仮面ライダーオーズ メダルと欲望と不幸?少年   作:風人Ⅱ

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第三章/ネコと進化と大食い①

 

 

ティアを連れ帰ったせいで、家族から売春関係の仕事に手を出したのだと勘違いされてしまった拓斗。その後何とか誤解を解いた彼はティア(着替え済み)と共に居間に下り、母の美那子と佐奈にティアのことを説明していた。無論、オーズやグリードの事は抜きにしてである。

 

 

「まぁ……それじゃ、その子は前に働いていた仕事先で知り合った人の娘さんなの?」

 

 

「そ、そうそう……それでその人、なんか多額の借金を支払う為に家を売っちゃったらしくてさ?それで残った借金を返しながら彼女の面倒を見るのは無理だからって、借金全額返済するまでこの子を預かって欲しいって頼まれてっ……」

 

 

「それで貴方、引き取るって言っちゃった訳?」

 

 

「ま、まあ……ね……」

 

 

我ながら苦しすぎる作り話を口にして、思わず苦笑いをしてしまう拓斗。すると、先程の誤解の発端である紗奈は静かにお茶を啜り、一息吐いてティアを見た。

 

 

「いやはや、でも誤解で良かったよー。てっきり私はお兄ちゃんが家計の苦しさの余り、遂に自分の体まで売り出してしまったのかと……」

 

 

「しないからそんなことっ!!もうちょっと自分の兄のこと信じてくれないかな妹よっ?!」

 

 

「そうよ紗奈?幾ら年齢詐称でアルバイトした事がある拓斗でも、流石にそこまでしたりしないわよ」

 

 

「う……それ言われると……返す言葉もないけど……υυ」

 

 

実際、拓斗は以前にも何度か年齢を偽ってバイトしたことが度々あった。その事は美那子や紗奈にも黙ってやっていた為に、年齢詐称がバレて美那子達に知られた時は、仕事先で頭を下げる美那子を見て本当にいたたまれなかった。その時の記憶を思い出した拓斗は閥が悪そうに頬を掻いていくが、すぐに頭をブンブン振って話を戻した。

 

 

「と、とにかく!その人には本当にお世話になってて断れないし、この子を放っておくわけにもいかないしさ……うちに住ませてあげてくれないかな……?」

 

 

「……そうねぇ……」

 

 

右手の手の平を頬に当て、瞳を伏せて考え込む美那子。正直、かなり無理のある話だというのは拓斗自身も重々承知している。経緯もあからさまに嘘くさいし、見ず知らずの女の子をいきなり住ませて欲しいと言われても簡単に頷けるはずがない。それでも其処をなんとかっ!と、拓斗は両手を合わせて頼み込み、美那子はそんな息子を見て一度深い溜め息を吐くと……

 

 

「――――分かったわ……事情が事情みたいだし……流石に女の子を一人外にほっぽる訳にもいかないしね」

 

 

「ッ!ありがとう母さんっ、助かるよっ……」

 

 

「ううん、いいわよ別に。その子だって、大人の事情に振り回されて大変だっただろうし。困った時はお互い様ってね……紗奈も良いでしょう?」

 

 

「私は別に構いませぬがー……お兄ちゃんというケダモノがいる一つ屋根の下に、一緒に住まわせても大丈夫なのかな?」

 

 

「だからそのネタもう引っ張らなくていいからっ!!」

 

 

「大丈夫よ♪拓斗はそういう事に関してはヘタレだから、自分から女の子を襲ったりしないわ」

 

 

「ヘタッ……母さん、それフォローしてくれてるんだよね……?」

 

 

「勿論、だから安心していいわよティアちゃん?拓斗は信頼出来るから、ね?」

 

 

「…………」

 

 

美那子はそう言ってニコッとティアに微笑みかけるが、ティアは何も言わず無言のままフイッと美那子から顔を背けてしまう。

 

 

「―――で、めでたくしてティアさんの住居が決まったわけですが……お母さん、ティアさんの部屋はどうするの?」

 

 

「あ、そうねぇ……確か客間の方が幾つかあった筈だから、もし良ければそっちの方を「必要ない」……へ?」

 

 

ティアが就寝に使う部屋をどうしようか考える美那子の言葉を遮る様に、ティアが始めて口を開いた。それを聞いた三人はティアへと視線を集めていき、ティアもいつもの様子で口を開くと……

 

 

