仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 劇場版編 作:風人Ⅱ
―TIME学園・保健室―
零「――ほら、終わった…ぞっ!」
―ペチィッ!―
なのは「イタっ?!うぅ……も、もうちょっと丁寧に扱ってよっ……」
零「知らん。全く、なんで何もない教壇の前でいきなりスッコロンだりするか、お前は……」
TIME学園の保健室。午前中の授業がまだ続いてる中、其処では零が授業中にドジをして怪我をしたなのはの赤くなった額にシップを貼って軽く平手で叩き、痛みで涙目になりながらジト目で睨むなのはの視線を受け流し救急箱を片付ける姿があった。
なのは「だ、だってほら、高校の授業ってどんな感じなのかなぁって思ってたら、以外と結構知ってる問題ばっかりだったから……」
零「……で、調子に乗って自分から当てに行きまくってたら、何もないところでいきなり転んだと?」
なのは「うっ……はい……」
呆れるような視線を向けて来る零から逃げるように、シップを貼った額を押さえながら気まずげに顔を逸らすなのは。そんななのはの反応に溜め息を吐くと、零は救急箱を元のあった場所に戻していく。
零「まあ、お前のおっちょこちょいは今に始まった話じゃないしな……それより今は、幸助達の事だろ」
なのは「あ、うん。授業中にも気になって何度か顔を見たけど、見た感じは……うん、昔からあんな感じだったんだなーって思ったねっ」
零「今に比べたら、幾分かマシなように見えるが……ただならぬ気配が滲み出ている辺り、やっぱり普通の高校生じゃなかったみたいだな」
なのは「冥王と同じ顔してるってだけで、生徒に話しかけただけで怯えられるし……アレはアレでショックだったなぁ……」
生徒達の反応がそんな感じなのだから、多分学校でもそれだけの事を色々とやらかしたりしてるのだろう。授業の合間に幸助達の顔を何度か盗み見たりしたが、あの三人から猛者のような恐ろしい気配が漂っていたのは一目瞭然だったしと、零はやれやれといった感じに頭を振りながらなのはの下に戻っていく。
零「まあ何にせよ、この世界のライダーが誰なのかはハッキリしてるんだ。授業が終わったら、早速アイツ等に会ってみるか」
なのは「だね。えっと……確か今日は始業式で授業も午前中しかないから、次の授業で終わりなんだっけ?」
零「そのハズだな、今日が始業式で助かったぞ。またファイズの世界の時みたいに長々と授業を受けさせられるんじゃないかと面倒に思ったし」
なのは「そう?私は結構楽しみにしてたんだけどなぁ……」
高校に行けるだなんて思いもしなかったしと、なのはとそんな何気にない会話を交わしながら保健室を後にして教室に戻ろうとする零。そんな時……
「――幸助……」
零(……?あれは……)
教室に戻ろうと長い廊下を歩いていた中、零の視界の端に人影……窓の外の校庭の真ん中に佇む一人の少女の姿が目に映ったのである。黒い髪に黒い瞳……それだけなら何でもないただの日本人の女性としか思わなかっただろうが、そうではない。その女性の顔は何故か、零が良く知る幸助の顔と瓜二つだったのだ。
零(幸、助……?いや……幸助と同じ顔をした女……?)
なのは「……?零君?どうしたのー!」
零「っ!は?あ、いや……」
目を剥いて幸助と同じ全く顔をした女性を呆然と見ていた中、廊下の向こうからなのはに呼ばれ正気に戻り、もう一度校庭の方に振り返ると、其処には最初から何もなかったように女性の姿が消え去っていた。
零(いない?……俺の気のせいだったのか……?)
