仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 劇場版編   作:風人Ⅱ

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劇場版小説/仮面ライダー×仮面ライダー ディケイド&ツヴァイ NOVEL大戦Evole ディケイドパート⑤

 

―織田家屋敷―

 

 

零「――武者キャンセラー軍との同盟が決まった……?」

 

 

翌日の朝。織田家の屋敷で朝食を終えた直後に信長と長秀が告げた言葉に、零と蘭丸と勝家は揃って頭上に疑問符を浮かべて訝しげな表情を浮かべた。その内容とは、昨日信長が宣言した戦国バトルロワイヤルの中断と他の陣営との一時休戦についてだった。

 

 

長秀「ええ。今朝に戻った使いの者が持ち帰った封書を先程確認した所、我が軍との同盟に賛同し、今後について話し合う為に昼過ぎにこちらへ訪れるとの事です。ただやはりと言うべきか、他の陣営からの返答は揃って拒否の一点張りでしたね。例えそやつが襲って来ようとも我等が返り討ちにしてくれるわ、と」

 

 

信長「他の陣営の武将達は、無駄に勇猛な連中が多いからな……まあ、そやつ等に関しては初めから大して期待はしていない。我等の本命は秀吉だからな」

 

 

長秀「天下取りの戦いから一線を引いた彼女ならば、こちらの一時休戦の申し出を断る確率は低いですから……それに何故彼女が急に天下取りから手を引いたのかも、個人的に気になっていましたし……」

 

 

信長「まぁ、何にしても先ずは会って話をしなければな。支度が整い次第、城へ向かい秀吉を迎える準備をするぞ」

 

 

一同にそれだけ言い渡すと、信長は座布団の上から腰を上げて立ち上がり、支度をする為に部屋を後にしていく。それを見送った他の一同もそれぞれ支度を始めようと部屋を出ていくが、零は部屋を後にしようとしていた勝家を呼び止めた。

 

 

零「なぁ……一つ聞いてもいいか?この世界の豊臣秀吉って、アイツとどういう関係なんだ?何だかやけに親しげな感じだったが」

 

 

勝家「?どういう関係って……お二人はご幼少期からの昔馴染みだ。幼少の頃は家康公も交えて良く遊んでいられたそうだが、今の乱世になってからは敵同士となってしまい、戦場で顔を合わせるのが常になってしまってな……」

 

 

零「……そうなのか(つまり、この戦国世界じゃ信長と秀吉と家康の関係も本来の史実とは大きく違う訳か……今更な感想だが、此処まで違ってくるものか?)」

 

 

本当に何処までも出鱈目な世界だと改めてそう感じる零だが、空間や時間や歴史や人間関係が違うのは並行世界では良くある事だし、とにかく今は自分も早めに支度した方が良いだろうと、零も勝家と別れ準備をしに昨夜自分が寝泊まりした部屋に戻っていくのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

 

―尾張国境近くの森林―

 

 

―……バチッ……バチバチバチバチッ……シュパアァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!―

 

 

零が滞在する尾張の国境の近くに存在するとある森林の奥地。其処に突如、桜の花弁に酷似した無数の光の粒子を撒き散らして一つの光球が何処からともなく現れた。そして光球が弾けるように消え去ると、光球があった場所に一人の人物……零の仲間である姫がその姿を現し、ゆっくりと身を起こしていく。

 

 

姫「―――此処があの三人の気配が感じる世界か……どうしてこの世界にいるのか知らないが、魚見が一緒なら零となのはも戻って来れる筈なのにな……やはりあの三人の身に何か起きたのか?」

 

 

周囲を見回してそう呟く姫の顔には、やはり零達から未だに連絡がなく戻って来ない事に不安を感じているのか、明らかに心配と焦りの色が浮かび上がっている。

 

 

姫(あちらの世界は怪人達も全て片付けて、優矢達に任せて来たから心配は入らないと思うが、またいつ怪人達が現れないとも限らないし……急いで彼等を見付けなければ……)

 

 

それに何故かは分からないが、妙な胸騒ぎを感じる……特に零に関しては。その言葉には表わし難い感情に突き動かされるように、姫は急いで三人を探しに向かおうと一歩前へ踏み出す。が……

