仮面ライダーオーズ メダルと欲望と不幸?少年   作:風人Ⅱ

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番外編/生徒会長とユリカとISライダー(前編)

 

 

―神上ファウンデーション・オフィス―

 

 

拓斗が椎名に運ばれるその頃、神上ファウンデーションのとあるオフィスでは、拓斗や椎名と同じ和神高校の制服を身に包んだ一人の少女がソファーに腰掛ける姿があった。少女は無言で瞳を伏せながら、その手に握る扇子をポンッと軽く手の平に何度も落としていると、オフィスに入ってきた何者かの気配に気付き瞳を開いた。

 

 

「―――遅かったですね、ユリカさん」

 

 

少女はオフィスの入口の前でトランクケースを片手に立つ人物……ユリカを見つめて微笑しながらそう言うと、ユリカは悠々とした足取りで少女が座る向かいのソファーに近付いて腰を下ろした。

 

 

「悪いわね……前の依頼が思ったより長引いたせいで遅れてしまったわ。待ったかしら?更織 楯無……」

 

 

「いいえ、私も今さっき来たばかりですから。あと、別にフルネームで呼ぶ必要はないですよ?普通に楯無で構いません」

 

 

制服の少女……楯無が何処か楽しそうに笑みを浮かべながらパンッと手に握っていた扇子を開くと、ユリカはそんな楯無を見て相変わらずだなと言うように含み笑い、テーブルの上に持参したトランクケースを置いた。

 

 

「さて、それじゃあ早速本題に入らせてもらうけど……」

 

 

「分かってます。完成したんでしょう?私専用のメダルシステムが」

 

 

「えぇ、相変わらず洞察力が良いわね……流石はあの神上が選んだ更識家の当主、ってところかしら……」

 

 

「フフッ、何だか嫌味に聞こえますよ?」

 

 

「半分はね……もう半分は素直に関心してるわ……それで話を戻すけど、前にも話した通りこのシステムは普通の人間には扱えないもの……ちゃんと言われた通りの訓練はしてきた?」

 

 

「ご心配には及びません、訓練は家での鍛練と共に欠かさずやって来ましたから♪」

 

 

「そう……だったら、貴方にコレを預けても大丈夫そうね……」

 

 

そう言ってユリカはケースを開けると、ケースを回転させて楯無に中身を見せていった。トランクケースの中には、水色を基礎としたベルトとその真下に三枚の水色のコアメダル、そして白、赤、青、ピンク、オレンジ、黒の六枚のコアメダルが入っており、楯無はケースからベルトを取り出しそれをジッと眺めていく。

 

 

「それがオーズとは別のメダルシステム、レイディドライバー……そしてその力を解放する為の三枚のコアメダルに、レイディの力を高めることが出来るイチカメダル、ホウキメダル、セシリアメダル、リンメダル、シャルメダル、ラウラメダル……それで平行世界の貴方の後輩達の力を使う事が出来る」

 

 

淡々と話すユリカの説明を聞きながら、フムフムッと頷いてケースに入っていた取り扱い説明書を一枚一枚めくり、流れるような視線で説明書の内容を確認していく楯無。ユリカはそんな楯無を見つめると、ズボンのポケットから一枚の写真を取り出しテーブルの上に置いた。

 

 

「そしてこの少年が、貴方に面倒を見てもらいたいというオーズの装着者……神道拓斗よ」

 

 

ユリカが差し出した一枚の写真……其処には何処かの喫茶店でバイトをする拓斗のウェイトレス姿が写し出されており、楯無はそれを見て一旦説明書から目を離し写真を手に取ると、写真に写る拓斗を見て「へぇ」と興味深そうに微笑を浮かべた。

 

 

「中々色男さんですね……彼がオーズのベルトを?」

 

 

「えぇ、グリードの一体に訳も分からないまま封印を解かされ、その後はオーズとして活動しヤミーと戦ってるらしいわ……」

 

 

「なるほど……では、暴走の予兆は今のところ?」

 

 

「ないわ。特にそれらしい所も見られないし、恐らく当分の間は大丈夫でしょう……だから貴方には、その間に彼の――」

 