念のために消えた女性の姿を探して校庭を見回すが、やはり女性の姿は何処にも見当たらない。やはり自分の気のせいだったのか?と若干腑に落ちないように首を傾げると、なのはの下に向かって再び歩みを進めていくのだった。
◇◆◇
―時渡り町・某喫茶店―
幸助「――にしても驚いたな……なのはと瓜二つとは」
スバル(中島)「うんうん!名字は違うけど、名前も同じだったね」
なのは(不破)「あそこまで似てると逆に気持ち悪いの……」
始業式の為、午前中の授業で下校した三人。下校途中に寄った喫茶店で幸助達が話題にしていたのは、今回の転校生……零となのはのことだった。
幸助「しかし……性格は間逆だな」
スバル(中島)「確かに……後、何も無い所で転んでる所とか」
なのは(不破)「私は運動神経【だけ】は悪くないの……」
そう言って幸助達の脳裏に過ぎるのは、黒板の問題に答えようとして教室の前でなのはが転ぶ光景。そんな彼女と違い運動神経"だけ"は悪くないと無い胸を張るなのは(不破)だが、なのはもそんな彼女とは対照的に理数が得意だった。それはもう天才的に。
なのは(不破)「うう……見た目が同じなのに~」
幸助「先生の質問に即答だからな……黒月もそうだが」
自分と同じ顔でありながら自分が分からない問題を当てまくるなのはの姿を思い出し、頬を膨らませて不満を口にするなのは(不滅)。そんな彼女を横目に幸助も零の顔を思い出すが、すぐに思考を切り替えて真剣な表情になった。
幸助「ま、んなことより、大事なことはあるだろ?」
幸助のその台詞で、なのは(不破)とスバル(中島)も表情を引き締め幸助と顔を見合わせた。
スバル(中島)「アルファちゃんの……ことだね」
幸助「ああ……既にタイムオーガはアイツの支配下から逃れ、街に放たれている……が、一向に姿を現さない」
なのは(不破)「前みたいな上級タイムオーガが現れて、組織を作ってる可能性があるの」
幸助「……だな」
三人の話題に出て来た名前……アルファという人物の行方について眉を潜めながら話し合い、三人は一旦話を切りアイスティーを飲んでいく。其処へ……
「――失礼……少し良いかな?」
アルファについて話し合っていた三人の席に、帽子と眼鏡が特徴のコートを身に纏った男が歩み寄り声を掛けた。
幸助「……何者だ?」
幸助はそれが普通の人間ではない事にすぐに気が付き警戒を込めて問い掛けると、コートを着た男……鳴滝は幸助達三人の顔を見回しながら言葉を紡いだ。
鳴滝「私は預言者、鳴滝……この世界はもうすぐ破壊者の手により破壊される」
なのは(不破)「破壊者?」
鳴滝「奴の名はディケイド……急げ、もう時間はない」
半信半疑で聞き返すなのは(不破)にそう言うと、鳴滝は背後から現れた歪みの壁に呑まれ何処かへと消えていった。そしてその場に残された幸助達はその光景に特に驚く事なく、真剣な顔で互いに顔を見合わせた。
スバル(中島)「……幸助、どう思う?」
幸助「胡散臭いな……だが、無視できる話でもない」
幸助にとっての敵は、大切な人を傷つける物。ディケイドがそうなのかどうかは分からないが、もし鳴滝の言う通りなら……
幸助「もしそうだったら、倒すだけだ」
力強い眼差しでそう答えながら拳を握り締め、ディケイドを倒す決意を口にした。その時だった……
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
『っ?!』
店の外から突然女の悲鳴が響き渡り、それを耳にした三人が驚愕しながら慌てて外を見ると、其処には店の向こうで5体の怪人が人々に襲い掛かる光景があった。
幸助「またゴキブリのタイムオーガか!?」
なのは(不破)「しぶといの……」
スバル(中島)「人類の敵、また出たね」
人々を襲う怪人達の正体を知ってうんざりとした様子で溜め息を漏らすが、それでも無視する訳には行かず、お金をテーブルの置いて嫌々店の外に出ていった。
◇◆◇
『ゴキゴキゴキ……』
店を出た幸助達三人が現場に到着すると、其処には黒光りする気持ち悪いボディの怪人……ゴキブリを素体にしたGタイムオーガ達が、獲物を探してウロウロとさ迷う姿があり、その足元にはGタイムオーガに喰われた人間達の服だけが散乱していた。
幸助「くっ、避難が遅れた人は手遅れか……」
スバル(中島)「幸助!行こう!!」
