳴が城中に響き渡り、そんな三人の反応に信長も更に満足し扇子を開いて笑ってみせた。

 

 

信長「どうだ?これでよく分かっただろ?お主が幾ら我等の申し出を断ろうとも、お主は既に織田家の人間なのだ。最早選択など意味は成さぬという事だな♪」

 

 

零「…………ぁっ…………な、がっ…………ぅあっ…………ふ、ふふふっ、ふふふふふふざけるなァッ!!!!!何なんだこの婚姻届ってッ?!!!!俺はこんなモノを書いた身に覚えなぞないぞッ?!!!さてはあれだなっ、でっちあげたなぁッ?!!!!」

 

 

信長「ん?いやいや、此処に書かれているのは確かにお主がその手で書いたものだぞ?ほら、よーく思い出してみろ、この城に入る時のこと」

 

 

零「な、にっ……?」

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―――数刻前……

 

 

零『―――入門表?』

 

 

『えぇ、城に入る人間には全員書いてもらっているんです。なにせこんな世の中ですから、怪しい輩が身分や姿を偽って姫様に近付こうなどと考えるやもしれませんので……』

 

 

零『……ふむ……ま、それぐらいなら別に構わんが……』

 

 

―カキカキカキッ―

 

 

零『……?なんだ?おい、この筆、字が書けないぞ?』

 

 

『え?嗚呼、申し訳ありません。もしかしたらインクが切れ掛かっていたのかも……手元に変わりもありません故、お手数ですが、少し力を込めて強めに書いて頂けないでしょうか?そうすれば普通に書けるようになるかと……』

 

 

零『む……仕方ないな……えっと……黒、月……』

 

 

『あ、そこ、もうちょっと強めに力を込めて書いて頂ければ……そうそう、もう少し、グッと、そんな感じでグイッと―――』

 

 

 

 

 

◆◇◇

 

 

 

 

 

零「――ま……ま、まさか……あの時のっ……」

 

 

長秀「ええ、入門表の裏に感圧紙と婚姻届を仕込ませて頂きまして。思ったより簡単に署名を頂き、助かりました♪」

 

 

零「何処の使い古された結婚詐欺だぁッ!!!!!というか、その声……まさかお前、あの時俺に入門表を書けって言ったっ……?!!!」

 

 

長秀「あら、漸く気付いてくれました?まぁ、あの時は顔も隠していたのですぐに気付かれるとは思いませんでしたけれど、少々鈍感過ぎるかと思いますよ?」

 

 

零「黙れ詐欺師めぇええッ!!!!」

 

 

今やもう、悪女の微笑みにしか見えないおっとりとした顔で優しげに笑いかける長秀に向け全力で叫びつつ、零はキッ!と信長を睨みつけて文書を指差した。

 

 

零「だ、大体、その拇印だって俺は押した覚えなんてないぞッ?!!!名前はともかくっ、それが偽物なら幾らでも取り消しがっ――!!!!」

 

 

信長「ああ、これか?これはお主が手に取った入門表から採取した指紋を使って押した奴だから、れっきとした本物だぞ?かがくのちからってすごいだろー?」

 

 

零「れっきとした詐欺行為じゃねぇかぁッ!!!!!ってか無駄に進歩し過ぎだよお前等の世界はクソッタレェエエエエエエエエェェェェェェェェェェェェーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!」

 

 

撃沈二度目。あまりの理不尽に最早この世界すら呪いそうな勢いで絶叫しながら床に崩れ落ち、ダンッ!ダンッ!と床を思いっきり叩きまくる零。そうしてそんな零を勝ち誇ったように見下ろしながら、信長は胸を張り追い撃ちを掛ける。

 

 

信長「ちなみにだが、詐欺だと訴えても意味はないぞ?一度申請が通った以上はこちらのものだし、どうせコレ(金)で幾らでももみ消せるしな♪」

 

 

零「ぅぉぉおおっ……げ、外道、悪魔っ、下衆がぁぁぁぁぁぁっ……こ、こんな無法でっ、いや、そもそもこんな方法で、俺がお前に従うとでも思ってるのかっ……?!」

 

 

信長「ん?ふむ……まぁ、これでも我等の武者ライダーにならないと言うなら諦めるが……いいのか?今のお主はもう、他の陣営からその首を狙われる身なんだぞ?」

 

 

零「……は……?何故そうなるっ……?」

 

 

信長「決まっておろう?我が結婚して夫を迎え入れたという知らせはすぐにこの国に広まり、外にも流れ、他の陣営の武将達の耳にも届く事だろうさ。お主の顔が割れるのもそう時間も掛からん。そうなれば、お主は様々な陣営から狙われるようになるだろうよ。我の夫となれば、その首は我と同じ……とはいかなくとも、それなりに価値があるだろうからな」

 

 

零「……要するに、お前のせいで俺は余計な敵を作る羽目になった、って事かっ……」

 

 

信長「理解が早くて助かるな。それでも構わぬのなら止めはしない。お主の仲間探しの旅の準備も手伝って見送るが、我等もお主の代わりとしてその仲間二人を探し出し、今度こそ我等の陣営の武者ライダーとして招き入れてみせる。お主の知り合いだと語れば、お主を一緒に探すという条件で手を貸してくれぬとも限らないからな」

 

 

零「クッ……クソォッ……」

 

 

勝家「あ、あの、姫様……何も其処までしなくともっ……」

 

 

蘭丸「そ、そうですよっ。大切な婚姻すら利用して、こんな男を繋ぎ止めなくても……」

 

 

