仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 劇場版編 作:風人Ⅱ
―安土城・庭―
あれから数時間後、夕日が完全に沈んで夜となった。謁見の間での話し合いの後、各陣営に使いを送る準備を進める為に一先ず解散となり、精神的にボロボロになりながら謁見の間を後にした零は城内を適当にぶらついていたところ、昼間に戦場で出会った武士の男と偶然にも再会し、昼間のお礼がしたいという事から彼の持ち場である城の庭に訪れ、今日の出来事について彼に愚痴を聞いてもらっていた。
「――あー……そ、そりゃまた、旦那も随分苦労なされたそうですねぇっ……」
零「……本当にな……訳の分からん奴と戦っていきなり違う世界に飛ばされ仲間とはぐれ、会ったばかりの初対面の女に騙されて勝手に籍を入れられて夫婦にされた上、この戦いが終わったら離婚してバツイチにならなきゃならんとか……」
今日一日で起きた出来事を全てズラリと並べてみるが、たった一日で何故こんなことになってしまったのか。改めて今の現状を再確認すると頭痛がして思わず頭を抑えながら溜め息を吐き、武士はそんな零の様子に苦笑しながら焚火の火に牧を投げ込んだ。
「し、しっかしまぁ、最初に話を聞いた時は驚きやしたよ。旦那がまさか別世界の人間で、しかもあっし等の軍の武者ライダーになった上に信長様の夫になるなんて、すげぇ大出世じゃねーすか!」
零「こんなにも嬉しくない出世は生まれて初めてだけどな……それにその出世も一時的なものだし、俺達の用件が片付けば解消されるのは決まってる。長続きはせんさ……」
「あー……で、でも、一時とは言え、あの信長様の夫になれるなんざ貴重な経験だと思いますよっ?なんせあの方、この国でも指折りの美女なんですからぁ!」
零「ほう、そうなのか。俺の中じゃ既に美女=危険という方程式が成り立って、あの女を魅力的とは思えんが……」
「だ、旦那ぁ……」
彼も彼なりに零を元気付けようとしているのだろうが、何分バツイチという重荷を背負う事になってるからか彼の言葉を聞き入れずに暗い影を落とし、そんな零に対し武士もオロオロしてしまう。そんな時……
―ズズズゥ……―
シャドー『――まぁ、今回は少々相手が上手だったという事もあるのだろうが、お主も迂闊が過ぎたという所もある。もう少し警戒心を持つべきだったでござろうな』
零「…………………」
「……………………」
やれやれと、首を横に振りながらいつの間にか零の隣に腰を下ろして呑気に茶を啜る一人の忍……滝の世界のダークライダーである筈の仮面ライダーシャドーがそう呟き、零と武士は突然現れたその忍を見て思わず固まってしまった。
「―――って、な、なななななんじゃあああぁッ?!忍者ぁッ?!」
零「……おい、なにちゃっかり溶け込んでるんだお前……どっから沸いて出た?」
シャドー『むっ?人聞きの悪い事を言ってくれるな。我は影、影にして忍。ならば、何時何処に姿を現そうと不思議ではあるまい』
零「不思議だよ、寧ろ不思議しかなくて驚いたわ」
気配も音もなくいつの間にか二人の傍に現れたシャドーを見て武士が驚愕しながら飛び退いても気にも留めず、再び茶を啜って呑気に一息吐くシャドー。そして零もそんなシャドーにジト目を向けたまま、コートのポケットから僅かにディケイドライバーを取り出しつつ……
零「で、本当にこんなところで何してる……?まさか、滝の世界のショッカーはこの世界に介入する気か?」
シャドー『……ふむ……取りあえず、そのポケットの中のものは仕舞うがいい。そう警戒せずとも、拙者の世界のショッカーはこの件に関わる気も無し、拙者もこの世界で入らぬ介入をする気などない』
零「……?だったら、何でこの世界にいるんだお前?あれか?忍者だからって、戦国の風に吹かれにでも来たか?」
