―カンカンカンカンカンッ!―
「クッ!最上階はまだなのかッ?!」
ビルに入った拓斗は、未だオトシブミヤミーが起こす衝撃でビル全体が揺れる中、最上階に向けて必死に階段を上り詰めていた。本当ならエレベーターを使えば早いのだが、どうやら先程のビルとの激突で故障してしまったらしく、今はもうこの階段でしか上へ向かう事が出来ずにいたのだ。
(っ!これ以上っ……これ以上あんなっ、誰かがまた不幸に遭うなんてっ……!)
何処まで続くか分からない階段。だが、拓斗は決して音を上げることなく全力で階段を上り続けていく。そんな拓斗の脳裏に今も流れるのは、先程も脳裏を掠めた無数の瓦礫に埋もれる血まみれの人々の姿。それを思い浮かべる度に、拓斗はまるで何かに突き動かされるように自分の身体にムチを打ち、一度も立ち止まらずに走り続けていた。そして、漸く最上階に着いて会場内へと踏み入れると……
「た、助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!!」
「ッ?!」
会場内に入った拓斗が最初に目にしたのは、割れた窓から入ってきたオトシブミヤミーの爪先が襟首に引っ掛かり、屋上に上がろうとするオトシブミヤミーに外へ引っ張られそうになっている男性の姿だった。それを見た拓斗はすぐさま男性に向かって走り出し、男性が伸ばす手を掴んで力強く引っ張りオトシブミヤミーから救出した。
「早く!此処から逃げて下さいッ!」
「ひっ…あ、うぁ…!」
助けられた男性は半ば恐怖で顔を引き攣りながらも、拓斗の言葉になんとか頷き慌てて会場から逃げ出していった。だがその時……
―ズドオォォォォォォォォォォォォォォオンッ!!―
「ッ?!な、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ?!!」
不意にオトシブミヤミーが起こした揺れが再びビルを襲い、拓斗はバランスを崩しビルの外へと放り出されてしまったのだ。拓斗は半ばパニックになるも、咄嗟にビルの一角に掴まり何とか落下せずに済んだ。
「ぐっ…ぐぅ…落ち…るっ…!」
だがしかし、掴まったビルの一角が思ったよりも滑るせいで体を上手く持ち上げる事が出来ず、次第にビルを掴む手にも痺れがきて手を離してしまいそうになる。そんな時……
「――馬鹿にも程がある……お前に死なれちゃ困るんだがな」
「…ッ?!ティ、ティアちゃん?!」
最上階の割れた窓から姿を現した人物、それは拓斗を追って此処までやってきたティアであった。ティアは今にも落ちそうな状態に陥いている拓斗を見て呆れるように溜め息を吐くと、手に持ってるベルト……拓斗がオーズに変身したときに使ったオーズドライバーを拓斗に見せ付けた。
「ホントならもっと稼いでからの方が望ましかったんだが、その前にお前に暴走して死なれたらメダルも手に入らないからな。さっさと変身しろ!」
「…………」
オーズドライバーを突き付けて早くオーズに変身しろと促すティアだが、拓斗は何故かオーズドライバーを受け取ろうとはせず、ただティアの手に握られたドライバーを睨みつけていた。
「おい、何やってる?!さっさと変身を「その前に約束しろっ!」……何?」
何時まで経ってもオーズドライバーを手にしようとしない拓斗にティアは苛立ちを込めて叫ぼうとするも、拓斗の叫びに遮られ訝しげに眉を寄せた。拓斗はそんなティアを真剣な目つきで見据えながら……
「俺が変身したい時は、絶対に変身させる!人の命より、メダルを優先させるな!でなきゃもうっ……二度と変身しないっ!」
「ッ?!お前ッ…!」
自分が変身したい時は必ず変身させ、人の命よりメダルを優先させるなと。こんな状況の中で拓斗がいきなり出してきた条件にティアは険しげな表情を浮かべるも、すぐに舌打ちしながら拓斗から顔を背けてしまう。その時……
―ググッ……ドグオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオンッ!!!―
「ぐっ?!うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「ッ?!拓斗ォ!!」
ティアが条件を飲むか飲まないか迷ってる間に、オトシブミヤミーがビルの屋上へと上り詰めた衝撃でビル全体が再び大きく揺れ動いてしまい、拓斗はその際に手を離してしまい遥か地上へと落下していったのだ。ティアもそれを見て即座に飛び降り、拓斗に追い付いて腰にオーズドライバーを装着させると、懐から赤、黄、緑のメダルを取り出し拓斗に差し出した。
「ほら!急げっ!」
「約束するのかっ?!!」
「っっ~~~!!!ああ分かったっ!!!早くしろぉっ!!!」
こうなったらもうヤケクソだと言わんばかりにティアがそう叫ぶと、拓斗はその返答に満足したかのように頷きながらティアの手から三枚のメダルを受け取り、ドライバーのバックル部にあるスロットへとメダルをセットしていく。
―ガシャッガシャッガシャッジャキンッ!―
「掴まれぇッ!!!」
「んっ……!」
メダルをバックルにセットしてバックル部を斜めへと傾けると、拓斗はティアは強く抱き締めながら、右腰に装着されたスキャナー…オースキャナーを取り外し、そして……
―キィーンッキィーンッキィーンッ!―
「変身ッ!!!」
『TAKA!TORA!BATTA!TA・TO・BA!TATOBA!TA・TO・BA!』
オースキャナーでバックルを右からなぞるようにスライドさせると歌の様な電子音声が響き、拓斗はオーズへと変身してすぐに両腕の黄色いアーム…トラクローを展開しビルの壁へと突き刺していった。
―ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギィッ!!!!―
『グウゥッ!!!!止まれぇええええええええええええええええええええええええッッ!!!!』
壁にトラクローを深く突き刺し、なんとか落下速度を落とそうと無数の火花を散らせながらティアを抱えて壁を伝っていくオーズ。そしてオーズはそのまま真下の瓦礫に激突して宙に投げ出され、ティアを抱き締めながら空中回転しなんとか地上へと着地していった。
『ッ!ハァ…ハァ…ハァ…助かったぁ……』
「――らしいな……ところで、何時までくっついてるつもりだ……?」
『え?……あ、ご、ごめんッ?!』
無事に地上へと着地し安心していたせいか、オーズはティアを抱き締めてた事をすっかり忘れ、ティアに言われて慌てて離れた。
(おぉう……ティアちゃんって結構身体が柔らかいんだな……しかも抱き締めてる時に何か良い香りが……って、何想像してるんだこんな時にっ?!)