 

 

 

 

 

『グルルルルッ……』

 

 

姫「……ッ!誰だ?」

 

 

 

 

 

何処からか不気味な唸り声が響き、姫は真剣な表情に切り替わり警戒心を露わに周囲を見回す。すると、森の木々の影から次々と無数の異形達……ドーパントやファンガイアを始めとした様々な怪人達が唸り声を上げて姿を現し、姫の四方を囲んでいたのである。

 

 

姫「また多種多様の怪人だと……?まさか、あちらの世界で暴れ回っていたのと同じ?」

 

 

『グルアァァッ!!!』

 

 

熟考に入り始めた姫に問答無用で襲い掛かる怪人達。しかし姫も咄嗟に護身術の体さばきで怪人達の攻撃を次々と払い退けていくと、怪人達から一度距離を取り、後ろ腰からバックル部の右側にカッティングブレードが設置されてる黒いドライバー……戦極ドライバーを取り出して腹に当てるとドライバーの端からベルトが伸びて姫の腰に装着され、更にスカートに身に付けた装身具に繋げられている桃が中央カバーに描かれた錠前を取り外して構えた。

 

 

姫「いずれにせよ、コイツらを野放しにしておく訳にはいかないか……変身ッ!」

 

 

―ガチャッ!―

 

 

『PEACH!』

 

 

高らかに叫びながら中央のカバーに桃が描かれた錠前……ピーチロックシードの側面の解錠スイッチを押すと電子音声が響き、それと同時に姫の頭上にチャックのような物が出現して丸い裂け目を開き、その裂け目の向こうに繋がってる違う世界から更に桃に酷似した巨大な果実が宙に浮きながら姫の真上に降りてきた。そして姫はそれに見向きもせずピーチロックシードを軽く投げて左手でキャッチし、戦極ドライバーのバックル部に錠前をセットして固定する。

 

 

『Lock On!』

 

 

―ブォオオオオッ!!!ブォオオオオオオッ!!!―

 

 

『ヌッ?!』

 

 

再度電子音声が鳴り響くと、法螺貝のような和風テイストの待機音声が戦極ドライバーから響き渡り怪人達を驚かせていく。そして姫はそんな怪人達を見据えたままバックル右側に設置されたカッティングブレードを倒し、バックルにセットされたピーチロックシードのカバーを切った。

 

 

―スパァンッ!―

 

 

『Soiya!』

 

『PEACH ARMS!Gouka☆kenran!』

 

 

ピーチロックシードを切断してカバーの下の断面図が明らかにされると、高らかな電子音声と共に姫の頭上に待機していた巨大な桃の果実が落下し、姫の頭へとズッポリ収まっていったのだった。

 

 

そしてその直後、巨大な桃の果実から植物の根のように伸びたエネルギーが姫の全身を覆い銀色のアンダースーツに変化し、更に姫の頭に収まってた桃の果実が徐々に花開くように開いて桜色の鎧と化し、姫に装着されて桃の果汁が飛び散り、露わになった姫の顔には戦国武将の兜をモチーフにしたような薄桃色のパルプアイと、鎧武と斬月の中間に近いデザインの銀と桃色の仮面が纏われていたのであった。

 

 

全ての変身が完了したその姿は、後ろ腰から袴に酷似した銀のコートを靡かせる銀色のアンダースーツと、桃の果実をモチーフにした桜色の和風の鎧を身に纏い、左腰に鍔の部分が銃身になっている銃剣を装備し、右手には桃色の長刀を握り締めた銀色の仮面ライダー……『天神(アマガミ)』へと変身した姫は、桜色の長刀・桜雪を両手に構えていく。

 

 

天神『開演の時だ。その目で刮目しろッ!!』

 

 

『グルルルッ……シャアァッ!!!』

 

 

決め台詞を叫び啖呵を切る天神に怪人達が一斉に飛び掛かっていく。だが、天神も最初に殴り掛かってきたファンガイアを一瞬で桜雪で斬り伏せながら侍を連想させる立ち回りで怪人達を次々に切り捨てていくと、インベスの腹に桜雪を突き刺し、バックルのカッティングブレードを一回倒した。

