仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 劇場版編 作:風人Ⅱ
―織田家屋敷・風呂場―
―……チャプッ―
零(――――どうしてこうなった……)
―ゴシゴシゴシゴシッ……―
信長「………………」
前髪から滴り落ちた水滴が湯舟の水面に落ちていく様を眺めながら、零は鼻の上まで湯舟の水の中に沈めて心の内でそう歎き、湯舟の外で身体を洗う信長を横目で見た。
この様子を見れば一目瞭然だが、あの後、結局抵抗も虚しく大の男二人組に服を強引にひん剥かれてしまい、零はそのまま湯舟の中に問答無用で叩き込まれた上に、零が逃げないようにと風呂場の窓の柵と左手に手錠(しかも趣味の悪い純金製)を繋がれてしまったのだった。
零(くそっ……ただの手錠ならまだ壊して逃げる事も出来るというのに、あの女っ……)
忌ま忌ましげに左手に繋がれた純金製の手錠を睨む。純金とあってどうやらこの金の手錠はかなり値が張るらしく、長秀にも「もし壊した場合は全額弁償してもらいますからね♪」と笑顔で念を押されたのは記憶新しい。
……恐らくというか、絶対その為だけに、わざわざ何の為に作ったのかも分からない純金製の手錠なんて物を選んで零に付けさせたのだろう。もし逃げた場合の時のリスクを更に増やす為に。
零(畜生めっ、何処までも意地の悪い女だな本当にっ……!)
癪に障るが流石は織田信長の参謀というべきか、これでは絶対に逃げる事なんて出来ない。毟ろ、下手に削ったり傷を付けたりしたらそれだけで高額な金額を弁償させられ兼ねない為に、おちおち左手を動かす事も出来ない。最早逃げるのは諦めるべきかと、零は観念するように小さく溜め息を吐きつつ、未だ身体をゴシゴシと洗う信長に再び目を向けた。
零(……それにしても……何でコイツもわざわざ家臣の言う事に従って風呂場に来たんだ……?)
君主であれば「嫌」の一言でも口にすれば此処へ来る必要もなかっただろうに、何故にわざわざこの女は裸になって風呂に入ってきとるんだろうか?と、ジィーーッと泡に包まれた信長の背中を睨んでいると、信長もその視線を感じ取ったのか僅かにビクッと身を縮こまらせ、顔を赤くしながら慌てて身体を隠し零を見た。
信長「な……なんだ?何をジッと見てるっ?」
零「……いや……特にこれとあって見てる訳じゃないが……」
信長「だ、だったらこちらを向くな!我の裸は見世物ではないのだぞ!」
零「……何でお前が怒るんだよ……」
そんなに見られたくないなら最初から入って来なきゃ良かっただろう、と文句を言いたげなジト目で信長をムスッと睨む零。だが信長の方はそんな零の視線を受けて何やら余裕なさげに泡に覆われた身体を両腕で隠しながらオドオドして身体を洗い流せずにおり、その様子を見て流石に可哀相に思えてきて仕方ないと溜息しつつ零が湯舟の縁に頬杖を突いて視線を逸らすと、信長もそれを見て安堵するように一息吐いて桶に溜めていた水を被って泡を全て洗い落とし、布で前を隠しながら立ち上がって湯舟に怖ず怖ず近づく。
信長「……入るぞ……少し空けてくれ……」
零「……ん……」
言われた通り、信長に背を向けたまま湯舟のスペースを空けるように湯舟の中で僅かに前へ進む。とは言え、湯舟のスペースも一般的な家庭の風呂とそう変わりないので、二人入れるか入れないか微妙なところだが、信長は湯舟の水面に片足を通してゆっくりとお湯に浸かっていくと、そのまま湯舟の湯に身体を沈ませ、自ずと零の背中と肌と肌を合わせピッタリくっついていく。
信長「は、ぁぁぁ……」
零「………………」
信長「…………………」
零「………………」
信長「…………………」
零「………………」
信長「………………」
零「………………」
信長「………………」
………………。
零(…………あれ?何だ、コレ…………?)