シャドー『……確かにこの世界に吹き抜ける風は嫌いではないが、此処に来たのは我が主の命故。少しばかり調べ事をしている最中にお主を見掛けて、こうして邪魔をしただけに過ぎぬでゴザルよ』
零「……何処まで本当だかな……」
悠然とした態度を崩さないまま語るシャドーに憎まれ口を叩く零だが、シャドーが嘘を口にしている訳ではない事は感じ取れたのか、シャドーに向けていた警戒を解きバックルを仕舞って焚火に牧を投げ込んでいくと、シャドーは再び茶を啜って零達が腰掛ける木材の上に茶を置き口を開いた。
シャドー『しかし、お主の愚痴を影ながら聞かせてもらっていたが、お主は女人を見る目がまだまだのようでゴザルな』
零「……何の話だ?」
シャドー『あの信長という女子の事でゴザルよ。無論散々な仕打ちを受けてお主があの女子に対して恨みの念を抱くのも、魅力を感じぬと申するのも無理はないが……あの女、お主が思うほど悪人ではないと思うぞ』
零「……意外だな。お前がそんな事を言うなんて……ああいうのが好みか?」
シャドー『そういう訳ではないのだが、このままでは、お主もあの女子との余計な確執で苦労をするのではないかと気になってな……少しばかり、お節介を焼かせてもらおうかと思い至った次第だ』
―ガシッ―
零「……は?おい、なんでいきなり襟を掴む?」
―グイッ―
零「……なんで無理矢理立たせる?え?」
―ダアアァァンッ!!!―
零「なんで跳ぶぅうううううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!?待っ、ちょ、何処に連れていく気だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ………………?!!!!!」
いきなり襟首を掴まれ立たされて、突然何も言わずに零を抱えながら空高く跳び上がったシャドー。そしてシャドーはそのまま城の塀を軽々と飛び越えて城下街に向かっていってしまい、その今までの様子を愕然とした表情のまま見ている事しか出来ず一言も声を発せられなかった武士は……
「…………だ、旦那の知り合いって…………結構、奇抜な方でいらっしゃいますね…………」
漸く搾り出した声で静かに呟き、呆然とシャドーと零が去っていた方角を見つめていたのであった。
◇◆◇
―城下街・広場―
安土城の城下。其処は現代の歴史書に書かれてるような町並みが広がっているが、やはり科学技術の発達もあってか、家や店等で普通に電気が使われていたり、武者ライダーが戦でマシンを走らせる事もあって自動車やバイクが走ってる姿も見られる。
零「……思いっきり人の首を引っ張りおって……お前あれか、事故と見せ掛けて俺の首をもぐ気かっ……?」
シャドー『強引だったのは謝ろう。だが、どうしてもお主の見せておきたい物があってな……そら、見えてきたぞ』
零「……?何が?」
そんな人気の多い町から少し離れた場所にシャドーに連れられて零が首元を摩りながらやって来たのは、暗がりに包まれた広場……というよりは、遊具等がそれなりに設置された公園のような場所だった。昼間には子供達で賑わっていそうな遊び場だが、今は夜中の為に静かだ。こんな場所に連れてきてどうする気だと、零が訝しげに広場に視線を向けると……
―ヒュウゥゥゥゥゥッ……バアアァァァァンッ!!!バアアァァンッ!!!―
零「ッ!あれは……花火?」
暗がりに包まれる公園から空に目掛けて不意に一発の狼煙が上がり、夜空に大輪の花が咲き開いたのである。その大輪の花……市販のものと思われる花火を見て不意を突かれた零は僅かに目を見開きながら狼煙が上がった公園に視線を戻すと、先程までは暗がりで良く見えなかったのだが、夜空に上がる花火の光によって公園に集まる複数の小さな人影、子供達の姿があり、その中に……
信長「―――ほぉ。市販の売り物でも此処まで綺麗に上がるものなのか……本物には程遠くはあるが、期待以上だったなぁ」