 

 

―カシュゥッ!―

 

 

『Soiya!』

 

『PEACH SQUASH!』

 

 

天神『ハアアァッ!!ゼェイヤアァァァァァァァァァァァァァアッ!!!』

 

 

―ズシャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!!―

 

 

『ウ、ウグアァァァァァァァァァァァァァアッ?!!』

 

 

―ドッガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!!―

 

 

電子音声と共に膨大なエネルギーが蓄積された桜雪をインベスの腹から勢いよく抜き取ると同時に、天神はその勢いを利用して回転し桃の切り身の残像を描きながら周囲の怪人達を纏めて斬り裂き爆散させていったのだった。

 

 

天神『っ、ふぅ……これで一先ず片付いたか?』

 

 

桜雪を肩に添えながら軽く一息吐き、周辺に怪人達の姿が残っていないのを確認してから変身を解除しようとバックルのピーチロックシードに手を伸ばす天神だが、その時……

 

 

―ガサガサガサッ……―

 

 

『――シャアァァァァァッ……』

 

 

『ウゥアアアアッ……』

 

 

天神『ッ!……やれやれ、まだ一休みには早いか……』

 

 

背後から茂みを掻き分けるような物音が聞こえ慌てて背後に振り返ると、其処には先程とは別の怪人の群れがゾロゾロとこちらに迫って来る光景があったのだ。それを見て天神もうんざりとした溜め息と共に桜雪を下ろしていくが、怪人達は構わずに天神に目掛けて獣の咆哮を上げながら駆け出し、天神も仕方なくそれに応戦しようと右腰のホルダーからサクランボのロックシードを掴んだ。が……

 

 

 

 

 

―バッ!―

 

 

「デエェェヤアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!」

 

 

―ザシュウウゥゥッ!!!ズバアァァァァァァァァァァァァアァンッ!!!―

 

 

『ッ?!アグッ……ァ……ギャアァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!』

 

 

―チュドオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオンッ!!!!―

 

 

天神『?!な……何だ?』

 

 

 

 

 

天神が怪人達に応戦しようとしたその時、何処からか突然一つの黒い影が飛び出してきたのだ。その黒い影はすれ違い様に怪人の大群へと紫電一閃の斬撃を叩き込み、更に駄目押しのもう一撃を放って怪人達を纏めて撃退してしまい、天神は何が起きたのか理解出来ず目を見開いて呆然としながら怪人達を倒した黒い影を見た。それは……

 

 

「……んー。武者ライダー目的でこっちに来たってのに、何かこんなのにしか会わないわねぇ……」

 

 

天神(……?子供?)

 

 

不満げに怪人達が爆発した場所を見下ろしてそう呟く黒い影の正体とは、漆黒のブーツにスカート、漆黒のジャケットにプレートアーマー。背中には黒いマントを靡かせ、顔に黒いバイザーを装着した年端もいかぬ金髪のポニーテールの少女だったのである。怪人達を撃破したその予想外の正体に天神も先程とは別の驚愕を浮かべるが、そんな天神に気付いてか気付かぬか、黒い少女は右手に持つ見覚えのある剣に語り掛けた。

 

 

「ねぇちょっと、いい加減武者ライダーがいそうな場所とか教えてくれてもいいんじゃないの?アンタならナビの真似事とか余裕でしょ?」

 

 

『――確かに我ならばその程度のこと造作でもないが、これは貴様の修行の一環でもあるのだ。自らの敵は自らの目と足で見付けろ。我は一切それに関与せん』

 

 

天神(ッ!アレは……クロノスブレイド?!というか喋った?!)