いや、本当……何だコレ?と、零は信長と背中合わせになりながら内心ポツリと呟きを漏らした。今、何故自分は今日会ったばかりで形式上の夫婦となった女とこうして裸同士で風呂で背中合わせに湯舟に浸かって無言なってるんだ?と、今のシチュエーションに今更かよ!と思うが困惑を隠せない。
というか、何だろうか……ほんとに今更ながら、この状況が途端にもの凄く恥ずかしくなってきた。信長が裸だからとかでなく、この不可解な状況に対してだが。
零(まずい……なんだこのこっ恥ずかしい状況……?目茶苦茶気まずい……な、何かこの沈黙を崩す話題とか……)
女心にはとことん疎いくせして、場の空気や雰囲気にはそれなりに敏感なのか。今の状況がとてつもなく気まずい上に目茶苦茶恥ずかしいと今更になって漸く気付き、何かこの沈黙を破る為の会話のネタがないかと内心そわそわしながら思案する零だが、その時……
信長「―――すまなかった、な……」
零「……は……?」
先にこの沈黙を破ったのは零ではなく、背中の向こう側にいる信長が呟いた謝罪の言葉だった。余りに突然且つ不意打ちだった為に零も困惑を浮かべ思わず振り返りそうになるが、それを察したのか信長は零の背中に自分の背中を強く押し付けて振り向かせないようにした。裸を見られたくないからか、それとも何か別の理由があるのか……。
取りあえず零が振り向くのを諦めると、強張っていた信長の背中もだんだんと力が抜けていき、ポツポツと再び語り出した。
信長「お主を騙して婚姻届を書かせた事について、一応な……お主には戦場で命を救われた恩があるというのに、我はそれを仇で返すような真似をしてしまった……その事について、一度謝るべきかと……」
零「……今更だろうよ……大体、そうやって俺に謝るくらいなら最初から――」
信長「そうするべきではなかった、だろうな……だが、それでも我等は――――いや……我にはどうしても、お主が必要だった。繋ぎ止めたかったのだ。天下を取る為にも……お主の力がどうしても欲しかった……」
零「…………」
そう己の心の内を吐露する信長の声音は、戦場や城で零と話した堂々とした話し方と違い、何やら妙に女らしく感じる。肌を全て晒した開放感か何かから、彼女の本音が浮き彫りになっているのだろうか。ならば……
零「……どうして其処までして天下にこだわる?自分が憎まれると分かってて、恩を仇で返したり、自分の婚姻すらも利用して……何がお前を其処まで駆り立たせるんだ?」
信長「…………」
今なら、彼女の天下統一に対する本当の想いも聞き出せるのではないか。そんな淡い期待から彼女の核心に迫る問いを投げ掛けると、やはり信長はすぐには受け答えず黙ってしまう。振り向いてどんな様子なのか顔を見てみたいが、それだとまた拒否されるだけなので出来ない。やはり踏み込み過ぎたかと、零が半ば諦め掛けた時、信長の口からポツポツと言葉が紡がれた。
信長「―――我が生まれた織田家は、元々大勢力に囲まれた弱小の家柄でな……。その家を父の命によって背負った時から、我よりも弱い者達の命を預けられる立場となったのだ」
零「…………」
信長「家督を背負った最初の頃から、国を背負うこととなって、民達全ての命を預かる身となって、今この国の命運は、明日は、民の生活は、我の一言や生死で変わるようなもの……だが我は、そんな不確かな今の現状が許せぬのだ」
零「……?」
さっきまでの弱々しい口調と違い、最後の語末の部分のみを力強く感情を込めて語る信長の言葉を聞き、零は信長に悟られないようにこっそりと信長の顔を覗き見る。其処には、何か強い決意のようなものを秘めた信長の凛とした横顔が僅かに見えた。
信長「人間ならば、国の主の命運によってその人生が左右される必要などない。己が思うままに、自らの欲のままに自分だけの人生を全うする……それが、人としての本来の在り方なのではないか?」
零「……程度にもよると思うがな。俺も沢山の世界を巡る中で自分の欲のまま、自分の為だけに好き勝手に命や世界を食い物にして、破滅していった奴らをこの目で沢山見てきたし……」
信長「そんな非道は自由などとは程遠いだろう?例え心の何処かでそうしたいと思う心があったとしても、実際にやるのとやらないのとでは全然違う……そんな理性のない自由は自由などではなく、ただの獣畜生に過ぎん。人間の自由というものは、不自由があるからこそ輝くのだから」