零「……アイツ……」
子供達の中に混じって夜空に次々と消えていく花火を見上げる女性……安土城にいなければならないハズの城主である信長の姿があり、そんな信長の下に子供達が各々違う花火を手にして集まってきた。
「殿様殿様!オレ、今度はこれやりたい!火ぃ付けてー!」
「ダメだよ!次はコレやるってさっき決めたでしょう!」
「ねぇ、殿様ー!」
信長「これ、分かったから少し待たぬか童共っ。そう急がんでも我も逃げはせぬわっ」
零「……何やってんだアイツ?こんな時間にこんな所で……城の主が抜け出したらまずいんじゃないか?」
シャドー『自身が必要と思われる軍事は全て片付けてあるようだが、まぁ、此処に君主がいるのは些か問題でござろうな。城の者達が主がいないことに気付けば騒動は間違い無しだろうが……この国の人間にとっては、そんな事は何時もの事らしい』
零「?……アイツが城を抜け出すなんて日常茶飯事、という事か?」
子供達に花火に火を付けて欲しいとせがまれる信長を見て、何やら訳知りを浮かべるシャドーに怪訝な顔で問い掛けると、シャドーは腕を組んだままポツポツと語り出す。
シャドー『歴史上の織田 信長は、尾張の大うつけと呼ばれた有名な武将だったのはお主も知っておろう。それはこの世界でも例外でなく、あの織田信長も尾張のうつけ姫などと呼ばれているらしい』
零「うつけ姫、ね……ま、武者ライダーを新たに手に入れる為だけに自分の婚姻すら利用するぐらいだしな、そう呼ばれるのも無理もないだろ」
シャドー『……そうだな。だが逆に言えば、それだけ天下統一という名の夢想に誰よりも真摯なのだろう。夢の為なら女の幸せすらも捨て、野望の為なら人間性すら切り捨てられる。アレはそういう、リアリストな思考と決断が出来る女だ。……何故そんな事が出来ると思う?』
零「…………もしかして、あの子供達に関係してるのか?」
シャドー『正確には、あの子供達も……でゴザルよ』
シュボオォォーッ!!と、不意に火花が勢いよく噴出するような音が目の前から聞こえた。二人が目の前を見ると、どうやら子供達にせがまれ折れたのか、子供達が持つ花火に忙しなく火を付ける信長の姿が見えた。
シャドー『あの女子は、昔からああやって自らの身分を問わずに、下々の民達と触れ合ってきたそうだ。今もああやって一日の仕事が終わった後も、睡眠時間を削って城をこっそり抜け出してな』
零「…………」
シャドー『自らが統べる国を、民の生活を己の目で見つめる……そうして己等が守るべきものを実感して、己の国や民達を『自分』という一つの勘定に入れてるようだ。民達や国、天下の為とは、延いては己の為に繋がる……そう考えているからこそ、『自分』の為にどんな卑劣な方法を使っても汚名を被れるし、それを阻む全てを自らの手で問答無用で切り捨てる事が出来る』
零「……だから、『自分』の為に自分を犠牲に出来るか?とんだ矛盾だな。理解に苦しむ自己犠牲精神だ」
シャドー『フム……だが、拙者の目から見ると、お主とあの女子……何処となく通ずる物があると思うぞ?』
零「はぁ……?アイツと俺が?」
心外だ、と言わんばかりの目付きでシャドーを睨む零。だが、シャドーは不動のまま淡々と語り続けた。
シャドー『自分の命と同等のものの為に自己を犠牲にする……それだけならまだ、桜ノ神や本郷滝等とも通ずるが、お主等には決定的な共通点が一つ存在する』
零「……共通……?」
シャドー『……自分を犠牲に出来るだけの物を失った時、"自壊する危うさ"、だ』
零「……ッ!」
まるで、全てを見透かしているような鋭い眼光を向けそう語るシャドーの言葉に、零は思わず一瞬息を拒み目を見開いた。
