急で申し訳ございませんが、某サイト様からこちらへの小説の移転作業効率の為、一時的に今までの非台本形式から修正前の台本形式で更新していきます(後々非台本形式に戻しますので、この前書きも後ほど消します
―――気が付けば、瓦礫に囲まれた場所にいた。
最初は何処にでもあるような見慣れた街の中にいたのに、あの爆発が起きてから一緒にいた筈の母さんとはぐれ、目覚めた時にはいつの間にか其処にいた。
周りには、自分の様に狭い瓦礫の空間に閉じ込められた人達が沢山いて、全員体中に怪我をしていて、中には既に息を引き取って動かなくなった人もいた……
此処が何処かも分からず、怖くて、心細くて、泣き出したい気持ちになって、隅で膝を抱えて震えていた俺は、其の場所である人と出会った……
「――どうしたの、ボク?一人なの……?」
◇◆◆
―クスクシエ―
拓斗「―――ぁ……?」
クスクシエの屋根裏部屋。偶に従業員の休憩や体調不良などの時に使われるこの部屋のベッドの上で、拓斗がゆっくりと瞼を開き目を覚ました。
拓斗「……此処……って……」
「――ッ!拓斗、起きたっ?!」
拓斗「……え?」
目を覚ましたばかりで意識が朦朧とする中、視線だけを動かして此処が見知らぬ部屋だと理解した瞬間、横から誰かが身を乗り出してきた。自分以外に誰かがいた事に内心驚きながらも、拓斗が顔を動かしそちらに振り向くと、其処には……
拓斗「……椎名……ちゃん……?」
椎名「拓斗……良かったぁ」
其処にいたのは、拓斗の顔を見て安堵の顔を浮かべる人物……椎名の姿があったのだった。
◆◇◆
―神上ファウンデーション・会長室―
その一方、神上ファウンデーションの会長室では此処から見える風景を静かに眺める神上の姿があった。そしてそんな彼の背後には、コートのポケットに両手を突っ込んで神上の背中を見つめるユリカの姿があり、神上はそんなユリカを見ずゆっくりと口を開く。
神上「グリードとヤミーの討伐、ご苦労だったね……彼女はどうした?」
ユリカ「さあ……さっきの戦いのあと別れたから知らないわ……現役女子高生のプライベートがそんなに気になるのかしら?」
神上「何、今日は君が開発したレイディが誕生した日だ。それに伴って彼女への贈り物があったんだが……どうやら無駄になってしまったようだね」
そう言って神上がチラッと目を向けた先には、執務室の上に置かれたケーキ箱があり、ユリカはその視線に気付いて馬鹿馬鹿しそうに鼻を鳴らした。
ユリカ「またケーキか……よくもまあ毎回毎回自分の得にならない事を好き好んでやれるわね……」
神上「なにを言うんだい?今日もまた新しい存在がこの世に誕生したんだ。それは私にとっても喜ばしく、こうしてその誕生を祝ってケーキを作るのは、私にとって至福の時間なのだよ」
呆れるように溜め息を吐くユリカに神上が微笑しながらそう言うと、神上は何かを思い出したようにユリカの方へと振り返った。
神上「そうだ。そういえば、もうすぐ例の彼の誕生日じゃなかったかな?」
ユリカ「……?彼?」
神上「そう、君が今も気にかけている彼……黒月零の本当の誕生日だよ」
ユリカ「っ!」
黒月 零。神上が口にしたその名を聞いたユリカは一瞬息を拒むもすぐに無表情に戻り、神上は執務机に腰掛けて微笑を浮かべた。
神上「私も彼には以前から注目していてね、是非とも一度会ってみたいんだよ。特に例の大戦……黒月零、火神亮介、風霧海夢の三人が起こした『アルテマの乱』はとても興味深かったからね。あの時の戦いでは、様々な生命が誕生と死を―――」
ユリカ「止めなさい」
ピシャリと、微笑する神上の言葉を遮るようにユリカが口を開いた。その声音には何処か怒りが含んでおり、ユリカは目付きを鋭くさせながら言葉を続けた。
ユリカ「あの戦いのことを面白おかしく語るのは止めなさい……不愉快だわ……」
神上「―――あぁ、それは悪かったね。君にとってはあまり良い話ではなかったか。何しろあの戦いの結末は、誰も救われる物ではなかった……特に黒月君は、余りにも悲惨過ぎる結末を迎えたのだしね」
ユリカ「…………」
神上「複雑かい?いや……複雑に決まってるか……何しろ彼は、君の義弟になる筈だった青年なのだし」
ユリカの視線を受けながらも笑みを絶やさずにそう告げる神上。ユリカはそんな神上を睨みつけるも、すぐに溜め息を吐きながら神上に背を向けて歩き出し会長室を後にしていった。
神上「フッ……いくら感情を殺した気でいようとも、義弟を思う気持ちに変わりはないか……」
そう言って会長室に一人残された神上はユリカが出ていった入口を見つめて含み笑い、椅子を回転させ背後の街の風景を眺めた。
神上「しかし、彼の未来が悲劇一色で塗り潰されてるのは既に決まってることだ……彼が幸福な未来を掴む事は絶対ないよ、ユリカ・アルテスタ」
◆◇◆
―クスクシエ―
椎名「一応の治療は済ませておいたから。あと、これ代えの湿布……」
拓斗「あ、うん。なんかごめんね、色々と……」