零「……ほぉ……もしや暴君的な思想でもあるんじゃないかと思わず身構えたが……案外まともなんだな」
信長「……からかってるのか?」
零「いや、素直に見直しただけだ。気分を害したなら謝ろう……で?その人間が自由に生きられる世界というのが、お前の目指すものなのか?」
信長「……ああ……だが、それだけが理由という訳でもない」
チャプッと、背後で信長が動く気配がした。零からはどうなっているのかは分からないが、信長は風呂場の窓の向こうに見える夜空の月を見つめて続きを語る。
信長「この混乱の世を治めたい。平定した世を築き、秩序が回復したこの世界で……ただの人として生きてみたい……そんな世界で、仲間達と共に我等が生きる世界をもっと見てみたい、知りたいと思うのだ。自分達が生きている世界なのだから、そう思うのは不自然ではあるまい?」
零「……まあな……」
信長とは事情が少し違うが、自分の世界を知りたいと思う気持ちは分からなくはない。自分も旅を続ける中で様々な事を知り、自分が生まれた世界を、家族がいる世界を知りたいと思う気持ちが芽生えたからだ。
……例え其処に、知りたくもない真実しかなかったとしても……。
信長「……そんな世を築く為にも、我はどうしても、天下を取らねばならぬのだ。家や身分も囚われず、誰もが自由に人間らしく生きられる世界を築く。他の者になど任せて実現出来る夢でもない。我自身の手で形にしなければならない……だからこそ、我は――」
零「……だから、その為に何もかも犠牲に出来るって言いたいのか?自分すらも……」
信長「…………」
此処まで話してみて分かったが、この信長という女は確かに悪人ではない。寧ろ、その心根は優しくある。天下を取り、家や身分などに囚われずこの世界の人々が人間らしく自由に生きられる世を築く。それを真摯に目指す彼女なら、きっと彼等がそうして生きられる世を作れるとは思う。だが……
零「自分や、何かを犠牲にするっていう方法が、必ずしも間違ってるとは俺も言わない。時と場合によってはそうせざるを得ない場面もあるだろうし、それが道を切り開く時だってある事は俺も知っている。だが……お前のソレはあまりにも程度を行き過ぎてる」
武者ライダーを新たに手に入れる為、天下統一の為に一族の系統に関わる大切な婚姻を簡単に策に組み込む。そんな事を平然とやって退ける信長に妙な危機感を覚えたのもまた事実であり、零が警告するようにそう告げると、信長は淡々とした声音で零に言い返すように語る。
信長「今この世は戦国乱世なのだぞ。何もかも失わずに天下を取れるほど、この戦国世界は安易くないのだ……戦とは程遠い生き方をしてきたお主に何が――」
零「――そうだな。今まで命のやり取りを散々してきたとは言え、戦のことまでは俺も分からんし、偉そうに言える立場でもない……ただ今は俺もその戦に巻き込まれている一人だし、分からないなりに恥を忍んで偉そうに言わせてもらうが……」
―グイッ!―
信長「ッ?!なっ……!」
一拍置き、零は突然信長の左腕を強く掴んだかと思えばその腕を引っ張りながら振り返り、少々強引に信長を振り向かせた。零の視界に飛び込んできた信長は、彼の突然の行動に戸惑いと驚きを隠せないでいるようだが、それよりも彼に肌を見られてしまってるという羞恥からか耳まで顔が赤く染まっており、豊艶な胸を必死に右腕で隠しながら身を縮こまらせ、恥ずかしさから潤んだ瞳でビクビクと零を見つめている。そんな彼女の目を、零は真っすぐ見つめ返し……
零「自分という代価を犠牲にして何かを得る……確かにそれも最良の選択の一つに違いない。だが、それは最良であって最善じゃないんだ。そんな真似をし続けて天下を統一したところで、其処にあるのは既に今のお前じゃなく、民や国の為に今のお前を築き上げているもの全てを失って、全く別人になった……お前だけだ」
信長「……!」
……例えばの話をしよう。
もし仮に、自分が世界を救う為だと割り切って人間性を殺し、旅の過程でなのは達を切り捨てながら進んだその先で、果たして自分は今の自分のままでいられるか。
……答えはきっとNOだ。
恐らく何もかも捨てる事に慣れて、捨てる事に何の感情も抱かなくなって、何を切り捨てたのかすら思い出させず、何故自分が其処までして戦ってきたのか理由すら忘れて疲弊し切ってるだろう。
