仮面ライダーオーズ メダルと欲望と不幸?少年   作:風人Ⅱ

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第三章/ネコと進化と大食い②

 

 

 

 

ティアの神道家への居候が決まったその日の夜。午前0時を過ぎようとしている時間帯の為に街中は漆黒の闇に包まれ、不気味な静寂が漂っている。そんな街中に存在するとあるトンネル内では、ある騒ぎが起きていた。それは……

 

 

「う、撃て!撃てえぇ!」

 

 

―ダンダンダンッ!!ダンダンダンダンッ!!―

 

 

『フンッ……』

 

 

暗闇に包まれるトンネルの外には数台のパトカーが集まり、警官達が一斉に拳銃を構えてトンネル内に潜む異形達……ティアと同じくグリードであるウヴァ、カザリ、ガメル、メズールの四体に向けて発砲していたのだ。しかし四体は銃弾をものともせず、悠々とした態度で怯える警官達を見つめていた。

 

 

『僕達が800年封印されていた間、人間達も変わったみたいだね』

 

 

『そうねえ、愚かしさまでは変わってないようだけど……哀しい事♪』

 

 

通用しないと分かっていながらも発砲を止めない警官達を見つめ、可笑しそうに微笑むメズール。その隣に立つウヴァは苛立ちを込めながら舌打ちし、三体の前に歩き出ていく。

 

 

『全く、何処に行ってもコレか……フンッ!』

 

 

―バッ!バキィッ!!―

 

 

「ガアァッ?!」

 

 

ウヴァは先陣を切るようにバッタの如く跳躍力で警官達へと飛び掛かって襲い掛かり、次々と警官達を殴り飛ばしてトンネルの外へと吹き飛ばしていく。それを見たメズールも警官達へと向かおうとするが、ガメルが突然オドオドした様子で話し掛けてきた。

 

 

『メズールゥ……俺、セルメダルが足りなくなってきたぁっ……』

 

 

『あぁ、貴方はメダルの消費が早い物ね……いいわ。ほら、分けてあげる♪』

 

 

メズールはそう言って妖艶な笑みを浮かべると、右腕から数枚のセルメダルを飛び出させてガメルへと分け与えていき、セルメダルを分けてもらったガメルは力が漲る身体を見て満足げに頷いていく。

 

 

『オーズを追うのも大事だけど、セルメダルも集めないとね?』

 

 

『……だったら僕がやるよ……フンッ!』

 

 

―ドシュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウーーーーーーーーーッ!!!―

 

 

『ッ?!ウ、ウアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアァッ?!!』

 

 

カザリがそう言って警官達に右腕を突き出した瞬間、とてつもないエネルギーを秘めた金色の竜巻が発生し警官達をパトカーごと吹っ飛ばしてしまった。そしてそれを見たカザリは猫のように大きく伸びをし、軽い口調で言葉を紡ぐ。

 

 

『大丈夫、きっと上手く行くよ……人間達は変わったけど、その欲望も変わった……より深く……底無しにね』

 

 

そう言ってカザリは口元に怪しげな笑みを浮かべ、ウヴァ達に一度顔を向けるとトンネルを出て何処かへと消えていった。

 

 

 

 

 

 

そして同時刻。星華市内に存在するとある深夜のファミレスでは、百枚を越える皿を積み重ねて料理を食べ続ける大食い男の姿があり、男は奇怪な目で見つめてくる周りの視線も気にせず幸せそうに料理を食べ続けていたのだった……

 

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

 

翌朝、神道家玄関前……

 

 

―ピンポーンッ―

 

 

「……遅い……」

 

 

時刻は6時40分。スズメの囀りが早朝の住宅街に響き渡る中、制服姿の椎名が神道家の前に立っていた。彼女は昨日拓斗に貸したノートを返してもらう為に、こうして登校前に拓斗の家に訪れたのだが、椎名の顔には何処か苛立ちが浮かび上がっていた。何故なら……

 

 

「何で誰も出て来ないのよっ……」

 

 

そう、彼女は10分ほど前から此処へ来ているのだが、インターホンを押しても一向に誰も家の中から出て来ないのだ。流石にインターホンを何度も鳴らす訳にはいかないので、三分置きにインターホンを一回ずつ鳴らして待ってはいるが、流石に10分も待たされると苛立ちも募るばかりだ。

 

 

(……あーーーもぉ!いつまで待たせんのよ拓斗のヤツ?!出て来たら一言文句言ってやる!)