 

 

「そうは言ってもっ、こっちに来てから一日経ってるのに全然噂の武者ライダーに会えてないじゃないッ!ほんとにそんなのいる……ん?」

 

 

見覚えのある剣……クロノスブレイドとナビゲートの役を拒否されても食い下がろうとする黒い少女だが、其処で彼女は背後で呆然と佇んでいる天神の気配に気付いて振り返った。

 

 

「…………」

 

 

天神『…………』

 

 

「…………誰?」

 

 

天神『いや、それ私の台詞なんだが』

 

 

今自分が言いたい質問を先に言われ思わずそう返してしまう天神。だが黒い少女は、其処で訝しげな様子で顎に手を添えながらジッと天神の姿を観察していく。

 

 

「んー……如何にも武者っぽい出で立ちと、仮面に、刀……もしかしてアンタ、武者ライダー?」

 

 

天神『?まぁ、一応武者のライダーではあるが?』

 

 

「否定はしないのね?ふぅん……じゃあ……」

 

 

ジャキッ!と、黒い少女はそう言いながら突然右手に握るクロノスブレイドの刃の切っ先を天神に突き付けた。

 

 

天神『!何の真似だ?!』

 

 

「ちょっとばかり手合わせを願いたいのよ。私、修行でこの世界に武者ライダーとやり合いに来たんだけど、正直今の自分の腕が何処まで通ずるか不安もあるの。だから先ず、貴方と手合わせして自分の力量がどれほどのものか確かめさせて欲しいのよ……貴方が武者ライダーじゃないなら悪いとは思うけど」

 

 

天神『この世界に来た……?武者ライダー……?ちょっと待て!一体何の話をしているんだ?もう少し詳しく事情を――!』

 

 

「事情なんて話したら、お互い戦い難くなるだけじゃない?勝手で悪いけれど、私もいい加減ライダーとの戦いの経験値が欲しいし、ちょっとばかり付き合って頂戴ッ!』

 

 

天神『君が子供という時点で私は既にやりにくいぞッ?!ええいっ、仕方ないッ!』

 

 

クロノスブレイドを構えて問答無用で斬り掛かって来る黒い少女を見て話し合いでの決着は無理だと悟ったのか、天神は半ばヤケクソで桜雪を左手に持ち替えながら左腰に装備した銃剣……無双セイバーを抜き取って二刀流となり、黒い少女の振りかざす斬撃を受け止めながら戦闘を開始していくのだった。だが……

 

 

 

 

 

 

『………………』

 

 

 

 

 

 

そのライダーバトルの開始を影から盗み見る怪しい影……謎の戦士が剣を交える二人の姿をジッと観察する姿があり、静かに足元の影から大量の怪人達を新たに生み出していたのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◇

 

 

 

 

 

―安土城・評定の間―

 

 

あれから数時間後。安土城にて武者キャンセラー軍を迎える準備を終えてから間もなくして武者キャンセラー軍の到着の知らせが届き、信長は武者キャンセラー軍の武将である秀吉と彼女の数人の家臣達を安土城の評定の間に通して対面していた。

 

 

零(……まあ、話を聞いた時から何となく分かってはいたが、やっぱり秀吉も女なのな……)

 

 

艶やかな金色の長い髪に、碧眼の瞳。その脇に自身が従える武者キャンセラーを控えさせ、背筋を伸ばして綺麗に正座を組んでるその姿から威厳と美しさが滲み出ている女性……豊臣秀吉を見て零がそう考える中、秀吉は信長を見つめ小さく微笑んだ。

 

 

秀吉「お久しぶりですね、信長公。暫く見ぬ間にまた美しさに研きが掛かってるように見られますが、結婚して夫が出来たからでしょうか?」

 

 

信長「下手な世辞はいい、それにそんな似合わぬ敬語を使わなくていいぞ。貴様と我の仲だろうよ?」

 

 

秀吉「……そうおっしゃられましても、ね……私にも立場というものが……」

 

 

信長「デアルカ。ふむ……ならば我だけでもそうするぞ?無論貴様の呼び名も、昔のあだ名で『猿』と呼ぶが?」

 

 

秀吉「……ハァ……分かった……だからその呼び名は止めて頂戴、ノブ……」

 

 

信長「うむ、そう呼ばれるのも久しいな、ヒデよ」

 

 

零(……なぁ。あの秀吉は何で猿って呼ばれてるんだ?)