 

と、ユリカが真剣身を帯びた表情で楯無に何かを告げようとした、その瞬間……

 

 

 

 

―ビィーッ!ビィーッ!ビィーッ!ビィーッ!―

 

 

『緊急事態!緊急事態!星華市内にてヤミーが出現!数は1!属性は虫!なお、付近にはグリードの姿も確認されており、ライドベンダー隊は十分注意を――!』

 

 

 

 

突然オフィス内にアラームと警報が鳴り響き、ユリカと楯無は会話を止めて特に慌てた様子もなく警報が響き続ける天井を見上げた。

 

 

「ヤミーですか」

 

 

「属性は虫……あの虫頭グリードのヤミーみたいね……確か猫属性のヤミーが今も街の至るところで食い物を食い散らかしてた筈だけど……彼は今――」

 

 

ユリカは天井から視線を逸してコートのポケットを漁り、其処から一基の端末機……ノアノートを取り出すと、ノアノートを操作してある映像を画面に映し出した。画面に映し出されたのは、気を失って椎名に何処かへと運ばれる拓斗の映像であり、ユリカはそれを見て僅かに目を細めた。

 

 

「今の状態じゃ無理そうね……仕方ない、此処は私が「私が行きますよ」……ッ!」

 

 

拓斗があんな状態な以上、オーズにヤミーの討伐は無理だと判断したユリカはソファーから立ち上がって街に出ようとするが、その時楯無がユリカを呼び止めてソファーから立ち上がった。

 

 

「丁度メダルシステムの試運転をしたいと考えてたところですし、私にそのヤミーの討伐をさせて頂けませんか?」

 

 

「貴方が?でも近くにはグリードも居るのよ?ライダーでの戦闘に慣れていない貴方だけで行くのは……」

 

 

確かに、幾ら今日まで厳しい訓練を積んできてるとは言え、ヤミーはともかくグリードの相手までさせるとなると少々危険過ぎる。ユリカがそのことを口にして楯無の身を案じるが、楯無はイタズラっぽく笑みを浮かべながら扇子を口元に当てた。

 

 

「えぇ、確かに私だけじゃ危険です……ですからユリカさん、貴方も付いてきてくれますよね?自分が開発したメダルシステムの性能がどの程度の物なのか、貴方自身も気になってるでしょう?」

 

 

「……………」

 

 

何かを見透かすような目でそう告げる楯無の言葉に、ユリカは口を閉ざし無言になった。確かに、レイディドライバーはユリカが開発したものだが、ドライバーは楯無にしか扱えないように初期段階でプログラムされている為、ユリカ自身がドライバーを装着して変身しその性能を確かめる事などは出来なかった。

なのでライダーのスペック、能力、性能等はデータ上でしか見れていないので、実際の性能はどの程度の物かはまだ分かっておらず、気になっていないと言えば嘘になる。

 

 

「――成る程ね……いいわ。でもサポート料金はしっかり頂くわよ……?」

 

 

「えぇ、報酬は弾みますよ?なんでも屋さん♪」

 

 

微笑するユリカに楽しげな笑みを向けながらパンッと扇子を開くと、其処には『交渉成立』の四文字が書かれてあった。

 

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

 

そしてその頃、星華市内のとある一角では悲鳴を上げながら逃げ惑う人々の姿があり、人々が逃げてくる先には一体の異形……スズメバチを連想させる姿をしたスズメバチヤミーが、大量の宝石を手にして佇む姿があった。

 

 

『宝石が欲しい……沢山、沢山!もっと、もっと!』

 

 

そう言いながらスズメバチヤミーは両手に握る宝石を次々と口に喰らっていき、体内に大量のセルメダルを溜め込んでいく。そしてそんなスズメバチヤミーの下にもう一体の異形……スズメバチヤミーを生み出したウヴァが近づいた。

 

 

『フッ、カザリの奴が動いてる間に、俺は俺でメダルを稼がせてもらうぞ……』

 

 

ウヴァがそう言ってスズメバチヤミーに目を向けると、スズメバチヤミーは再び宝石を手に入れようと宝石店を捜してゆっくりと歩き出した。その時……

 