 

 

頭の中で拓斗に対して文句を叫ぶ光景を想像しながら、まだかまだかと腕を組みながら扉を睨みつけ、もう一回インターホンを鳴らそうと手を伸ばそうとした。その時……

 

 

―……ガチャッ―

 

 

漸く玄関の扉が音を立ててゆっくりと開かれたのである。それを見た椎名は伸ばした手を引っ込めて、扉の奥にいる人物を睨んだ。

 

 

「おっそいわよ拓斗!どんだけ待たせれば気が済……む……」

 

 

扉が開かれた先にいる人物に向けて叫ぼうとした椎名だが、その顔がピシリと固まり動かなくなってしまった。何故なら、扉の奥から現れたのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――人が気持ちよく寝てるのに……さっきから何度も五月蝿い音を鳴らしてるのはお前か……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

―――扉の奥から出て来たのは拓斗ではなく、椎名の知らない銀髪の美少女……若干寝癖が付いて不機嫌そうに顔を歪めるティアなのであった。

 

 

「な……な……な……な……?」

 

 

「あ……?「な」が何だ?ハッキリ物を言え」

 

 

寝ていたところを起こされて機嫌が悪いらしく、眉間に皺を寄せながら険しげにそう問い掛けるティアだが、椎名は突然現れた見知らぬ女の登場に驚きを隠せず開いた口が塞がらない。更にそれだけなら未だしも、問題は彼女の格好にもあった。

 

 

「そ、そそそその格好……っていうかそれ、拓斗のシャツッ?!!」

 

 

現在のティアの格好。それは下が薄ピンクの下着一枚だけ、上には拓斗のシャツを一枚羽織り、更にボタンが全て開け放たれて豊満なバストが見えており、しかもその下にブラジャーを付けていない……つまり拓斗のシャツを着てる以外、殆ど半裸なのである。

 

 

「ア、アンタ一体……何で拓斗の家からっ……」

 

 

「あ…?拓斗の知り合いか?だったらお生憎様、アイツはまだ寝てるぞ?昨日夜遅くまでずっと、隣で「煩悩退散」とかブツブツ言ってたからな……多分遅くまで起きてたんだろ」

 

 

「……は?昨日の夜?ずっと隣で……?」

 

 

「あぁ、アイツとは一緒の部屋だからなぁ……だから嫌でもアイツの独り言が聞こえてくるんだよ」

 

 

「なっ?!」

 

 

一緒の部屋?つまり、拓斗は彼女と共に一夜を共にしたという事なのだろうか?

 

 

この格好の彼女と……一夜を……。そう考えて椎名がティアを見つめながら絶句していると……

 

 

 

 

 

 

―ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!―

 

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおいティアちゃんっ!!!!!なんでスカート脱いだまま勝手に出てるのっ?!!!ちょっ、早くこれ履いて――――あ…………」

 

 

ドタバタと騒がしく血相を変えて二階から下りてきたのは、右手にティアが着ていたスカートを握り締めた拓斗だった。しかし拓斗はティアと一緒にいる椎名を見てピシリと固まり、椎名も拓斗が握るスカートを見てピクッと口端を吊り上げた。

 

 

「し……しししし椎名ちゃん?な、ななななんで此処に?」

 

 

「拓斗……アンタァァァァァァァァ……!!」

 

 

「ひ、ひいぃぃぃぃっ?!!怒りの血管マークと背後に炎が見えるっ?!!お待ちになって椎名さんっ?!!何を想像してるかは知りませんがこれは誤解であって?!」

 

 

左手をブンブン振りながら右手でスカートを背中へと隠して必死に弁解する拓斗だが、ずっと外で待たされ続けてから募りに募った怒りが遂に限界を超えた椎名には全く聞こえておらず、ザッ!と勢い良く一歩前に出て……

 

 

「アンタ、アンタはァ……なにやってんのよォッ!!!!」

 

 

―ブオォンッ!!!!―

 

 

「ちょっ?!!!まっ―ドガアァァァッ!!!―ごはぁああああああああああああああああああああああああああッ?!!!」

 

 

右手に持っていた鞄を思いっきり投げ飛ばし、拓斗の顔面へと剛速球でぶち当てていったのだった。拓斗はそのまま悲痛な悲鳴を上げながら後方へと吹っ飛ばされて宙を飛び、そして……

 

 

―ドッシャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!!―

 

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア床が抜けたああああああああああああああああああああああああっっ?!!!」

 

 

よりにもよってガタが来ていた床に激突し、そのまま床が崩れて大ダメージを負ってしまったのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

 

―神道家・居間―

 

 

「そんで?その子はアンタが前に働いてた仕事先で知り合った人の娘さんで、今は訳ありでアンタん家に居候してるって訳……?」

 

 

「はい……」

 