シャドー『あの織田信長という女は、天下統一を果たしさえすれば己が大事な国や民の安泰が約束されると信じている。その為に自分のありとあらゆる大事な物……何時かは出会えていただろう、愛する者との婚姻すら捨ててこの戦乱の世を生き抜くと覚悟してるようだが、結局その夢を掴めず、それらが全て無駄に終わればどうなるか……恐らく自ずと脆く壊れ、水泡のように消え去るかもしれぬな』
零「……大袈裟過ぎだろ。大体天下を取られなかったからといっても、その国や民の事もあるし、案外特に気にした様子もなく何処ぞのお偉いさんの下で働くんじゃないのか?普通はそうやって妥協するものだ」
シャドー『……妥協か……確かにその可能性もなくはない……だが黒月よ。仮にもし、万が一の話、お主が仲間達である高町なのは等を失ったその時、果たしてお主は今までの自分を保ちながら、新たな人生を歩む事が出来るか?』
零「ッ!…………何故そういう話になるんだっ……?」
考えたくもない可能性の話をされたからか、零はあからさまに不快げな顔を浮かべるが、シャドーはそんな零を見据えながら"何処か遠い未来"を見るように、僅かに顔を俯かせて言葉を続けた。
シャドー『あやつにとって天下を諦めるという事は、お主が考えたくもないというその可能性の話と同義の意味を成すのだ。夢を実現出来ず敗れるという事は、あやつにとって死も同然。常人からすれば、たかだが夢如きでと思うやもしれんが……それほどまでにあの女は、自分の夢に己の命と人生の全てを掛けているのでゴザルよ』
零「……やけにあの女の事に詳しいな……そもそも、何故そんな話を俺にする?」
シャドー『……フム。何故かと問われれば……実は、拙者自身も良くは分かっていない。ただ――』
と、其処で言葉を区切り、シャドーは静かに零に背中を向ける。もう先を行く、という意思表示なのだろう。
シャドー『――ただ、あの女に僅かばかり、我が主の影を見たせいかもしれん……己を捨て、本心を偽り、辛み苦しみを受け入れて、傷付きながらも前へ進もうとするその姿にな』
零「……?何の話だ?」
シャドー『……さてな……黒月よ。騙され、不本意で形式上の夫婦にされたとは言え、今のお主があの女の夫である事に違いはないのだ。万が一の時、あの女の傍で手を差し延べられるのはお主しかいないという事を……忘れるなよ?』
そう言い残した次の瞬間、シュンッ!とシャドーの姿が零の視界から掻き消えてしまい、零が思わず視界をさ迷わせてシャドーの姿を探すと、遠くに見える建物の屋根を飛び越えて何処かに去っていく影のような物を僅かながら捉えることが出来た。
零「……何が忘れるなよだ、お節介忍者め……お前のそれで何処がダークライダーなんだか……」
結局何しに来たのかはサッパリだったが、もしかして先程城で言っていた通り、本当に自分と信長が余計な確執で苦労するのを見てられずに助言しに来ただけなのかと考えるが、すぐに首を横に振って否定した。
零「まさかな……そもそもアイツとは敵同士なんだし、わざわざ俺を助ける理由だってないだろ」
……まぁ確かに、アイツの話を聞いて幾分か信長への印象が柔らかくなったのは確かなのだが、それを素直に認めるのは妙に癪なので考えないようにしようと、拗ねるように口先を尖らせ零は信長達の方を見た。
零(……まぁ、それほど悪人ではないって事は大体分かっていた事だし……一応、バツイチの件は許してやるか……)
気分は乗らないけどな、と付け足して溜め息を吐くと、零は首に掛けたカメラのレンズを信長達に向け写真を撮っていき、何枚か撮り終えたところで踵を返してそのまま城に戻ろうとした。が……
「あ、あぶなぁぁぁぁーーーーーいっっ!!!」
零「…………え?」
背後から突然悲鳴が響き、零は思わず足を止めて背後に振り返った。そしてすぐに、振り返ってしまったと後悔した。何故なら……
―――信長達が火を付けたと思われる無数のロケット花火が、何故か零に目掛け一斉に飛来してくるという悪夢が広がっていたからだ……。
◇◆◇