 

 

 

 

―ブオォォォォォォォォォォォォオンッ!!―

 

 

『ッ?!―ドガアァッ!―ブガアァッ?!』

 

 

『?!なにっ?!』

 

 

宝石店を求めて歩き出したスズメバチヤミーを、突然真横から飛び出した一台のバイクが吹っ飛ばしていったのだ。スズメバチヤミーはそのままゴロゴロと何度も地面を転がり、その光景を見たウヴァが驚愕混じりにバイクが走り去った方に振り返ると、其処には黒と金のバイク……マシンセレーネに跨がるユリカと楯無の姿があった。

 

 

「見付けたわよ……虫のグリードとそのヤミー……」

 

 

『ッ!何だお前等?!』

 

 

「んー、通りすがりの高校生となんでも屋、ってところかしらね~」

 

 

警戒して身構えるウヴァにそう言うと、楯無はマシンセレーネから下りて身体を起こすスズメバチヤミーと向き合っていき、レイディドライバーを腰に装着して三枚の水色のコアメダル……海豚、鯨、ペンギンの絵が描かれたメダルを取り出した。

 

 

『なっ、コアメダルだとッ?!』

 

 

「ユリカさん、逃げ遅れた人達の避難とサポート、お願いしますね?」

 

 

「えぇ、出来る限りの事はするわ。貴方も無茶しないようにね……?」

 

 

「ダイジョーブです。伊達に鍛えてませんから、シュッとね♪」

 

 

忠告するユリカに笑みを向けながら敬礼するようなポーズを取ってそう言うと、楯無は直ぐに真剣な表情に切り替わってスズメバチヤミーを見据え、三枚の水色コアメダルをドライバーのバックル部のメダル投入口に一枚ずつ投入していく。

 

 

―チャリンッチャリンッチャリンッ―

 

 

『何なんだ、そのメダルは……貴様一体何者だ?!』

 

 

ウヴァは自身も初めて見る色のコアメダルを見て若干困惑しながら楯無に問いかけると、楯無は右腰に取り付けられた水色のスキャナー……レイディスキャナーを取り出し、イタズラっぽく笑みを浮かべながら……

 

 

「更識楯無、和神高校生徒会会長。そして……」

 

 

身構えるウヴァに名を名乗ると共に、楯無は右手に持つレイディスキャナーをバックル部の中心に翳すように当てていき、そして……

 

 

 

 

 

 

「―――仮面ライダーレイディよ、覚えておいてね」

 

 

―キキキィンッ!!―

 

 

『IRUKA!CUGILA!PENGUIN!MY・S・TE・RI・OUS・LA-DY!』

 

 

 

 

 

 

ニッコリと楯無が微笑むと共に歌のような電子音声が響き、それと同時に楯無の周りを無数のメダルの残像が駆け巡っていく。そして楯無の前でバックルに投入されたのと同じ三枚の水色のメダルの残像が縦一列に並ぶと、楯無の身体が淡い光に包まれその姿を変えていった。

 

 

海豚をモチーフにしたような水色の仮面と赤い複眼、アーマーは面積が狭く小さいが、それをカバーする様に透明の液状のフィールドが形成されていて、まるで水のドレスのように見える。更に一際目を引くのが、左右一体の状態で浮いてるクリスタルのようなパーツ……アクア・クリスタルと呼ばれるそこからも水のヴェールが展開され、大きなマントのように姿を変えた楯無を包み込んでいる。そして手に持った大型ランスの表面にも水の螺旋が表面を流れてドリルの様に回転し、楯無はドリルの先端をスズメバチヤミーに向けて構えた。

 

 

『さ、始めましょうかハチちゃん。だけどおねーさん初めてだから、お手柔らかにお願いね♪』

 

 

楯無が変身したライダー……『レイディ』がニッコリ微笑みながらイチカメダルを指に挟んでスズメバチヤミーに見せると共に、地を勢いよく蹴ってスズメバチヤミーに大型ランスを振りかざしていったのだった。

 

 

 

 

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