流石に今の零が不敏に思えてきたのか、無礼を承知で信長に物申す勝家と蘭丸。それを聞いた信長も勝家と蘭丸を一瞥すると、静かに瞼を伏せて……

 

 

信長「―――先程も言った筈だろう?我はどうしても天下を手に入れねばならぬ。その為なら手段は選ばぬさ。この先の戦を勝ち抜く為なら、我は外道とも畜生とも呼ばれる事も厭わぬし、女としての幸せすらドブに棄てる覚悟だ」

 

 

蘭丸「し、しかし……」

 

 

信長「それにな。我が漸く夫を迎え入れたと国中に広まれば、織田家を乗っ取ろうなどと考え政略結婚を申し出て来る輩もいなくなって、戦に専念出来るではないか。故に、愛のない婚約だろうと、我にも確かに得する物があるのだから問題なかろうさ」

 

 

そう言って肩を竦めてフッと笑う信長。しかしそんな彼女を見つめる家臣達の顔は何処となく寂しげであり、信長はそれに構わず黒い長髪を揺らして零の前に屈み、その黄金の瞳で零の目を見据えながら真剣に語る。

 

 

信長「……我を恨みたければ好きなだけ恨め。殺意を覚えたなら、いつでも寝首を掻きに来るといい。例え千の怨恨だろうとこの身で甘んじて受けて、命はくれてやれぬが、片腕の一つは運が良ければくれてやる。お主には、それだけの事をしたと自覚はあるからな」

 

 

零(……?コイツ……)

 

 

そんな彼女の瞳を見て何かを感じ取ったのか、今まで崩れ落ちていた零は信長の目をジッと見つめ返すと、暫くして顔を逸らしながらチッと舌打ちし、徐に身を起こしていった。

 

 

零「……どっちにしろ、こうなった以上は今の俺には選択肢なんて無いに等しいって事なんだろう……?だったらなってやるよ、武者ライダーって奴に」

 

 

信長「……いいのか?本当に」

 

 

零「そうせざるを得ない状況にお前がさせたんだろうがっ……ただし、それに当たって一つか二つ条件がある」

 

 

信長「?条件?」

 

 

零「そうだ……先ず一つ、もしも戦に駆り出される事になっても、俺が戦うのは敵の武者ライダーだけだ。それ以外の兵や武将達は知らん、お前達でどうにかしろ」

 

 

信長「……分かった。次は?」

 

 

零「二つ。この先俺の仲間を見付けても、絶対にあの二人を武者ライダーとして取り込んだりするな。もしそうした場合、俺は仲間達と一緒にこの軍を離反させてもらう」

 

 

信長「ふむ……良いだろう。武者ライダーが一人いるなら、私も其処まで欲張りはしない。で、これで最後か?」

 

 

零「いいや、まだだ。次が重要だ……俺達があの正体不明の敵を倒して元の世界に戻る事になったら、お前との婚姻は破棄してもらう。これが最後の条件だ」

 

 

信長「……婚姻破棄か……まぁ我は別に構わないが、そうなるとお主はバツイチになるぞ?いいのか?」

 

 

零「だ・れ・の・せ・い・だ・と・お・も・っ・て・い・るっ?」

 

 

信長「あぁ、分かった分かった。分かったからそんな視線だけで人を殺せそうな目で睨むな」

 

 

詐欺紛いというか、まんま結婚詐欺のせいでいらないバツを背負う事が決まってしまった為に、恨み辛みを込めた目で睨む零をどーどーと宥めると、信長は茶を啜る長秀に目を向ける。

 

 

信長「長秀、零もこうして我等の武者ライダーになってくれると引き受けてくれたし、手筈通り、各陣営に使いを送ってくれ」

 

 

長秀「分かりました」

 

 

蘭丸「?使い、って……」

 

 

勝家「姫様、一体何を?」

 

 

二人の会話の意図が読めず勝家が問い掛けると、信長は先程まで腰を下ろしてた場所にゆっくり戻りながら語り出す。

 

 

信長「武者ライダーを新たに手に入れ、このまま天下取りの戦に再戦することも可能だろう。しかし、あの正体不明の敵の力を考えると奴を放置するのは危険だ……。また戦場を掻き乱すだけならまだしも、民達にまで危害が及ばぬとも限らないからな。だから――」

 

 

パサッ!と、景気のいい音と共に扇子を勢いよく開き、腰に手を当てながら信長は堂々と告げる。

 

 

信長「各陣営に一時休戦を呼び掛けて、武将達を召集するのだ。あの正体不明の敵を倒すまでの間、戦国バトルロワイヤルを一時中断する……とな」

 

 

蘭丸「それは……しかし、それに応じる陣営がいるのでしょうか?」

 

 

信長「……まぁ、各陣営の当主達の性分を考えれば、現実的に考えてそう簡単に応じてくれる者達は少ないだろうな。だが……」

 

 

長秀「ですが、決して皆無という訳でもありませんよ。私達の呼び掛けに応じてくれそうな方に、一人だけ心当たりがありますし」

 

 

零「……心当たり……?」

 

 

信長「そう……」

 

 

訝しげな顔で問い掛ける零に信長が小さく頷き返すと、もうすぐ夕日が沈もうとしてる窓の外を眺めながら……

 

 

信長「――武者キャンセラー軍の総大将、"豊臣秀吉"……戦国バトルロワイヤルから一線を引いたあやつなら、既に今回の異常についても何か掴んでいるやもしれん。アレは勘が鋭い上、博識な奴だからな……」

 

 

そう言って武者キャンセラー軍の武将、豊臣秀吉の事を語る信長は表情は、何処か此処にはない遠い記憶に思い馳せているように見えた―――。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。