数十分後……
―信長家屋敷―
―ピチャッ……ピチャッ……―
長秀「―――で?彼に燃え移った花火の火を急いで消そうと慌ててバケツで水を掛けたせいで、零はこんなずぶ濡れになり、その後の後始末で貴女は本来戻って来る筈だった時間に戻ってこれなかった、と?」
信長「ウ、ウム……」
零「」
安土城とは別に、信長が住まいとする大きな日本屋敷。その屋敷の前では、城を抜け出した信長を探してた長秀が、所在無さげに視線をさ迷わせてしゅんとなる信長と、全身びしょびしょで前髪で顔が隠れてしまってる零の前で仁王立ちしていた。
長秀「全く……勝手に城を抜け出すだけならまだ何時もの事で済みますが、君主がボヤ騒ぎを起こしたとなれば一大事じゃありませんかっ。零、貴方も傍で見ていながら何をやっていたのです?」
零「……俺は悪くぬぇ……悪いのは花火の扱いがなってなかったコイツだ……」
長秀「武者ライダーなら、主君の傍にいつどんな時にも付き添って主を守るものです。それが主の名や評判に関わる事なら尚更。貴方はそれでも姫様がお選びになった武者ライダーですか?」
零「……理不尽だ……」
俺とて被害者だろうよと声を大にして言いたかったが、そんな気力もないし、何より言い返したら倍にして言い返されそうなので口を閉ざす事にする零。そして長秀は気まずげにうなだれる信長と、目を逸らし深々と溜め息を漏らす零を交互に見て溜息すると……
長秀「まぁ、姫様がきちんと事後処理をなさっているなら心配は入らないでしょう。幸い、火が燃え移ったのは零のみでしたようですし」
零「俺が火だるまになり掛けたのは幸いなのかよっ……」
長秀「貴方は現にこうしてピンピンしているではありませんか。後は私の方で他に問題がないか処理を済ませておきます。ですので、お二人は……」
と、其処で何故か、長秀の言葉が不自然に途切れた。どうした?と、零と信長の訝しげな視線が長秀に向けられると、長秀はポンッと掌に拳を落としてニッコリ笑い……
長秀「そうですわねぇ……お二人も服が汚れて濡れているようですし、このままお風呂に入って下さい……"一緒に"♪」
零&信長『…………は?』
……などと、とんでもない事を口走ったのであった。
零「……おい、待て、何だそれ?どういう意味だっ?」
長秀「?何か変な事を言いましたか?お二人は夫婦なのですから、風呂で背中を流し合う事ぐらい可笑しくはないでしょう?」
信長「い、いや、そうかもしれぬが、我等はっ……」
長秀「では問題ないでしょ?着替えはこちらで用意しておきますから、このまま風呂場に直行して下さいな♪」
零「…………」
ニコッと、そう言ってあの城で見せた悪女にしか見えないおっとりとした笑みを向ける長秀。それを見た零は無表情のまま佇むと、小さく息を吐き、そして……
ダアァンッ!!と地を蹴り、屋敷とは反対方向の正門に向かって走り出す。が、それを予期してたかのように、長秀が大柄の武士二人を差し向けて零を捕らえて地面に押さえ込んだ。
零「ぬおおおおおしまったあああああああッ?!!」
長秀「往生際が悪いですね、私がこうなると予想していなかったとでも思いましたか?ではお二人共、よろしくお願いします」
「「えいほっえいほっえいほっ!」」
零「や、やめ、止めろおぉッ!離せえぇッ!嫌だあぁッ!何故俺がそんな事しなければならんのだあぁッ?!だ、誰かあぁッ!誰かああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーッッッ!!!!」
イヤだイヤだと首を激しく振りながら必死に抵抗する零を、大柄の武士達がズルズルと引きずって屋敷の中へと連行していってしまう。そしてその様子を眺めていた長秀も後を追い屋敷の中に戻ろうとするが、信長がその背中を呼び止めた。
信長「長秀よ……一体何の真似だ、これは?」
長秀「……さて、何の真似だ、とは?」