 

 

勝家(?ああ……幼少の頃の秀吉公はとてもやんちゃな子で、良く木登りをして遊んだり木の上で昼寝する事が多かったらしくてな。その姿がまるで子猿のようで、それを見た姫様が秀吉公にそうあだ名をつけたのが発端らしい……まあ昔はともかく、今はその名で呼ばれるのは嫌なそうだが)

 

 

零(……まぁ、だろうよな)

 

 

やんちゃっ子な昔ならともかく、成長し大人になってから猿呼ばわりされても女は嬉しくもないだろうしなと零が納得する中、秀吉が気を取り直すように咳払いした。

 

 

秀吉「んんっ!……さて、それじゃあ早速本題に入らせてもらうけど、貴方達の同の件についてはこちらも慎んで受けさせてもらうわ……私達も、あの謎の敵の脅威については身に染みて理解しているし、このままアレを放置するのは危険だと思っているから」

 

 

長秀「……身に染みて理解してる、というと、秀吉公は既にあの敵と交戦した経験がお有りなのですか?」

 

 

秀吉「……えぇ、そうよ。だからこそあの敵の脅威にいち早く気付き、天下取りをしている場合ではないと戦から一線を引き、我々は我々でアレの調査を独自に進めていたの。それで幾つか分かった事があるのだけど……キャンセラー?」

 

 

武者キャンセラー『はっ』

 

 

脇に控える武者キャンセラーに秀吉が目配りすると、武者キャンセラーは秀吉と信長の間に一枚の地図の絵を広げていく。そして一同がその地図を覗き込むと、どうやらその地図は各陣営の勢力が描かれた勢力地図らしいのだが、殆どの陣営がその上に赤い×が書かれてしまっている。

 

 

長秀「これは……」

 

 

秀吉「あの敵の動向を探ってその足取りを追ってみたのだけど、どうやらあの敵は他の陣営に積極的に攻め込み、その陣営を守護する武者ライダーを次々と倒し回っているそうなの……。しかも活動限界がないのか、奴は武者ライダーを倒してからまたすぐに別の陣営に攻め込んで武者ライダーを倒し、それを繰り返している……この×は、昨夜に奴の手によって武者ライダーを倒された勢力の数よ」

 

 

勝家「なっ?!こ、これが……これだけの数の勢力が、たった一晩で倒されたというのですかっ?!」

 

 

勝家が驚くのも無理はない。何せ勢力地図に付けられている赤い×の数は、既に十を軽く越えてしまってるのだ。これだけの数の陣営が既にたった一晩であの敵に倒されたというのならば、その脅威は零や信長達の予想を遥かに上回っているとしか言いようがない。

 

 

秀吉「奴のこの動向から既に予測は付いていると思うけど、十中八九敵の狙いは武者ライダーに違いないと思う。その目的は恐らく……武者ライダーを全て倒した際に手に入るという、天下を支配出来るほどの力だと思うわ」

 

 

長秀「……寧ろそうとしか考えられませんね……武者リノベーションとツヴァイを倒しておきながら、零を狙わなかったと聞いた時は怪訝に思い、まさかとは思いましたけれど……」

 

 

信長「奴もまた天下統一とその力を狙ってる、か……だが、何の為にだ?天下を手に入れ、力を手に入れ、その力で奴は何を成す気なのだ?」

 

 

同じ天下を目指す者としてか、何故あの戦士が天下の頂を手に入ようとしているのか理由が気になり秀吉に問い掛ける信長だが、秀吉はそれに対し無言のまま首を横に振った。

 

 

秀吉「残念ながら、奴が何を目的に天下を手に入れようとしているのかは私達も分かっていない……ただ、奴をこのまま放置しておくのが危険だという事は分かりきってる。無差別に破壊と殺戮を繰り返す奴が天下を、それも天下を支配するほどの力を手に入れてしまえばこの世界がどうなるか……」

 

 

零「……まぁ、人間が無事に生きていられるか怪しいだろうな。最悪、皆殺しにされる可能性もなくはない……」

 

 

零の脳裏に過ぎるのは、この戦国世界に飛ばされる前の世界で起こった地獄絵図の光景。未だに何が目的であんな真似をしたのかは分からないが、あんな残酷に人間の命を簡単に奪う輩がまともな目的を持っているとは到底思えない。やはり何か良からぬことを企んでいるのかと思考に浸る中、評定の間の戸が不意に勢いよく開き、其処から蘭丸が血相を変えて現れた。

 

 