場所は戻り、クスクシエの屋根裏部屋では椎名に介抱され意識を取り戻した拓斗が備え付けのベッドに腰掛け、椎名から数枚の湿布を受け取っていた。椎名から話しを聞いた所、どうやら自分はあの後意識を失って倒れてしまい、椎名はそんな自分をこのクスクシエまで運び治療までしてくれたらしい。何だか迷惑掛けて申し訳ない心境になりながらも貰った湿布をポケットに仕舞うと、椎名は拓斗の向かいに座って険しげに口を開いた。
椎名「それで、本当なの?アンタがあの変な鎧と仮面の戦士になって、あの怪物と戦ってるって……」
拓斗「あ……えーと……まあね……」
椎名の問いに対し、拓斗は気まずそうに椎名から目をそらしてぎこちなく頷いた。実は先程意識を取り戻してから落ち着いた後、椎名にさっきの現場で目撃したオーズやティア、グリードとヤミーのことを問い詰められたのだ。流石に現場を見られたとなるとごまかすのは無理と判断し、拓斗は自分が知ってるだけの事を椎名に全て打ち明けたのである。
椎名「どうしてそんな……なんでアンタがそんな事に首突っ込む事になってんのよ?!」
拓斗「いやっ、そのぉ……成り行きっていうか、ほっとけなかったっていうかさ……」
椎名「ほっとけなかったって、まさかティアの事……?」
ティアの名を口にしながら、ジト目で拓斗を軽く睨みつける椎名。そんな椎名の視線に「うっ……」と若干押されながらも、拓斗は頬を掻きながら言葉を続けた。
拓斗「それもあるけど……このままヤミーやグリードを放っておけば、沢山の人が傷付く事になる。今も、そのせいで苦しんでる人がいるからさ……」
椎名「苦しんでるって、もしかしてさっきの大食い男……?」
拓斗「そう……あの人もヤミーの犠牲者なんだ……だからこのままだと、あの人は死んでしまう……」
そう呟く拓斗の脳裏に蘇るのは、先程戦ったネコヤミーに憑依される門太の姿。確かにティアの言う通り、アレは門太自身の欲望のせいであんなことになったのかもしれない。だがだからと言って、このまま放っておいて良い筈がない。
拓斗「だから決めたんだ、俺が自分で。目の前で助けを求めて、苦しんでる人がいるなら、その人のために全力で戦うって……」
自分の手の平を見下ろしながら、何処か力強い口調で椎名にそう告げる拓斗。そんな拓斗の表情を見た椎名は、「まさか……」と思い微かに眉を寄せた。
椎名「……拓斗……アンタもしかして、『あの事』を引きずってそんな事言ってるんじゃないでしょうね……?」
拓斗「………………」
問い詰めるように拓斗へと質問する椎名だが、拓斗は顔を少し俯かせるだけで何も答えようとしない。しかし拓斗のその様子を肯定と取ったのか、椎名は思わずバッと勢いよく立ち上がった。
椎名「馬鹿じゃないのっ…前にも言ったでしょっ?!『アレ』はアンタのせいでもないし、アンタが責任を負うべき物でもないっ!!アンタが償う事なんて何もないのっ!」
拓斗「……はははは、そんなの分かってるよ。アレはただの事故で、俺はただの被害者なんだし……」
椎名「分かってないっ!!ホントに分かってるなら、自分からこんな危険な事に飛び込むはずないでしょっ?!こんなのはもう、親切の度を通り越してるっ!!なのにそれでも危険な事に首を突っ込むなんてっ……可笑しいわよっ!どうかしてるっ……!!」
椎名の目から見ても分かる、あのグリードやヤミーが人間の手に負える存在ではないと。そんな怪物と正面から戦って、今日みたいにボロボロに傷付き倒れて、それでも尚戦おうとする。その戦う理由が『あの事』から来ている事がどうしても許せず、怒りの余り言葉が上手く見つからず怒鳴り声を上げてしまう椎名。そんな椎名の様子に苦笑いを漏らすと、拓斗は静かにベッドから立ち上がった。
拓斗「――確かに、『あの事』は関係ないって言えば嘘になる……でも、アレを身を持って体験したからこそ、分かったことがあるんだ……」
椎名「……え?」
静かにそう呟く拓斗の言葉に、椎名は思わず疑問げに聞き返した。そして拓斗はそんな椎名に顔を向け、小さく笑みを浮かべて言葉を紡ぐ。
拓斗「誰をも助けられる訳じゃない。でも、目の前の人に必死に手を伸ばせば、それは届く……なのに何もしなければ、ずっと後悔してしまう……あの時、それを嫌ってほど経験した……」
椎名「…………」
拓斗「椎名ちゃんはさっき親切って言ったけど、俺はそんなつもりはないよ……ただ、手が届くのに手を伸ばさなかったから死ぬほど後悔する。それが嫌だから手を伸ばすんだ。それだけ」
親切ではなく、あくまで自分の意思。迷いのない瞳で力強くそう答える拓斗に、椎名は言葉を詰まらせ何も言い返せなかった。
拓斗「じゃあ、俺もう行くから。早くあの人見つけないといけないし……手当てありがとね!」
拓斗はいつもの調子に戻りそんな椎名に礼を告げると、椎名と別れて屋根裏部屋を後にした。そして、一人部屋に残された椎名は……
椎名「……それが間違いだって……なんで気付かないのよ……バカッ……」
ただ苛だたしげに、自分の手で自分の腕を引っかいていたのだった……