信長「惚けるなっ。我は女としての幸せなど入らぬし、それを捨てる覚悟もあると言った筈だろっ?お前もそれに賛同したからこそ、あやつを武者ライダーとして引き入れる協力を……」
長秀「……そうですね。確かに私は、姫様のご覚悟を汲み、彼を我が軍に引き入れる為に策を練って協力をしました。ですが……」
フフッ、と長秀は口元に手を添えて微笑し、信長に顔を向ける。
長秀「女の幸せというモノは、実は案外、その辺りに転がってるようなモノかもしれませぬよ?」
信長「……?何を言って……」
長秀「ただの戯れ事です、気になさらないで下さい。私はただ、家臣として主君の幸せを願ってるだけですから」
では、と信長に一礼して、長秀は今度こそ屋敷の中に入っていき、信長はそんな長秀の背中を納得出来ない顔で見送りながら溜め息を吐くと、自身も観念し屋敷の中に戻っていくのだった。
◇◆◇
そして、同じ頃……
―ドッガアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーアアァンッッッ!!!!!―
『シュアアアアアッ!!』
「う、うわああああッ?!」
「ギャアアアアッ!!」
とある荒野にて激しい戦いを繰り広げていた、二つの武者ライダー軍。だがその二つの陣営の戦いは、突如現れた無数の怪人達の乱入により混戦となり、無差別且つ無意味な破壊と殺戮が広がってるばかりになっていた。そして……
―ガギイィィィィッ!!―
武者エデン『ぐわああああああッ!!』
武者クロノス『クッ?!何なんだ、奴は?!』
―ザッ、ザッ、ザッ……―
『…………』
二つの陣営の守護者である二人の武者ライダー……武者エデンと武者クロノスを相手に圧倒してジリジリと迫り来るのは、やはり昼間の戦で武者リノベーションと武者ツヴァイを吸収した謎の戦士であり、謎の戦士は赤いライドブッカーを手に二人に斬り掛かっていく。
―ガギイィッ!!ガギイィィィィンッ!!ドグオォッ!!―
武者クロノス『チィ!タイムクイックッ!』
武者エデン『タイムクイックッ!』
『TIME QUICK!』
『TIME QUICK!』
このままでは追い込まれるばかりだと感じ取ったのか、二人は態勢を立て直しながらタイムクイックを発動させ、信じられぬスピードで動き出し謎の戦士へ反撃を開始するが……
『――タイムクイック』
『TIME QUICK!』
―シュンッ……ガギイィィィィィィインッ!!―
武者エデン『?!何ッ?!』
武者クロノス『コイツ、タイムクイックをッ?!』
ボソリとそう呟いた直後、なんと謎の戦士はタイムクイックを使用して超速度で迫る二人の斬撃に対応してみせたのである。本来なら限られたライダーにしか使えない筈の能力を使用した謎の戦士に驚愕を隠せない二人だが、タイムクイック……正確には吸収した武者リノベーションの力を引き出した謎の戦士は構わずに二人へと斬撃を叩き込んで吹き飛ばし、二人に止めを刺そうと剣を構え直した、その時……
『Full Charge!』
―チュドオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーオオォンッッッッ!!!!―
『……!』
―ガギイィィィィッ!!―
二人に止めを刺そうとした謎の戦士の背後から、突如電子音声と共に一発の砲撃が飛来してきたのである。それに反応した謎の戦士は咄嗟に背後へと振り返って赤いライドブッカーで砲撃を打ち消し、砲撃が放たれてきた方に視線を向けると、其処には……
―シュウゥゥゥッ……―
冥王『――フッフフッ……武者ライダー、やっと見付けたの。さぁ、冥王の戦国大戦は此処から始まりなのッ!!』
『(……何だ、コイツ……?)』
……メイオウガッシャーの先端を謎の戦士達に向け、今までのシリアスな空気をぶち壊す勢いで叫ぶ冥王の姿が何故か其処にあったのだった……。