蘭丸「姫様ッ!一大事でこざいますッ!」

 

 

勝家「ッ!いきなり何事か蘭丸ッ!姫様と秀吉公の御前だぞッ?!」

 

 

蘭丸「あっ……も、申し訳ありませんっ、ですが……」

 

 

信長「いや、構わぬ。……それでどうした、蘭丸?」

 

 

蘭丸「は、はいっ!実は今しがた、このようなものが……!」

 

 

そう言って蘭丸は慌てて懐を漁ると、其処から一枚の白い封書……『決闘状』と書かれたソレを取り出し信長達に見せていく。

 

 

長秀「それは……?」

 

 

蘭丸「武者リノベーション軍の総大将、家康公から我々に宛てての決闘状ですっ!」

 

 

秀吉「ッ!家康から?!」

 

 

徳川家康から送られてきた決闘状。それを聞き一同の間にざわめきが広がる中、信長は蘭丸の手から封書を受け取って中身の紙を取り出し、其処に書かれている内容を目で追っていく内に徐々に渋い表情へと変わっていく。

 

 

信長「……成る程な。要約すると、今から正午、尾張国境の地にて武者ライダー同士による決闘を申し出る。こちら側が勝てば武者ツヴァイ軍の軍門に下るが、あちら側が勝った場合我の首を差し出してもらう……だそうだ」

 

 

勝家「な、なんと無礼なっ……!決闘状を叩き付けてくるだけなら未だしもっ、姫様の首級を指してくるなどとっ!」

 

 

零「……問題は其処じゃなくないか?」

 

 

決闘状の内容に憤り思わず立ち上がる勝家に零が冷静にそうツッコミを入れると、長秀は顎に手を添えつつ訝しげな顔を浮かべていた。

 

 

長秀「武者ライダー同士の決闘……まさかこんな状況でそれを申し出て来るとは……」

 

 

信長「家康らしいと言えば家康らしいがな……しかしあの阿呆、うつけっぷりと空気の読めなさが更に増長しておる……」

 

 

秀吉「今がどういう状況になっているのか、あちらもある程度情報を掴んでいるでしょうにね。……それにしても、武者ライダー同士の決闘なんて、彼女は一体どうするつもりなのかしら?」

 

 

秀吉の疑問も最もだ。秀吉の軍は既に、先の戦で武者リノベーションを損失してしまっている。故に、武者ライダー同士の決闘など、武者リノベーション軍には出来ない筈なのだが……

 

 

長秀「……もしかしたら、私達のように向こうも武者ライダーを新たに召喚して引き入れた、という可能性はなくはないでしょうか?それならば、向こうが武者ライダー同士の決闘を申し出てきた事についても合点が行きますし」

 

 

勝家「それは……しかし、それだと奴らは一体何処から武者ライダーを引き入れたというのだ?我等のような例外はともかくとして、そうポンポンと武者ライダーがそこらに転がっている訳でも無し……」

 

 

向こうが決闘に用意するという武者ライダーは何処で手に入れた者のか。それについて様々な可能性を挙げ議論を述べる一同。しかし……

 

 

信長「……零……」

 

 

零「……ああ。俺も多分、お前と同じ事を考えてると思うぞ……」

 

 

何かに気付いたのか、何処となく零を案じるように伏し目がちに小声で呼び掛けて来る信長にそう答えつつ、零もまたある予想が脳裏を掠めて思わず頭を抱えたくなり溜め息を吐いた。

 

 

武者リノベーションを損失した家康の軍が新たに武者ライダーを引き入れる事が出来るとしたら、考えれる限り二つしか方法はない。

 

 

一つは、今自分達と秀吉達が脅威と感じているあの謎の戦士を武者ライダーに仕立て上げるか。最初に零はその可能性を挙げて考えたが、あの敵は無差別に殺戮と破壊を撒き散らす危険な存在。そんな存在が何処かの武将に大人しく仕えるなど有り得ないだろう。

 

 

そうなると、残る可能性はあと一つ……

 

 

零「―――なのはと市杵宍……捜索隊が見付けられていないあの二人が、恐らく向こうの軍に引き入れられている可能性が大きいだろうな……」

 

 

 

 

 

 

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