「部屋なら用意する必要はない。私はコイツと……拓斗と同じ部屋に住まわせてもらう」

 

 

「…………へっ?」

 

 

「ほほう?」

 

 

「まぁ」

 

 

ハッキリと、断言するようにそんなことを言い放ったのであった。ティアのその発言に美那子は口に手の平を当て、紗奈はキュピーンと怪しげに目を光らせていき、拓斗も一瞬唖然としていたがすぐに正気に戻り、慌ててそれに反論し出した。

 

 

「ちょ、なに言ってんのいきなりっ?!せっかく部屋を用意してくれるって言ってるんだから、そっち使わせてもらえばいいだろうっ?!」

 

 

「馬鹿かお前?それだと(ヤミーを見付けた時に)お前を呼びにいくのが面倒だろう?お前には常時傍にいてもらわなきゃ困るんだよ」

 

 

「そんな?!それだけの為に一緒の部屋になれと?!」

 

 

「当然だ。とにかく私はお前と同じ部屋に住む、異論は認めない。じゃあな」

 

 

「ちょ?!待ってってティアちゃんっ?!ティアちゃんっ!」

 

 

メダル集めの効率の為にも、部屋は拓斗と同室にさせてもらう。反論を聞き入れないという態度でそう告げると、ティアは拓斗の後ろを通り過ぎて居間から出ていき、そのまま2階へと上がっていってしまった。そしてそれを見た拓斗は暫く唖然としてしまうが、その時背後から嫌な視線を感じておもむろに振り返ると、其処には何やらニヤニヤと微笑む美那子と紗奈の姿があった。

 

 

「あの……母さん……紗奈……?」

 

 

「まぁ……若いってホントに羨ましいわねえ♪」

 

 

「ちょ、なにそのキラキラした瞳?!違うからっ?!母さん達が想像してるような事は何も――!!」

 

 

「心配ならご無用だよお兄ちゃん?私達は理解ある家族だから、お兄ちゃんのプライベートを深く詮索する気はござらんサー」

 

 

「だから違うって言ってるよねっ?!止めてその『私達分かってるから……』みたいな生暖かい眼はっ?!!」

 

 

「ではではお母さん、今晩の晩御飯はどうしますかなー?」

 

 

「勿っ論、お赤飯を炊いてカレー(一個105円)ですよー♪」

 

 

「イエーイ、良かったねーお兄ちゃん?パチパチパチパチ~」

 

 

「……もう……良いです……」

 

 

最早何を言っても無駄か……と、拓斗はガクリと肩を落としながらはしゃぐ二人を放って自室へと戻ろうとする。その時……

 

 

「――あ、そういえば拓斗?すっかり忘れてたんたけど」

 

 

「何っ?!!何ですか今度はっ?!!また俺を虐める気ですかっ?!!あんまり虐め過ぎると流石の俺でも泣きますよっ?!!」

 

 

「そうじゃなくて、昼間にポストに封筒が入ってたのよ。拓斗宛てに」

 

 

「……え?封筒?」

 

 

「そっ、それと何かダンボールが一つ、玄関の前に置いてあったからキッチンに運んでおいたわよ。はいこれ」

 

 

そう言いながら美那子は懐から一通の封筒を取り出し拓斗へと差し出していき、拓斗は先程までの落ち込みモードを消して美那子の手から封筒を受け取りそれを眺めていく。

 

 

(?宛名以外、差出人の名前も切符もない?)

 

 

封筒には『神道 拓斗様へ』としか書かれておらず、それ以外には何も書かれていない。若干怪しく感じながらも封筒を開いて中身を取り出してみると、中には一通の手紙が入っており、拓斗は頭上に疑問符を並べながらそれを開いて読んでいく。

 

 

「えーっと、なになに……『神道拓斗様、本日は大変ご苦労様でした。今回こうして手紙を送らせて頂いたのは、ティア様の和神高校への転入手続き完了と、ティア様の学費と生活費の支援のお知らせを――』……って、はあぁっ?!!」

 

 

……其処に書かれていたのは、拓斗自身にもまったく身に覚えのない手紙の内容だったのであった……

 

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

 

―神道家・拓斗の自室―

 

 

「――私が知るわけないだろ、そんな事」

 

 

「本当に?だってこれ、転入手続きとか生活費の支援とかいきなり可笑し過ぎるだろう?何かこんな事してくれる人に心当たりとか……」

 