幸助「……ああ、行くぞ!スバル!なのは!」
スバル(中島)「うん!」
なのは(不破)「なの!!」
救助が遅れて民間人を救えなかった悔しさを胸の内に宿しながら、幸助はスバルと共に腰にベルトを召喚し、なのは(不破)は何処からか取り出したベルトを腰に巻いてピンクのパスケースを出し、幸助とスバルも変身の構えを取る。そして……
『変身ッ!』
『GATE UP!』
『GATE UP!』
『Mei-O Form!』
三つの電子音声と共に三人の身体が淡い光に包まれていき、光が晴れて消え去ると、其処には全く別の姿の幸助達……嘗て時の神時代に幸助が変身していたクロノス、そしてスバル(中島)となのは(不破)が変身したジェネシックと冥王の姿があったのだった。
クロノス『さあ、纏めて弄り倒すぜ!』
ジェネシック『貴方達を破壊します!』
冥王『さぁ、恐怖の悲鳴と断末魔の殺戮オーケストラを奏でるの』
それぞれ決め台詞を決めたと同時に、三人は剣と拳と薙刀を構え五体のタイムオーガに向かって走り出していくのだった。
◇◇◇
そして、Gタイムオーガ達とクロノス達が戦闘を開始したその影で、二人の男女……幸助達を追い掛けてきた零となのはが傍観する姿があり、零はGタイムオーガと戦うクロノス達の写真を撮影しながら三人の姿をカメラで追い掛けていた。
零「仮面ライダークロノスにジェネシック、冥王……やはり過去の世界でも変身するライダーは変わらずか」
なのは「うん……でもあのタイムオーガ、気持ち悪いね(汗)」
零「ゴキブリが素体だからだろ?雷のとこのローチよりまたリアルだから、生理的に受け付けないのは同感だな」
そんな軽口を叩きながらGタイムオーガや冥王、ジェネシック、クロノスの写真を何枚かカメラで撮影すると、零はカメラから手を離して制服の内ポケットからディケイドライバーを取り出し、それを見たなのはも同じ様にトランスドライバーを出した。
零「んじゃ、そろそろ行くとするか」
なのは「うん」
そう言って互いに顔を見合わせて頷き合うと、二人はそれぞれの腰にドライバーを装着し、左腰に出現したライドブッカーからカードを一枚ずつ取り出して変身の構えを取った。そして……
『変身ッ!』
『KAMENRIDE:DECADE!』
『KAMENRIDE:TRANS!』
電子音声が鳴り響くと共に零となのははディケイドとトランスに変身し、変身を完了すると同時に戦場に向かって駆け出していくのであった。
◇◆◇
クロノス『ふっ!てりゃぁっ!!』
―キィンッ!キィイッ!ガキィインッ―!
一方場所は戻り、クロノスが振るうクロノスブレイドの剣技がGタイムオーガを斬り裂いていくが、装甲が高いためか中々ダメージを与えられなかった。
クロノス『ちっ、以前より装甲が上がってるのか……なら、力任せで行くか!来い、ノーム!!』
『オッケー!オイラの出番だな!』
『GNOME FORM!』
何処からかの声と共に電子音声が鳴り響き、クロノスの姿が黒から茶に変化していき、クロノスブレイドもノームフォーム専用武器のノームスコップに変化していった。そして……
クロノスG『はぁっ!!!』
―ガアァンッ!ガァンッ!バキャアァッ!!―
『ゴキィ!?』
クロノスはGタイムオーガに一瞬で接近してスコップを振り上げ、渾身を込めた一撃をGタイムオーガの頭に叩き込みその身体を地面に沈ませた。そして畳み掛けるかのようにクロノスは地に倒れたGタイムオーガを踏みつけ、そのまま上空に蹴り上げた。
クロノスG『タイムクラッシュ』
『TIME CRASH!』
上空に投げ出されたタイムオーガを見上げながらクロノスの呟きに応じるようにベルトから時破壊の膨大なエネルギーが放たれ、クロノスの手に握られたスコップに集束されていき、そして……
クロノスG『アーススティングッ!!』
―バシュウゥゥッ!!!―
『ゴ……ゴキイイイイイイイイイイイイイっ!!?』
―ドガァァァァァアアアアアアアアアアアンッ!!!―
空中から落下してきたタイムオーガの身体をスコップの先端で突き刺して貫き、腹部を貫かれたタイムオーガは【時】を破壊され爆散していったのだった。
クロノスG『ふう……こっちは片付いたな』