 

「ムグムグムグムグッ……」

 

 

あれから数十分後。拓斗は穴を開けてしまった廊下の床を修理した後、椎名を家に上げて居間に招き、彼女にティアの事について事情を説明していた。ちなみに彼の隣には、既に和神高校の制服に着替えたティアが黙々と食パンを食べながら珈琲を飲んでおり、椎名はそんなティアを睨みながら口を開いた。

 

 

「事情は大体分かったけど……だけど、この娘と一緒の部屋に住んでるっていうのはどういうことなのかしら……?」

 

 

「え"?あ……いや、あの……それはですねっ……」

 

 

「――私がコイツの部屋に住むと決めたんだ。何か問題でもあるか?」

 

 

「『問題あるか』ですって?あるに決まってんでしょっ?!年頃の男女が同じ部屋で就寝を共にするなんて、なに考えてるわけえぇっ?!」

 

 

バァンッ!!とテーブルを思いっきり叩きながら身を乗り出して怒鳴り声を上げる椎名。それに対し拓斗はダラダラと滝のような汗を流しながら視線をさ迷わせるが、ティアは「ハッ」と馬鹿馬鹿しそうに鼻を鳴らした。

 

 

「別に部外者のお前には関係ないだろう?赤の他人のくせに、私達の事に口出しするな」

 

 

「な、なんですってっ?!」

 

 

「なんだ?言葉が分からないのか?ああそうか……その馬鹿デカイ乳に栄養が行き過ぎて脳細胞が足りてないか?」

 

 

「こっ?!!ひ、人が気にしてる事をぉぉぉ……!!」

 

 

「あ、あの……彼女はちょっと悪い環境で育ったせいで口が悪くてさ?だから彼女が言う事は余り気にしないで――」

 

 

「うっさい!!アンタは黙ってなさいっ!!!」

 

 

「えぇぇぇ………」

 

 

何とかフォローを入れようとするも失敗。椎名に怒鳴られた拓斗は弱々しい声を漏らし、ティアは珈琲を飲みながらそんな二人のやり取りを見て鼻で笑った。

 

 

「朝っぱらからギャンギャンギャンギャン良く吠える女だ……正にイヌだな」

 

 

「はあぁ?!誰がイヌよ?!」

 

 

「お前以外に誰がいる?ああ、イヌが嫌なら、せめて御と様でも付けてやろうか?お・イ・ヌ・さ・ま?」

 

 

「~~~っっ?!!!拓斗オォッ!!!何なのよこの女はあぁ?!!!」

 

 

「おっ、俺に聞かれましてもっ?!!」

 

 

「何も言い返せないからソイツに当たるか……みっともない女だなぁ?」

 

 

「ッ!!!!」

 

 

愉快げに笑うティアのその言葉で我慢の限界を超えたのか、椎名は顔を真っ赤にしながらバッ!と勢い良く立ち上がり、拓斗に貸したノートを乱暴に手に取ってズガズガと居間から出て行こうとする。

 

 

「ちょ、ちょっと?!待って椎名ちゃんっ?!」

 

 

「うっさいバカ!!!もう知らないっ!!!」

 

 

―スパアァンッ!!!!―

 

 

呼び止めようとする拓斗の言葉も聞かず、椎名は居間の襖を思いっきり叩き締め神道家を飛び出してしまった。そして残された拓斗はガクリと肩を落とし、呑気にパンを食べるティアの方へと振り向いた。

 

 

「ホントにもうっ……なんであんな言い方するのかなぁ君もっ?!」

 

 

「知るか。向こうが勝手に突っ掛かって来たんだぞ?私は悪くない」

 

 

「いやっ、だからそういうことを言いたいんじゃなくてっ…………ん?」

 

 

呑気に珈琲を飲むティアに何かを言い掛けた拓斗だが、その時視界の端に何かが映りそちらに目を向けた。其処には……

 

 

 

 

 

 

 

 

「――お母さんお母さん。コレはあれですね。彼女が彼氏を驚かせようと敢えて連絡しないで家に遊びに行ったら、家に見知らぬ女が彼氏と一緒に居て浮気が発覚する……というごく一般的なケースだね」

 

 

「うーん、拓斗も遂に女の子を泣かせるようになっちゃったかぁ……母親の立場としては、ちょっと複雑ねぇ」

 

 

「………………」

 

 

キッチンに繋がる襖の影から、紗奈と美那子が今の様子を盗み見していたのである。そんな二人を見て『居たなら助けてよ!』と叫びたい気持ちになる拓斗だったが、最早そんな気力も残されておらず床に突っ伏してしまった。

 

 

 

 

 

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