 

「心当たり?私は今日復活したばかりで、人間と接触したのはお前が始めてだったんだぞ?心当たりなんてある筈がない」

 

 

「……そっか……」

 

 

あれから数分後、自室へと戻った拓斗はティアに手紙の贈り主について心当たりがないか問い質していたが、どうやらティアも何も知らないらしい。因みにティアは押し入れの中を寝床に使うらしく、押し入れの中には敷布団が一枚に毛布と布団が一枚ずつ敷かれている。何処の猫型ロボットだろうか。

 

 

「うーん、母さん達が知っている筈もないしなぁ……それにあんなものまで置いていってるし……」

 

 

そう言って拓斗が視線を向けた先には、キッチンから此処まで運んだダンボールがあった。箱の中にはティアの制服、それに鞄や日用品など様々なものが入っており、まるでティアが此処に住む事になるのを知っていて用意したように思える。

 

 

(一体何処の誰が……もしかして、ティアちゃんがグリードだって事も知ってるのか?)

 

 

いや、寧ろ知らない方が可笑しいかと、拓斗はダンボールから手紙へと視線を下ろして訝しげな顔を浮かべていた。そしてティアはそんな拓斗から目を逸らすと、グリード化させた赤い右腕を見つめながら昼間に現れた鷹のメカ達や御藤の事を思い出していく。

 

 

(こんな真似をする連中は奴らしか考えられないな……それにしても……何故人間がメダルを集めている?奴らの目的はなんだ?)

 

 

グリードならともかく、人間なんかがメダルを集めてどうしようというのか…?それが分からないティアは暫く深く考え込んでいたが、やはり現状だけの情報でその答えが分かる筈もなく、拓斗から背を向けてねっ転がっていったのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

 

―神上ファウンデーション―

 

 

その頃、神上ファウンデーションでは神上がレイカからある報告を受けていた。

 

 

「会長の予想通り、ティアさんは神道拓斗さんの実家で預かる事になったそうです」

 

 

「そうか……では引き続き、御藤君に監視の方を続けるように伝えておいてくれ」

 

 

「分かりました」

 

 

報告を終えたレイカは神上に向けて一度頭を下げると、そのまま踵を返して部屋を後にしていった。そしてそれとはすれ違いに一人の女性……ユリカが部屋へと入っていき、神上が座る執務机の前にまで歩み寄っていく。

 

 

「やぁ、待っていたよ。頼まれた物は持ってきてくれたかな?」

 

 

「……フンッ……」

 

 

柔らかい笑みを向けてくる神上に何も答えず、ユリカは軽く鼻を鳴らしながら懐から数枚のメダルを出して神上へと投げつけた。神上はそれを片手だけで受け取ると、手を開いてキャッチした数枚のメダル……薄い桜色と薄い黄色、薄い蒼色のメダルを見つめた。

 

 

「三枚か……上出来だユリカ君。ちゃんと程度を弁えてくれて助かるよ」

 

 

「貴方にそんなこと言われても嬉しくないわね……それで、いつ彼等に渡すつもりなの?」

 

 

「時が来れば渡すつもりさ。今はまだその時ではない……その時ではね」

 

 

神上はそう呟きながら机の上にメダルを並べていき、椅子を回してユリカから背を向けた。ユリカはそんな神上を見て目を細めると、近くのソファーに腰掛けていく。

 

 

「それにしても……正気なの?グリードを学校に通わせるだなんて」

 

 

「ああ、正気さ。君は興味あるとは思わないかい?グリードである彼女が、人間社会の中に紛れてどうやって生きていくのか……気になるじゃないか」

 

 

「相変わらずね……貴方は自分の興味本位の為なら他人をも巻き込む……欲望に忠実な男……」

 

 

「私だけに限られてるわけじゃないさ。君もこの街の人間も……いや、この世の人間は全てなにかしら欲望のままに生きている。私もその大勢の中の一人にしか過ぎないのだよ」

 

 

「…………」

 

 

窓ガラスから見える夜景を眺めながらそう呟く神上。ユリカはそんな神上の背を暫く見つめると、そのままソファーから立ち上がって部屋から出ていってしまう。バタンッと扉が閉まる音を背中越しに聞くと、神上は椅子を回してテーブルの上に並べられたメダルを一枚手に取った。

 

 

「さて……私達はそろそろどちらに着くべきかな……グリードか……オーズか……」

 