そんなのはもう、自分ではない。他の人間だ。
先刻シャドーが言っていた、自分と信長が通ずる物があるという話を信じるなら、恐らく彼女もこの先の未来でそうなる。
天下統一という夢想の為に人間性を殺し、身内や仲間すら切り捨て、非常に徹し先を歩む。
その果てに天下を手に入れ彼女が語った世を築いたとしても、きっと信長はその世界で心の底から笑う事はない。
……"化け物同然の存在"となった、自分のように。
零「天下を統一した後で、お前はしたい事、やりたい事が沢山あるんだろう?」
信長「……ああ……」
零「だったら、その為にももう自分を犠牲にするような真似なんかするな。お前がその心に思い描く世界に抱く気持ちが、移り変わらない為にも、気付かない内に何処かへ捨ててしまわない為にも……そんな自由な世界で目にしたもの全てに対し感じたものを、素直に受け止められるようになる為にもだ……」
信長「…………」
失ってしまった物、捨ててしまった物がどんなに尊い物だったか。後からその事に気付いても戻らない物があるのを知っているからこそ、彼女にもそうならないで欲しいという意味も込めて告げる零。そうして信長はそんな零の目と言葉と真っすぐ向き合い、暫くの間互いに視線を交錯させると、顔を俯かせ小さな笑みを浮かべた。
信長「可笑しな男だな……自分を騙した人間にそんな物言いをするとは」
零「……まぁ、馬鹿げた事を口にしてるという自覚はある。俺とお前とじゃ事情が違うし、それでも――」
信長「いや、分かってる。皆まで言わなくていい……何故かは知らないが、お主はお主なりに、我の身を案じてくれているのだろ?」
零「……別に、そんなんじゃ……」
妙な気恥ずかしさから、小さく微笑み掛ける信長の顔から目を背ける零。そんな零を見て信長もまた可笑しそうに笑いをこぼしていくが、ふとその表情が物憂い物へと変わる。
信長「その気持ちは素直に嬉しく思う……だが、我は―――私は、この道を歩むと既に決めているのだ……天下統一を実現する為には、生半可な覚悟では果たせない。例えこの身が第六天魔王と化そうとも、頂への歩みは決して止めぬと……そう決心しておるのだ……」
零「…………」
やはり、自分の言葉なんかでは彼女の覚悟を止められはしない。何となく察しは付いていたが、改めてそれを実感させられた零は無言のまま渋い顔で瞼を伏せると、そんな零の頬をグニッと信長が指で摘んだ。
零「ッ?!な、何だっ?」
信長「いや……何だか変な気を使わせてしまったようだからな。すまない。それから……ありがとう……。お主と話したからか、少しばかり気が楽になった気がしてな」
零「……礼を言われるような事なんかしていないし、必要ないだろう。俺は一応お前の武者ライダーなんだし、武者ライダーとして主に進言しただけだ……」
信長「ん……?何だ、其処は夫じゃないのか?」
零「それはないっ!お前と夫婦関係って事だけは絶対認めんっ!」
信長「枯れてる奴だなぁ。……一応、その、裸の女が隣にいるのに平然としてるし……」
零「…………なら、此処で俺が手を出しても文句言わないのか、お前?」
信長「え?……い、いやっ、それは……っ」
零「……冗談に決まってるだろバカ。なに本気にしてるんだ」
信長「なっ!……も、もういいっ!知らんわっ!先に出るぞっ!」
呆れたような表情で横目で見つめる零を見てからかわれたのだと分かり、羞恥と怒りから顔を赤くしながらザパアァッ!!と勢いよく湯舟から立ち上がる信長。その様子を見て零も信長の裸を見ないようにすかさず顔を逸らし、ズンズンッ!と風呂場から出て勢いよく扉を閉める信長の姿が完全に見えなくなってから、小さく安堵するように息を吐いた。
零「冗談に決まってるだろ……そういう事はちゃんと好きな奴としろ……」
本当に好き同士で結婚した夫婦ならばともかく、そうでない男と女がいつまでも裸同士で風呂になぞ入っていい訳がない。……まぁ、長々とした会話にのめり込んでたせいで追い出すのに時間が掛かったが。
零「……あ……そういえばアイツ、結局何で俺と一緒に風呂に入ったんだ……?」
結局その事を聞けず仕舞いで出ていかれてしまったが……もしや、自分に謝ろうと思って一緒に風呂に入ると決めたとか……?