タイムオーガの撃破を確認し、スコップを器用に回転させて地面に突き立てながら一息吐くと、クロノスはジェネシック達が気になり周りを見渡した。見れば、ジェネシックと冥王も同じくしてタイムオーガをそれぞれ撃退していたが、残りのタイムオーガ二体はクロノス達の力に恐れ逃走しようとしていた。
クロノスG『ッ!逃がすか!!』
逃走し始めた二体のタイムオーガ達を見てクロノスも通常フォームに戻り、ジェネシックと冥王と共に後を追おうとする。その時だった……
―ガキイィィィィィィィィィィィィィィィィィィインッッ!!!!―
『『ゴ、ゴギャアアアアアアアアアッ!!!?』』
―ドガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!!―
『ッ?!』
逃走しようとしたGタイムオーガ達を突如マゼンタとオレンジの斬撃が斬り裂き、Gタイムオーガ達は爆散し断末魔と共に跡形もなく散っていったのであった。その光景を見たクロノス達も驚愕し思わず足を止めると、爆発で発生した爆煙が徐々に晴れ、黒煙の向こうから二人の戦士……ライドブッカーSモードをそれぞれ振り下ろしたディケイドとトランスが姿を現した。
クロノス『……何者だ?』
突如現れタイムオーガ達を撃退したディケイドとトランスに警戒心を強めてそう問い掛けるクロノス。それに対しディケイドは左腰にライドブッカーを戻しながら、クロノス達を一瞥して口を開いた。
ディケイド『ディケイド……通りすがりの仮面ライダーだ。覚えとけ』
トランス『トランス。同じく通りすがりのライダーだよ』
クロノス『ディケイド……?』
敵ではないことを証明するかのように空手でそれぞれ自己紹介するディケイドとトランスだが、クロノスはディケイドの名を聞き先程の鳴滝の警告を思い出した。
クロノス『――そうか……お前が世界の破壊者か』
そう呟き、クロノスは突然剣の切っ先をディケイドに向けて突き付けた。
ディケイド『っ!?何の真似だ!?』
クロノス『あの胡散くさい預言者が言っていた事を信じるつもりはない。……俺は俺の眼で見た物を信じるだけだ』
クロノスに予想外の行動を取られ驚愕するディケイドにそう告げると共に、クロノスは地を蹴って駆け出しディケイドに目掛けて迷いなく斬り掛かった。それを目にしたディケイドも咄嗟に地面を転がってクロノスの斬撃を避けながら距離を離し、クロノスが口にした預言者というワードを聞き舌打ちした。
ディケイド『チッ…!また鳴滝の仕業かよっ!』
クロノス『言った筈だ……奴は関係ない。俺は俺のやり方で、お前が破壊者か確かめるだけだ!!』
そう言って剣を構え直し、問答無用と言わんばかりに再びディケイドへと斬り掛かるクロノス。そしてディケイドも左腰に戻したライドブッカーを再びSモードに切り替えてクロノスが振りかざした剣を防ぎ何とか距離を離すが、クロノスはそれを逃すまいとして俊敏な動きでディケイドに何度も斬撃を繰り出していく。
ディケイド(クッ!流石は幸助っ……人間時代でこの実力かっ……)
クロノス(ん?……かなり分かりずらいが、この剣技は流水か?何故俺の剣技が混じってる?)
反撃してライドブッカーを振るうディケイドの剣技が、自分しか使わないハズの剣技……流水剣の形が何故か混じっている事に気付き内心疑問を抱くクロノス。だが……
ディケイド『ゼェアアァッ!!』
―シュバアァッ!!―
クロノス『!』
クロノスと戦うとなって既に気持ち的にも余裕がないディケイドが突き出してきたライドブッカーの切っ先が迫る光景を見て、瞬時に顔を僅かに動かして切っ先を避け、疑問は残るが今は戦闘に集中しようとディケイドの繰り出す斬撃を弾きながら反撃していくのだった。
ジェネシック『ちょっと幸助!?』
冥王『ディケイド……アレが預言者の言ってたライダーなの?』
トランス『そんな……またこの世界でも……破壊者として拒絶されるの?……あの幸助さんにも』
突然始まった二人の戦いを見て、ジェネシックと冥王はクロノスの突然の行動に戸惑い、トランスはこの世界でまで零が世界の破壊者として拒絶されるのかと絶望してしまい、そして……
ガオウ「ムシャムシャ……アイツらで良いんだな?アポロガイスト?」
『ああ……行くぞガオウ、荒井真也』
ガオウ「良いぜ?皆纏めて俺が食ってやる」
真也「……ちっ」
三人の人影が二人の戦いを遠くから眺め、クロノスとディケイドが戦う戦場に向かって静かに歩き出し始めていたのだった。