 

―ピィーーーーンッ!―

 

 

指で弾かれたメダルが宙に舞う。それを見つめる神上の顔には、何かを楽しむかのように笑みが浮かばれていたのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

 

因みにその頃……

 

 

「ったく……アイツってば、人が貸したノートを返さないで帰るなんてっ」

 

 

『桐谷』の表札が掛けれたある一軒家。その家の二階の部屋では、拓斗のクラスメイトである椎名が苛々しながら机に向き合っていた。

 

 

何故彼女がお怒りなのかと言うと、実は拓斗が昼休みの後の英語の授業でメダルの事を考え込んでたせいでノートを取り忘れてしまい、彼女に頼んでノートを借り自分のノートに書き写させてもらったのだが、拓斗がノートを返すのを忘れてそのまま帰ってしまったからである。

 

 

「今日はクスクシエのバイトがあってアイツん家に行けなかったし……しゃーない、明日学校へ行く前にアイツの家に取りに行くか……」

 

 

仕方ないといった様子で肩を竦めながらそう決めると、椎名はさっさと宿題を済ませるべくシャーペンを手に取っていく。

 

 

……今現在、彼の家に見知らぬ女が居候しているとも知らずに。





神上ファウンデーション人物一覧


神上ファウンデーション


オーズを支援する謎の財団。メダルを利用する武器・装備を大量生産しているが、その目的は一切不明とされている。



神上 総介


解説:神上ファウンデーションの会長であり、34歳。人の欲望が持つ力に魅せられており、それゆえに欲望の結晶であるオーメダルを追い求めている。常に笑みを絶やさないが、その裏では何を考えてるか分からない。


イメージキャラはBLEACHから、藍染 惣右介。



天城 レイカ


解説:神上総介の秘書を勤める女性。22歳。給料さえ出れば、全て仕事だと言い切るドライな性格の持ち主。



御藤 真太郎


解説:神上ファウンデーション所属のバイク隊隊長。19歳。かつて警察のエリートであったが、『世界の平和を守る』という理念に賛同し組織に入った。



ユリカ・アルテスタ


解説:黒月零達の世界から神条の依頼を受け、組織に協力している女性。依頼でメダル収集に協力しているが、本人は神上を余り良く思っていないらしい。




神道家と拓斗の友人達一覧


神道 美那子

性別:女

年齢:36歳

イメージCV:川澄綾子


解説:拓斗の母親。拓斗が中学性の時に夫が借金を残して蒸発した為、やや病弱気味の身体でありながら外で働いて家計を支えてる。ノリの良い人だが、若干抜けてる所がある。


イメージキャラは会長はメイド様!より、鮎沢美奈子。



神道 紗奈

性別:女

年齢:14歳

イメージCV:石原夏織


解説:拓斗の妹。校内でもファンの多い黒髪の美少女だが極度の懸賞マニアで、活動内容をこじつけて学校で『懸賞部』を自分の自己満足の為に作ってしまった。おとなしく淡々な口調で常に無表情の中学生であり、家計を支える為に懸賞で高級食材や旬物を高確率で当てたりする幸運の持ち主。


イメージキャラは会長はメイド様!より、鮎沢紗奈。



赤野 和也

性別:男

年齢:17歳


解説:拓斗のクラスメイトである男子生徒。拓斗とは親友同士であり、神道家の事情を知ってよく差し入れを送ってくれたりする。実家は地元で有名な焼肉屋を経営している。



桐谷 椎名

性別:女

年齢:17歳


解説:拓斗のクラスメイトである女子生徒。拓斗や和也とは中学からの付き合いで、たまに拓斗の家に家事の手伝いをしに行ったりする事が多い。正義感が強く勝気で頭より先に体が動くタイプ。
以前命の危機に見舞われた際に拓斗に助けてもらったことがあり、それからある経緯で彼に思いを寄せるようになるが、本人はそれを否定している。



東上 夏目

年齢:女

性別:17歳


解説:拓斗のクラスメイトである女子生徒。高一年の時に実家の都合で星華市へと引っ越してきた転校生で、和神高校へ転入届けを出そうと学校に向かっていた最中に道に迷ってしまい、その時に拓斗と出会って彼と知り合う事になる。
和也や椎名とは拓斗の経由で知り合い、それから四人で行動を共にする事が多い。かなりの美少女で男子達からの人気も高いが、本人はそれに気付いていない。


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