零(……まさかな……まあほとぼりが冷めてからまた聞き出せばいいだろうし、俺もそろそろ上が――)
―ガシャッ!―
零「……え?」
これ以上湯舟に浸かっててはのぼせてしまうと、零も風呂から上がろうとするが、左腕を何かに引っ張られ立ち上がる事が出来ない。
……その今まで忘れていた感覚に零は顔を青ざめさせ、ゆっくりと背後へと振り返ると……風呂場の窓の柵と自分の左腕を繋ぐ純金の手錠が、淡い輝きを放っている姿が其処にはあった。
零「………………………………し、しまったあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーッ?!!!お、おい信長ぁッ!戻ってこいッ!ちょ、これはどう外せばいいんだッ?!誰かッ!おいッ!誰かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」
のぼせる寸前になって漸く手錠の事を思い出し慌てて先に風呂を上がった信長を呼ぶ零だが、今さっきの件でお冠の信長がそれに応じる筈がなく、結局それから数十分、何も知らずに風呂に入ってきた蘭丸が悲鳴を上げるまでずっとそのまま放置されっぱなしになるのであった……。
◇◆◇
―ガギギギギギギッ!!!バシュウゥッ!!!ガギイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィインッ!!!!―
武者クロノス『グゥッ!!ガハァッ!!』
一方その頃、武者クロノスと武者エデンの両軍を襲撃した謎の戦士達が戦う戦場に突如冥王は武者クロノスと武者エデン、そして謎の戦士に敵味方関係なく襲い掛かり乱戦となっていた。武者エデンの刀を腋で抑え込みながら、正面から斬り掛かってきた武者クロノスに前蹴りを打ち込んで吹っ飛ばし、右手に持つ薙刀で立ち回る謎の戦士に砲撃を放ち追撃していく。
冥王『あっはははははは!弱い弱い弱い弱い弱い弱いのぉッ!!この世界の武者ライダーはこんなのしかいないのぉッ?!』
―ズシャアァッ!―
武者エデン『グハッ!』
―バゴオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオンッ!!!!―
『(チッ!また面倒なのが……だが、こちらに狙いを絞って来ないのは幸いか)』
一見して驚異的な戦闘力を備えているようだが、その狂気的な戦闘意欲から見境なく攻撃するのが欠点か、冥王は謎の戦士への追撃を中断して武者エデンに狙い絞って襲い掛かっていき、その隙に謎の戦士は態勢を立て直そうとしていた武者クロノスをすれ違い様に赤いライドブッカーで斬り裂いて怯ませ、首を掴み……
『これで、十三人目ぇッ!』
―バシュウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーウウゥッ!!!!!―
武者クロノス『ぐ、ぐああああああああッ?!!』
首を掴まれもがく武者クロノスの全身から青い火花が噴き出した直後、武者クロノスの全身が捻れそのまま武者リノベーションや武者ツヴァイ同様、謎の戦士の腰に吸収されていってしまうのであった。
冥王『……!武者ライダーを取り込んだ?』
『はあぁぁぁっ……来い、スペリオルゥウウウウウウウウウウッ!!!!』
武者クロノスを取り込んでゆらりと幽霊のように冥王と武者エデンと向き直り、謎の戦士は両腕を広げ全身をまばゆい光を纏っていく。そして光に包まれた謎の戦士は、徐々にその姿形を変化させながら巨大化していき、光が晴れたその姿は全身が赤黒く禍々しい形状をした巨大な翼竜……クロノスの形態の一つである漆黒のスペリオルフォームに変身したのであった。
冥王『なっ……スペリオルフォーム?!』
『グウゥガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!』
―ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーオォンッ!!!!―
武者エデン『グゥアッ?!』
冥王『グッ!!』
スペリオルフォームに変身した謎の戦士を見て驚愕を浮かべる冥王だが、漆黒のスペリオルフォームは獣のような雄叫びを上げながら巨大な尻尾を勢いよく振り回して武者エデンと冥王に襲い掛かり、武者エデンは吹っ飛ばされ、冥王は咄嗟に障壁を張るも衝撃を防ぎ切れず吹っ飛ばされてしまう。更に……
―ギュイィィィィィィィィィィィィッ!!―
漆黒のスペリオルフォームは冥王に追撃を仕掛けるべく、自身の口内に膨大なエネルギーを蓄積させ始めたのだ。それを目にした冥王もすぐに応戦しようと障壁を解除し、バックルにパスをセタッチさせていく。
『Full Charge!』
冥王『上等なの、纏めて消し飛ばしてあげるぅうッ!』
『グウゥガアアアアアアアアアアアアアッ!!!!』
―チュドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーオオォンッッッッ!!!!!!―
電子音声が響き渡ると共に、パスを投げ捨てて薙刀の先端に一気に溜まったエネルギーを砲撃に変換し撃ち放つ冥王。それと共に漆黒のスペリオルフォームも口から極太の砲撃を発射して冥王の砲撃とぶつかり合い、正面から押し合う拮抗の末に、巨大な大爆発が巻き起こり周囲を凄まじい爆風が飲み込んでいってしまう。だが冥王もそれに怯まず追撃を仕掛けて、爆風越しに漆黒のスペリオルフォームが立つ場所に薙刀の狙いを定めるが……
冥王『――チッ……逃げられたの……』
何かに気付いたように口の中で舌打ちし、薙刀を持つ手を下ろした。そしてその直後、戦場に吹き抜けた風が周囲を覆う爆風を徐々に払っていき、目の前の視界がクリアになると、其処には漆黒のスペリオルフォームと武者エデンの姿は既になく、代わりに武者エデンが吹っ飛ばされた場所に残されたズタズタの爪痕だけが、あの一瞬の間に何が起こったのか物語っていたのだった……。