煩悩退散!退散!とオーズは仮面をバシバシ叩きながら頭の煩悩を必死に取り払おうとし、対するティアはそんなオーズの様子を見て不審者でも見るような目で睨んでいた。そんな時……
―ブオォォォォオンッ……キイィィィィィッ!!―
『……え?』
「あ……?」
オーズ達の背後からバイク音が響き、二人が背後へと振り返ると其処には黒ずくめの青年……御藤が一台の黒いバイクに乗ってこちらに走って来る姿があった。御藤は二人の前でバイクを停めてヘルメットを取ると、バイクの後部席に置いてあった包み箱を持って二人へと歩み寄っていく。
『?あの…貴方は?』
「……オーズ、ある方からの誕生日プレゼントだ」
「は?いきなり何を言って……」
突然現れて訳の分からない事を告げる御藤にティアは険しげに聞き返すが、御藤はそんなティアを無視してオーズの前に立ち、包み箱を開いていった。其処には……
「――ッ?!なに?」
『これって…剣に…セルメダル?』
そう、御藤が開いて見せた包み箱の中身とは、数枚のセルメダルと金色のラインが入った一本の青い大型剣だったのだ。オーズは包み箱に入った剣とセルメダルを見ると、御藤の顔を見つめながら戸惑った様子で箱を指差した。
『え、く、くれるんですか?』
「あぁ、お前へのプレゼントだと言っただろ?」
『ホントに?やった!見て見てティアちゃん!スッゴいよこれっ!』
オーズは包み箱から剣……メダジャリバーを取り出すとそれをティアに見せながらはしゃぎ、御藤はそんなオーズの反応を他所に箱からセルメダルを積み重ねて取り出し、背後の駐車場にある黒い自販機を指差した。
「メダルを、彼処にある自販機に使え」
『え?いえ、大丈夫ですよ?別に喉渇いてないし……』
「……急げ」
気の抜けた返事を返すオーズに御藤は何処か呆れた様子でセルメダルをオーズに突き付け、オーズは戸惑いがちに御藤からセルメダルを受け取ると、言われた通りに黒い自販機の前に立ちセルメダルを一枚投入していく。
―カチャンッ―
『えーっと……ん?何だコレ?』
メダルを投入してどの缶を選ぼうかと指を走らせてると、オーズは自販機の中央部にある黒い大型ボタンの存在に気付き、気になって思わずボタンを押していった。次の瞬間……
―ピポッ……ガチャッガシャンッ!ブオォォォォォォォォオンッ!―
なんと、黒い自販機は突如複雑な機械音と共に変形を始め徐々にその姿を変えていき、御藤が乗ってきたのと同じ黒いバイク……ライドベンダー・マシンバイクモードへと姿を変えていったのだった。
『おぉ?!バイクになった?!カッコイイッ~!』
オーズはいきなりバイクに変形したライドベンダーを見て驚き半分、興奮が半分といった様子でメダジャリバーを片手にライドベンダーへと乗り込んだ。後藤はそんなオーズを尻目に自分が乗ってきたライドベンダーを自販機形態……マシンベンダーモードに切り替え、
「それと、これもプレゼントだそうだ」
そう言いながら一枚のセルメダルを懐から取り出してライドベンダーに投入し、青い缶の購入ボタンを数回押していく。すると……
『TAKO CAN!』
ライドベンダーから奇妙なメロディーと共に電子音声が響き、それと共に青い缶が大量に取り出し口へ射出されていったのだ。御藤はその中から一つの缶を手に取りプルトップを起こすと、なんと青い缶はタコのようなメカへと変形し、更に他の缶も青いタコへと変形し一斉に空へと飛び立っていった。
『タコだ?!ねぇ!タコタコ!ほら、凄いよ!』
「コイツ等……あの時の鷹と同じ……?」
オーズが青いタコのメカの大群……タコカンドロイド達を指差しながらはしゃぐ中、ティアは先程セルメダルを横取りした鷹のメカとタコカンドロイドが似てると感じ表情を険しくさせていた。タコカンドロイド達はその間にオーズの目の前で道を作るように重なっていくと、オトシブミヤミーが暴れる高層ビルに向けて道を築いていった。
『スッゴい……』
「剣にもセルメダルを入れておけよ?」
『?剣に?』
オーズは御藤に言われてメダジャリバーを眺めると、メダジャリバーの柄の上にメダルの投入口のような物があるのに気付き、そういう事かと納得しながら御藤を見た。
『分かりました。誰だか知らないけど、ありがとう!』
オーズは御藤に礼を言いながら貰ったメダルを左腰のメダルケースに仕舞うと、ライドベンターを走らせてタコカンドロイド達が作る道の上を走り、高層ビルの屋上で暴れるオトシブミヤミーの下へ向かっていったのだった。